避難時の自己判断を支援する最適なユーザーインターフェースとは～スマホ用避難ナビおよびVRハザードマップの開発と実証活動～

愛知工科大学工学部
情報メディア学科
板宮朋基
Tomoki ITAMIYA,Ph.D.
itamiya@g.aut.ac.jp
2015年1月21日地図調製技術協会技術研修会

人は避難しない生き物
「目覚めさせる」には、
◦シンプルな情報
○か×か
◦直感的な情報
誤解の余地がない
Copyright © 2014 Tomoki Itamiya All Rights Reserved.

 なぜ津波から逃げ遅れたのか？
◦ 避難の必要性を感じていなかった
 情報不足、認識不足
◦ 家族の安否を確認していた
 自宅に迎えに戻った等
◦ 物理的に逃げられなかった
 お年寄り、足の不自由な方等
◦ 渋滞にはまってしまった
 情報不足、車を捨てることへの躊躇

出典：中央防災会議東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会第７回会合

津波警報を見聞きしても
１７％の人は避難の必要
性を感じていなかった

経験の逆機能
「災害文化」の非適応的
機能（安全神話）
出典：東日本大震災第三者検証委員会報告書
―宮城県名取市閖上地区の検証―

 各種警報・情報
 ハザードマップ
 要避難者が行動を起こさなければ、意味がない

？
情報の提供側と受け取る側の意識の格差

情報を受け取り、自己判断し、行動を起こす
最適なインターフェースが必要

いかに危機感を抱かせるか
その手段とは
◦伝達方法
 表示方法
 インターフェース

 避難経路に正解は存在しない
◦ 平時の最短経路や方向を示すだけでは不十分
 行くべきでない方向を明示する
◦ リスクはスコア化できる
◦ リスク方向をNGとして明示
◦ 最後は自己判断

スマートフォン・カーナビ
（ＧＰＳ付携帯端末）スマホのカ
メラで撮って
いる映像に
「この先危
険！」と「推
奨経路の矢
印」を重ね
て表示
「危険な進行方向」に
立ち入った場合は音声
と振動でも警告
特許第4902899号
特許第4961505号
特許第4923158号
実測データ
数値予報
シミュレーション
万
が
一
の
際
に
「
危
険
な
進
行
方
向
」
を
携
帯
端
末
に
知
ら
せ
る
仕
組
み
で
す
ク
ラ
ウ
ド
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク

「危険な
進行方
向」に立
ち入った
場合は音
声と振動
でも警告

 第一回実験：2012年9月10～１１日
◦ 土地勘がない大学生２５名を対象
◦ 平野部（入野地区）の昼・夜、リアス部（佐賀地区）の昼に実施
 第二回実験：2013年３月１～２日
◦ 地元住民（26歳～87歳）を１１名対象にした避難行動実験（入野地区・昼）
◦ エリアワンセグ放送と併用（アンテナとカメラを町内3ヶ所に設置）
◦ 車による避難行動実験
黒潮町

9/10 入野地区（平野部）昼・夜
高知県黒潮町における第一回実証実験結果１
昼の部の結果
最早：スマホ４番 28分20秒
最遅：なし2番 35分45秒
最早と最遅の差： 7分25秒
（「なし」は指定ルートを知らない）
夜の部の結果
最早：スマホ1番 24分30秒
最早と最遅の差：15分23秒
(昼と夜の参加者は別)
指定ルート距離 2.1km
高低差 35m

9/11 佐賀地区（リアス式海岸）昼
最早：スマホ2番 16分5秒
最早と最遅の差：14分30秒
(参考：なし3番 10分38秒)
高知県黒潮町における第一回実証実験結果２
指定ルート距離 1.5km
高低差 35m

二回の実証実験を踏まえた課題
• 避難ナビは、土地勘がない者には有効
– 地元の人にも、発災時危険区域を知らせる効果はあり
– 避難経路を提示することの問題点
• 技術的な問題（人口過密地域における運用の実現性）
• 責任の所在問題（法的免責事項の設定が必要）
• エリア放送によるライブ情報提供は、迅速な避難行動を促進
– 自分の周りのリアルタイム情報は説得力あり
– アンテナ・カメラ設置の必要経費が高い
• スマートフォンの非常時の利用は、課題が多い
– 電池の持ち具合、タッチパネルの誤操作、アプリの動作信頼性等
• 車避難は、避難路整備、信号システム等ハード面での課題が多い
• 地域ごと、街ごと、対象者ごとに適切なシステムは異なる

全ての人が地図を
読みこなせるのか？

「地図を読む」
「体感する」

 愛知工科大学の大型ドライビングシミュレーター
◦ 高度交通システム（ITS）研究所
文部科学省「平成20年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の
補助を受け設置されました

愛知県警蒲郡警察署
署員による体験・評価
ドライビングシミュレーターによる津波・冠水体感

愛知県額田郡幸田町消防本部
消防署員による体験・評価

愛知県蒲郡市役所安心安全課
防災支援監による体験・評価

持ち運んでうちの
ところで体験でき
ないですか？

Oculus Rift DK2 約４万円

（株式会社ゼンリンの3Dモデルデータ「Japanese Otaku City」を使用しています）

「百聞は一見に如かず」
 地図や文字情報ではなく、「体感」で伝える
 防災教育・情報共有の新しい手段
 機器やソフトの進歩により、自ら作成可能

 はじめに
◦ なぜ津波から逃げ遅れたのか
◦ ミッシングリンク
 スマホ用避難ナビ
◦ ２回の実証実験
 VR（人工現実感）ハザードマップ
◦ 大型ドライビングシミュレータ
◦ ヘッドマウントディスプレイ利用
◦ スマートフォン利用
まとめ

システムの実用化・改良
皆様方とのコラボレーション

避難時の自己判断を支援する最適なユーザーインターフェースとは～スマホ用避難ナビおよびVRハザードマップの開発と実証活動～

Recommended

Recommended

More Related Content

Recently uploaded

Recently uploaded (9)

Featured

Featured (20)

避難時の自己判断を支援する最適なユーザーインターフェースとは～スマホ用避難ナビおよびVRハザードマップの開発と実証活動～