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東電福島原子力調査事故報告書(1)
- 1. 東電 福島原子力事故調査報告書におけるプラント状況評価手法の問題点について
木村 俊雄(元東京電力社員*1、自給エネルギーチーム共同代表)
*1:昭和58年4月 入社 福島第一原子力発電所に配属
~昭和59年3月 福島第一・発電部にて研修
昭和59年3月~昭和60年9月 新潟原子力建設所にて試運転及び使用前検査業務に従事
昭和60年9月~平成元年9月 柏崎刈羽原子力発電所にて燃料管理業務に従事
平成元年9月~平成12年11月末 福島第一原子力発電所にて炉心設計管理業務に従事
はじめに
今回の事故対策のためのプラント状況検証とその原因究明のなかでの、プラント状況検証の時点で評価手法そ
のものに大きな問題点があることについて、経験者であり有識者という立場から本日は述べさせて頂く。
また、この内容は、各電力会社、規制サイド、内閣、反原発団体及び再稼働に疑心暗鬼になっている国民の皆
様に向かって述べるものである。同じ過ちを繰り返さないためにも今後の事故検証(プラント挙動)に役立てて
もらえれば幸いである。
記者会見への経緯
東京電力が2012年6月20日に発表した「福島原子力事故調査報告書」は、地震そのものにより原子力発
電所の機能には致命的な損傷はなく、津波来襲さえなければメルトダウン~メルトスルーには至らず、津波想定
に不備があったという内容である。従って、津波に対する防御(防波堤、浸水、電源、注水の強化)さえすれば
既存原子力発電所は再稼働できるというストーリーで新安全基準(原発新規制基準)なるものが動き始めた。
当該発電施設そのものの検証が全く終わっていない状況でのフライングスタートである。
旅客航空機事故などでは、墜落を伴わない故障でも原因究明と対策が終わるまで、当該航空機を飛行させるこ
とはない。これは、客の命を守るためでもあり、航空会社自身のためでもある。万人が納得できるものである。
しかしながら、原子力発電に関してはこの手続きは何故か必要としない。
原因究明の途中段階の「推定の域」で対策が出来上がり、移行期間というアドバンテージを受けながら審査~
再稼働という流れである(規制サイドもこの内容で事故検証に問題ないから新しい安全基準作りをし、再稼働への
道筋をしたと理解している、航空機墜落事故と今回の福島第一原発事故の影響はどちらが人的及び経済的に深刻
なのであろうか)。
発電所そのものの調査が初期段階にある過程で、地震による損傷はないと断定的に結論付けている状況に対し、
私は元東電の原子力技術者として大きな疑問を持ち、今回東電報告書に目を通した。
そこで目にしたのは、旧態依然の東京電力の姿そのものであった。これだけの事故を起こした当事者達(規制
サイドも含め)がこのような内容で「地震で発電所は大丈夫でした。」と言っていることに愕然とした。
元同僚の皆さん、皆さんは東大や東工大を出て、はたまた、アメリカに留学までして何をやってきたのか?
また、これから何を目指しているのか?私は原子力そのものへの疑問が払拭出来ずに途中で退社したが、それ
までは共に、より良い発電所作りに努力してきたではないか?
これだけのことが起きて、放射能がばらまかれ、多くの市民に迷惑をかけた上でこの程度の内容の報告書で地
震の影響は無かったと言ってしまって後悔しないのか?子供たちに対し恥ずかしくないのか?技術者としての
良心は君たちには存在しないのか?
東電はもう生まれ変われないのか?社内の他部門の人たちに、そして今回の事故を現場で支えてきた関係者の
皆さんに申し訳ないという気持ちは生まれないのか?
憤りが湧き上がってきた。悲しさや悔しさも滲み出てきた。