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2013年度日本企業のCRE推進に関する調査レポートの発行にあたり、日本初となる「ジョーンズ ラング ラサール日本企業CRE
インデックス」を作成しました。本インデックスでは、日本と世界の企業から得た回答を比較することで、現時点でのそれぞれの
CRE推進の位置付けにおけるギャップ分析を試みています。
優れた比喩は、それだけで多くを語ってくれます。そこで本インデックスではCREの推進を帆船の航海に例えてみます。CRE部門の
組織と人員は、帆船とクルーのようなものです。チームの規模や組織、船の構造及びその設備は様々ですが、それらは船主(経営
トップ)がそこに何を求めているのかをよく表しています。船長はコンパスを手に、航海の目的という戦略に沿った強い意思決定を
行い、正しい航路で船を走らせようとします。そして、帆を指す風は、たどり着くべき港に船を力強く運ぶ推進力を表しています。
この調査は教訓や方向性を示すものではなく、回答に正解や誤りはありません。本インデックスは、日本企業の多くのCREの船長
が抱えている課題の共有を目的としたものです。それぞれの企業内の経営トップからCRE推進に係わるあらゆる方々まで活発な議
論が交わされるきっかけとなることを願っております。
インデックスは、船の現在位置を航路図に示しています。当社では本インデックスを隔年で更新し、日本におけるCRE推進の今後
の軌道を示して参ります。
ジョーンズ ラング ラサール 日本企業CREインデックス 2013年
- ミシェル・ド・モンテーニュ フランスの哲学者 1533-1592
インデックスサマリー
日本企業 世界(日本企業を除く)
構造とリソース(船とクルー) 18 33
戦略(コンパス)	 10 40
推進力・ガバナンス(風) 23 52
はじめに
「行き着く港のない船に、風は決して
帆を押さない」
構造とリソース(船とクルー)
日本企業:18/世界(日本企業除く):33 日本企業:10/世界(日本企業除く):40 日本企業:23/世界(日本企業除く):52
推進力・ガバナンス(風)戦略(コンパス)
「船は岸にあれば
常に安全であるが、
それでは船の用をた
さない」
- アルベルト・アインシュタイン
世界では、CRE部門責任者の過半数(58%)が船主
(経営トップ)の直接の指揮下にありますが、日本
企業では26%です。CREは世界金融危機の影響で
より認識される存在となったようですが、日本企業
ではそうではなかったようです。日本企業でもCRE
の存在を企 業トップの経営レーダー上によりはっ
きり示した方がよいのではないでしょうか?
CRE部門に託されているのは、企業全体の生産性向
上を支援することです。しかし、人員、ワークプレース、
事業、不動産資産の生産性向上について高い期待を
かけられている日本企業のCRE部門は、世界全体の
半分程度に留まっています(日本では33%、世界では
61%)。しかし生産性向上についての期待の風は、日
本企業自体には強吹き始めています。CRE部門はより
帆を高く揚げてこの期待を推進力の一つとして受け止
めるべきでしょう。
CRE部門に対する要求は、戦略的なものから日常
的な業務に及ぶまで大きく拡大しつつあります。
日本企業において海外でのCREの推進も国内同様に
求められています。事業展開を行う地域における事業
成長のための機能的なワークプレースの提供、サステ
ナビリティへの対応、不動産ポートフォリオの柔軟な
管理、革新的なツールの導入等、より広範囲な課題
に対し成果を出し、価値を提供することを迫られてい
ます。
高まる期待に対して、日本企業のCRE部門責任者
は成果の達成に必要な手立てが整っているという
自信がありません。戦略や施策の実施において
「全ての要求に応えられる」という自信を持った
回答はゼロでしたが、世界では28%がそのように
答えています。あなたの企業ではどうでしょう
か?推進力である風を受け止める帆の上げ方
があなたの会社の自信を表しています。
日本企業では、CREと企業
経営の戦略が現時点で完
全に整合しているとした回
答はわずか4%でしたが、
世界では54%となってい
ます。CREへの期待が高
まる中、この戦略の連動
性の低さが推進の障壁に
なっていると考えます。
アウトソース業者の選択プロセスにおいて、全ての業
者に提案依頼書(RFP)を出して提案を募ることは日
本企業では非常に珍しく(4%)、世界でこの手法が好
まれている(48%)のとは対照的です。日本では今後
も、CREや購買チームがこの手法を導入しないので
しょうか?
アウトソーシングに対する姿勢については、日本企
業では17%が「長期的な視野でパートナーとしてふ
さわしいベンダーと戦略的関係を構築すべきであ
る」と捉えています(「最も安い価格で仕事を引き
受けてくれる業者に一部業務を委託するという取
引姿勢」ではなく)。これは世界全体の30%という
回答数に及びませんが、コンパスの針は世界のト
レンドを追随しているようです。
調査結果によると、日本企業のCRE戦略は短期的な
計画策定となっています。日本企業の回答のうち3年
以上の期間でCRE戦略を策定しているのはわずか
18%であるのに対して、世界では48%となっています。
日本企業の多くのCREの船長は、港までの航海図を
持たず、目で見える範囲での舵とりを余儀なくされて
いることが明らかです。
ITツール活用はCRE推進のカギですが、日本企業
においては導入が遅れているようです。「ファシリ
ティやポートフォリオレベルで正確な情報把握のた
めに必要なツールが十分に配備されている」とし
た回答は世界の23%に対して、日本企業ではわず
か11%となっています。世界航海には最新のレー
ダー装備が必要です。
日本企業ではCRE部門責任者の約1/3(32%)が
CRE専門部署に所属しており、世界ではその割合は
39%となっています。CRE専門部署を持たない企業
でもうまくサービス提供されているケースも多くありま
すが、専門部署の有無と、回答者の経営トップの要求
に応えられる自信の度合に相関性がみられることは
興味深い点です。
今日、「CREと他のコーポレート機能(人事、IT、
財務)の協業の仕組みが、シェアードサービス型に
統合した協業のレベルに達している」とした日本企
業の回答は14%で、世界では37%となっています。
世界的には、このコーポレート機能のチームワー
クの増加はワークプレースの生産性向上を強力に後
押しする要因であることが明確に認識されています。
日本でも今後さらにそうなってくるのではないでしょ
うか?
ソーシングのプロセスを確かなものにする
社内購買部門が、CREの意思決定に今ま
で以上に関与するように
なってきています。日本
企業では14%が「既に関
与が始まっている」と回答し
ていますが、世界では37%
となっています。CREにつ
いて理解し、コストと価
値のバランスを保てる
ならば、購買部門はプ
ロセスにおいて力強い味方になりま
す。クルーの一員として、購買部門を
活用してはいかがでしょう。
CRE部門はその性質上コストセンターです。しかし、
先進志向の企業はCRE部門の存在が直接的な価値
や利益をもたらし得ることを認識しはじめています。日
本企業の回答者の10%がその可能性を信じており、
世界では17%となっています。
戦略	 Q: CRE戦略は事業戦略/企業目標とどの程度整合していますか?
A: 完全に整合している
Q: 次の選択肢のうち、アウトソース業者選択についての貴社の方針を最もよく表しているのはどれですか?
A: 全てのアウトソース業者に提案依頼書(RFP)を出している
Q: 貴社のCRE業務のアウトソーシングに対する考え方に一番近いのは下記のうちどれですか?
A: 長期的な視野でパートナーとしてふさわしいベンダーと戦略的関係を構築すべきである
Q: CRE戦略にどのような計画期間が適用されていますか?
A: 3年以上
Q: 現在の不動産情報(面積、コスト、活用率等)をオンデマンドで抽出する能力についてどう自己評価しますか?
A: 万全である
Q: CREのグローバル責任者は現在社内のどのレベルをレポートラインとしていますか?
A: 経営トップ(例:CEO、CFO、CIP、COO等)
Q: 貴社のCRE推進への期待度は下記の項目の生産性においてどのレベルにありますか?
A:	改善期待度が高い
	 不動産資産の効率性(例:ROI、サステナビリティ等)の向上
	 ワークプレースの効果性 (コスト削減、安全性、リスク回避、スペース利用度と柔軟性)の向上
	 事業生産性(業務の質・量、市場優位性の確保等)の向上
	 人に関する生産性(定着率、革新的アイディアの促進、コラボレーションの醸成)の向上
Q: 下記分野における変革の推進について経営トップのCRE部門に対する要求はどの程度のものですか?
A:	要求は高まってきている
	 新しい市場で必要な不動産を手当て・取得すること
	 有能な人材を惹きつけ続けること
	 保有不動産の価値・品質向上やワークプレースを変革すること
	 不動産ポートフォリオの生産性の向上を図ること
	 在宅勤務・モバイルオフィス等を実現すること
	 サステナビリティを推進すること
	 リース物件ポートフォリオをより柔軟に管理し、需要に合わせた運用を図ること
	 需要に応じたシナリオ分析やソリューションを提案し、革新的なやり方をもたらすこと
	 CRE業務をビジネス成長と整合性のとれたものにし、人事・IT・経理部等とも協業を進めること
Q: 経営トップからのCRE推進の要求に応える手立ては、どの程度整っていると考えますか?
A: 全ての要求に応えられる
構造とリソース	 Q: CREのグローバル責任者はどの部署に所属していますか?
A: 専門のCRE部門
Q: CREと人事/IT/財務部門の協業はそれぞれどの程度行われていますか?
A: シェアードサービス型に統合した協業
Q: 社内の購買チームはCREに活発に関与していますか?
A: 日常的に関与している
Q: CREは貴社内でプロフィットセンターと捉えられていますか?または、コストセンターと捉えられていますか?
A: どちらかといえばプロフィットセンターと認識されている
データ解析方法
日本企業CREインデックスは、ジョーンズ ラング
ラサ ール の「2 013 年 度 世 界 の 企 業 不 動 産
(CR E)調査」の結果に基づいて作成されてい
ます。調査は2012年オンラインと電話で行わ
れ、39ヵ国636名のCRE担当幹部から回答を
得ました。回 答は、世界 中の様々な業 種、地
域、規模の企業からのもので、所属する部門も
コーポレート機能の随所にわたっていますが、
本インデックスで活用させていただいた回答は、
日本企業31社を含み、世界で1,000人以上の従業
員を擁する545名を対象としています。
解析方法としては、調査全体から12の質問を選
び、その属性から、構造とリソース(船とクルー)、
戦略(コンパス)、推進力・ガバナンス(風)に分類
しました。これらの区分は、CRE推進の成功の鍵
となる要素/要因を象徴的に表しており、CRE推進
トレンドをわかりやすく追えるようにしました。
この3つの区分に合わせ選択したそれぞれの質
問への回答群の中から、グローバルトレンドに鑑
み、CREが最も推進されていると考えられる回答
1つをそれぞれベンチマーク回答として設定してい
ます。そのベンチマーク回答への回答率によってイ
ンデックス数値を算出しています。この分析手法は
日本企業を除く世界の企業との比較において、日
本企業のCRE推進の現在位置を測る一つの方法
になると考えております。ただし、このベンチマー
ク回答が全ての企業にとってのあるべき姿や結果
の推奨案を示しているものではないことをあわせ
てご理解下さい。
インデックスは加重平均で算出されています。
3つの区分毎に1つのインデックス数値(%)を示
すため、各質問のベンチマーク回答への回答率の
区分内合計を、区分ごとの質問数で割ることによ
り算出しています。
本調査のデータ収集、集計、分類は、市場調査専
門業であるKadence International社の協力を
得て実施しました。
推進力・ガバナンス	
(風)
(コンパス)
(船とクルー)
www.joneslanglasalle.co.jp
本インデックスに関するお問合せ先:
佐藤 俊朗	
ストラテジック ポートフォリオ サービス事業部長
toshiro.sato@ap.jll.com
高橋 貴裕  	
ストラテジック ポートフォリオ サービス事業部 マネージャー
takahiro.takahashi@ap.jll.com
待ち受けるリスク:企業不動産のグローバルトレンド 2013年
ジョーンズ ラング ラサールが発行する隔年レポートの第2弾「企業不動産のグローバルトレンド 2013年」は、
企業不動産(CRE)の現状と将来像について専門家による分析と深い洞察を示したものとなっています。
世界39ヵ国、600名以上のCRE担当者の方々からの回答に基づき、顕在化している5つのグローバルトレンドと、
それぞれのトレンドに対するリスクと具体的な対策について述べています。
同調査の詳細は専門サイトwww.jll.com/globalCREtrendsをご参照下さい。
是非皆様と同じ地域にいる他のCRE担当者がどのように回答しているかを比較してみてください。また、特定の
国や業種による付随レポートもこのサイトでご覧いただけます。
本インデックス作成におけるリサーチ業務は、Jones Lang LaSalleアジア太平
洋地域コーポレートリサーチ部門のAnne Thoraval と Henry Liaoが担当致し
ました。

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ジョーンズ ラング ラサール 日本企業CREインデックス 2013年

  • 1. 2013年度日本企業のCRE推進に関する調査レポートの発行にあたり、日本初となる「ジョーンズ ラング ラサール日本企業CRE インデックス」を作成しました。本インデックスでは、日本と世界の企業から得た回答を比較することで、現時点でのそれぞれの CRE推進の位置付けにおけるギャップ分析を試みています。 優れた比喩は、それだけで多くを語ってくれます。そこで本インデックスではCREの推進を帆船の航海に例えてみます。CRE部門の 組織と人員は、帆船とクルーのようなものです。チームの規模や組織、船の構造及びその設備は様々ですが、それらは船主(経営 トップ)がそこに何を求めているのかをよく表しています。船長はコンパスを手に、航海の目的という戦略に沿った強い意思決定を 行い、正しい航路で船を走らせようとします。そして、帆を指す風は、たどり着くべき港に船を力強く運ぶ推進力を表しています。 この調査は教訓や方向性を示すものではなく、回答に正解や誤りはありません。本インデックスは、日本企業の多くのCREの船長 が抱えている課題の共有を目的としたものです。それぞれの企業内の経営トップからCRE推進に係わるあらゆる方々まで活発な議 論が交わされるきっかけとなることを願っております。 インデックスは、船の現在位置を航路図に示しています。当社では本インデックスを隔年で更新し、日本におけるCRE推進の今後 の軌道を示して参ります。 ジョーンズ ラング ラサール 日本企業CREインデックス 2013年 - ミシェル・ド・モンテーニュ フランスの哲学者 1533-1592 インデックスサマリー 日本企業 世界(日本企業を除く) 構造とリソース(船とクルー) 18 33 戦略(コンパス) 10 40 推進力・ガバナンス(風) 23 52 はじめに 「行き着く港のない船に、風は決して 帆を押さない」
  • 2. 構造とリソース(船とクルー) 日本企業:18/世界(日本企業除く):33 日本企業:10/世界(日本企業除く):40 日本企業:23/世界(日本企業除く):52 推進力・ガバナンス(風)戦略(コンパス) 「船は岸にあれば 常に安全であるが、 それでは船の用をた さない」 - アルベルト・アインシュタイン 世界では、CRE部門責任者の過半数(58%)が船主 (経営トップ)の直接の指揮下にありますが、日本 企業では26%です。CREは世界金融危機の影響で より認識される存在となったようですが、日本企業 ではそうではなかったようです。日本企業でもCRE の存在を企 業トップの経営レーダー上によりはっ きり示した方がよいのではないでしょうか? CRE部門に託されているのは、企業全体の生産性向 上を支援することです。しかし、人員、ワークプレース、 事業、不動産資産の生産性向上について高い期待を かけられている日本企業のCRE部門は、世界全体の 半分程度に留まっています(日本では33%、世界では 61%)。しかし生産性向上についての期待の風は、日 本企業自体には強吹き始めています。CRE部門はより 帆を高く揚げてこの期待を推進力の一つとして受け止 めるべきでしょう。 CRE部門に対する要求は、戦略的なものから日常 的な業務に及ぶまで大きく拡大しつつあります。 日本企業において海外でのCREの推進も国内同様に 求められています。事業展開を行う地域における事業 成長のための機能的なワークプレースの提供、サステ ナビリティへの対応、不動産ポートフォリオの柔軟な 管理、革新的なツールの導入等、より広範囲な課題 に対し成果を出し、価値を提供することを迫られてい ます。 高まる期待に対して、日本企業のCRE部門責任者 は成果の達成に必要な手立てが整っているという 自信がありません。戦略や施策の実施において 「全ての要求に応えられる」という自信を持った 回答はゼロでしたが、世界では28%がそのように 答えています。あなたの企業ではどうでしょう か?推進力である風を受け止める帆の上げ方 があなたの会社の自信を表しています。 日本企業では、CREと企業 経営の戦略が現時点で完 全に整合しているとした回 答はわずか4%でしたが、 世界では54%となってい ます。CREへの期待が高 まる中、この戦略の連動 性の低さが推進の障壁に なっていると考えます。 アウトソース業者の選択プロセスにおいて、全ての業 者に提案依頼書(RFP)を出して提案を募ることは日 本企業では非常に珍しく(4%)、世界でこの手法が好 まれている(48%)のとは対照的です。日本では今後 も、CREや購買チームがこの手法を導入しないので しょうか? アウトソーシングに対する姿勢については、日本企 業では17%が「長期的な視野でパートナーとしてふ さわしいベンダーと戦略的関係を構築すべきであ る」と捉えています(「最も安い価格で仕事を引き 受けてくれる業者に一部業務を委託するという取 引姿勢」ではなく)。これは世界全体の30%という 回答数に及びませんが、コンパスの針は世界のト レンドを追随しているようです。 調査結果によると、日本企業のCRE戦略は短期的な 計画策定となっています。日本企業の回答のうち3年 以上の期間でCRE戦略を策定しているのはわずか 18%であるのに対して、世界では48%となっています。 日本企業の多くのCREの船長は、港までの航海図を 持たず、目で見える範囲での舵とりを余儀なくされて いることが明らかです。 ITツール活用はCRE推進のカギですが、日本企業 においては導入が遅れているようです。「ファシリ ティやポートフォリオレベルで正確な情報把握のた めに必要なツールが十分に配備されている」とし た回答は世界の23%に対して、日本企業ではわず か11%となっています。世界航海には最新のレー ダー装備が必要です。 日本企業ではCRE部門責任者の約1/3(32%)が CRE専門部署に所属しており、世界ではその割合は 39%となっています。CRE専門部署を持たない企業 でもうまくサービス提供されているケースも多くありま すが、専門部署の有無と、回答者の経営トップの要求 に応えられる自信の度合に相関性がみられることは 興味深い点です。 今日、「CREと他のコーポレート機能(人事、IT、 財務)の協業の仕組みが、シェアードサービス型に 統合した協業のレベルに達している」とした日本企 業の回答は14%で、世界では37%となっています。 世界的には、このコーポレート機能のチームワー クの増加はワークプレースの生産性向上を強力に後 押しする要因であることが明確に認識されています。 日本でも今後さらにそうなってくるのではないでしょ うか? ソーシングのプロセスを確かなものにする 社内購買部門が、CREの意思決定に今ま で以上に関与するように なってきています。日本 企業では14%が「既に関 与が始まっている」と回答し ていますが、世界では37% となっています。CREにつ いて理解し、コストと価 値のバランスを保てる ならば、購買部門はプ ロセスにおいて力強い味方になりま す。クルーの一員として、購買部門を 活用してはいかがでしょう。 CRE部門はその性質上コストセンターです。しかし、 先進志向の企業はCRE部門の存在が直接的な価値 や利益をもたらし得ることを認識しはじめています。日 本企業の回答者の10%がその可能性を信じており、 世界では17%となっています。
  • 3. 戦略 Q: CRE戦略は事業戦略/企業目標とどの程度整合していますか? A: 完全に整合している Q: 次の選択肢のうち、アウトソース業者選択についての貴社の方針を最もよく表しているのはどれですか? A: 全てのアウトソース業者に提案依頼書(RFP)を出している Q: 貴社のCRE業務のアウトソーシングに対する考え方に一番近いのは下記のうちどれですか? A: 長期的な視野でパートナーとしてふさわしいベンダーと戦略的関係を構築すべきである Q: CRE戦略にどのような計画期間が適用されていますか? A: 3年以上 Q: 現在の不動産情報(面積、コスト、活用率等)をオンデマンドで抽出する能力についてどう自己評価しますか? A: 万全である Q: CREのグローバル責任者は現在社内のどのレベルをレポートラインとしていますか? A: 経営トップ(例:CEO、CFO、CIP、COO等) Q: 貴社のCRE推進への期待度は下記の項目の生産性においてどのレベルにありますか? A: 改善期待度が高い 不動産資産の効率性(例:ROI、サステナビリティ等)の向上 ワークプレースの効果性 (コスト削減、安全性、リスク回避、スペース利用度と柔軟性)の向上 事業生産性(業務の質・量、市場優位性の確保等)の向上 人に関する生産性(定着率、革新的アイディアの促進、コラボレーションの醸成)の向上 Q: 下記分野における変革の推進について経営トップのCRE部門に対する要求はどの程度のものですか? A: 要求は高まってきている 新しい市場で必要な不動産を手当て・取得すること 有能な人材を惹きつけ続けること 保有不動産の価値・品質向上やワークプレースを変革すること 不動産ポートフォリオの生産性の向上を図ること 在宅勤務・モバイルオフィス等を実現すること サステナビリティを推進すること リース物件ポートフォリオをより柔軟に管理し、需要に合わせた運用を図ること 需要に応じたシナリオ分析やソリューションを提案し、革新的なやり方をもたらすこと CRE業務をビジネス成長と整合性のとれたものにし、人事・IT・経理部等とも協業を進めること Q: 経営トップからのCRE推進の要求に応える手立ては、どの程度整っていると考えますか? A: 全ての要求に応えられる 構造とリソース Q: CREのグローバル責任者はどの部署に所属していますか? A: 専門のCRE部門 Q: CREと人事/IT/財務部門の協業はそれぞれどの程度行われていますか? A: シェアードサービス型に統合した協業 Q: 社内の購買チームはCREに活発に関与していますか? A: 日常的に関与している Q: CREは貴社内でプロフィットセンターと捉えられていますか?または、コストセンターと捉えられていますか? A: どちらかといえばプロフィットセンターと認識されている データ解析方法 日本企業CREインデックスは、ジョーンズ ラング ラサ ール の「2 013 年 度 世 界 の 企 業 不 動 産 (CR E)調査」の結果に基づいて作成されてい ます。調査は2012年オンラインと電話で行わ れ、39ヵ国636名のCRE担当幹部から回答を 得ました。回 答は、世界 中の様々な業 種、地 域、規模の企業からのもので、所属する部門も コーポレート機能の随所にわたっていますが、 本インデックスで活用させていただいた回答は、 日本企業31社を含み、世界で1,000人以上の従業 員を擁する545名を対象としています。 解析方法としては、調査全体から12の質問を選 び、その属性から、構造とリソース(船とクルー)、 戦略(コンパス)、推進力・ガバナンス(風)に分類 しました。これらの区分は、CRE推進の成功の鍵 となる要素/要因を象徴的に表しており、CRE推進 トレンドをわかりやすく追えるようにしました。 この3つの区分に合わせ選択したそれぞれの質 問への回答群の中から、グローバルトレンドに鑑 み、CREが最も推進されていると考えられる回答 1つをそれぞれベンチマーク回答として設定してい ます。そのベンチマーク回答への回答率によってイ ンデックス数値を算出しています。この分析手法は 日本企業を除く世界の企業との比較において、日 本企業のCRE推進の現在位置を測る一つの方法 になると考えております。ただし、このベンチマー ク回答が全ての企業にとってのあるべき姿や結果 の推奨案を示しているものではないことをあわせ てご理解下さい。 インデックスは加重平均で算出されています。 3つの区分毎に1つのインデックス数値(%)を示 すため、各質問のベンチマーク回答への回答率の 区分内合計を、区分ごとの質問数で割ることによ り算出しています。 本調査のデータ収集、集計、分類は、市場調査専 門業であるKadence International社の協力を 得て実施しました。 推進力・ガバナンス (風) (コンパス) (船とクルー)
  • 4. www.joneslanglasalle.co.jp 本インデックスに関するお問合せ先: 佐藤 俊朗 ストラテジック ポートフォリオ サービス事業部長 toshiro.sato@ap.jll.com 高橋 貴裕 ストラテジック ポートフォリオ サービス事業部 マネージャー takahiro.takahashi@ap.jll.com 待ち受けるリスク:企業不動産のグローバルトレンド 2013年 ジョーンズ ラング ラサールが発行する隔年レポートの第2弾「企業不動産のグローバルトレンド 2013年」は、 企業不動産(CRE)の現状と将来像について専門家による分析と深い洞察を示したものとなっています。 世界39ヵ国、600名以上のCRE担当者の方々からの回答に基づき、顕在化している5つのグローバルトレンドと、 それぞれのトレンドに対するリスクと具体的な対策について述べています。 同調査の詳細は専門サイトwww.jll.com/globalCREtrendsをご参照下さい。 是非皆様と同じ地域にいる他のCRE担当者がどのように回答しているかを比較してみてください。また、特定の 国や業種による付随レポートもこのサイトでご覧いただけます。 本インデックス作成におけるリサーチ業務は、Jones Lang LaSalleアジア太平 洋地域コーポレートリサーチ部門のAnne Thoraval と Henry Liaoが担当致し ました。