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マイカルテ戦略考
~情報の非対称性解消を目指して~
1
2015/12/5 検討時点
検討動機
 自らの病気において、以下の2点の問題
にぶつかっている
① 専門医へのアクセスと総合治療(ケア)
⇒大都市圏しか存在しない専門ケア
⇒専門医へのアクセス方法
⇒医師間連携と患者の無知
② 医療履歴を患者がもつことの弊害
⇒“点”をつなぐことしかできない紹介状
⇒統合化されないカルテ情報
2
①専門医へのアクセスと総合治療(ケア)
~統合治療の必要性
主病
(例「二分脊椎」)
脳神経外科
(脊椎を中心とした神経回り)
小児外科
(幼児期から成長期の総合ケア)
関連症状
消化器外科(内科)、
泌尿器科
(内臓関連の麻痺)
血管外科(内科)
(血管収縮麻痺)
整形外科
(手足、背骨などの変形)
形成外科、皮膚科
(変形部にできる創傷治療)
生活ケア(介護、福祉面)
生活ケア(扶助、経済面)
医療コンサルタント
(医師側への情報提供)
地域福祉課、障害福祉課
社会福祉士等
(扶助公序の提供)
介護福祉士
(身の回りの生活ケア)
ファイナンシャルプランナー、
成年後見人等
(私的側面の補助) 医療保険等の保険組織
(私的セーフティネット)
介護用品メーカー
(身の回りの生活ケア)
理学療法士等
(リハビリ、トレーニング)
※上図は、家族などを除く、第三者サービスのみに限定しています 3
①専門医へのアクセスと総合治療(ケア)
~相互コミュニケーションの必要性(1)
◆一人の患者に注目しても、関連してくるセクター(前図)
は多い
⇒病院だけとっても、診療科が揃う総合病院でないといけない
⇒生活面での関連サービスへのアクセスを検討していくと、
現状すべてのサービスが提供できるのは大都市圏に限られる
⇒専門医での治療を望む場合でも、医師に紹介できる能力、
もしくは患者側が探せる能力が必要になる
:医療知識に乏しい患者にとっては、医者任せ。
医者の総合的な能力(医療技術だけではない)に依ってくる
4
①専門医へのアクセスと総合治療(ケア)
~相互コミュニケーションの必要性(2)
◆状況は少しずつよくなっているが、患者側の悩みは
変わらない
⇒病院側:医療相談室(メディカルクラーク)
セカンド・オピニオン外来、地域医療連携室の設置
(相談する窓口は増えた)
⇒しかし、窓口が増えたのみで、個人的な相談は医師、看護師に
してしまう。ここで如何に親身な相談をしてくれるか、相談側が
知識を持ち合わせているかが肝になる。
→大病院での「2時間待ち、3分診療」では相談できない
→窓口連携してくれれば御の字のレベル
⇒インターネットなどのメディア媒体も増えたものの、
どれだけの情報量を獲得できるかは「運」次第のところが大きい
5
①専門医へのアクセスと総合治療(ケア)
~断絶された医療システム
◆電子カルテなど医療情報を活用する枠組みは
拡がっているが、システムとして断絶されていることが
多い
⇒例)院外処方
・医薬分離で、医学的判断と薬学的判断が分かれたのはいいが、
患者側としては細かい症状を、病院と薬局で二度説明しないと
いけない
⇒例)院内連携
・IT化は進むが、例えば、カルテと看護などシステムが独立
しており、外来と病棟で2度同じ説明、もしくは問診を書くなどの
処理をしなければいけないことも少なくない
★様々なセクターでもケアが必要になると、その都度、患者もしくは
家族が同じ説明を延々と繰り返さねばならない 6
②医療履歴を患者側がもつことの弊害
~生活圏に縛られる医療圏問題
患者側の欲求
・病気の状況改善が中心だが
+生活状況(経済状況、家族状況など)
+就学、就労状況
など、複合的な要素で判断したい
医療圏A
・1つの医療圏内の
移動は比較的たやすい
(地域医療の枠)
・診療所→中核病院の
移動が多い?
医療圏B
・仕事の転居などで
医療圏が変わる場合は
継続的な治療継続が困難
大都市圏
・専門的な治療を行うには大都市圏
しか困難な場合が多い
(生活圏との相互交流が必要)
7
②医療履歴を患者側がもつことの弊害
~紹介状:点でしかない医療連携
8
同じ院内、医療圏での連携
カルテの相互参照が可能(地域医療の場合は、一部地域に限る)
⇒継続的な治療が可能
異なる医療圏での連携
(地域医療連携がシステム化
されてない場所も含む)
紹介状+レントゲンなどの検査結果情報を「紹介元」の医師が
記載し、「紹介先」の医師へ伝達
⇒患者が持参が基本
⇒問い合わせなどの相互参照は双方医師の努力義務
★「紹介状」システムだと、その時点の患者情報しか伝達されないことが多い
★経過観察で過去情報が必要な場合の情報運搬は、双方の医師の努力的な
部分に依存してしまう
②医療履歴を患者側がもつことの弊害
~紹介状:選択できない医療サービス
9
・医師にも依るが、紹介状はあくまで紹介先がしっかりしていないと、
紹介元が書きたがらないことが多い
・日本の医療は基本的に「フリーアクセス」
⇒患者はどの病院にかかりたいか選択することができる
※高度専門医療を謳う大病院には紹介状が必要なことが多いが、
これは機能分化を進めるためで、必ずしも必須ではない
⇒患者が独自に医療を選択した場合に、そこで医療履歴の断絶が
起こることになる
⇒患者はあくまで医療処置の経過(手術、処置、リハビリ等)は
伝えれるものの、医師が必要とする検査結果や医療履歴は
保持することができない
・・・結果として、継続的な治療ができず、医療の質が担保されない
解決策(案)
10
・患者側に医療情報を提供する形が望ましい
・病院は「検査等を行い、その結果を患者に提供する情報機関」
+ 「その結果を基に診断し、患者の判断を仰ぎ、治療を行う医療機関」
で、あるべき
その動きもある、、、
しかし、各病院が個別にICT化が進む中、それを統合させるのは
十数年先の話になってくると考えられる
・マイナンバー制度
・厚労省が狙うクラウド型電子カルテ政策
(現在のHOTな話題は、クラウド+遠隔医療)
現状の中で、患者と医師側がよりコミュニケーションをとれ、医療の
質を向上できる環境作り(イノベーション)が求められる
ヒント AppleResearchKit
(参考)アップル、医療研究を助けるResearchKit発表。iPhoneユーザーから
データ取得、研究機関に直接送信 - Engadget Japanese
: http://japanese.engadget.com/2015/03/09/research-kit-7-iphone/
最後に
11
・活発化しているヘルスケア市場だけでなく、医療の側
(医師、患者)でも積極的な情報活用を行えるプラット
フォームを作っていく必要があり
⇒まずは個人レベルでも使える、「医療管理手帳」なものを作っては
どうか?(コミュニケーションの道具にする)
⇒医療関係者、プログラマを巻き込んだハッカソンの開催
・日本の場合は、国民皆保険制度なので、医療機関に
競争意識が働きにくい
→ヤブ医者であろうが、スーパードクターであろうが、同じ保険点数
→高齢化社会で、医療の需要が落ちることがない
⇒市場メカニズムが働かない世界で、いかに競争を喚起するか?

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