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加齢による聴覚特性の劣化が摩擦音・破擦音の識別に及ぼす影響

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2014/01/11
臨床聴覚コミュニケーション研究会@臨床福祉専門学校にて

Published in: Health & Medicine

加齢による聴覚特性の劣化が摩擦音・破擦音の識別に及ぼす影響

  1. 1. ! 加齢による聴覚特性の劣化が 摩擦音・破擦音の識別に及ぼす影響 安啓一 上智大学 理工学部 特別研究員 2014/01/11 臨床聴覚コミュニケーション研究会にて
  2. 2. 私の背景 • 補聴器の処理 - 臨界帯域圧縮処理(Yasu et al., 2001-2008) • 小児の音声知覚発達 - 言語障害児の/sa/ /sha/の識別 (平井ら, 2006) • ディジタル信号処理 - DAF (delayed auditory feedback)のための環境 をDSP(digital signal processor)で構築(2001 ) • 防災無線のための聞き取りやすい音声 - TOA株式会社との共同研究 (2010 ) コミュニケーションの補償 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 2
  3. 3. 1. はじめに • 高齢者・聴覚障害者をとりまく環境 • バリアフリー • 聴覚特性の劣化・補聴技術の現状 • 研究の目的 • 研究のロードマップ 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 3
  4. 4. 超高齢社会(高齢者白書H. 24年版) • 65歳以上の人口: 23.3% • H. 72年(2060年):40% (2.5人に1人)
          超える予測 • 高齢者に優しい機器やサービス開発奨励 • QoL (Quality of Life) - 安全・快適で豊かな暮らし 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 4
  5. 5. コミュニケーションの重要性 • 聴覚障害によりコミュニケーションが
 阻害される(CHABA, 1988) - 生活する上で必要な情報が得られない - 社会から孤立を感じる 聴覚障害の補償が必要 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 5
  6. 6. バリアフリー • 物理的障壁のバリアフリー - 段差の解消,手すり等 • ソフト面でのバリアフリー - バリアフリー新法(2006) - 報知音,誘導鈴等 - 音バリアフリー研究調査委員会(日本音響学会) ‣ 標準化にむけて研究(倉片2002, 佐藤2004) 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 6
  7. 7. 東日本大震災で発生した諸問題 • 補聴器に関連した問題 - 補聴器が津波に流され
 コミュニケーションが取れず(立入2011) - 補聴器がハウリングを起こし(立入2011)
 避難所に滞在できなかった - 外見からは障害が分からないため
 適切な支援がうけられなかった (中園2011) • 警報音に気付かなかった例 - 音声拡声による津波警報に気付かなかった
 (栗栖2011) 2011年11月日本音響学会研究会
 「東日本大震災と音支援」 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 7
  8. 8. 本研究の目的 • 最終的なGoal:きめ細やかな補聴処理 3.補聴処理への応用 2.音声知覚の劣化(異聴)の理解 1.聴覚特性とその劣化の理解 各項目の積み重ねになっている 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 8
  9. 9. 1. 様々な聴覚障害 • 最小可聴値の上昇  - 高域の閾値上昇が子音の知覚に影響(小寺ら1995) - 老人性難聴(高音漸傾斜型) • 補充現象の出現 - 音の大きさのダイナミックレンジ低下(Villchur, 1974) • 時間分解能の低下 - Gap知覚の弁別域が広がる(Fitzgibbons1996) - 話速の速い音声の聴き取り低下(今井ら2011) • 聴覚フィルタの広がり - 周波数分解能の低下(Glasberg and Moore 1994) 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 9
  10. 10. 様々な音素 IPA 国際音声記号 2005 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 10
  11. 11. 閾値と音声知覚の関係 小寺1995より 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 11
  12. 12. 様々な環境での補聴 • 公共空間 - 残響の影響を抑える処理(Arai, 2011) ! ! • テレビ・ラジオ - ゆっくりしゃべる処理(話速変換) ‣ 話速変換処理(今井ら1999,禰寝1995) ! • 補聴器 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 12
  13. 13. 補聴器 • ディジタル補聴器 - アナログ型に比べ多彩な処理 • AGC(Automatic Gain Control 自動利得調整, 
 Steinberg 1937)  - 突発的な入力音を抑圧 - 補充現象の補償 ‣ 振幅の変化により,手がかりが影響を受ける可能性 • ビームフォーミング・雑音抑圧 - 複数マイクによる処理聴きたい方向の音を聴取 ‣ 摩擦性の子音を抑圧してしまう可能性 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 13
  14. 14. 補聴処理 • 聴覚フィルタの広がりを補償 - スペクトルの山と谷を強調
 (Stone1992, Baer1993, Yasu et al. 2008, 村瀬ら2005) - 実用化に向けた検討(森本ら2011) • 子音強調 - 定常部抑圧処理(小林ら2008) ‣ 高齢者にて明瞭度改善 個々の子音の聴き間違い(異聴) を考慮した処理は少ない 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 14
  15. 15. 研究のロードマップ 補聴処理の開発 アプローチ 3.補聴処理への応用 本論文 2.音声知覚の劣化(異聴)の理解 1.聴覚特性とその劣化の理解 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 15
  16. 16. 摩擦音・破擦音の異聴 • 摩擦音・破擦音の異聴 1. 高周波数域に子音の主要成分 - 閾値の上昇の影響を受ける可能性 2. 持続時間により識別が変わる - 時間分解能の低下の影響を受ける可能性 3. 立ち上がりの傾斜によって識別が変わる - 補充現象の影響を受ける可能性 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 16
  17. 17. 摩擦の長さに関する デモ 1 「し」と「ち」
  18. 18. 無声摩擦音・破擦音の識別 (CV) 摩擦部の立ち上がり時間Rと定常部Sを変化 →途中で破擦音から摩擦音に聞こえ方が変化  (Howell and Rosen, 1983; Kluender and Walsh, 1992) 徐々に Sを 長くする ち S (ms) 0 若年者 RS 10 20 30 40 ! 50 ! ! 60 R 70 80 高齢者 S ! 90 ! ! 100 し 110 120 130 140
  19. 19. 摩擦の長さに関する デモ 2 「いし」と「いち」
  20. 20. 無声摩擦音・破擦音の識別 (VCV) 先行母音V1とC間の無音区間SIを変化   →途中で摩擦音から破擦音に聞こえ方が変化  (Dorman et al.,1980; Gordon-Salant et al., 2006) いし SI (ms) 0 若年者 10 20 ! 30 ! ! 40 いち 高齢者 50 60 ! 70 ! ! 80 90 100
  21. 21. 摩擦音・破擦音 p.11 図1.1 • 摩擦音と破擦音を識別するキュー
 →主に摩擦部の持続時間 立ち上がり時間 R 定常部持続時間 S 無音区間 SI /i/ V1 立ち下がり時間 F /i/ C V2 各パラメータの持続時間によって識別が変化 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 21
  22. 22. 先行研究との関係 英語 日本語 Mitani et al. (2006) 語頭 「し」 「ち」 CV 語中 語末 「いし」 「いち」 VCV 若年 Howell and Rosen (1983) Kluender and Walsh (1992) 天野ら (2009) 本論文 (実験1-4) 高齢 Dorman et al. (1985) 本論文 (実験1, 2, 5, 6) 若年 Repp et al. (1978) Dorman et al. (1980) 高齢 Gordon-Salant et al. (2006) 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 本論文 (実験4) 本論文 (実験5, 6) 22
  23. 23. 2. 実験 • 参加者 • 聴覚特性の測定 • 刺激と手続き 第5章 高齢者を対象とした実験 第6章 総合考察      より
  24. 24. 参加者 • 高齢者   - 人数:59名 (男性17 名,女性 42 名) 年齢:62-83歳,平均 72.2歳 補聴器装用無し 東京都千代田区在住 実験に先立ち聴覚特性を測定 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 24
  25. 25. 3つの聴覚特性の測定 1.  摩擦音閾値 • 摩擦音の最小可聴値 2.  時間分解能 • 言語音による無音区間の弁別 3.  補充現象の有無 • ラウドネススケーリング(音の大きさの主観的評価) 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 25
  26. 26. 1. 最小可聴値の測定 • 摩擦音に対する最小可聴値(摩擦音閾値) - 片耳ずつ測定 - CV 刺激の摩擦音を使用
 (R=60ms,S=120ms,F =22ms,T = 202 ms) - 純音閾値と同じく極限法によって測定 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 26
  27. 27. 2. 時間分解能の測定 • VCV 刺激 の一部を使用 • 無音区間長SIに対するJND - 摩擦部長 (R = 60 ms, S = 120 ms, F = 22 ms) • 3 区間 3 肢強制選択法
 (three-interval three-alternative forced choice,3I3AFC) - 3つの刺激から、違うように聞こえた刺激を選択 - 正解するとSIが短く(難しく)なる 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 27
  28. 28. 3. 補充現象の測定 • ラウドネススケーリング • 刺激:中心周波数 4 kHz の狭帯域雑音
    持続時間は 1.5 s • 呈示音の大きさを7段階で評価 - 1.きこえない ∼ 7. ききたくない 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 28
  29. 29. 摩擦音閾値と時間分解能の結果 p.57 図6.1 悪 ! ! ! ! ! 時間分解能 ! ! ! ! ! ! 良 良 摩擦音閾値 5つの群 悪
  30. 30. 刺激 • 「し」「ち」:男性日本語母語話者による発話/ʃi/を加工 !R ! S ! F ! 0  –  90  ms      (10ms  step) R 0  –  180  ms  (10ms  step) 22  ms                     • 「いし」「いち」: 同じく/iʃi/を加工 R+S  20,  120,  180  ms F 22  ms                     SI 0  –  100  ms  (10ms  step)   V1 229  ms 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 /i/ V1 /i/ C V2 30
  31. 31. 手続き • 防音室内にてヘッドホン受聴 • 2者択一 
 (two alternative forced choice; 2AFC) - 「し」か「ち」 - 「いし」か「いち」 - タッチパネルにて回答 し ち 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 31
  32. 32. 3.結果・考察 • 高齢者における聴覚特性ごとの比較 • CV刺激の場合 • VCV刺激の場合 第6章 高齢者を対象とした本実験 第8章 総合考察      より
  33. 33. 実験結果:/ʃ/反応率 /ʃ/反応率 Response Rate of S • R と S の変化に対する摩擦音反応率 し 1 0.5 0 180 120 ち 60 0 0 S (ms) 定常部 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 60 30 R (ms) 90 立ち上がり 33
  34. 34. Response Rate of S 1 考察: CV刺激 0.5 0 180 120 60 0 0 S (ms) 60 30 R (ms) 90 し p.83 図8.3 添字なし:健聴 添字t:時間分解能低下 添字f:摩擦音閾値の上昇 添字r:補充現象有 ! Eとその他の群を比較: 摩擦定常部 定常部 短 ち - R 短:破擦音から摩擦音へ異聴 - R 長:摩擦音から破擦音へ異聴 聴覚特性の劣化が重なると
 長 異聴の傾向が強くなる 立ち上がり 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 34
  35. 35. 考察: VCV刺激 いし p.84 図8.4 高齢健聴 /i/ V1 いち 高齢難聴 /i/ C V2 ! - SI が長くなるにつれて - 破擦音から摩擦音へ異聴 - 聴覚特性の劣化が見られると
 SIの変化に影響を受けない 無音区間 摩擦部 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会                  35
  36. 36. 摩擦部と無音区間の関係 p.80 図8.1 添字なし:健聴 添字t:時間分解能低下 添字f:摩擦音閾値の上昇 添字r:補充現象有 聴覚特性の劣化が重なるにつれて
 無音区間からCに重みが変化 
 (トレーディングの重みが変化) 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 36
  37. 37. 4.まとめ • 本研究を通して得られた知見 • 補聴処理に向けて • 現状と今後の課題 • 謝辞
  38. 38. 研究のロードマップ 3.補聴処理への応用 本論文 2.音声知覚の劣化(異聴)の理解 1.聴覚特性とその劣化の理解 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 38
  39. 39. 本論文で得られた知見 • 聴覚特性の劣化が重なるにつれ異聴が増加 - 異聴の程度を予測するためにも,様々な角度での
 聴覚特性の測定は有効 - 特に補充現象が陽性:異聴の度合いが大きい • 個々の聴覚特性と異聴の関係 - 明確な切り分けが難しい点も 種々の聴覚特性を検討 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 39
  40. 40. 補聴処理に向けて • 補聴処理を行う上での注意点 • 同じ聴覚特性の劣化でも、CV・VCVで
 異なる傾向 - CV刺激:「し」→「ち」への異聴 - VCV刺激:「いち」→「いし」への異聴 音素毎に補聴処理を行う場合でも 一律の処理を行うことは危険 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 40
  41. 41. 目指す補聴処理 • 理想: - 対象者の全ての異聴のパターンが解明 - 全ての対応した処理を適応可能 - 問題点: ‣ 音素の組み合わせや発話方法は無数に存在 ‣ 対象者おのおのの異聴パターンも異なる 聴覚特性の劣化から異聴結果を予測できれば
 対象者にあわせた補聴処理が実現可能 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 41
  42. 42. 現状と今後の課題 • 個々の聴覚特性の独立した影響について - それぞれの聴覚特性と異聴の関係についてさらなる調査 - 聴覚特性の劣化から予測される異聴の傾向との差について • 摩擦音閾値の上昇,時間分解能の低下,
 補充現象についてのモデル化 - 実験結果とモデルによる予測結果との一致度を議論 • 補聴処理への応用 - 摩擦音・破擦音の判定処理 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 42
  43. 43. 最近の話題 • 摩擦部の長さが結局は一番大事なので は?? - Yasu et al., Weighting of acoustic cues shifts to frication duration in identification of fricatives/affricates when auditory properties are degraded due to aging , INTERSPEECH 2013 • 破擦音の手がかりとなるバースト(もし くはクリック音)は知覚に影響するか? - 日本音響学会2014春(3/10-12@日大御茶ノ水) • 音声音響のデモページ - http://splab.net/APD/ 2014/01/11   臨床聴覚コミュニケーション研究会 43

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