Presentation at the Natsume Science Cafe in 2017, held on Nov. 1,2017, at Tokyo. Examining differences among the melting speeds and melt water temperatures of ice floating at surfaces of fresh water, sea water, and salt saturated solution. Include explanations on the melting mechanism of ice and snow with salt grain, sea water property, the density stratification in the ocean, the great conveyor belt, and the double diffusion convection.

1. なつめサイエンスカフェ2017
[大気と水][塩水と氷]のおもしろ実験
2017年11月1日
ナリカ(株)サイボックス（東京都）
コップに塩水を入れ
氷を浮かべる
市川洋
（ブログ「海洋学研究者の日常」管理人）

2. 1949年05月 北海道に生まれる
1972年03月 京都大学理学部卒業
1978年07月 京都大学大学院理学研究科博士課程修了
理学博士（京都大学）
学位論文：風波のスペクトルの発達機構に関する研究
1979年08月 鹿児島大学水産学部 助手
1992年10月 鹿児島大学水産学部 助教授
1998年01月 鹿児島大学水産学部 教授
2005年10月 独立行政法人海洋研究開発機構 主任研究員
2009年04月 独立行政法人海洋研究開発機構 上席研究員
2015年03月 独立行政法人海洋研究開発機構 退職
現在 独立海洋学研究者（無所属）
主な専門分野 海洋物理学、水産海洋学
主な研究項目 東シナ海、黒潮、大気海洋相互作用の観測研究
主な 科学コミュニケーション活動
日本海洋学会教育問題研究会世話人
ブログ「海洋学研究者の日常」管理人
RikaTan（理科の探検）編集委員
略歴

3. 内 容
１．塩水の特徴・相平衡
２．真水と塩水に浮かべた氷の
融け方に違いはあるのか？
３．解説
１）塩が雪や氷を融かす仕組み
２）海水の特徴、分布と流れ
付録 二重拡散対流

4. １．塩水の特徴・相平衡
塩分（濃度）
人間の血液：約0.9%
現在の海水：約3.5%
醤油（濃口)：14.5%
醤油（薄口)：16.0%
飽和溶液濃度：約27%

5. 海水の塩分の定義

6. 大部分の
海水の密
度は水温
が高いほ
ど小さい。
海水の
密度は塩
分が高い
ほど大き
い。
水温と
塩分が異
なる海水
でも同じ
密度であ
ることが
ある。
Pickard, G. L. and W. J. Emery (1982): Chap.3. - Physical Properties of Sea-Water.
p.12-28, Descriptive Physical Oceanography (Fourth Enlarged Edition), Pergamon.
海水の密度・水温・塩分の関係 σt: (密度-1000)kg/m3
‰（パーミル）：塩分の単位、海水1kg中の塩類の量(g)

7. S＜23.31 ％
塩分が高いほど、氷点は低い
Ｓ＞26.285 %、T＞0.15℃
無水塩（立方晶系）の飽和溶液
Ｓ＞26.285 %、T＜0.15℃
２水塩（単斜晶形）の飽和溶液
Ｓ＞61.863 %、T＜0.15℃
無水塩と２水塩のみ（氷はない）
T=-21.12℃ 無水塩との共晶点
T=-22.40℃ ２水塩との共晶点

8. 2．真水と塩水に浮かべた氷の
融け方に違いはあるか？

9. 問題
コップAには真水を約２００mlだけを入れます。
コップBには、真水を約２００ml入れた後、海水とほ
ぼ同じ塩分（3.5%）となるように、食塩約7 gを加え
て、かき混ぜます。
コップCには、真水を約２００ml入れた後、食塩約66
gを加えて、良くかき混ぜ、食塩の塩分飽和溶液
（25%）にします。
コップA、B、Cのそれぞれの水面に浮かべた氷の
融け方に違いはあるのでしょうか？

10. Q1 氷が融ける速さ
１．コップA（真水）＝コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
融ける速さは塩分と関係ない？
２．コップA（真水）＝コップB（海水）＞コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど遅いが、低塩分では関係ない？
３．コップA（真水）＝コップB（海水）＜コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど速いが、低塩分では関係ない？
４．コップA（真水）＜コップB（海水）＜コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど速い？
５．コップA（真水）＞コップB（海水）＞コップC（飽和溶液）
塩分が低いほど速い？
６．コップA（真水）＞コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
塩分が有れば、濃淡に関係なく遅い？
７．コップA（真水）＜コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
塩分が有れば、濃淡に関係なく早い？

11. Q２ 氷が融けた後にできた水の温度
１．コップA（真水）＝コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
温度は塩分と関係がない？
２．コップA（真水）＝コップB（海水）＞コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど低温だが、低塩分では関係ない？
３．コップA（真水）＝コップB（海水）＜コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど高温だが、低塩分では関係ない？
４．コップA（真水）＜コップB（海水）＜コップC（飽和溶液）
塩分が高いほど高温？
５．コップA（真水）＞コップB（海水）＞コップC（飽和溶液）
塩分が低いほど高温？
６．コップA（真水）＞コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
塩分が有れば、濃淡に関係なく低温？
７．コップA（真水）＜コップB（海水）＝コップC（飽和溶液）
塩分が有れば、濃淡に関係なく高温？

12. 答え？
実験して確かめる！

13. 参考
橋本壽夫(2004)：塩が多方面で利用される原理の説明．
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-
04-03.html
３．解説
１）塩が雪や氷を融かす仕組み

14. 塩が雪や氷を融かす仕組み（１）
氷（0℃）＋塩（結晶、常温）
ー＞氷＋塩＋飽和溶液
ー＞飽和溶液の温度降下（-21℃）
ー＞氷表面の温度降下（-21℃）
ー＞周囲から加熱により氷が融解
－＞新たな飽和溶液の生成
ー＞飽和溶液の温度降下（-21℃）
：
：
塩がなくなるまで、
-21℃に保たれる

15. 塩が雪や氷を融かす仕組み（２）
塩がなくなると
ー＞溶液の塩分が減少
ー＞氷と溶液が共存する温度が
上昇
－＞周囲との温度差が減少
ー＞周囲から加熱量が減少
ー＞塩分が低いほど、氷を融かす能
力が低い。
＜参考＞
析出：
T=40℃で飽和濃度は26.71 %
T=0.15 ℃で飽和濃度は26.285 %
40℃の飽和溶液1 kgを0℃まで冷
却すると、4.25 gの塩が析出
製塩方法：
塩の飽和溶液の沸点は108.5℃
加熱による水分の除去が析出より
容易。現在は、イオン交換膜法が主。

16. ３．解説
２）海水の分布と流れ

17. 密度成層（低温な）重たい海水ほど下層に分布する。
九州・ヤップ島間（北緯30度ー北緯13度）の水温、塩分断面分布
（1999年１1月，鹿児島大学水産学部練習船敬天丸航海データ）
水温断面分布 塩分断面分布

18. 茶圓正明・市川洋 著、「黒潮」、かごしま文庫，第71巻，全228頁，春苑堂出版，鹿
児島市、（2001年12月）．

19. 付録 二重拡散対流
水温の拡散速度が塩分の拡散速度より速いことから生じる
鉛直対流ー＞水温鉛直分布が段差が数ｍの階段状になる。

20. https://www.cps-jp.org/~mosir/pub/2014/2014-08-30/01_noguchi/pub-
web/20140830_noguchi.pdf

21. ｔ＝00:09:31
ｔ＝00:02:41
砂糖水(透明)
濃度 1.00％
比重 1.0101
塩水（青色）
濃度 1.01％
比重 1.0102
ビデオ

22. 壁面での冷却・淡水供給（氷山の溶解）
https://www.cps-jp.org/~mosir/pub/2014/2014-08-30/01_noguchi/pub-
web/20140830_noguchi.pdf