こすぎの大学

武蔵小杉を「生きる」
川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター
西 智弘
自己紹介
西智弘(1980年、北海道釧路市生まれ)
2005年 北海道大学医学部卒
室蘭日鋼記念病院初期研修(家庭医療)
2007年 川崎市立井田病院総合ケアセンター
(緩和ケア/総合内科/在宅医療)
2009年 栃木県立がんセンター 腫瘍内科
2012年 川崎市立井田病院総合ケアセンター
(緩和ケア/在宅医療/腫瘍内科)
川崎市立井田病院とは

川崎市の公立病院(383床:救急指定)
国指定、川崎南部の地域がん診療連携拠点病院
武蔵小杉駅から専用シャトルバスあり
2025年問題と中原区の現状
構成割合の推移
0%

10%

20%

(中原区)

30%

40%

年少人口
50%

60%

生産年齢人口
70%

老年人口
80%

1972年
1975年
1980年
1985年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年

65歳以上:3万3000人(14.3%)
川崎市17.7% 、全国25%

90%

100%
中原区のかかえる潜在リスク
人口増に対応できるほどの入院施設はない
→65歳以上人口は10年前に比べて中原区だけで
8000人増加、それに対し病床数は川崎南部全体で
4800床
→どんどん入院が難しい時代になってきている
老化で体が動かない、では入院できない
「検査入院」は減り、通院でできる治療・検査を優先
※入院で、むしろ全身状態が悪化する病態が増えた、という
現状もある
中原区のかかえる潜在リスク
コミュニティが希薄で地域全体で支え合う仕組み
がない
核家族、独居または老老世帯の増加、引きこもり
医療者もドライ:「誰かがやってくれる」「金に
ならない仕事はしない」
解決へのキーワード
介護予防
病気予防(健康増進/ヘルスリテラシー向上)
コミュニティヘルス
地域医療連携/在宅医療支援

「病気にならないまち/病気になっても安
心して暮らせるまち」
生きることの価値観
ここでひとつゲームをしてみましょう

「家族」 「健康」 「お金」
「友人」 「趣味」 「役割」
リンゴの写真です
リンゴの写真です
自分の学生時代
失恋のつらさ
→「この『つらい』という気持ちは何なんだ?」
→「『つらい』という気持ちは自分のこころの中に
あるものだ、自分のこころが生み出した『つらさ』
に自分が悩まされるのはばかばかしい」
→「そもそも、全ての事象はこころを通して感じて
いるもの。みんなが『赤いリンゴがある』と言って
も、本当にそこに『赤いリンゴ』があるかどうかは
誰にも証明できない」
色即是空
手を失った旅人と体が変形した老人
30代男性:若者
→仕事のミスで右腕を失う
→仕事を追われ、家族を失い、仕事を求めて一人で
旅をしている
70代男性:老人
→生まれつき両脚が不自由
→若いときからいくつもの病気で、両手足とも変
形、両目も失う
→劣悪な環境で、大勢の似た境遇の方々と助け合い
ながら生きている
手を失った旅人と体が変形した老人
ものすごい異臭がするその区域に、若者は踏み入
れ、その老人に問う。
「このような生活をしていてつらくないですか」
老人は答える。
「なんの。神様がこの体をこれ以上どのように変
形させてくれるのか楽しみだわい。」
「仲間もおるでな。わしにしてみたら、あんたの
ほうがよっぽどつらそうだで。」
苦しみの種類と構造
客観的な状況
苦しみ

キュア

ケア

身体的
精神的
社会的
霊的

主観的な
想い・願い・価値観

ズレ
年を取る、ということ
いずれ「キュア」できない状態が
来る:老化、がん、難病・・・
このときにキュア→ケアに意識を
変えられるか
「失ったもの」ではなく「残って
いるもの」に目を向けられるか
「病院に入院」の価値は最近のこと
19世紀までは「病院」は重要ではな
かった。病院は救貧院、貴族は往診。
20世紀に医療が急激に進歩したこと
で、患者を病院に集めることの効率性・
有効性が向上(感染症など)
次第に病院の権威が増し、「入院」自体
に価値が置かれるように
→生活と切り離される苦痛の甘受
21世紀は?
急性疾患から慢性疾患に健康問題がシフトするこ
とで、病院での(入院)治療に対する有効性が疑問
視される。
「健康→罹患→治療→健康回復」という経路への
疑念:治療すれば健康になるわけではない。
治癒後の障害の残存や長寿の価値への疑問、など
の問題が前面にでてきて、リハビリやターミナルケ
ア、介護、予防といったことが大事になる世紀。
入院

入院

治癒

治癒?
むしろ
身体機能の低下
生活と切り離される弊害
病院の世紀→地域包括ケアへ
治らない健康問題を抱える高齢者が増加
→病気と付き合いながら生活の質(QOL)を向上
医療はQOLを支えるためのシステムのひとつに
→生活を中心とした保健・福祉との連携が不可欠
地域ケア化:当事者の生活環境を舞台に、地域社
会が資源を供給
→住民ひとりひとりが「医療チームの一員」
「死」とは恐いものですか?
知らないから恐い

「死」は人生最後の仕事
ひとりで死ぬことはできない
・家族がいなくても誰かは見ている
「生きる」ことを後へ続く人達へ伝える仕事
・在宅の魅力:子、孫まで日常的に伝えられる
人生を「演じる」:死に向かって、今を一生懸命
生きる
まとめ
「苦しみ」は主観と客観のズレ
「死」を思いながら今を生きる、そしてこれから
どう生きたいのか、を考える
21世紀は「病院任せ」では限界がある
→住民ひとりひとりが「医療チームの一員」
→まちづくりを通じて10年後の準備ができないか?

第4回「こすぎの大学〜武蔵小杉を生きる〜」