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バイオマス研究レポート Vol.2 (2015 年 11 月)
小規模木質バイオマス発電は40円/kWh により普及するのか
新設された小規模枠 40 円/kWh が大きな推進力となり普及が期待される小規模木質バイオマ
ス発電について、事業成立のポイントに触れるとともに、小規模ならではの特性を踏まえた推進
策のあり方について考えていく。
■売熱収入が事業成立のカギ
小規模発電の場合、発電効率の低さ、設備投資負担や固定費負担が割高といったことから、大
規模発電と比較すると事業性は著しく低下する。採算的に不利な小規模発電の事業成立の支えと
なるのが、電気とともに生じる排熱による売熱収入である。たとえば ORC システムの場合、下
図の通り、発電コストは 62.2 円/kWh となるが、売熱収入をコストから差し引くことで 26.5
円/kWh となり、40 円/kWh による売電収入があれば P-IRR(税引き前)も 8%と十分な事業
性が期待できる。小型蒸気タービンやガス化発電についても、よほど破格な条件での燃料調達で
もない限り、売熱収入が無ければ採算の確保は難しい。このように小規模木質バイオマス発電の
事業成立には売熱収入の確保は必須と言える。
図 ORC システム(1,000kWel)の発電コスト
10.4
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発電コスト
※熱収入勘案せず
発電コスト
※熱収入勘案
資本費 燃料費 運転維持費
単位:円/kWhel
売熱収入
35.7円/kWh
(熱利用率75%
・単価8.5円/kWh)
62.2円/kWh
26.5円/kWh
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■容易ではない売熱の事業構築
事業化の絶対条件となる売熱だが、買取価格、期間が補償される FIT 売電とは異なり、価格、
期間、性状、取合場所、計測方法、供給責任など至る条件が需給双方で協議の上の相対契約とな
る。売熱の契約条件については、資金調達(特にプロファイ)の際の金融機関からの厳しい審査
対象ともなり得る。また倒産リスク、燃料リスクをはじめ、双方で抱えるリスクも少なくなく、
そうした対策からは、資本関係構築など上下流運命共同体となるスキーム構築が求められる。
そもそも発電事業構想ありきで後から熱供給先を見つけるのは至難の業である。特に ORC や
ガス化の排熱は温水が基本であり、まとまった需要の期待される産業用熱プロセスでは主体が蒸
気であるわが国で、低温熱の利用先のマッチングを図るのは容易ではない。望ましいのはプロシ
ューマー的発想で、熱需要側からスタートし、事業構築を行うことである。
■「未利用木材:40 円/kWh」は小規模事業の実態に即した有効策となっているか
ここで今回の小規模枠の買取条件について問題提起したい。小規模枠の燃料対象が「未利用木
材」に限定されていることだ。ごく小規模帯で期待のガス化発電は燃料に乾燥チップや良質なペ
レットを求める。例えば欧州では EN Plus A1 と呼ばれる水分、灰分などが規定された良質なホ
ワイトペレットなどがこうした小規模ガス化では用いられる。こうした燃料は、通常、製材端材
であるプレーナー屑やオガコ等を利用することで、コストを抑えて製造される。しかしながらわ
が国の FIT 制度の区分によると、そのようにして作ったペレットは「一般木材」に区分され、規
模に拘らず 24 円/kWh が適用される。小規模区分の 40 円/kWh に適用させようと思うと、間
伐材等の未利用木材を、コストをかけて集荷、加工して燃料を製造する必要があり、その結果、
割高なペレットとなってしまい、採算性は到底期待できない。
一方、排熱が電力の数倍発生し、かつ FIT 売電とは異なり売熱の単価は燃料区分に依存しない
ことを踏まえると、割高な未利用木材ではなく、安価な燃料による事業形成を図る方がメリット
が出るケースも想定される。たとえば下図に ORC システムの燃料種別の収支比較を示す。40 円
/kWh 対象の未利用木材(10,000 円/t)による事業よりも、24 円/kWh 対象の安価な一般木
材(5,000 円/t)を用いた方が事業性が高いことが確認できる。“40 円/kWh”という割高な買
取条件に惑わされることなく、慎重な燃料選択を行うことが賢明である。
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未利用木材モデル 一般木材モデル
売電単価 40 円/kWh 373,414 千円
燃料単価(チップ) 10,000 円/t 5,000 円/t
年間売上 473,382 千円/年 373,414 千円/年
年間費用 400,983 千円/年 278,493 千円/年
営業利益 72,400 千円/年 94,922 千円/年
P-IRR(税引き前) 7.1% 8.1%
図・表 燃料種による単年度収支比較(ORC1,000kW)
■小規模発電ではなく“小規模コジェネ”の推進策が必要
小規模発電で事業を成立させるためには熱電併給、コジェネレーションが必須となる。これは
普及が進む欧州でも基本原則となっている。しかし今回触れたとおり、熱供給は契約面、技術面
での課題も多く、かつ 40 円/kWh をもってしても燃料コストも踏まえた採算確保のハードルは
なお高い。一方、小規模コジェネレーションは木の持つエネルギーを無駄なく利用でき(総合効
率 80~90%)、CO2 削減効果も非常に高く(同規模の太陽光発電の約 20 倍)、熱利用も含めて
地域社会への高い効果が期待される。こうした効果に鑑み、これからの木質バイオマス発電は小
規模発電推進ではなく“小規模コジェネ”に特化した支援措置を講じていくべきである。
支援策としては、①FIT における小規模コジェネ推進、②再エネ熱利用支援制度との併用、③
低温熱利用の技術開発・普及促進、また④熱利用 FIT 制度の設立といったことが考えられる。①
については具体的に、〇熱利用率に応じた内部消費の取り扱いの見直し(欧州に倣い売電対象を
発電端とする)、〇40 円/kWh の対象を一般木材まで拡充、〇熱利用率に応じたプレミア価格の
上乗せといった策が有効と考える。環境効果が高く、地域経済振興、農山村活性化にも期待の高
い小規模バイオマスコジェネを推進していくためには、その事業特性を踏まえ、制度設計の柔軟
な軌道修正が望まれる。
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売上 支出 売上 支出
(百万円/年)
売電収入 売熱収入 資本費
燃料費 運転維持費
未利用木材モデル 一般木材モデル

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バイオマス研究レポート Vol.2 「小規模木質バイオマス発電は40円/kWh により普及するのか」

  • 1. 1 Copyright © 2015 Biomass Aggregation All Rights Reserved. バイオマス研究レポート Vol.2 (2015 年 11 月) 小規模木質バイオマス発電は40円/kWh により普及するのか 新設された小規模枠 40 円/kWh が大きな推進力となり普及が期待される小規模木質バイオマ ス発電について、事業成立のポイントに触れるとともに、小規模ならではの特性を踏まえた推進 策のあり方について考えていく。 ■売熱収入が事業成立のカギ 小規模発電の場合、発電効率の低さ、設備投資負担や固定費負担が割高といったことから、大 規模発電と比較すると事業性は著しく低下する。採算的に不利な小規模発電の事業成立の支えと なるのが、電気とともに生じる排熱による売熱収入である。たとえば ORC システムの場合、下 図の通り、発電コストは 62.2 円/kWh となるが、売熱収入をコストから差し引くことで 26.5 円/kWh となり、40 円/kWh による売電収入があれば P-IRR(税引き前)も 8%と十分な事業 性が期待できる。小型蒸気タービンやガス化発電についても、よほど破格な条件での燃料調達で もない限り、売熱収入が無ければ採算の確保は難しい。このように小規模木質バイオマス発電の 事業成立には売熱収入の確保は必須と言える。 図 ORC システム(1,000kWel)の発電コスト 10.4 26.5 37.2 14.6 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 発電コスト ※熱収入勘案せず 発電コスト ※熱収入勘案 資本費 燃料費 運転維持費 単位:円/kWhel 売熱収入 35.7円/kWh (熱利用率75% ・単価8.5円/kWh) 62.2円/kWh 26.5円/kWh
  • 2. 2 Copyright © 2015 Biomass Aggregation All Rights Reserved. ■容易ではない売熱の事業構築 事業化の絶対条件となる売熱だが、買取価格、期間が補償される FIT 売電とは異なり、価格、 期間、性状、取合場所、計測方法、供給責任など至る条件が需給双方で協議の上の相対契約とな る。売熱の契約条件については、資金調達(特にプロファイ)の際の金融機関からの厳しい審査 対象ともなり得る。また倒産リスク、燃料リスクをはじめ、双方で抱えるリスクも少なくなく、 そうした対策からは、資本関係構築など上下流運命共同体となるスキーム構築が求められる。 そもそも発電事業構想ありきで後から熱供給先を見つけるのは至難の業である。特に ORC や ガス化の排熱は温水が基本であり、まとまった需要の期待される産業用熱プロセスでは主体が蒸 気であるわが国で、低温熱の利用先のマッチングを図るのは容易ではない。望ましいのはプロシ ューマー的発想で、熱需要側からスタートし、事業構築を行うことである。 ■「未利用木材:40 円/kWh」は小規模事業の実態に即した有効策となっているか ここで今回の小規模枠の買取条件について問題提起したい。小規模枠の燃料対象が「未利用木 材」に限定されていることだ。ごく小規模帯で期待のガス化発電は燃料に乾燥チップや良質なペ レットを求める。例えば欧州では EN Plus A1 と呼ばれる水分、灰分などが規定された良質なホ ワイトペレットなどがこうした小規模ガス化では用いられる。こうした燃料は、通常、製材端材 であるプレーナー屑やオガコ等を利用することで、コストを抑えて製造される。しかしながらわ が国の FIT 制度の区分によると、そのようにして作ったペレットは「一般木材」に区分され、規 模に拘らず 24 円/kWh が適用される。小規模区分の 40 円/kWh に適用させようと思うと、間 伐材等の未利用木材を、コストをかけて集荷、加工して燃料を製造する必要があり、その結果、 割高なペレットとなってしまい、採算性は到底期待できない。 一方、排熱が電力の数倍発生し、かつ FIT 売電とは異なり売熱の単価は燃料区分に依存しない ことを踏まえると、割高な未利用木材ではなく、安価な燃料による事業形成を図る方がメリット が出るケースも想定される。たとえば下図に ORC システムの燃料種別の収支比較を示す。40 円 /kWh 対象の未利用木材(10,000 円/t)による事業よりも、24 円/kWh 対象の安価な一般木 材(5,000 円/t)を用いた方が事業性が高いことが確認できる。“40 円/kWh”という割高な買 取条件に惑わされることなく、慎重な燃料選択を行うことが賢明である。
  • 3. 3 Copyright © 2015 Biomass Aggregation All Rights Reserved. 未利用木材モデル 一般木材モデル 売電単価 40 円/kWh 373,414 千円 燃料単価(チップ) 10,000 円/t 5,000 円/t 年間売上 473,382 千円/年 373,414 千円/年 年間費用 400,983 千円/年 278,493 千円/年 営業利益 72,400 千円/年 94,922 千円/年 P-IRR(税引き前) 7.1% 8.1% 図・表 燃料種による単年度収支比較(ORC1,000kW) ■小規模発電ではなく“小規模コジェネ”の推進策が必要 小規模発電で事業を成立させるためには熱電併給、コジェネレーションが必須となる。これは 普及が進む欧州でも基本原則となっている。しかし今回触れたとおり、熱供給は契約面、技術面 での課題も多く、かつ 40 円/kWh をもってしても燃料コストも踏まえた採算確保のハードルは なお高い。一方、小規模コジェネレーションは木の持つエネルギーを無駄なく利用でき(総合効 率 80~90%)、CO2 削減効果も非常に高く(同規模の太陽光発電の約 20 倍)、熱利用も含めて 地域社会への高い効果が期待される。こうした効果に鑑み、これからの木質バイオマス発電は小 規模発電推進ではなく“小規模コジェネ”に特化した支援措置を講じていくべきである。 支援策としては、①FIT における小規模コジェネ推進、②再エネ熱利用支援制度との併用、③ 低温熱利用の技術開発・普及促進、また④熱利用 FIT 制度の設立といったことが考えられる。① については具体的に、〇熱利用率に応じた内部消費の取り扱いの見直し(欧州に倣い売電対象を 発電端とする)、〇40 円/kWh の対象を一般木材まで拡充、〇熱利用率に応じたプレミア価格の 上乗せといった策が有効と考える。環境効果が高く、地域経済振興、農山村活性化にも期待の高 い小規模バイオマスコジェネを推進していくためには、その事業特性を踏まえ、制度設計の柔軟 な軌道修正が望まれる。 250 150 223 223 65 65 245 122 91 91 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 売上 支出 売上 支出 (百万円/年) 売電収入 売熱収入 資本費 燃料費 運転維持費 未利用木材モデル 一般木材モデル