オイラーの音楽から作る
数学の構造
2020/6/28 日曜数学会
リュウ
@ryu_paccho
音の振動数と倍音
音を振動数(の比)で考える。
1倍音:振動数比の基準(1)
→これをドの音としておく。
2倍音:2倍の振動数
→1オクターブ上のド
3倍音:3倍の振動数
→1オクターブ上のソ
5倍音:5倍の振動数
→2オクターブ上のミ
2
1倍音
(𝑦 = 𝑠𝑖𝑛1𝑡)
2倍音
(𝑦 = 𝑠𝑖𝑛2𝑡)
3倍音
(𝑦 = 𝑠𝑖𝑛3𝑡)
5倍音
(𝑦 = 𝑠𝑖𝑛5𝑡)
イメージ
純正律とオイラー格子
2倍音、3倍音、5倍音を利用した音律
→(5-limit)純正律
別名:オイラー音律
1倍音に対する2・3・5倍音だけでなく、
「3倍音に対する5倍音」などを使って音を
増やしていき、ド、ド♯、レ・・・ラ♯、シを
作っていく。
ポイント:すべての音(振動数比)を
2、3、5のべき乗の積(2 𝑛 ∙ 3 𝑥 ∙ 5 𝑦)で表せる。
→オクターブの違い(2 𝑛
)を無視・同一視すれば、
3と5の指数の組(𝑥, 𝑦)ですべての音を表せる。
※ n, 𝑥, 𝑦は整数の範囲を動く。
3
純正律とオイラー格子
オイラー格子
純正律の各音・振動数比を表内に表現。
×
1
9
1
3
1 3 9
25
25
18
25
24
25
16
75
64
225
128
5
10
9
5
3
5
4
15
8
45
32
1
16
9
4
3
1
3
2
9
8
1
5
64
45
16
15
8
5
6
5
9
5
1
25
256
225
128
75
32
25
48
25
36
25
×
1
9
1
3
1 3 9
25 ファ♯ ド♯ ソ♯ レ♯ ラ♯
5 レ ラ ミ シ ファ♯
1 シ♭ ファ ド ソ レ
1
5
ソ♭ レ♭ ラ♭ ミ♭ シ♭
1
25
ミ♭♭ シ♭♭ ファ♭ ド♭ ソ♭
※表内の振動数比の値は1オクターブ内(1<f<2)となるよう2^nで調整済み。
振動数比表示 音階名表示
4
純正律とオイラー格子
オイラー格子の座標平面(格子点)
→振動数比3 𝑥 ∙ 5 𝑦の指数 (𝑥, 𝑦)をプロット
純正律のすべての音を平面上の格子点(ℤ×ℤ)と
対応させられる
5
前回までの想定:音楽の三要素の数学化
音楽の三要素
和音
<ハーモニー>
旋律
<メロディ>
律動
<リズム>
音の高さの移り変わり
=積(比)による変化
⇒乗法的?
音・波の合成
⇒加法的?
音の有無の時間的変化
⇒音律外の追加パラメータt?
積と和の合成
⇒IUT理論??
和声進行
6
単音の数学化
倍音の関係を別の形で表す
3倍音(横軸)の移動→半音7個分(+1オクターブ)
5倍音(縦軸)の移動→半音4個分(+2オクターブ)
1オクターブの移動→半音12個分
ここで、
・オクターブ(半音12個分の移動)の違いを無視・同一視
・同じ音階名となる音の振動数の違いを無視・同一視
→オイラー格子上の同名音を同一視する
半音移動による音の同一視の表現
7𝑥 + 4𝑦 ≡ 0 (𝑚𝑜𝑑12)
→この𝑥と𝑦は、平面上のある点から点への
移動距離を表す
7
「数学化」をするなら「半音」というとらえ方をなくしたい・・・
単音のベクトル空間
先ほどの式を解くと…
x, y = (4,2), (0,3)
→この2つの定数倍と和(線形結合)が解となる。
よってある2音(2点)が同じ音階名になることは、
以下を満たす整数𝑎1, 𝑎2が存在すること言い換えられる。
𝑥 𝑖
𝑦 𝑖
− 𝑥 𝑗
𝑦 𝑗
= 𝑎1
4
2
+ 𝑎2
0
3
8
単音のベクトル空間
ある2点が以下を満たす(𝑎1, 𝑎2が存在する)とき、
関係~で表す。
𝑥 𝑖
𝑦 𝑖
~ 𝑥 𝑗
𝑦 𝑗
𝑥 𝑖
𝑦 𝑖
− 𝑥 𝑗
𝑦 𝑗
= 𝑎1
4
2
+ 𝑎2
0
3
この関係~は同値関係となる。
 ℤ×ℤ/~によってつくられる同値類は12個あり、これが
12音階に対応している。
オイラー格子(純正律)の一つの特徴を、平面上の格子点、
ベクトル空間、同値類という数学の言葉だけで表現できた!
9
和音の三角形
任意の三和音→任意の三音の組み合わせ
→平面上の格子点からの三点の選び方
3音を(音階名が)異なる音とするには、
ℤ×ℤ/~ の各同値類から代表元を一つずつ選べばよい。
→しかし、各同値類の中の要素は、対応する音階名は
同じでも、振動数比は異なる。
→同値類での考え方では、音階名ごとの和音の分類は
できても、和音の性質は表せない。
10
オイラー格子と和音
オイラー格子
純正律の各音・振動数比を表内に表現。
×
1
9
1
3
1 3 9
25
25
18
25
24
25
16
75
64
225
128
5
10
9
5
3
5
4
15
8
45
32
1
16
9
4
3
1
3
2
9
8
1
5
64
45
16
15
8
5
6
5
9
5
1
25
256
225
128
75
32
25
48
25
36
25
×
1
9
1
3
1 3 9
25 ファ♯ ド♯ ソ♯ レ♯ ラ♯
5 レ ラ ミ シ ファ♯
1 シ♭ ファ ド ソ レ
1
5
ソ♭ レ♭ ラ♭ ミ♭ シ♭
1
25
ミ♭♭ シ♭♭ ファ♭ ド♭ ソ♭
※表内の振動数比の値は1オクターブ内(1<f<2)となるよう2^nで調整済み。
振動数比表示 音階名表示
長三和音長三和音
11
長三和音短三和音
和音の三角形
三和音の性質
=三音間の間隔(比)によって決まる。
振動数比の違いは、3 𝑥1 ∙ 5 𝑦1と3 𝑥2 ∙ 5 𝑦2の違い、すなわち
平面上の格子点の位置関係によって決まる。
同じ性質(例えばメジャーかマイナーか)の和音
=平面上の三角形の平行移動
→三角形の分類と和音の分類を対応づけられる(はず)
和音の関係、変化に何らかの演算(写像)を入れられれば、
代数幾何っぽく扱えないか?
12
旋律の数列
基本の旋律=音階(半音階)
音階=音の並び
→音階は音列であり、数列・点列として考えられる
(各音は振動数比であり、その指数の点であるため)
13
旋律の数列
例:オイラー格子上である20音を選択する
→すべての音階名に対する(純正)長三和音・短三和音
を作れる20音
14
×
1
9
1
3
1 3 9
25 ファ♯ ド♯ ソ♯
5 レ ラ ミ シ ファ♯
1 シ♭ ファ ド ソ レ
1
5
ソ♭ レ♭ ラ♭ ミ♭ シ♭
1
25
ド♭ ソ♭
旋律の数列
20音を並べると・・・
15
ファ♯
ファ♯ シ
ド ド♯ レ レ♯ ミ ファ ファ♯ ソ ソ♯ ラ ラ♯ シ ド
ド♯ レ ファ♯ ソ♯ ラ♯
旋律の数列
矢印を分類する。
同じ色の矢印は、振動数の間隔(比)が同じ。
→4種類しかない!
 :3−1 ∙ 5−1
 :3−1 ∙ 52
 :33
∙ 51
 :33 ∙ 52
16
ファ♯
ファ♯ シ
ド ド♯ レ レ♯ ミ ファ ファ♯ ソ ソ♯ ラ ラ♯ シ ド
ド♯ レ ファ♯ ソ♯ ラ♯
※ 2 𝑛(オクターブ)の違いは無視。
旋律の数列
先ほどの比の間隔を𝑟1,𝑟2, 𝑟3,𝑟4とすると、20音のから作られ
る旋律(音列・数列)は、(1と)𝑟1,𝑟2, 𝑟3,𝑟4の積の列でも表
せる。
例えば…
{1, 𝑟1,𝑟3, 𝑟1 𝑟2,𝑟1 𝑟2
2
𝑟4 … }
しかしどんな比の列でも、20音で作れる音列になっている
とは限らない。
17
旋律の数列・グラフ構造?
とりあえず半音階の端をつないでみよう(簡略版)
→グラフっぽい
旋律にしてみよう
→さらに別のグラフっぽい
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音楽の要素の数学化
和音
<ハーモニー>
旋律
<メロディ>
律動
<リズム>
比の数列
グラフ構造(っぽい)
平面幾何
代数幾何(っぽい)
音の有無の時間的変化
⇒音律外の追加パラメータt?
複数の分野のつながり
⇒ラングランズっぽい…?
和声進行
19
単音
素数の積・同値類・ベクトル空間
参考文献
 音律と音階の科学 小方 厚(講談社 2007)
 数字と科学から読む音楽 西原 稔 安生 健(YAMAHA 2020)
 ピアノの音響学 日本音響学会(コロナ社 2014)
 周波数比の素数指数表現に基づく調性理解モデルとその応用可能
性の検討 白松 俊, 大囿 忠親, 新谷 虎松
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~challeng/SIG-Challenge-
B303/B303-07.pdf
 クラシカル・ギターを止められない
https://classical-guitar.blog.ss-blog.jp/
 ミーントーン大好き!~音程は自分で作ろう~
https://meantone.blog.ss-blog.jp/
 Music Essay - 音楽ひとりごと
http://www.basso-continuo.com/Musik/Dokuhaku-j.htm
 Huygens-Fokker Foundation centre for microtonal music
http://www.huygens-fokker.org/index_en.html
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オイラーの音楽から作る数学の構造@20200628日曜数学会発表資料