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1MW海洋温度差発電に向けた技術状況
- 1. 「久米島モデル」から「KUMEJIMA MODEL」へ 1メガワット海洋温度差発電に 向けた技術状況 ２０２３年３月２５日（土） 於 沖縄県久米島 国立大学法人 佐賀大学 海洋エネルギー研究所 池 上 康 之 ２０２３ 久米島海洋深層水フォーラム
- 2. 2 第2次 開発ブーム期に 世界で先駆けて発電開始。 海洋エネルギーとして 日本で最初に系統連系 海 洋 温 度 差 発 電 ２４時間安定して発電可能 （ベース電源としての役割を目指す） 純国産の技術として世界を牽引 2013 年3月30日 初の発電に成功
- 3. 海洋温度差発電の原理
- 4. 海 洋 温 度 差 発 電 とは 海洋温度差発電とは （OTEC: Ocean Thermal Energy Conversion) 海洋の表層部の温海水と深層部の冷海水 の温度差を利用して発電するシステム 海洋の表層と深層（水深1000m）の温度差 海水温の鉛直分布（沖縄・ハワイ） 4 20℃以上の温度差
- 5. 海洋温度差発電のしくみ 他の蒸気タービン発電との比較 発電方法 石炭火力 地熱ﾊﾞｲﾅﾘｰ 海洋温度差 高温熱源 石炭の燃焼熱 (600℃～) 地熱水 (70～120℃) 表層海水 (25～30℃) 低温熱源 表層海水 河川水・地下 水等 深層海水 (5～8℃) 温度差 数百度 50～100℃ 20～25℃ 作動媒体 水 代替ﾌﾛﾝ、ｱﾝﾓ ﾆｱ等 ｱﾝﾓﾆｱ等 火力発電の原理 出典：電気事業連合会 出典：電気事業連合会 冷却用海水 自然に存在する 莫大な小さい温度差から 持続可能的にエネルギーを 取り出すことへの挑戦
- 6. 類似技術との比較 項目 地熱バイナリー 海洋温度差 参考：石炭火力 熱源 高温側 温泉水 地熱 低圧蒸気 工場排熱 表層海水 （温海水） 石炭燃焼熱 低温側 河川水 空冷 深層海水 （冷海水） 海水 （国内の場合） タービン作動流体 ペンタン 代替フロン アンモニア 代替フロン 水（水蒸気） 開発段階 （実証~商用） （実証段階） （商用） 固定価格買取 制度(FIT) 対象 (地熱のみ) 40円/kWh 非対象 (実証段階のため) ― 実プラント 国内20~30箇所 出力最大は 5.1MW(滝上) 海外では100MW を超える例も 沖縄：100kW (2012年) ハワイ：105kW （2015年） 韓国：1,000kW (2019年) ~600MW 多数
- 7. 7 類似技術： Puna Geothermal Plant 出力 38MW 低温の蒸気と、外気との温度差による温度差発電 久米島の姉妹島： ハワイBig Island 画像出典：https://en.wikipedia.org/wiki/Puna_Geothermal_Venture#/media/File:Puna_Geothermal_plant.webp 2018 年時点で島の電気エネルギーの最大 10%
- 9. 9 現在の久米島の 発電コスト推定 （ディーゼル発電） 日本の大型火力発電、 原子力発電のコストレベル 2010年 発電コスト概算 グラフ出典：NEDO 「再生可能エネルギー技術白書」第2版, 平成25年12月
- 11. 項目 陸上式1MW 浮体式10MW 建設費 発電プラント機器： (株)IHIプラント建設 工事費： (株)IHIプラント建設 取水管材料費・工費： 過去の検討事例より 発電プラント機器： (株)IHIプラント建設 浮体、プラント機器の浮体への据付、取水管： (株)ジャパン・マリン・ユナイテッド 維持管理費 定期メンテ費： (株)IHIプラント建設 監視システム計画および人件費： 横河電機(株) 定期メンテ費（機器）： (株)IHIプラント建設 定期メンテ費（浮体）： (株)ジャパン・マリン・ユナ イテッド 監視システム計画および人件費： 横河電機(株) 海洋温度差発電の仕様検討 詳細設計とコスト試算 今回の研究開発内容を反映した基本設計をもとに、専門の民間企業に詳細仕様策定とコ スト見積を外注。 専門の民間企業による詳細仕様策定とコスト見積により、入力値（建設費、維持管理費 等）に関する信頼性を向上させた 2012～2014 NEDO研究開発における1MW, 10MW設計 11
- 12. ⑨海洋温度差発電の仕様検討 発電コスト算定結果 1MW 沿岸設置式 10MW 洋上浮体式 1基目 商用化時 1基目 商用化時 主要入力項目 発電端出力（発電機最大出力） 1,700kW 16,900kW 発電端出力（年間平均） 1,490kW 15,100kW 設備利用率 87.6% 89.3% 所内率 32.8% 34.2% 送電端出力（年間平均） 1,000kW 10,000kW 建設費 (*1) 発電部 33億円 取水管 30億円 (*2) 発電部 30億円 取水管 25億円 (*2) 401億円 277億円(*4) 人件費 2600万円/年 5100万円/年 維持管理費 5200万円/年 4700万円/年 3.3億円/年 2.6億円/年 割引率 0～5% 発電コスト算定手法 国家戦略室「コスト等検証員会委員会」報告書（平成23年12月）による 算定結果 発電コスト[円/kWh] (*3) 36.1～52.5 31.0～44.5 26.0～33.1 18.6～23.5 (*1) 沖縄本島周辺での海水温条件による (*2) 複合利用設備と共用とし、費用（一基目60億円、商用時50億円）の半分を発電設備で負担するとした試算 (*3) 数値の幅は割引率（利子率）の変動幅による (*4) 浮体サイズの縮小によるコスト削減を含む 12 2012～2014 NEDO研究開発における1MW, 10MW設計
- 13. 次世代研究開発 1MW級試算値 1基目： 36.1～52.5円/kWh 商用化時： 31.0～44.5円/kWh 10MW級試算値(*1) 1基目： 26.0～33.1円/kWh 商用化時： 18.6～23.5円/kWh 課題： ■ 実海域において実証されていない。 ■ 浮体(10MW級)は概念設計のみで、初期コスト・O&Mコストの精度が低い。 本実証研究 ■ 実海域実証試験 ■ 浮体の検討(水槽試験) ■ 安全性と運転保守の合理 化の検討 10MW級試算値 (*1) 1基目 ：24.5~31.1円/kWh 10基目 ：20.7~26.3円/kWh • 「次世代」において見積に含 めなかった費用を精算、追加 • コストダウン要素を盛り込ん だ設計見直し コスト精度向上 (*1) 表層－深層の温度差：20℃（＝沖縄近海条件）で試算。温度差の大きい南太平洋地域では、さらに低い発電コストが得られる。 《平成29年度 NEDO成果報告会 発表資料》 2014～2017 1MW, 10MW発電コスト見直し
- 15. 蒸発用水玉型凹凸 凝縮用 ヘリンボーン型凹凸 材質：純チタンASTMG2(耐力280MPa級) 板厚：0.5mm×板幅：~800mm×Coil 材質：純チタン ASTMG2 板厚：0.5mm×板幅：~800mm×Coil 従来：材質：純チタンASTMG1(耐力170MPa) 板厚：0.6mm×板幅：~800mm×Coil 微細凹凸板の工場試作（高強度材) NDEO事業「次世代」伝熱促進表面加工技術に関する研究開発・神戸製鋼所・佐賀大学 15
- 16. ・伝熱性能は条件によっては、対平滑板比で20%以上の性能向上を確認。 500 1000 1500 2000 平滑 水玉凸凹 V字凸凹 2500 3000 3500 4000 平滑 水玉凸凹 V字凸凹 蒸発 媒体入温度：20℃ 温水流量：3L/min 熱通過係数U / W/m2K 熱通過係数U / W/m2K 図 板での蒸発および凝縮伝熱評価結果 凝縮 媒体入温度：40℃ 冷水流量：2L/min 23%UP 21%UP 工場試作（高強度材)の板での伝熱性能評価 NEDO事業「次世代」伝熱促進表面加工技術に関する研究開発・神戸製鋼所・佐賀大学 水玉型凹凸 平滑 ヘリンボー ン型凹凸 水玉型凹凸 平滑 ヘリンボー ン型凹凸 16
- 18. 商 用 化 に 向 け て ： 発 電 コ ス ト の 見 通 し 海洋温度差発電の発電コスト見通し （OEA-J 海洋エネルギー資源利用推進機構による試算値） グラフ出典：NEDO 「再生可能エネルギー技術白書」第2版, 平成25年12月 18 規模拡大によるスケール メリット追求の方向性
- 19. 現在：100kW: 実証試験用 10MW 100MW OTECの商用化戦略: 小規模プラントでは 深層水多目的利用による 経済性の向上、中～大規模プラントでは スケールメリットによる発電コストの削減を 商用化への基本戦略としています。 島嶼地域や遠隔沿岸地域 に展開（発電コスト面で 競争力あり） 発電で使用した後の深層水を空調や各 種産業に副次利用することで経済性を 上げて、小規模島嶼や沿岸地域の市場 に展開 熱帯・亜熱帯の 大規模需要地への 展開 出力1MW級の初号機 （実証）が商用化への鍵 市場展開 市場展開 同じ技術 の拡大 1MW 市場展開 19 海 洋 温 度 差 発 電 ： 商 用 化 ロ ー ド マ ッ プ
- 20. 商 用 化 に 向 け て ： 発 電 コ ス ト の 見 通 し 海洋温度差発電の発電コスト見通し （OEA-J 海洋エネルギー資源利用推進機構による試算値） グラフ出典：NEDO 「再生可能エネルギー技術白書」第2版, 平成25年12月 20 規模拡大によるスケール メリット追求の方向性 汲みあげた冷海水の 副次利用による取水コスト シェアの方向性
- 21. 「 久 米 島 モ デ ル 」 と 海 洋 温 度 差 発 電 21 汲み上げた深層水を3回使うカスケード利用により、全利用者 のエネルギー効率と経済性とを向上させる。 1段目：極力低い温度を必要とする需要 ■海洋温度差発電 2段目：中低温を必要とする需要 ■冷熱農業ﾊｳｽ ■車えび養殖 ■空調利用 ■海藻養殖 ■水産養殖 ■海水淡水化（蒸発法） 3段目：温度以外の特性を活用する産業 ■水産養殖(高温工程) ■食料・飲料等 ■藻類培養 ※高い水温の海洋深層水需要もあり 汲上時：約6℃ 使用後：約11℃ 使用後：約15℃ 水質変化なし 水質変化なし（車えび以外） 多段利用による効率化 → 取水のエネルギー・費用のシェア
- 25. 25 再生可能エネルギーの最大導入・主力電源化を見据えたメリット （系統関連： 今後の課題として、定量的な評価が求められる） ①設置面積の小ささ … 景観保護や災害への強さの意味合いでもメリットが相 対的に大きくなっている。土地の狭い島嶼に好適。 (10MW規模で太陽光の１００分の１) ②日間変動の小ささ … 変動性再エネとは、蓄電池を含めたコスト比較となる（２ ４時間安定） ③年間変動の小ささ … 季節変動はあれど、出力ゼロが何日も続くことはない ⇒ バックアップ電源のコスト削減が可能 ④設備利用率の高さ … OTEC本体だけでなく、系統の設備利用率が高くなる（ 系統の空き容量問題対応や設備投資の削減のメリット） ⑤周波数変動に対するｶﾞﾊﾞﾅﾌﾘｰ・LFC/AFC運転が可能… 一般的なタービンと同様に、 周波数調整を自律的・遠隔に行える（ただし若干平均出力は低下するため、海 洋温度差発電の経済性が悪化する） ⑥慣性力の提供 … 最近のホットなトピックである回転の慣性力や短絡強度も提供でき る。 ⑦太陽光発電大量導入による出力抑制（冬季昼間）の経済性への影響の小ささ …遠 隔出力抑制が容易、また、冬場の昼間の出力抑制であれば経済性への影響は 小（年間発電量における比率が小）。 島嶼向け主力電源としての海洋温度差発電のメリット
- 26. Ongoing OTEC projects 出典：IEA OES （International Energy Association, Ocean Energy Systems） IEA OESによる 世界の海洋温度差発電プロジェクトマップ(計画中含む) 近年の商用化開発の動向 26
- 28. https://www.pacificnote.com/sin gle-post/2018/11/15/kumejima- model-an-island-move-toward- self-sufficiency https://www.youtube.com/watch?v=6vs2Yp1xE0c https://events.development.asia/learning-events/ocean-thermal- energy-conversion-otec-viability-catalyst-transformative-island https://otec.utm.my/files/2021/03/The-1st- SATREPS-OTEC-Training-Report-Booklet.pdf https://www.ccreee.org/news//sids-dock- partners-showcase-otech http://www.apic.or.jp/english/projects/journalis mfellowship-eng.html https://marshallislandsjournal.co m/japan-otec-to-cut-fuel-use/ https://www.iwnsvg.com/2018/11/12/reflection s-of-a-vincy-journalist-on-a-japanese-island/ 「久米島モデル」から 世界の「KUMEJIMA MODEL」へ SIDS（Small Island Developing States）（国連認定の小島嶼開発途 上国 ５２ヶ国） APIC（ 国際協力推進協会） ADB（アジア開発銀行） IWN（海外メディア） Pacific NOTE （太平洋島嶼地域いメディア） Marshall Islands Journal （マーシャル諸島メディア） UTMｰOTEC （マレーシア工科大学OTEセンター） COP２６ （第26回気候変動枠組条約締約国会議）
- 29. 29 エ ネ ル ギ ー ・ 水 ・ 食 糧 自 給 の 島 へ 海の力ですべてのエネルギーを！ ご清聴ありがとうございました。 現在：出力 100kW 実証試験 系統に連系しているが、発電した電力は 本研究所内ですべて消費 次ステップ：出力 1MW 久米島モデル ・ 周辺地域を含めた電力自給産業地域 （久米島町の全電力需要の18％） ・ 海洋深層水複合利用による、エネルギー・ 水・食糧自給のモデル地域へ 将来：出力 10MW エネルギー100％自給 ・ 島の全エネルギー需要（電力換算10MW弱： 電力平均5.7MW、その他液体燃料4MW相当） を、発電と燃料転換により まかなう。