1. 臓器移植法改正<br />臓器移植法とは、肺や心臓などの臓器がほぼあるいはまったく機能しなくなり移植でしか治療できない人の臓器と、脳死状態の人体からの臓器を入れ替えて回復させる治療法です。臓器提供できる条件は、本人の意思、家族の同意、脳死判定、そしてがんや感染症がないなどの医学的条件がそろったときのみに行われます。２００７年にＷＨＯより「臓器移植は自国内で」との声明が出されたことがきっかけで、臓器移植法の改正に乗り出しました。まず初めに、本人の事前の意思表示がなくても移植が可能にました。これまでは脳死患者本人が事前に書面で臓器移植の意思を表明していた場合のみ移植が可能だったけれど、改正後は本人の事前の意思表示がなくても、脳死後の親族の承諾があれば移植が可能となりました。次に、脳死患者の親族が臓器を必要としていた場合、優先的に移植することが義務づけられました。<br />臓器移植の問題点<br />臓器移植法が改正されたにもかかわらず、まだ臓器移植には４つの問題点があります。１つ目は、本人による事前の意思表示がなくても臓器提供ができるようになったため、身寄りのない人は自動的に提供者になってしまいます。２つ目は、家族は本人の有利な代弁者になりえるという前提であるが、必ずしもそうとは限らず、一つ間違えば近親者ほど残酷になりえます。虐待や家庭内暴力を隠すために臓器移植を許可する家族も現れる可能性が十分にあります。３つ目は、臓器移植に対するイメージが良くないことです。家族は、臓器提供は脳死した本人にとって不利益であると考え、なかなか臓器移植に踏み切れません。そして最後の４つ目は、日本人の死生観です。日本人は、無宗教の文化であり、「死」について、あるいは「献身」「慈悲の心」などについての思慮が浅いことが移植の壁となっています。<br />海外との意識の違い<br />まず、アメリカと日本では移植される件数に大きな差があり、移植に対する関心が違います。現在、アメリカでは年間に6000件程度の脳死患者からの臓器提供が行われており、それに比べるとまだまだ遅れているのが日本の臓器提供の現状です。そのため、臓器移植が必要な病に侵されている人が、高いお金をもってアメリカなど海外に渡航し、海外で臓器移植手術を受ける例が後を絶ちません。次に、海外と日本では死生観が違います。アメリカなど海外の国は、身体と魂を別に考え、脳死状態を完全な死ととらえることが可能です。一方、日本では身体と魂を同一のものと考え、身体が正常に働いている限り、完全な死ととらえることが難しいので、脳死を死と認められず臓器提供へと踏み切れません。<br />意見<br />私は臓器移植に賛成です。家族側の立場として、自分の子供などが脳死判定とされた後も心臓が動いているので、移植のためにはやくに命を奪ってしまうことに抵抗があることはわかります。しかし、臓器提供によって、その命が役立つことを考えたら、とても価値のある決断だと思います。臓器移植には家族の心情も深くかかわっているので複雑な問題であり、人々に脳死後の臓器移植を強制することはできません。しかし、少しでも多くの人が腎臓移植についての知識を持ち、提供することの利点を知ることができたら、もっと多くの人が臓器提供に前向きになれると思います。<br />