若手アトツギ向け
アイデア検証の進め方
2021年12月1日
中本 卓利(Nakamoto Takuto)
一般社団法人ベンチャー型事業承継 エヴァンジェリスト
はじめに
前提1
本スライドはゼロからイチを生み出す起業家のアイデア検証ではなく、家業の
経営資源を活かした新規事業を生み出すアトツギのアイデア検証に関し
て書き記すものである。
ゼロからイチを
生み出す起業
家業の経営資源を
活かした新規事業
前提2
アイデアの検証は多岐に亘るものの、本スライドではアイデアの中心を成す
顧客・課題・解決策・家業に検証の的を絞り話を進めるものとする。
家業
顧客 課題 解決策
検証
検証の流れ① 顧客定義
検証すべき顧客は誰か?
家業
顧客 課題 解決策
1
検証
検証の流れ② 課題検証
顧客は課題を持っているか?
家業
顧客 課題 解決策
2
検証
検証の流れ③ 解決策検証
製品やサービスは課題を解決できるか?
家業
顧客 課題 解決策
3
検証
検証の流れ④ 家業検証
製品やサービスに適切な家業の経営資源が活かされているか?
家業
顧客 課題 解決策
4
検証
スライドの進め方
以上の前提に基づき、本スライドでは以下四つの順で検証を進める。
顧客定義 課題検証
1 2
解決策検証
3
家業検証
4
顧客定義
1
若手アトツギが
陥りやすいミス①
検証すべき顧客は
決め打ちで設定する
若手アトツギが
心掛けるべきこと①
検証すべき顧客は
課題から逆算する
顧客定義
顧客定義とは、検証すべき相手を見定めることである。それはアイデアを分
解した上で、自社と同じ課題を解決する競合製品や競合サービスの顧客
を想定することで見つけられることが多い。
アイデア分解 競合想定 顧客想定
顧客定義例
犬を消臭するハンディタイプUVライトというアイデアを思い付いたと仮定し、
顧客定義のプロセス毎に例を提示しつつ進めるものとする。
アイデア 犬
ハンディタイプ
消臭UVライト
1.1 アイデア分解とは
アイデア分解とは、考案したアイデアを課題と解決策に分けることである。
アイデア 課題 解決策
1.1.1 アイデア分解例
犬を消臭する
ハンディタイプ
UVライト
犬の臭いが嫌
シャンプーが面倒
手を汚したくない
消臭効果
シャンプー不要
汚れに触れない
アイデア 課題 解決策
1.2 競合想定とは
競合想定とは、アイデア分解後の課題に対し、自社以外のどのような製
品やサービスが競合として課題解決できるのかを考えることである。
課題 解決策A 解決策B 解決策C
1.2.1 競合想定例
犬の臭いが嫌
シャンプーが面倒
手を汚したくない
犬専門
クリーニング
代行サービス
課題 解決策C
解決策A 解決策B
犬専用
消臭芳香
スプレー
消臭用
オゾン発生
空気清浄機
1.3 顧客想定とは
顧客想定とは、課題解決となる競合製品やサービスを利用するであろう
顧客の姿を思い浮かべることである。
解決策 顧客A 顧客B 顧客C
1.3.1 顧客想定例
クリーニング代行
消臭スプレー
空気清浄機
犬を仕事で
扱うプロの
ブリーダー
解決策 顧客C
顧客A 顧客B
犬を扱う
ペットショップ
オーナー
時間のない
共働きの
愛犬家
整理
検証すべき顧客はアイデアから直接考えるだけでなく、解決している課題は
何か、その課題解決となる競合の製品やサービスは何か、またそれらを利
用するであろう顧客は誰か、と考えることで発見することができる。
アイデア分解 競合想定 顧客想定
課題検証
2
若手アトツギが
陥りやすいミス②
顧客に対し
製品やサービスを
提示する
若手アトツギが
心掛けるべきこと②
顧客に対し
製品やサービスを
語らない
課題検証
課題検証とは、顧客が対価を支払ってでも解決したい課題を持っている
か否かを見定めることである。その際に気を付けるべきポイントは以下三つ。
対話 過去 行動
2.1 対話とは
対話とは、アンケートではなく生の声をインタビューで拾うことである。アン
ケートは時間を要さず無数の回答を収集することが出来るものの、あくまで
全体的な傾向が分かるだけで課題の詳細を把握することは難しい。
アンケート インタビュー
2.1.1 対話補足
アンケートが推奨されない理由は、アンケートは人と人が対面していないこと
から必要な情報を収集できないことが多いからだ。人の課題の真に迫るた
めには語り合うことが必須と覚えておこう。
✓ アンケートは深く考えず回答されることが多い
✓ アンケートは痛みの強さが見えないことが多い
✓ アンケートは背景を深掘りできないことが多い
2.2 過去とは
過去とは、○○があったら使いたい(買いたい)と思いませんか?と未
来に対して提案を行わないことである。じれったく思うかもしれないものの、
顧客が過去の経験の中で痛みを感じたポイントを拾い上げていこう。
過去を聞く
過去の確認
未来に提案
2.2.1 過去補足
未来に対する提案が推奨されない理由は、未来は想像の世界のため人は
(無意識に)嘘を口にすることが多いからだ。人は過去の行動を尋ねられ
た時こそ事実を口にすると覚えておこう。
✓ 人は相手に対し嫌われないよう答える傾向にある
✓ 人は質問に対し理想の自分を演じる傾向にある
✓ 人は提案に対し勝手な解釈を加える傾向にある
2.3 行動とは
行動とは、顧客が過去に痛みを感じた際、その痛みを消し去ろうと試行
錯誤を重ねたか否かを確認することである。放置をせず何かしらに取り組
んだものの、未解決もしくは不十分に終わっている状態が望ましい。
放置 試行錯誤
2.3.1 行動具体例
人が痛みを消すべく起こす行動は大きく分けて三つ。インターネットや本など
で解決策を調べたり、身の回りの人に尋ねて解決策を探したり、また解決
策を導入すべく対価を支払うなどがある。
検索 相談 購入
補足
顧客が課題を持っていなければ、どれだけ時間やお金を投じて製品やサー
ビスを作り上げたとしても徒労に終わってしまう。だからこそインタビュー実施
時は少なくとも10名以上の方々から話を聞くことが重要だ。
一人に聞く 多数に聞く
整理
顧客が本当に課題を持っていれば、過去に何らかしらの行動を起こしてい
るもの。最初から顧客に製品やサービスを提示せず、顧客はそもそも解決
したい課題を持っているのか否かを確かめるところから始めよう。
対話 過去 行動
解決策検証
3
若手アトツギが
陥りやすいミス③
製品やサービスが
出来上がってから
顧客に提示する
若手アトツギが
心掛けるべきこと③
製品やサービスを
作り上げる前に
顧客に提示する
解決策検証
解決策検証とは、製品やサービスが課題に対する解決策として有効か否か
を見定めることである。その方法論は大きく分けて以下八つ。
描写 メール WEB 動画
A B C D
E F G H
人力 見掛け 試作 前売
3.1 描写とは
描写とは、紙とペンで製品やサービスを描いて課題を持つ顧客に対して説
明し、相手の反応から解決策の価値を確かめる方法を指す。
絵を描く 反応を見る
3.2 メールとは
メールとは、製品やサービスを記したメールを課題を持つ顧客に送付し、
開封率や返事の有無から解決策の価値を確かめる方法を指す。
メールを送る 反応を見る
3.3 WEBとは
WEBとは、製品やサービスを説明するWEBページやブログ等を作成し、
PV数やWEB経由の登録数から解決策の価値を確かめる方法を指す。
WEBを作成 反応を見る
3.4 動画とは
動画とは、製品やサービスの説明を動画共有サイト等にアップロードし、
PV数や動画経由の登録数から解決策の価値を確かめる方法を指す。
動画を作成 反応を見る
3.5 人力とは
人力とは、製品やサービスを完成させずに人力で顧客の課題解決を行う
ことにより、解決策の価値を確かめる方法を指す。
人力で解決 反応を見る
3.5.1 人力例
アイデア 犬
犬の臭いに合わせた
消臭コロン自動調合機
① ペットショップ前で待ち構え、犬を消臭したいオーナーを探す。
② コロン自動調合機に興味を持ったオーナーの犬の臭いを嗅ぎ取り、
その臭いに合わせたコロンをその場で手動で調合し犬に振り掛ける。
③ オーナーに消臭コロン自動調合機の詳細を説明しフィードバックを貰う。
3.6 見掛けとは
見掛けとは、製品やサービスの見掛けだけを作り、あたかも完成している
るかのように顧客に思わせ、解決策の価値を確かめる方法を指す。
見掛けを作る 反応を見る
3.6.1 見掛け例
① ペットショップ前で待ち構え、犬を消臭したいオーナーを探す。
② ハンディタイプUVライトに興味を持ったオーナーの前で、予め消臭スプレーを
染み込ませた何の変哲もないサイリウム(紫色)を犬に当て臭いを取る。
③ サイリウムを犬消臭用ハンディタイプUVライトと説明しフィードバックを貰う。
アイデア 犬
ハンディタイプ
消臭UVライト
3.7 試作とは
試作とは、製品やサービスの必要最小限の機能を盛り込んだ試作を顧
客に提供することで、解決策の価値を確かめる方法を指す。
試作を作る 反応を見る
3.8 前売とは
前売とは、製品やサービスを一般公開前にクラウドファンディングや限られ
た地域で事前販売することで、解決策の価値を確かめる方法を指す。
事前に販売 反応を見る
整理
製品やサービスの完成後、それが課題解決に相応しくないと判明しては損
失も大きい。故に出来る限りお金と時間をかけず検証することが重要だ。
描写 メール WEB 動画
A B C D
E F G H
人力 見掛け 試作 前売
家業検証
4
若手アトツギが
陥りやすいミス④
家業の経営資源は
新規事業の補助的な
位置付けである
若手アトツギが
心掛けるべきこと④
家業の経営資源は
新規事業の優位を築く
源泉である
家業検証
家業検証とは、製品やサービスに適切な家業の経営資源が活かされてい
るか否かを見定めることである。その際に気を付けるべきポイントは以下三つ。
非金銭 細分化 優位性
4.1 非金銭とは
非金銭とは、製品やサービスに活用される経営資源がヒト・モノ・情報の
いずれかで、カネ(資金)が中心ではないことである。アイデアへの資金
調達は誰でも実施出来るため残念ながら資源としての価値は低い。
ヒト 情報
カネ
モノ
4.2 細分化とは
細分化とは、家業の経営資源が持つ要素が棚卸を経て分解され、製品
やサービスにその一部分が活かされていることである。
そのまま活用 一部を活用
4.2.1 細分化補足
もし仮に経営資源が細分化されず活用されていた場合、家業の分析が出
来ていない懸念に加え、新規事業が提供する価値がこれまでの家業と
大きく変わらず新規顧客開拓を成し遂げられない可能性も高い。
そのまま活用 分析曖昧 価値重複
4.2.2 細分化 例1
アイデア 大型犬
大型犬用の頑丈安定
大型陶器フードボール
① 家業が一般食卓向けの陶磁器製造業の場合、既存の陶磁器をそのまま活用
して提供できる価値は「料理の入れ物」や「料理の見栄え向上」等に限られる。
② しかし「焼き上げ窯が大型」及び「焼き上げで高い強度を誇る土」という細分化
された資源を活かすことで新しく大型犬用の陶器フードボール製造が可能となる。
③ 結果、大型犬オーナーという既存の家業から離れた顧客の開拓を成し遂げられる。
4.2.3 細分化 例2
アイデア 防寒腹巻
① 家業が靴下製造業の場合、繊維機械をそのまま活用して提供できる価値は、
「ビジネス用の靴下製造」や「スポーツ向けの靴下製造」といったものに限られる。
② しかし既存の設備が靴下を作る工程で「筒状の織物を作り出せること」に着目し、
その資源を活かすことで冷え性に悩まされる大人女性向け腹巻製造が可能となる。
③ 結果、新製品を通じ冷え性に悩む大人女性という顧客の開拓を成し遂げられる。
冷え性に悩む
大人女性
4.3 優位性とは
優位性とは、製品やサービスに活用される経営資源の稀少性が高い、も
しくは模倣困難性が高いことである。競合が同じ資源を持っていたり、また
多大な対価を支払わず同じ資源を入手出来ては優位の足元は覚束ない。
簡単に手に入る 簡単に手に入らない
補足
https://www.slideshare.net/TakutoNakamoto/ss-250450155
家業の経営資源の棚卸方法は若手アトツギ向け経営資源棚卸の進め方
に詳細を纏めているので下記をご参考いただければ幸いだ。
整理
家業を製品やサービスに活かす際は、金銭以外の経営資源が分析を経て
細分化されており、競合に対する優位を築く元となるかを確認していこう。
非金銭 細分化 優位性
まとめ
若手アトツギ向け
アイデア検証の進め方
まとめ① 顧客定義
検証すべき顧客はアイデアを分解し課題から考えているか?
顧客定義
競合想定
アイデア分解 顧客想定
1
家業
顧客 課題 解決策
検証
1
まとめ② 課題検証
製品やサービスを語らず顧客の生の声を拾い上げているか?
課題検証
2
過去
対話 行動
2
家業
顧客 課題 解決策
検証
まとめ③ 解決策検証
製品やサービスを必要最小限の形で顧客に提示しているか?
家業
顧客 課題 解決策
検証
3
解決策検証
D
C
B
A
E F G H
描写 メール WEB 動画
人力 見掛け 試作 前売
3
まとめ④ 家業検証
経営資源を絞って活かすことで競合に対して優位を築けるか?
家業検証
4
4
細分化
非金銭 優位性
家業
顧客 課題 解決策
検証
最後に
若手アトツギが
陥りやすいミス⑤
新規事業は
勘に頼った
一発勝負である
若手アトツギが
心掛けるべきこと⑤
新規事業は
小さな確認の
積み重ねである

若手アトツギ向けアイデア検証の進め方