PP13

1. 1
PP13：グローバル正義
公共哲学
Ver.2022SS

2. 2
残り3回分のテーマ
PP13 正義は国際社会に成立するのか？
PP14 国境を越えるひとの移動と国境管理政策
PP15 民主主義の範囲と外国人参政権
差別はなぜ不正であるのか？

3. 3
正義は国際／グローバルな社会に成立するのか

4. 4
従来の正義論
国内社会における生き方や財をめぐる衝突
→これを調停するルールの正しさ
＝＜国内正義＞

5. 5
グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）(1)
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見や技術革新
地球温暖化の深刻さ、資源開発の実現可能性
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
e.g. 貧困、公衆衛生、貿易、移民、天然資源、戦争、地球環境

6. 6
グローバル正義では何がポイントになってくるのか

7. 正義は国境を越えるのか？
地球主義
国際社会
国内正義を導出するベーシックな議論がそのまま
国際正義として拡大適用できるのか？(2)
国際主義
7
国内社会

8. 8
国内正義について勉強してきたこと
・功利主義
・分配的正義
・構造的不正義
→そのまま国際社会に適用できるのか？

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グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
テーマとしての「貧困」と「公衆衛生」
＜中心的な問い＞
先進国が途上国での暮らしぶりを改善しなければなら
ないならば、それはどういった理由からなのか？
以下のような政策上の論点は（重要ではあるが）問わない
・先進国による援助政策はどのように行われるべきなのか？
・先進国による援助政策は途上国の暮らしぶりを改善するのか？

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グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
経済格差、貧困の指標
・世界銀行による＜国際貧困線＞(3)
・所得や消費レベルが１日（およそ）１ドル以下
→20%=（およそ）14億人
水準や格差の程度いずれでも
国内社会の経済格差より酷い
それ以上 2$以下 1$以下

12. 12
功利主義による援助義務の擁護

13. 13

14. 国内社会から国際社会へ（１）
プールに れた子供
助けるコストは少ない
→子供を助ける義務
国内社会
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国際社会
途上国で苦しむ子供
助けるコストは少ない
→子供を助ける義務
・国内社会で義務が成立するなら国際社会でも成立する
・義務の有無は人種や物理的な距離とは無関係である(4)

15. 15
功利主義とは？

16. 社会全体の幸福を最大化する政策を実現せよ
(1) 不偏性（えこひいきせず等しく扱え）
→目の前にいる子供も途上国にいる子供も等しく扱え
(2) 計算による合理的判断
cf.＜限界効用逓減の法則＞
消費する財の量が増えるごとに追加的に感じる幸福は減ること
→財の独占は社会全体の幸福にとって合理的ではない
＝途上国への財の移転は（コストではなく）合理的な政策
P.シンガーによる援助義務の擁護
16

17. 17

18. 18
功利主義からすると
…
・計算する際には「目の前で死にそうな子供」よ「遠
くの国で死にそうな子供」は等しく扱うべきである
・先進国で無駄になってるお金を途上国に移転する
ことは社会全体の幸福にとって合理的な政策である

19. 19
分配的正義による国際制度の擁護

20. 20
分配的正義とは？

21. 21

22. 国内社会から国際社会へ（2）
生まれの不平等
（e.g. 性別、障碍、階級）
人生の見通しへの影響
→是正する制度が正しい
国内社会
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国際社会
・どのような国家に生まれても一定の自由や権利が保障さ
れる国際社会が（契約を通じて）納得されるはず。
生まれの不平等
（e.g. 国籍）
人生の見通しへの影響
→是正する制度が正しい

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24. 最も恵まれない人々が納得する政治制度を実現せよ
J.ロールズの否定論
・契約の際に＜自足的な社会モデル＞を想定している
・正義はこの社会のなかで協働するための条件である
・よって格差原理は国内正義として擁護される
批判：国際社会はグローバル化により＜政治経済的な相
互依存＞が進んでいるという穏当な事実を踏まえた場
合、格差原理はグローバル正義として擁護できる(5)。
グローバルな格差原理の可否
24

25. 25
平等主義的な分配的正義からすると
…
・生まれの不平等を是正する権利保障とそのための義務
負担のための制度構築が重要になる
・この議論はグローバル化による政治経済的な相互依存
を念頭におけば国際社会にも拡大適用できる

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どんな国際制度を実現するべきか？
ーー医薬品市場とその改革について

27. 27
グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
医薬品アクセスの不平等(6)
世界人口の約30%は最低限の医薬品が入手できる状態になく最貧国
ではこの数字が50％以上に及ぶ
(1) 途上国の保険予算が少ない
国民1人当たり年間1,000円ほどしかない国家も存在する
(2) 医薬品は＜特許＞で守られている
途上国が自前で類似した医薬品を作るのは困難になる
(3) 製薬会社に途上国用の安い医薬品を開発・生産する動機がない
毎年世界の保健研究開発費の90％が世界人口の約10%に当たる先進
国の生活習慣病に使われている

28. 医薬品の＜特許＞とは？
・製造、開発、価格設定などの独占権
・開発に関わる知的財産権を保障する
・それ自体が不正な制度というわけではない
・医薬品は結果として途上国に行き渡らない

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グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
実現済みの国際制度
最低限の医薬品アクセスは基本的な権利として保障するべき
→国際機関が大量購入を引き換えに製薬会社から安く買い上げ
e.g. ユニットエイド(UNITAID)(7)
①小児エイズ治療薬の80%、②マラリアの最良治療薬の80%、
③エイズ第二選択薬の60%、④最新の結核診断検査費用の40%
等々の価格引き下げに成功
財源は？ほとんど＜航空券連帯税＞から拠出(8)
→導入国に離発着する航空券に低率の課税

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グローバル正義とその背景
・国際秩序の変化（1970年代∼）
＜グローバル化＞や＜非国家主体＞の台頭
・科学的知見の発見
地球温暖化の深刻さ、技術革新による資源開発
→国境を越えた衝突を調停するルールの必要性
＝＜グローバル正義＞
未実現の国際制度
ユニットエイドの問題
安い医薬品が開発・生産されないという市場の歪みを放置
→財源は製薬会社に安い医薬品を開発・生産する動機付け
に使用する方が望ましい
e.g. ヘルス・インパクト・ファンド(9)
医薬品の効果（どれだけの人命が救われたのか）に応じて
報奨金を与えることで、製薬会社にとって安い医薬品を開
発・生産することがビジネスになる市場を整備するべき

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グローバル正義（地球主義）の要点
・途上国の人々が可哀想だからではなくその暮らし
ぶりを改善する政策や制度が必要である理由を提示
・その際に国内正義を導出するベーシックな議論を
国際社会に一貫した形で適用できることを主張

32. そんな単純な話なのか？
地球主義
国際社会
・国内社会と国際社会では事情が異なる？
・国家は正義にとって特別な場所である？(10)
国際主義
32
国内社会

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