判別分析を用いた4年ストレート卒業の
決定要因に関する探索的研究
松 宮 慎 治 (神戸学院大学)
2014.09.07
大学行政管理学会第18回定期総会・研究集会
於:東北学院大学
研究の目的
・学生の教学に関する個別データを一部
抽出し,分析することで教学支援に資する
・修業年限で卒業した学生(ストレート卒
業)としなかった学生(非ストレート卒業)
の差に注目する
・ストレート卒業の決定要因を推測するこ
とで,留年・退学・休学等を減ずる可能性
を探る
研究の背景(1)教務の職員として
・教務の職員の仕事は「守り」が多い
→学生の学びを支援する「攻め」がしたい
・教務システムは,学生データの宝庫
→毎日直接触れているが,活用できてい
るのか?という問題意識
研究の背景(2)個人として
・大学になじめない,下位層への関心
→ミスマッチによる留年・休学・退学等を減
らしたい(社会的背景/教員の関心と一致)
・個別に学生を支援することの限界
→学生が伸びるポイントを戦略的に探した
い
本研究の主要な結論と含意
◆全学ベースではなく,学部学科ベース
の議論が適切
◆入試種別や下宿生・自宅通学生の別は,
ストレート卒業とあまり関係がない
◆ストレート卒業と関係が深いのは,「出
身校評定」「出身校の公立or私立」「部活
やサークルに所属しないこと」
研究の方法(1)
・分析対象
X大学の2008~2010年度入学生6,901名
の6年間(2008~2013年度)のデータ
・分析方法(1)
修業年限でストレート卒業した学生と,
しなかった学生に対する判別分析
研究の方法(2)
・分析方法(2)
従属変数:修業年限で卒業したorしなかった
独立変数:通学種別(自宅,自宅外),入試種
別(AO入試,推薦入試,スポーツ推薦入試,
一般入試,センター利用入試,その他),出身
校設置者別(国立,公立,私立,その他),出
身校評定,所属団体別(部活,サークル,な
し)
判別分析とは何か?(1)
判別分析(discriminant analysis)とは,
いくつかの集団や群に属する個人につい
て多変量データが得られているときに,各
個人が属する集団同士がなるべくよく区
別されるように,多変量データの重みつき
合計点を作ることを目的としたもの
渡辺洋(1988)『心理・教育のための多変量解析入門 基礎編』より(下線は発表者)
判別分析とは何か?(2)
→母集団からAorBに振り分けられる時,
何の要素がどのくらい貢献しているのか?
が分かる(これが「重み」)
母集団
A
B
判別分析とは何か?(3)
例:潰瘍の発症と性格の関係
性格に関する質問 標準化重み係数
今の仕事は自分の性格にあっていない .28
上司の仕事の進め方には納得がいかない .52
職場では言いたいことが言えない -1.22
1人でいる方が落ち着く .25
健康のことは人一倍気を使う .18
いつも仕事のことが頭から離れない .44
→数値がプラスであればあるほど,潰瘍の発症に貢献している
渡辺洋(1988)『心理・教育のための多変量解析入門 事例編』より(一部改変)
結果(1)全学部
関数
1
全学部
入試AO -.157
入試スポーツ選抜 -.128
出身校公立 .531
出身校私立
出身校その他
出身校評定 .681
所属団体サークル
所属団体なし -.572
→出身校評定が高いほど,ストレート卒業に貢献している.
何らかの団体に所属していないことは,負に貢献している
結果(2)A~D学部
関数
1
A学部 B学部 C学部 D学部
入試AO
入試スポーツ選抜
出身校公立 .733
出身校私立 .500 .552
出身校その他
出身校評定 -.719 -.746 .831
所属団体サークル
所属団体なし .574 .515
→B学部とC学部では,出身校評定の良さが負に貢献している.
D学部はその逆.B学部とC学部では,所属団体がないことが
正に貢献(全学部の時と逆)
結果(3)E~G学部
関数
1
E学部
F学部
G学部
E1学科 E2学科 G1学科 G2学
科
入試AO .238
入試スポーツ選抜 .223
出身校公立 .747
出身校私立 .542 .473 .489
出身校その他 -.443
出身校評定 -.575 -.750 .705 .826 -.549
所属団体サークル .541
所属団体なし .730 .491 -.477 .709
→出身校評定と所属団体がないことの貢献がやはり
顕著だが,正負が学部学科によって全く逆
本研究の主要な結論と含意(1)
◆全学ベースではなく,学部学科ベース
の議論が適切
・全学ベースと学部学科ベースでは,得ら
れる判別関数が違う
・全学ベースで得られた判別関数は,学
生数の多い学部学科ほど貢献度が大き
いという問題がある
本研究の主要な結論と含意(2)
◆入試種別や下宿生・自宅通学生の別は,
ストレート卒業とあまり関係がない
・何の入試で入学したかは,ストレート卒
業の可否においては問題にならない
→AOや推薦による入学のマイナスイメー
ジの棄却
・下宿しているかどうかも影響は小さい
本研究の主要な結論と含意(3)
◆ストレート卒業と関係が深いのは,
要素①「出身校評定」
要素② 「出身校の公立or私立」
要素③「部活やサークルに所属し
ないこと」
本研究の主要な結論と含意(4)
要素① 「出身校評定」
・「出身校評定」が高いことが,ストレート
卒業にマイナスに貢献する学部学科
→不本意入学した学生の,大学生活への
不適応を示唆
・「出身校評定」が高いことが,ストレート
卒業にプラスに貢献する学部学科
→高校時の成績からストレート卒業の可
否が予測できる可能性を示唆
本研究の主要な結論と含意(5)
要素② 「出身校の公立or私立」
・ストレート卒業に対して,公立であることがプ
ラスに貢献する学部学科と,私立であることが
プラスに貢献する学部学科がある
→家庭が裕福かどうか,あるいはカリキュラム
の自由度が高いかどうかといった公私別の要
素から,当該学部学科での学びに適している
かどうかがわかる可能性を示唆
本研究の主要な結論と含意(6)
要素③ 「部活やサークルに所属しないこと」
・ストレート卒業にプラスに貢献する学部学科
が多い
→ストレート卒業するには,正課での学びに集
中するための指導や,正課外での学び合い
が,より学業の充実と関連するような施策の
必要性を示唆
→正課外での活動を推進することが,どの学
生にとっても良いことだとは限らない
本研究の限界と課題
◆1大学の事例のみをとりあげている
◆各要素の発生した時点が統一されてい
ない.入学時点で明らかな要素(入試種
別等)と,学生生活の中で得た要素(所属
団体の有無)を混在させている
◆非ストレート卒業の理由を捨象している.
中にはポジティブな理由もある
参照した書籍
(統計リテラシー獲得のため)
・神永正博(2011)『ウソを見破る統計学』(ブルーバックス)
・河本薫(2013)『会社を変える分析の力』(講談社現代新
書)
・高橋信ほか(2004)『マンガでわかる統計学』(オーム社)
・高橋信ほか(2005)『マンガでわかる統計学 回帰分析編』
(オーム社)
・高橋信ほか(2006)『マンガでわかる統計学 因子分析編』
(オーム社)
・丸山健夫(2008)『ビギナーに役立つ統計学のワンポイン
トレッスン 』(日科技連出版社)
本研究の主要な結論と含意(再掲)
◆全学ベースではなく,学部学科ベース
の議論が適切
◆入試種別や下宿生・自宅通学生の別は,
ストレート卒業とあまり関係がない
◆ストレート卒業と関係が深いのは,「出
身校評定」「出身校の公立or私立」「部活
やサークルに所属しないこと」

判別分析を用いた4年ストレート卒業の決定要因に関する探索的研究