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ブロックチェーン 10から20へ
- 2. ブロックチェーン1.0の基本構造から 浮かび上がる特徴と課題 ○ 主体とリソースの関係を数学的にリンク可能（公開鍵暗号を活用） ○ 分散型でデータを管理⇒単一ポイントの脆弱性は無い ○ P2Pでシステムを維持するインセンティブを埋め込み △ 認証に時間がかかる △ ビットコイン以外のインセンティブ △ 情報の秘匿性 △ 過去のデータは修正不可能→データは増える一方 △ データの検索性 △ 改ざんは検知する努力が必要 △ 秘密鍵の管理 △ スケーラビリティの問題 △ プライバシーの問題 2 これらを解決する ための工夫が百 花繚乱中
- 3. 認証時間、秘匿性、汎用化 3 ブロックチェーン1.0 • ビットコインを実現 • オープンNW • PoW ブロックチェーン2.0 • 通貨から汎用化 • 契約 • 自動実行 • プログラム環境 • 許可型BC ブロックチェーン1.5 • ビットコインのフォーク • パラメータの調整、 部品の入れ替え • ビットコインへの相乗り • ビットコインのブ ロックチェーン上に 独自発行アセットを 載せる
- 5. オルトコイン（ビットコインのフォーク版） • ビットコインのソースコードを活用したフォーク • パラメータ調整・部品の入れ替えにより新たな仮想通貨 を発行する 5 Bitcoin Litecoin DASH Peercoin 通貨単位 BTC LTC DASH PPC 認証時間 10分 2.5分 2.5分 10分 アルゴリズム SHA-256 Scrypt X11 SHA-256 PoX PoW PoW PoW PoS/PoW 発行総量 21,000,000 84,000,000 22,000,000 上限なし 出典：http://jpbitcoin.com/altcoins
- 6. ブロックチェーンに載せるモノの拡大 • ブロックチェーンの余白OP_RETURN (80 bytes)に非 ビットコインの内容を載せる（オーバーレイ） – ネットワークへの負荷の批判 – ブロックチェーンの可能性 – スマートコントラクト、株取引、公証などの可能性 6 TXID Input （どれを使う？） Output （誰にあげる？） Output Index Signature Script （花子の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：次郎の公開鍵ハッシュ）トランザクション 80バイトの隙間
- 7. プライベートアセットの発行 • ビットコインのブロックチェーン上で独自コイン（トークン） を発行 • ブロックチェーン上の余白に記載 • マイナーにはビットコインで手数料が支払われる 7 Counter Party （プラットフォーム） Omni （プラットフォーム、 旧Master coin） Colored coin（概念） Open Asset Protocol（プロトコル） cf. Nasdaq Linq ビットコインのP2Pネットワーク 独自通貨・アセットの発行
- 9. BC適用可能性の拡大 9 種別 例 一般 エスクロー取引、担保付取引、第三者裁定、複数者取引 金融取引 株、未公開株、クラウドファンディング、債券、投資信託、デリ バティブ、年金保険、年金 公的情報 不動産登記、自動車登録、事業者登録、結婚証明、死亡証明 ID 運転免許、IDカード、パスポート、有権者登録 民間 借用証書、ローン、契約、賭け、署名、遺言、信託、エスクロー 各種証明 保険証明、所有証明、公証 有形資産の鍵 家、ホテルの部屋、レンタカー、自動車へのアクセス 無形資産の鍵 特許、商標、著作権、予約、ドメイン名 ブロックチェーンで管理できる可能性があるプロパティの例 出典：Swan, 2015 • 様々なプロパティ（資産）や取引をブロックチェーン上で登録、確認、移転できる可能性
- 10. スマート・プロパティ • 現実の資産と紐付くデジタルのシンボルをブロックチェーン上で管理 • どうやって資産とデジタルシンボルを紐づけるか？ 10 TXID Input （どれを使う？） Output （誰にあげる？） Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） トランザクション① 太郎→花子 対象の秘 密鍵など ・・・ ・・・ ・・・ 家 自動車 著作物 概念図（例） 秘密鍵を使って利用
- 11. スマート・コントラクト 11 TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） 契約内容 契約内容（例） IF もし花子が大会で1等賞を取ったら THEN 太郎は花子に家をプレゼントする スマートコントラクト 台帳上の取引 Block Header TX1 TX2 契約取引 • ブロックチェーンの取引内に契約内容を記述したプログラムを格納
- 12. スマート・コントラクトの動作（例） 12 TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） 家の所有権を管理している スマートプロパティ台帳 家の所有 権 花子の大会での成績 外部情報 TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） 契約プロ グラム 新規取引データの生成 スマートコントラクト 台帳上の取引 太郎の秘密鍵 家の所有権を太郎から花子に移転 • 契約プログラムは第三者のエージェントとして契約の実行を自動管理 • 外部情報に依存（大会結果、第三者の秘密鍵）
- 13. スマート・コントラクト • スマート・プロパティ（所有権の設定）→アクションとの関連付け • スマートコントラクトの3要素 – 自律性（Autonomy）：相互作用なしに契約実行可能 – 自己充足性（Self-sufficiency）：他の力を借りずに実行可能 – 分散性（Decentralization）：中央管理者不要 • “Code is Law”(Lessig) • 完全な自動化を志向 • しかし、完備契約は可能か？ – 大多数の実社会の契約は不完備契約 – 限定合理性、動機づけの問題を考慮する必要 • 特定の仕様や環境に制限を受けず、もっと万能にブロックチェーン 上でプログラムを実行したい – チューリング完全性 – Ethereumの登場 13
- 14. Ethereum（イーサリアム） • チューリング完全なスクリプト言語と実行環境を提供するブロックチェーン・インフラのプロ ジェクト。イーサリアムは分散アプリケーションを構築・配布するためのプラットフォームであ り、プログラム言語である。（Swan） • “Ethereum is a decentralized platform that runs smart contracts: applications that run exactly as programmed without any possibility of downtime, censorship, fraud or third party interference.”(Ethereum website) • クラウドファンディングを原資にEthereum Foundation（スイス）にて開発された。 • サービスは2015年7月に開始（創生ブロック作成） • Solidity（JAVAに似た言語） 14 EVM EVM EVM EVM EVM EVM EVMEVM EVM: Ethereum Virtual Machine TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） イーサリアム言語で 書かれたプログラム
- 15. イーサリウムの世界 15 TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） プログラ ム TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） プログラ ム TXID Output Index Signature Script （太郎の公開鍵、電子署名） Amount （金額） Pubkey Script （宛先：花子の公開鍵ハッシュ） プログラ ム • コンピューティングプラットフォームからのプログラムの独立 “Swarm” File Serving “Whisper” Secret Messaging Reputation Management ？
- 16. 資産管理から契約の自動化、そして汎用化へ 16 スマート・コントラクト スマート・プロパティ イーサリアム • エンティティとモノ の関係を定義 • エンティティ同士の 関係・アクションを 定義 • 自動的に実行可能 • エンティティとモノ の関係を定義 • エンティティ同士の 関係・アクションを 定義 • アクションをブロッ クチェーンに内部化 可能 • 定義できるアクショ ンを汎用・万能化 • 自動的に実行 • エンティティとモノ の関係を定義
- 17. 許可制（Permissioned）ブロックチェーンの登場 17 ノード • Proof of workによる認証時間の問題などは、ノードが信頼できないこと による • またP2Pネットワークにはデータの秘匿性はない • だったら限られた（信頼できる）ノードでブロックチェーンを構成して はどうかという考え方 セキュアな空間 信頼されたノードで構成されたP2Pネットワーク • オープン性に起因した問題解決手法（PoWなど）が不要 • 情報の秘匿性に配慮
- 18. 許可制ブロックチェーンの登場 18 認証（マイニング）の担い手 誰でも参加可能 限られた人だけ Unpermissioned Permissioned 台帳を 見られ る人 誰でも見 られる Public Shared Bitcoin Ripple 限られた 人だけ Private Shared Bankchain Hyperledger R3?
- 19. 公的サービスへの応用（英国） 「分散型台帳技術：ブロックチェーンを超えて ー 英国政府チーフ技術アド バイザーによるレポート」 （原題：Distributed Ledger Technology: beyond block chain, A report by the UK Government Chief Scientific Adviser* ）*Mark Walport 「オープンデータが市民と国家の関係をに革命を起こしたと同様に、これらの技 術の可視性は、金融市場、サプライチェーン、消費者とB2Bサービス、そして公 共機関の登録制度に変革をもたらすだろう。」 Matthew Hancock, 内閣府担当閣外大臣、主計長官 Ed Vaizey, 文化・デジタル経済に関する閣外大臣 19
- 20. 8つの勧告 1. 政府が分散型台帳の利用者としてリーダーシップを発揮すべきである 2. 英国の研究コミュニティは分散台帳がスケーラブル、安全でコンテンツ の正確性を証明できるよう研究に投資すべきである 3. 政府は地方政府における分散型台帳の実証を支援すべきである 4. 政府は分散型台帳に関してどのような規制枠組みを設定できるか検討す べきである 5. 政府は学界や業界と協力し、分散型台帳の統合性、セキュリティ、プラ イバシーのための標準を定めるべきである 6. 政府は学界や業界と協力し、個人と組織について最も効果的で使いやす い識別と認証のプロトコルが開発されるようにすべきである 7. 政府は公的部門における分散型台帳の有用性を評価するため、トライア ルを行うべきである。 8. 政府は、市民サービス内に潜在的なユースケースの創出と知識の集積を 行うため、政府横断的なコミュニティを作るべきである。 20
- 22. ブロックチェーンを応用した 非ヒエラルキー型組織の試み • DAO(Distributed Autonomous Organization) • DAC(Distributed Autonomous Corporation) 22 従 業 員 従 業 員 従 業 員 従 業 員 従 業 員 従 業 員 従 業 員 ユーザ 仕事に応じて手数料＋マ イニング報酬が得られる Block Header TX1 TX2 ・・・ Block Header TX1 TX2 ・・・ Block Header TX1 TX2 ・・・ 資産取引管理業務 ヒエラルキー組織なし、上司なし 資産の登録・移転業務を委託 ブロックチェーン
- 23. 経済的インパクトに関する論点 • 貨幣としての利用 – 国際送金の活性化 – 金融政策の形骸化 – お金の使い道の管理：透明性、無駄の削除 • 台帳管理・DBの代替 – DBのコスト削減は本当か – データの単調増加、検索性 • 組織形態 – ヒエラルキーからの脱却は可能か – 不確実性、機会主義的行動 • 情報システムのアーキテクチャとして – マシン・DBスキーマからの離脱 • 新産業形成 – ブロックチェーン関連産業の形成（莫大なシリコンバレーにお ける投資） 23 注） 本論点は有識者の方々との議論から得られた知見を参考にしています。