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- 1. マルチパスのGNSS位置捕捉精度に与える影響 1 平成30年9月13日 電子情報通信学会 ソサイエティ大会 ◎篠崎 蓮† 辰口 尚† 小熊 博† 山形 文啓‡ 亀田 卓†† 末松 憲治†† 富山高等専門学校† 釧路高等専門学校‡ 東北大学††
- 2. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 2 発表内容 1.研究背景 2.測定方法 3.結果および考察 4.まとめ
- 3. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 3 1.1 研究背景 位置情報 GNSS 携帯通信基地局 大セルと小セルが重畳した異種無線融合システムにおける 位置情報を用いた信号品質マップによる選択手法[1] 小セル 大セル 近年，携帯電話などモバイル端末の普及により通信トラフィック量が増加 提案手法 位置と小セル情報を持つMAPを作成 モバイル端末は位置情報を 送信接続先候補を受信 最適なネットワークへの接続 モバイル端末 送信：小セル情報 端末の位置情報 受信：接続先候補 無線通信利用者が多い都市部における導入を想定 高精度な位置情報を得ることが重要 [1]H. Oguma et al., “Channel Quality Map Construction Scheme using Location Information for Heterogeneous Wireless Network,” Studies in Science and Technology Vol.4, No. 1, pp. 83-90, 2015. 信号品質MAPサーバ ・信号品質情報の収集 ・信号品質マップの作成
- 4. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 0 2 4 6 8 10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 SVF：95.3% SVF：39.0% Visible satellite of GPSCumulativeprobability 4 1.2 課題 低天空率 → 建造物によるマルチパスの影響 天空率に着目して測定・評価[2] [2]篠崎蓮, 小熊博 他, “種々の天空率条件下のGPS/BeiDouの位置捕捉精度”, 電子情報通信学会総合大会,2018. GPSの位置捕捉精度の累積確率 0 10 20 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Positioning accuracy of GPS[m] Cumulativeprobability SVF：95.3% SVF：39.0% SVF：Sky View Factor GPSの可視衛星数の累積確率 天空率：上空で天空が占める割合 各地点における天空率 39.0% 95.3% 1.0m 5.9基 7.2基 4.6m
- 5. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 5 1.3 研究目的 マルチパスがGNSS位置捕捉精度に 与える影響の評価と最適な仰角マスクの設定 統計的処理 実環境と同等な天空率の疑似環境において測定・比較 ・位置捕捉精度 ・可視衛星数 マルチパスが測位に与える影響について評価 精度向上を目的としたマスクの設定 疑似環境：オープンスカイにおいて仰角マスクをかけた環境
- 6. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 6 2.1 仰角マスクと天空率 天空率：上空を魚眼レンズで撮影した画像領域内で天空が占める割合 →仰角マスクを指定したときの円の面積も天空率と同等 天空率 疑似 % = 𝟗𝟎° − 𝒙° 𝟐 𝟗𝟎° 𝟐 × 𝟏𝟎𝟎 𝒙° ：仰角 39.0% 95.3% 仰角30度 仰角35度 44.4 37.3 仰角マスクの表現 各地点における上空画像 各仰角における天空率[%] 39.0% → 仰角33.8度
- 7. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 7 2.2 測定条件 • 測定方法：単独測位 • 測定対象：GPS • 測定時間：6時間 • 使用機器：SCR-u2C（センサコム社） • 受信ソフト：RTKLIB • 測定環境 図書館ライトコート 実環境（天空率：39.0%） 屋上 疑似環境（天空率：44.4%，37.3%） 1m アンテナ GNSSレシーバ 実環境（39.0%） : 仰角マスク0度 疑似環境（44.4%） ： 仰角マスク30度 疑似環境（37.3%） ： 仰角マスク35度 実環境 ： 仰角マスク0度 実環境 ： 仰角マスク20度 実環境 ： 仰角マスク30度 測定① 測定②マルチパスの影響 最適な仰角マスクの設定
- 8. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 8 位置捕捉精度 実環境と疑似環境の位置捕捉精度 位置捕捉精度の中央値[m] 実環境における位置捕捉精度が最悪値 0 10 20 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Positioning accuracy[m] Cumulativeprobability 疑似環境：30度 疑似環境：35度 実環境 仰角30度 仰角35度 実環境 中央値 1.32 1.65 3.55 実環境と疑似環境での測定・比較 目的：実環境におけるマルチパスの影響を評価 測定①3.1
- 9. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 9 可視衛星数 実環境と疑似環境の可視衛星数 可視衛星数の中央値[基] 0 5 10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Visible satellite Cumulativeprobability 疑似環境：30度 疑似環境：35度 実環境 仰角30度 仰角35度 実環境 中央値 4.7 4.6 7.3 疑似環境での可視衛星数に差はほぼない 実環境での可視衛星数が最多 測定①3.2
- 10. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 10 考察 実環境・疑似環境における測位 仰角30度 仰角35度 2.23 1.90 実環境との差[m] 仰角30度 仰角35度 -2.6 -2.7 実環境との差[基] 実環境：39.0%におけるマルチパス 実環境 3.55 実環境 7.3 実環境が約2.6基可視衛星数が多い →マルチパスを含む衛星を測位に使用 位置捕捉精度 可視衛星数 ※実環境と疑似環境の差がマルチパスの影響 測定①3.3 （疑似環境 – 実環境） 約2mの位置捕捉精度の低下 天空率が増加 位置捕捉精度の向上，可視衛星数の増加
- 11. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 11 各パラメータの比較 0 10 20 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 実環境：0度 実環境：20度 実環境：30度 Positioning accuracy[m] Cumulativeprobability 仰角0度 仰角20度 仰角30度 中央値 3.55 3.67 3.86 実環境において仰角マスクを変更して測定 仰角マスク変化させたときの位置捕捉精度 位置捕捉精度の中央値[m] 目的：建物のある範囲を仰角マスクで除外しマルチパスを低減 0 2 4 6 8 10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 実環境：0度 実環境：20度 実環境：30度 Visible satellite Cumulativeprobability 仰角マスク変化させたときの可視衛星数 可視衛星数の中央値[基] 仰角0度 仰角20度 仰角30度 中央値 7.3 6.4 5.4 測定②3.4
- 12. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 12 考察 1. 可視衛星が減少 2. マルチパスの影響が小さい衛星からの信号を遮断 3. 位置捕捉精度が低下 仰角0度 仰角20度 仰角30度 中央値 3.55 3.67 3.86 位置捕捉精度の中央値[m] 可視衛星数の中央値 仰角0度 仰角20度 仰角30度 中央値 7.3 6.4 5.4 実環境において仰角マスクを変更して測定 目的：建物のある範囲を仰角マスクで除外しマルチパスを含む衛星数を減らす • 可視衛星数の減少を確認 • 位置捕捉精度は向上せず 可視衛星数とマルチパスのトレードオフを考慮 測定②3.5
- 13. Oguma Lab., National Institute of Technology , Toyama College. 13 4. まとめ 実環境：39.0%におけるマルチパス 仰角0度 仰角20度 仰角30度 中央値 3.55 3.67 3.86 位置捕捉精度の中央値[m] • 可視衛星数の減少 →マルチパスの影響が小さい衛星からの 信号を遮断 仰角30度 仰角35度 -2.6 -2.7 実環境 ・疑似環境の可視衛星数の差[基] • 実環境：39.0%では約2.6基のマルチパスを含む衛星を測位に使用 実環境と疑似環境において測定・比較 精度向上を目的としたマスクの設定 可視衛星数とマルチパスのトレードオフ マルチパスがGNSS位置捕捉精度に 与える影響の評価と最適な仰角マスクの設定 約2mの位置捕捉精度の低下
Editor's Notes
- まず、研究背景です。現在は携帯電話などのモバイル端末の普及により通信トラフィックが増加し続けています。そのため、小セルと大セルが重畳した異種無線融合システムが求められています。そこで、我々が提案しているのが衛星測位システムから得られる位置情報を用いた信号品質マップによる選択手法です。これは、位置情報から最適なネットワークの選択を行うものです。この手法は無線通信利用者が多い都市部における導入を想定しており、衛星測位システムから高精度な位置情報を得ることが重要となります。
- 課題です。 これまでは、天空率に着目してGNSSの位置捕捉精度について測定を行ってきました。 こちらのグラフは天空率95.3%地点と39.0%地点の位置捕捉精度の累積確率を示しています。中央値で見ると、39.0%地点では4.6mで95.3%地点では1.0mとなっています。 よって、天空率の現象に伴って、位置捕捉精度が低下していることがわかります。位置捕捉精度の低下は、こちらの図のようにマルチパスが影響し、直線距離の算出を行えなかったことが影響していると考えられます。 低天空率ということは建造物によるマルチパスの影響も考えられることからこちらの評価も必要であるという課題がありました。
- 研究目的です。 本研究の目的は、マルチパスがGNSS位置捕捉精度に与える影響の評価を行うことです。 まず、実環境と疑似環境において測定を行い統計的処理を施すことで位置捕捉精度と可視衛星数について比較します。そして、マルチパスが測位に与える影響について評価を行います。 また、精度向上を目的としたマスクの設定についての検討を行います。
- 次に仰角マスクによる天空率の算出についてです。我々は、天空率を上空を魚眼レンズで撮影した画像領域内で天空が占める割合と定義しています。仰角マスクはこちらの図に示すように円で表現されます。よって、仰角マスクを指定したときの円の面積も天空率と同等と考えることができます。したがって、仰角マスクによる擬似的な天空率はこちらの式のように定義します。 天空率39.0%は仰角マスク33.8度で実現することが可能ですが、ソフトの関係上5度刻みとなるため、こちらのオープンスカイな地点において仰角マスクを30度にすることで44.4%、35度にすることで37.3%の疑似天空率としました。
- 測定条件です。 ・・・・・・・・ 測定環境です。図書館ライトコート、天空率39.0%地点を実環境、屋上にて仰角マスクを設定した環境を疑似環境とします。 測定①は、同等の天空率において比較を行います。 測定②は、実環境において仰角マスクをかけることで精度が向上するか評価します。
- まず、測定①の結果について報告します。 目的は、実環境におけるマルチパスの影響を評価することです。 こちらのグラフは、実環境と疑似環境の位置捕捉精度の累積確率を示しています。黒が・・・・・・・・・・。 こちらの表に示すように、中央値で見ますと、仰角30度では1.32m、仰角35度では1.65m、実環境では3.55mで実環境における位置捕捉精度が最悪となっていました。
- 次に可視衛星数について報告します。 こちらのグラフは実環境と疑似環境における可視衛星数の累積確率を示しています。 中央値についてみると、仰角30度、35度の疑似環境では約4.6基でほとんど差がありませんが、実環境が最多で7.3基となっています。
- 位置捕捉精度と可視衛星数の中央値を基に考察を行います。 天空率が増加するにつれて位置細高精度が向上し、可視衛星数が増加します。それらを踏まえると、実環境と疑似環境の差がマルチパスの影響であると考えられます。 まず、位置捕捉精度についてです。実環境では、3.55mで、実環境との差は、仰角30度では2.23m、35度では1.9mでした。よって、実環境において1.9mから2.23mの間でマルチパスの影響で精度が低下したことがわかります。 次に、可視衛星数についてです。実環境では、7.3mで、実環境との差は、仰角30度では2.6基、35度では2.7基でした。よって、実環境が約2.6基可視衛星数が多く、マルチパスを含む衛星を測位に使用したことで精度が低下したと考えられます。
- 続いて測定②の結果を報告します。 目的は、建物のある範囲を仰角マスクで除外しマルチパスを低減することです。 まず、左側のグラフが実環境で仰角マスクを変化させたときの位置捕捉精度となっています。黒が・・・・・・・・・・・。 中央値で見ると、仰角マスク0度では3.55m、20度では3.67m、30度では3.86mとなっています。 次に右側のグラフが可視衛星数の累積確率となっています。 中央値で見ると、0度では7.3基、20度では6.4基、30度では5.4基となっています。
- こちらの表に示す各パラメータの中央値を基に考察を行います。 測定②の目的は、建物のある範囲を仰角マスクで除外しマルチパスを含む衛星数を減らすことでした。 仰角マスクを大きくすることで可視衛星数の減少を確認できました。 しかし、位置捕捉精度は向上しませんでした。 理由としては、可視衛星数が減少し、マルチパスの影響が小さい衛星からの信号を遮断してしまったことで位置捕捉精度が低下したと考えられます。 よって、可視衛星数とマルチパスのトレードオフであることがわかります。 したがって、低天空率下においてはこのトレードオフを考慮した対策が必要であることが言えます。
- まとめです。 本研究の目的は、マルチパスがGNSS位置捕捉精度に与える影響の評価を行うことでした。 実環境と疑似環境において測定・比較を行うことで、天空率39.0%地点においてはマルチパスの影響で1.9mから2.23mの範囲で精度が低下することがわかりました。約2.6基のマルチパスを含む衛星を測位に使用したからと考えられます。 次に精度向上を目的としたマスクの設定については、位置捕捉精度は、仰角マスクを大きくするにつれて低下するという結果でした。可視衛星数の減少に伴い、マルチパスの影響が小さい衛星からの信号を遮断したことが影響していると考えられます。よって、可視衛星数とマルチパスはトレードオフの関係にあることがわかりました。