Japanese
- 1. 3. マスメディアは何らかの偏見をもっていて、必ずしも真実を伝えていないと、よく非
難されます。この意見について、学習した内容から具体例をあげて、考えるところを述べな
さい。( 09 HL )
情報化社会が進む現在、人々は情報の大半をマスメディアから入手している。マスメディ
アとは、新聞社やテレビ局、出版社などから発信される広く公共に影響力を持つ情報伝達媒
体のことである。しかし、情報提供を役割とするマスメディアは何らかの偏見を持ち合わせ
ており、必ずしも真実を伝えていないと、しばしば非難を受けている。果たしてマスメディ
アによる報道は、人々に真実をつたえているのであろうか、これについて考察したい。
メディアの中で最も高い信憑性があると考えられている新聞でも、偏見に基づいた捏造
ややらせが行われている。たとえば、西表島のサンゴ礁につけられた傷を、
「ダイバーによ る
自然破壊」と朝日新聞は取り上げたが、実際は朝日新聞のカメラマンが無傷のサンゴに傷を
つけた「捏造」であった。これは、「ダイバーは自然破壊をしている」という偏見が引き起こし
た捏造である。加えて新聞では、特に市民の視点で批判的な記事を書く社会部による偏見報
道がよくみられる。たとえば、朝日新聞の社会部による小沢氏の強制起訴の記事では、小沢
氏が容疑者であるという前提で、市民による小沢氏を批判する主観的な意見のみが取り入
れられており、客観的な視点で小沢氏を支持する記事はなく、小沢氏に対する不信感のみが
記されている。このようにある偏見に基づいた一方的な意見のみを報道し、他の意見をもつ
者もあるという事実は隠蔽されている。
更に、インパクトのある音声や映像で人々に情報提供を行うテレビ報道も、新聞同様に偏
見に基づいた捏造ややらせが行われており、全ての内容が事実を放送しているわけではな
い。たとえばドキュメンタリーでは、企画の段階でまず仮説を立ててから、それに沿って全
ての内容がつくられる。それゆえに、仮説に合った映像のみを使用するため、事実の隠蔽や
虚実の報道が行われている。イルカの追い込み漁を批判的に描いたドキュメンタリー映画
「ザ・コーヴ」はその例として挙げられる。映画内で、イルカが殺される現場を目撃した
女性ダイバーが、イルカ漁の残虐さを涙ながらに語るシーンがあるのだが、実際は
このシーンは全てイルカ漁をより批判的に見せるための「やらせ」であり、女性はた
だ泣く演技を行っていただけであった。より強いインパクトを視聴者に与えるため
にも、ありもしない事実を作り出す、捏造ややらせが繰り返されているのである。
人々へ情報提供を行うマスメディアは、客観的な視点を持ち、事実を伝えていると一概に
は言えない。であればこそ人々はそのことを常に自覚している必要があり、そして真実を判
断するためにも、人々にはメディア・リテラシーすなわちメディアを批判的に読みとる能力
が必要不可欠とされる。