木質バイオマスによる
地域のエネルギー改革と地域振興
2018年1月30日
㈱バイオマスアグリゲーション
久木 裕
パリ協定・地球温暖化対策計画での約束
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2020年以降の気候変動対策として、地球の温度上昇を産業革命以前より
+2℃目標(できれば、1.5℃を目標)とすることを約束
今世紀後半までの「脱炭素化」
「パリ協定」でのわが国の約束
2030年までにCO2排出量26%削減
(2013年比)
「地球温暖化対策計画」(H28.5.13閣議決定)で明記
2050年までにCO2排出量80%削減
(長期的目標として位置づけ)
エネルギーコストの域外流出額
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滋賀県
2,900億円京都府
5,000億円
大阪府
19,700億円
和歌山県
1,900億円
兵庫県
9,900億円
鳥取県
900億円
徳島県
1,500億円
関西広域連合 合計
毎年 4兆2千億円の流出
株式会社バイオマスアグリゲーション推計
➢日本が目指すCO2 80%削減には再エネ電源の普及、化石燃料消費
の削減、熱エネルギーシフトにも踏み込むことが必要
➢地方での化石燃料の調達は益々厳しくなる
➢エネルギーセキュリティ・地域経済の観点からもエネルギーの外部
依存の構造を転換すべき
地域が選択を迫られるエネルギーシフト
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今まさに地域としてエネルギーシフトの
選択が迫られている
地方は再エネポテンシャルが高い
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出典:「平成29年版環境・循環型社会・生物多様性白書」
地域効果の高いバイオエネルギー
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くらし
にぎわい創出
コミュニティ醸成
ライフスタイル転換
安全・安心の向上
地域経済
林業・木材産業・
地場産業振興
獣害抑制
域外資金流出抑制
雇用創出
図:東京都環境局
環境
森林再生 生態系保全
CO2排出削減
化石燃料消費削減
水源涵養
バイオマスは地域の経済振興、自然再生、国土保全など、
地方創生・地域レジリエンスの強化にも効果が発揮できる!
発電ブームに沸く日本のバイオマス
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木質バイオマス発電導入容量の推移
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木質バイオマス発電認定容量の推移
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出典:経済産業省資料を基に作成
認定件数
メタン発
酵ガス
未利用木質 一般木
質・農作
物残さ
建設
廃材
一般廃
棄物・木
質以外
2,000k
W未満
2,000k
W以上
2017年2月 216 41 48 188 5 91
2017年3月 257 69 53 363 6 97
エネルギーミックスの見通しの2~3倍の認定量
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認定容量・新規
(2017年3月末)
50万kW
9万kW
1,147万kW
―
26万kW
―
1,231万kW
(新規木質のみ)
出典:経済産業省資料を基に作成
エネルギー基本計画の2030年の
電源構成内訳
燃料種別木質バイオマス発電の
FIT認定状況
ドイツを凌ぐ勢いの木質バイオマス発電
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ドイツの再生可能エネルギーの導入容量(MW)
出典:ドイツ連邦政府「Progress report under Article 22 of Directive 2009/28/EC on the
promotion of the use of energy from renewable sources」
日本のバイオマス発電は輸入依存?
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出典:第30回調達価格等算定委員会資料(H29.9.28)
パーム油等液体バイオマス燃料による発電の課題と対応
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(問題点)
• CO2排出削減効果が低い
• 熱帯林の過伐・児童労働
• 一般木材等バイオマス発電
とはコスト構造が異なる
(今後の対応)
• 「バイオマス油脂」として新たな区分を創設し、買取条件を
設定
• 現地燃料調達者等との安定調達契約書等と、RSPOなど
の第三者認証による持続可能性(合法性)を確認
出典:レインフォレストアクションネットワーク 川上氏講演資料
一般木材等は入札へ
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2018年度より一般木材等バイオマスは入札対象に。
対象となる規模は10,000kW以上となる見込み。
出典:第35回調達価格等算定委員会資料(H30.1.19)
FITによる国民負担の増加
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●世帯当たりの負担はFIT開始当初の14倍。太陽光による影響が大きい。
●国民負担の抑制と再エネの普及の両立が課題。
H29年度の賦課金単価は 2.64円/kWh
出典:出典:第30回調達価格等算定委員会資料(H29.9.28)
ドイツの再エネ賦課金の将来見込み
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出典:自然エネルギー財団 研究レポート「ドイツのエネルギー転換10のQ&A」
 世界では再エネが化石燃料等と競争力ある価格までコス
トダウンが実現。再エネの利用が企業の武器にも。
 FITは未来永劫続く政策ではないため、この20年の間に自
立できる努力をすることが必要。
 またFITによる買取価格の支援は、再エネ賦課金として将
来の子の世代、日本経済へのツケでもあるという意識を
持つことも必要。(年金と同じ側面が・・・)
 FITは単なる新規ビジネスによる経済対策ではなく、国家
のエネルギー政策。FITで作った電源は将来の日本経済
を支える電源、地域の大切なエネルギー拠点となっていく
ことが必要。(FITが終わったら終わりのビジネスではダメ、
バブルで終わらせない)
発電コストの低減を真剣に考える
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燃料調達コストの低減
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 全体コストの6割~7割を占める燃料調達コストを低減が一つのポイント。
 ただし森林所有者・地域林業への還元を圧縮するのは本末転倒。
燃料費
58%資本費
15%
運転維持費
27%
図 小規模木質バイオマス熱電併給事業
のコスト構造(ガス化発電)
出典:㈳日本木質バイオマスエネルギー協会H27年度調査結果を基に作成出典:農林水産省「小規模な木質バイオマス発電の推進について」
FIT期間に林業の新たなシステム構築
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移動式チッパーによる現場チップ化など、FITによる収益が見
込めるうちに林地残材などバイオマス集荷を含めた新たな作
業システムを構築
集約化・路網整備の更なる促進
森林整備事業における柔軟な制度設計
低コスト化が進む世界の再生可能エネルギー電力価格
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出典:自然エネルギー財団「国際シンポジウム Revision 2017」
ドイツ・アゴラエナギーヴェンデ Pescia氏講演資料
世界の太陽光、風力の発電コスト
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出典:第30回調達価格等算定委員会資料(H29.9.28)
安価な再エネ電源が企業の経営力強化の武器に
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出典:自然エネルギー財団「国際シンポジウム Revision 2017」
クライメート・グループ D.Ryan氏講演資料
量拡大ばかりを目指すのは終わり。
他の再エネとコスト競争の中で立ち位置を作っていくのか?
これからの木質バイオマス発電はどうなる?
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木質バイオマス固有の優位性を活かし、質の高い事業・拠点を
各地に定着させていくことがこれからは重要。
熱電併給でエネルギー効率・コスト優位性を発揮
バイオマス固有のフレキシビリティを活かす
地域エネルギーとしての価値ある導入(地域振興、自然
環境保全、地域レジリエンス・・・)
熱電併給という選択肢
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●蒸気タービンやORC、ガス化といった発電技術を活用し、発電時に発生し
た排熱も活用することで熱電合わせて高いエネルギー効率とコスト優位性
を発揮。
●FITの小規模枠(40円/kWh)が推進力に。欧州で活躍する技術も国内に導
入が進む。
出典:Turboden社HPより出典:ボルタージャパン資料 出典:三洋貿易資料
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ガス化発電システム
木質バイオマスを無酸素・低酸素状態で800℃~900℃の条件下で熱分解させ、
CO,H2,CH4などの可燃性ガスを回収し、浄化(改質)、冷却後、ガスエンジンにて発電す
ると共にエンジンからの排熱も温水として熱供給するシステム。数10kW~300kW程度の
比較的小規模帯で30%程度の高い発電効率を発揮する。また無人運転も可能である。ホ
ワイトペレットや乾燥した切削チップ等、高品質な原料が求められる。
通常の水蒸気サイクルとは異なり、ボイラーで加熱したサーマルオイル(310℃)を沸点の低
い有機媒体(シリコンオイル)と熱交換し、タービンで発電を行うシステム。小規模でも高い
発電効率を誇り、安全性に優れ、また排熱も80~90℃の温水として供給可能で全体として
のエネルギー効率が高く、(欧州では)オペレーターの常時監視も不要(BT含む)で人件費・
メンテナンス費も安く、小規模でも採算面で優れた技術として、欧州では高い実績を誇るシ
ステムである。ボイラの設計次第で雑多な燃料の活用が可能。
ORC(Organic Rankine Cycle)システム
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出典:Turboden社HPより
熱利用形態・燃料種・規模に応じた適切な技術選択
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欧州での小規模熱電併給の事例
Wun Bioenergie (ドイツ)
(施設概要)
原料利用量 : 発電用チップ年間14,000t
ペレット原料オガ粉年間35,000t
発電出力 : 800kW(FITで売電(年間フル稼働で日
本の場合1400世帯分))
熱出力 : 3,200kW(ペレット原料乾燥用)
ペレット生産能力 : 年間最大35,000t
施設整備費 : 1,300万€(約17億円)
稼動開始:2011年
従業員数 : 10名
出資 : Wunsiedel市エネルギー会社が50%以上、
地元製材会社(年間丸太取扱量25万㎥)、
German Pellet社(ペレット商社)、その他
•Wunsiedel市(人口1万人)の市主体のエネルギー供給施設。
•100年前から市がエネルギー供給会社を運営。CO2削減、
脱原発、地域の産業振興を目的に、エネルギーの地産地
消に挑み、2020年に熱100%自給、電力120%生産を目指す。
•ペレット工場のインフラとしてORC発電設備を導入
•域内の3か所のサテライトCHPプラントでペレットを活用した
地域熱供給、電力供給も実施。 28
Wun-Bioenergieの事業の全体像
29
出典:Wun-Bioenegie 資料
発電用チップ
(チップ取引価格)
良質なチップ : 83ユーロ/t(絶乾)
バーク : 62ユーロ/t(絶乾)
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• 森林整備の現場から出る低質材や
枝葉を含む未利用部分を活用
• サイズ、形状の制限の幅も広い
• プレーナー屑や背板など製材由来
の木材はペレット原料として活用
サテライト式のバイオマスガス化発電施設
(市内に3ヶ所)
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・ガス化発電設備で製造した電気と熱は近隣の100世帯に供給
・冬場はペレットボイラ併用
(今後は併設中の2基目のガス化設備で供給)
木質バイオマスのメインは“熱利用”
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国内ではFIT施行以降、木質バイオマス発電が急速に普及。
しかしながらエネルギー効率、資源の有効活用、気候変動対策、エネル
ギーコストの面からも木質バイオマスは電気よりも熱利用を優先して考
えていくべき。
 発電の場合、木質バイオマスの持つエネルギーの2、3割しか利用で
きないが、熱利用の場合は9割のエネルギーが利用可能。
 限られた資源をエネルギーとして有効に活用するには熱の方が有利。
 エネルギー効率が高い分、CO2排出削減効果も高い。石油由来の熱
利用の代替の場合はその効果はさらに大きい。
 発電の場合は化石燃料、他の再生可能エネルギーと比較したコスト
優位性が得られにくいが、熱利用の場合はコスト優位性が高い。
EUにおける最終エネルギー消費(2015年)
33
出典:欧州委員会「Renewable Energy Progress Report 」
EUにおける再エネ種別熱・電力消費(2015年)
34出典:欧州委員会「Renewable Energy Progress Report 」
(再エネ熱利用)
(再エネ電力利用)
• FIT程の手厚い支援がない中でもバイオマスボイラは世界
で普及。
• 設備費の割高な日本国内でも、バイオマスボイラの導入に
よりエネルギーコスト低減などコストメリットを得られている
事例は多々ある。
• イギリスのRHI等をみても、バイオマス熱に対する支援額は
他の再エネ熱よりも安い(ボーナスが下がっても導入が伸
びている)
バイオマス熱利用はコスト的にも有利
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高性能で利便性も高い最近のバイオマスボイラ
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 コンピューターによる自動制御
 ラムダセンサによるきめ細かな燃焼制御
 非常に高いボイラ効率
 日々のクリーニング等も自動で、
 一定規模・条件以下は有資格者の選任
が必要ない
 ユニットのため設置性が良好
出典:ETA社カタログ
わが国の木質バイオマスボイラの導入数
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日本での木質バイオマス熱エネルギーサービスの国内先進事例
紫波町(岩手県紫波郡紫波町)
(施設概要)
事業主体 :紫波グリーンエネルギー株式会社
総事業費:約5億円
稼動開始 :2014年7月
年間チップ消費量 :1,000t
年間目標熱供給量 :1,121,328 kWh
•熱供給先は紫波町(人口3万人)の町内公共施設
及び住宅57軒
•エリア内に熱供給施設(エネルギーステーション)
を設け、ユーザーに対して暖房熱、冷房熱、給湯
熱を供給
•使用する木質バイオマスは町内より調達
•住宅について省CO2先導事業の対象になると設
備費用の補助金(上限137万)を交付
38写真:紫波グリーンエネルギー株式会社より
日本での木質バイオマス熱エネルギーサービスの国内先進事例
飛騨荘川温泉「桜香の湯」(岐阜県高山市)
(施設概要)
導入機器 :小型チップボイラ101kw×4基
事業主体 :株式会社 井上工務店
稼動開始 :2017年9月
年間チップ消費量 :416t
年間目標熱供給量 :1,121,328 kWh
•高山市(人口9万人)の市主体の温泉施設
•井上工務店がボイラを整備し、熱を高山市に供給し、
エネルギーサービス料金として、利用量に応じて精算
•落札時の契約単価は7.76円/kWh
•20年間の固定価格
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写真:高山市HPより
地域エネルギー会社がエネシフ・地方創生をけん引
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 再エネ導入により着実に地域効果を創出するために、
外部資本依存ではなく、地域主導の推進体制を構築
 地域主体とすることで、エネルギーコストの域外流出の
抑制だけでなく、域内で新たな経済循環・雇用を創出
 域内での再エネビジネスが普及することで、スキルアッ
プ・コストダウンも期待
 電力では地域新電力の取組が広がりつつある。熱も同
様に地域エネルギー会社の取組がみられ始めている。
 地域エネルギー会社が地域のエネルギーシフトを担う
ことで、地方創生をけん引
日本版シュタットベルケの取組推進
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出典:「平成29年版環境・循環型社会・生物多様性白書」
 ドイツでは地方のエネルギー・公共サービスの担い手と
してシュタットベルケ(エネルギー公社)が活躍。
 日本でも日本シュタットベルケネットワークが設立(平成
29年)
政策的にも地域エネルギー会社を推進
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欧州におけるエネルギー営林家
(営農家)の活躍
• 欧州ではバイオマスエネルギーの原料供給、加工などを本
業、あるいは副業的に取り組むエネルギー営林家(営農
家)が活躍
• 地域熱供給などエネルギー供給までをも担う林家、農家も
存在
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• 彼らは安定的な収入源をつくる
ために、自ら投資し事業を行っ
ている。
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エネルギー農家の発熱所(マイクロネットワーク)
➢ 化石燃料に依存している地方部程、今後エネルギー調達
が益々困難となり、やがて地域経済に直接的ダメージを与
える。
➢ 再エネシフトが地域としても求められる中、地域にあふれる
木質資源の活用を見過ごすのはもったいない。
➢ 特に熱エネルギーを中心としてバイオエネルギーに転換し
ていくことは、地域全体に多様な効果の広がりも期待できる。
➢ 誰がやるかが重要。地域の企業が行政とタッグを組んで、
これまで外部依存だったエネルギーサービスを内製化。経
済的な自立も促進しながら、将来に亘り持続可能な地域社
会づくりをバイオエネルギーの活用が支えていく。
将来の地域社会のために
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欧州でもバイオマス普及の意義が問われている
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ドイツではEEG法によるFITが木質バイオマス発電・熱電併給の普及を強力に後押しし、
劇的な効果を発揮したが、2014年の法改正以降、支援の幅が抑えられ導入数は横ば
い。
Reference: DBFZ, Stromerzeugung aus Biomasse (Vorhaben IIa Biomasse) 03MAP250,
Zwischenbericht Mai 2015
Steam turbineORC turbineGas
engine
Amount
other
再エネ電力を牽引する太陽光・風力
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図 ドイツの電力構成実積(2017年8月)
バイオマスはベースロード電源として
使われる技術ではない。
(ドイツバイオマス研究センター)
出典:Fraunhofer ISE「energy chart」
出典:DBFZ レンツ氏講演資料
The Smart Bioenergy Concept
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ドイツバイオマス研究センター(DBFZ)が掲げるビジョン。他の再エネといか
に効果的にバイオマスエネルギーを組み合わせていくか。
≪トレファクションペレットを利用した500Wのガス化マイクロCHPの開発≫
・エネルギー密度の高いトレファクションペレットを活用。
・細やかな制御が可能で、5秒間の間に出力を20%から100%まで制御可能。
・燃料のインフラも含め、2025年から2030年の実用化を見据え、バイオマス由来
電力のフレキシビリティを伸ばしていく。
・日本の森林総合研究所と連携。
出典:森林総合研究所資料
地域振興に確実な効果を上げてきた
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図 バイオマスエネルギーによる地域効果
出典:オーストリアバイオマス協会パンフレット
欧州諸国では、木質バイオマスエネルギーの取組が地域の過疎対策、
経済振興にも確実な効果を上げてきている。

木質バイオマスによる地域のエネルギー改革と地域振興P