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世界の食品・原材料・添加物卜ピ、ソクス⑥
養殖は魚介類生産進化の決定要因となりうるか!?
AquaBounty社 一 GMOAquAdvantageSalmon (遺伝子組換え鮭)
IFTフードテクノロジー誌 編集長 NeilMermelstein氏による報告と最新動向と展望について
フードテクノロジー誌エディター: ToniTarver
翻訳・ライテイング久保村喜代子
1.はじめに
養殖とは,人類の消
費やスポーツフイツシ
ングにより絶滅寸前に
ある種の個体数をキ−
NeilMermelstein氏 プするために,受精能
1'ρllOW or11:'1 IS
Edit~;E~eri~s~~fFood力を管理した状態で,
Technology 海水魚,淡水魚,甲殻類,
植物を生産する事であ
る。養殖は4,000年以上前から行われてきた
技術であるが,最近の40年で技術革新が急速
に進み,最新の食品製造技術分野として位置
づけられている。
国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書
「2012年世界の漁業と養殖の現状Jによると,
世界の水産物の捕獲量は, 1990年代半ば以降
横ばいとなっており,養殖生産の増加が世界
の水産業成長の原動力となっている。世界の
水産物消費における養殖の貢献度は1980年代
の9%から2010年には47%まで増大した。野
生の魚が限りある資源であるのに対し養殖は
魚のタンパク質を世界の人口成長に合わせて
増産していく唯一の方法である,と FAOは
ている。養殖では鮮化から消費まで全般
的な制御が可能となりつつある。水産物の
トータルな生産コストを減少し小売市場に
おいてはより安定的に高品質な製品を提供で
きる手法である。
80
AquAdvantageSalmon
2.養殖システムの規制と認定
海から遠い内陸部にある養殖油,閉ざされ
たコンテナ室内の再循環システム,屋外での
再循環システム,ケージや自然に浮遊した囲
いネット,自然な水の流れを利用したフロー
スルーの導水システムなど多種多様な養殖シ
ステムが存在する。養殖システムの良否につ
いては世界中で窓見を異にしているが,安全
性と持続可能性を踏まえた養殖システムおよ
び作業方法の基準や認証の設定が進められて
いる。米国において養殖は,米国食品医薬品
局(FDA),農務省,米国環境保護庁,米国
海洋大気庁(NOAA),国内魚類野生生物局,
州および地方の機関が共同で規制している。
FDAは養殖過程において使用される薬
剤の承認を行っている。水産物加工業者は
HACCP(HazardAnalysisandCriticalControl
Points)に必要な手段として提携する養殖業
者にこの承認を要求している。またFDAは他
の国家機関や各州、lの行政機関と協力して,兵
月干リフードケミカル 2013-11
類や甲殻類の衛生管理についての認証フ。ログ
ラムを実施している。
NOAAは検査プログラムのための任意有料
サービスを提供し,製品の品質評価等級付け
を行い,証明書を供給している。
JIFSANCTointInstituteforFoodSafetyand
Nutrition;食品安全と栄養のための合同研究
機関)は,メリーランド大学と FDAと共同で,
GoodAquaculturePractice (GAP;水産養殖
工程管理手法)プログラムを作成した。環境
資源維持手法,製品品質,安全性に対しての
保証を行い,効率的で信頼できる水産養殖の
発展を促進するための手引きとなっている。
2013年2月, JIFSANはFDAの輸入規制を遵守
するために海外の水産養殖業者のためのオン
ライントレーニングモジュールの提供を開始
した。このトレーニングモジュールはどのよ
うにFDAが養殖水産物のための薬剤を規制
するかを明確にしている。 FDAの新しい動物
医薬品評価のための獣医局センターは,他の
政府機関や水産養殖協会と連携し養殖産業
従事者が利用可能な,安全かっ効果的な薬剤
の数を増やすための活動をしている。
FAOは「動物の健康と福祉,食品の安全性,
環境保全性および、水産養殖システムの社会経
済的側面のための認定基準開発における最低
限度の基準」を発刊している。他にも多くの
公的機関が環境と持続可能性の問題に取り組
んでおり,さまざまな規格や認証のガイドラ
インなどを作成している。
小売業者らは近年,購買する魚が持続可
能な方法で生産され,消費者の健康,環境
保全を尊重し,児童労働などの倫理的社会
的問題に対処する方法で処理している事の
保証を必要としている。例えば, Walmart
(www.corporate.walmart.com) は , 水 産 物
の販売に際し,販売する全ての鮮魚および
冷凍魚,養殖および天然漁獲物について持
続可能な方法で生産していることに係る第
三者機関での認証を要求している。羽市ole
FoodsMarket(www.wholefoodsmarket.com)
は養殖水産物に関する基準を設定, Costco
WholesaleCorporation(www.costco.com)は
MarineStewardshipCouncil (海洋処理協
会)とAquacultureStewardshipCouncil (水
産養殖処理協会)と共に環境と持続可能性の
ガイドラインを定め総合的に認証しており,
水産物について供給源を一本化する方向で動
いている。
表 1 水産物養殖関連団体
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Aquacul鈎reSt君”ardshlpC骨割控訴l
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81
3.遺伝子組換え養殖アトランティック
サーモン(北大西洋産,同沿岸河川に遡
河するタイセイヨウサケ)
鮭や海老は世界中の水産物市場で、最も多く
販売されている水産物である。米国水域では
太平洋鮭の商業漁獲が禁止されているため,
米国で消費されるアトランティックサーモン
の94%は輪入されており,そのほとんどが
ヨーロッパ産である。また消費されている鮭
のうち3分の2が養殖である。
消費需要増に伴う野生アトランティッ
クサーモンの個体数窮境を軽減するのが,
24年 以 上 か け て 開 発 さ れ たAquaBounty
Technologies社(www.aquabounty.com) の 遺
伝子組換え養殖技術で育ったAquAdvantage
Salmonで、ある。同品は他の養殖アトラン
ティックサーモンのおよそ半分の期間で市場
流通サイズの7lb-lllb(約3∼ 5kg)に成長
する。同社はAquAdvantageSalmonが生態環
境に影響を及ぼさないように,養殖場には浮
遊性ネットの囲いをつけ,不妊の雌鮭のみを
飼育している。本技術は世界の養殖鮭の99%
以上で利用されている。
1989年に開発された当初の遺伝子組換え鮭
はキングサーモン成長ホルモン遺伝子を野生
のアトランティックサーモン受精卵(日が見
えるまで、に育った卵)に挿入した。この遺伝
子組換えラインは現在まで10代に渡りその特
質を遺伝させている。
FDAはFederalFood,Drug,andCosmetic
Act(連邦食品医薬品化粧法)による新しい
動物医薬品規定に従い遺伝子組換え動物を規
制している。 AquaBountyTechnologiesネ土は
1995年,新しい食素材として本品を申請したo
FDAは本品の安全性データと技術について
評価した後,外部専門家による獣医学諮問委
員会を開催し, 2010年9月に「遺伝子組換え
鮭は安全性において既存のアトランティック
サーモンと同等で、あり,提案された使用条件
82
下で環境に脅威を与えることはない」との予
備的評価を報告した。
FDAはEA(EnvironmentalAssessment;環
境アセスメント)ドラフトを2012年12月,
FONSI(FindingofNoSignificantImpact;米
国環境影響アセスメント評価制度)を2013年
2月に発表し, 2013年4月初日までパブリック
コメントを募集した。スクリーニング段階で
EAが行われその結果が公表され,意見募集
を行い,環境への影響が微小であると判断さ
れると FONSIとして分類され,評価書を作
成せずに使用が許可されるという仕組みであ
る。現時点(2013年10月)では既にパブリッ
クコメントは締め切られているが,本件につ
いてその後FDAからの発表は未だない。 FDA
の広報担当者によると, FDAは全てのパブ
リックコメントに目を通しており,意見を参
照してより良いEAおよびFONSIの作成を進
めている。この作業にかかる時間を現段階で
予測するのは難しいとしている。
AquaBountyTechnologies社セールスマー
ケ テ イ ン グ 副 社 長HenryC.Clifford氏 は
「AquaAdvantageSalmonは栄養学的かつ生物
学的により早く成長する以外は通常の鮭と同
等であり,環境に有害な影響を及ぼすことは
ないJとしている。
同社の事業計画によると, AquaAdvantage
Salmonはカナダのプリンスエドワード島にあ
るFDAの承認を受けた施設において三倍体(全
て雌個体)を生産し,卵に日(小黒点)が見
える位に発育させてからパナマ内陸へ輸送し,
専用タンクにおいて市場で販売されるサイズ
まで成長させて漁獲する。同社が所有する両
施設のある場所は,完全に陸地で自然魚がい
ない場所である。鮭が逃げ出せないように囲
われており,仮に逃げることがあっても自然の
中に戻って生きていくことは不可能である。そ
のため現存の野生鮭との間で遺伝子が交差す
る可能性や,組換え遺伝子の野生種への流出
による突然変異のリスクを避けられる。
月干リフードケミカル 2013-11
現在アラスカで養殖されている鮭のプール
FAOにおいてアトランティックサーモンの
海洋ネット囲いによる養殖は長い間論議の的
となっている。最大の問題は,限られた狭い
地域で発生する飼料残j査や魚、糞を栄養とした
環境汚染である。魚粉や魚油を餌とする鮭生
産では養魚場で化学的処理により汚れを抑え,
また魚の病気を抑えるために動物用医薬品や
抗生物質を使用していることが多い。こうした
養殖の魚が脱出して野生の鮭と交わると地域
化学汚染や病気を巻き散らかす可能性もある。
生け賛の中では,養魚数の多さ,混雑ぶりが問題になっ
ている
月刊フードケミカル 2013-11
「AquAdvantageSalmonの 申 請 は パ ナ マ
唯一の成長産業を育てる意味もある」と
Clifford氏は語っている。海洋から 100キロ以
上離れた内陸地でFDAによる立ち入り検査
が行われた。この検査からさらに再考し,鮭
を監禁するための水産養殖システムは21のバ
リアで二倍体鮭を閉じ込め,さらに脱出を妨
げるいくつかのハードルが含まれている。鮭
にとって致命的なのは高温環境である。環境
の自然な熱によるバリアで管理することによ
り,個体を養殖場内部に封じ込め海洋への移
動を予防し,万が一逃げ出した鮭がいても自
然に生き抜くことはできない。さらにこの鮭
は全て不妊の雌であり,たとえ脱出を成し遂
げても環境において他の魚と生殖活動が確立
できない。 AquAdvantageSalmonの養殖は,
従来の海洋養殖より資源、維持に貢献し,環境
にも{愛しい。 AquaBountyTechnologiesネ土は
今後はパナマの現場で、AquAdvantageSalmon
の生産を行い,米国内で加工した製品を輸出
していくことを目指している。
FDAに よ るAquAdvantageSalmonの 承 認
は,米国における鮭の輸入,販売,消費量を
増加するであろう。パナマからの鮭の輸出は
パナマにおける商業生産の活性化,消費拡充
にも貢献する。そして何よりもパナマ人の規
制要件に合致,遵守していなければならな
い。これは同社がAquAdvantageSalmonを生
産するあらゆる国で当てはまる。仮に同社が
鮭の新しい動物匿薬品について承認を受けた
なら,各国の生産現場においての使用を見極
めるために,これらの現場ごとに補足申請を
83
提出しなければならない。補足申請は本申請
と同様の精査を受ける事になる。承認のため
に,各現場はFDAと当局公共事業機関により
さらに厳格な条件で調査される。
FDA承 認 が2013年以内に得られた場合,
2014年にはAquAdvantageSalmonが出荷発送
され米国内のストアに出現するであろう。
4.さまざまな識者や専門家の最新の見解
遺伝子組換え鮭について, FDAは「食べて
も安全である Jと表明している。しかし,米
国消費者協会の主席科学者MichaelHausen氏
はFDAのこの評価と見解に対して反論のコ
メントを出している。
MichaelHausen氏
「魚は常に濡れており, しかもあちらこち
らに動き回る不安定な生物である。正式な審
議は依然として閉ざされた密室の中で行われ
ている。そして全てのデータはメーカーであ
るAquaBounty社によって供与されたもので
ある。遺伝子スプライシング(形成した組換
えDNAを生細胞に導入して複製させる技術)
による遺伝子組換え鮭が認可されることによ
り,遺伝子が利益至上主義で操作される傾向
になっていくのではないだろうか。
また,アラスカ州上院議員MarkBegich氏
は,「FDAはこの決定にあたり,人々がこの
危険で冒険的な開発を望んでいるか,本当に
必要性があるかを公表して問うことを考慮す
べきであるJと語っている。
これらのコメントに際してAquaBoun付社
RonStotish氏は「このプロジェクトを批判し
ている人々は, FDAにより公表されたデータ
84
を読んでいない事は明白である」と主張して
いる。
米国ではこのように公表されたデータを多
くの識者が見てコメントを発表している。一
方,わが国日本では,何年か前の特定保健用
食品のデータに対して,サンプル数がいくつ
の臨床実験の結果であったかがほとんど話題
にならない。米国では新しい技術による鮭の
データの個体数はいったい何匹であったの
か?当然,専門家により指摘されている。あ
るメディアによれば今春のパブゃリックコメン
ト締め切りまでに100万通以上のコメントが
寄せられたそうだ。
5.食用としての鮭
鮭はおよそ80兆円にのぼる米国水産市場
の半分以上を占める食品であり,消費量は
増加の一途を辿っている。遺伝子組換え食
品とその背景の科学技術については常に論
争となり,消費者は「人類の健康と環境へ
の影響力」について強い疑問を投げかける。
AquaBounty社はこうした声の激しい反対に
もめげずプロジェクトを進行し続けている。
魚卵は全て雌であり野生に逃げ出しでも交配
不可能である事,水産物由来の高品質なタン
パク質を提供できるこの製品は消費者と環境
に利益をもたらすものである事, トレーサピ
リティを明らかにできる事を強く訴え,この
プロジ、エクト開発の継続と結論に導いた。
2020年までに動物性タンパク質のグローバ
ルな需要は 1年につき 2,000万トンと予測さ
れている。既存の鮭水産養殖の技術と比較し
た場合,より少ない時間でより多量の魚を
産できる組換え鮭は,市場のニーズに応える
ものになるだろうと主張している。
月刊フードケミカル 2013-11
AquaBounty社の鮭は「大洋;海洋Pout
(TrispoterusLuscus)Jと呼称される,ヨーロツ
パや大西洋岸に生息する鱈科の食用魚の不凍
液からの遺伝子によって,組換え交配種の成
長速度を増すように設計されている。巨大に
成長した鮭を,人々は「フランケンシュタイ
ンブイツシュ! Jと日乎ぶ。そのネーミングか
ら人々の印象が推し量れるところだ。
6.GMO∼鮭と表示問題から
米国では栄養成分やアレルゲンなどの表示
は必須であるが, AquaBoun匂r社の技術によ
り生産される鮭は生物学上通常の鮭と同等で
あり,健康上の問題はないと FDAが決定を下
している。そのため現状の法律では遺伝子組
換え製品としての表示は不要である。
7鮒市場展望
人類初の遺伝子組換え水産物である鮭に対
し,米国の大手小売業者ら2,000店以上が参
画し,℃ampaignforGeneticallyEngineered
-FreeSeafood ”とする不買表明が2013年
3月に発表されている。参画したのは大手
がTraderJoe’s367 店舗, Aldi1,230 店舗,
WholeFoods346店 舗 , 地 域 小 売 がMarsh
Supermarkets(インデイアナ,オハイオ)
93店舗, PeeNaturalMarkets(ワシントンナ!?)
9店舗, Co-OPS(ミネソタ,ニューヨーク,
カリフォルニア,カンザス),さらにその後
ウォルマート,コストコ,セイウェイと米国
全土に広がっている。
月干リフードケミカル 2013-11
市販された最初の遺伝子組換え食品は, 20
年近く前のFlavrSavr(最初に商業的に
ライセンス化されたトマトの品種)である。
日持ち向上を目的として米国カリフォルニア
のバイオベンチャーである Calgenネ土によっ
て開発され, 92年FDAにより承認され, 94年
に世界で始めて販売が許可された。 IFI'年次
大会でさまざまな発表がなされたのが記憶に
ある。このトマトは賞味期限が長く,風味に
違和感がなかった事から当初は好意的に市場
に受け止められたが,その後さまざまな風評
で人気を落とし今は栽培されていない。
日本人の食文化と鮭のかかわりを考える
時,食べものの工業化の道のりに思いを馳せ
る。養殖はサイエンスの進化と共に変わりゆ
く食の典型的な姿である。
FDAによる遺伝子組換え水産物の評価を数
十件が待つ状態だ。遺伝子組換え鮭がFDAの
承認を経て商業化に向かう道程は厳しいもの
になるであろう。商業化で成功するかしない
かの鍵は全て消費者が持っている。 FDAの承
認に際してサイエンスデータが公表されると
世界中から科学的評価が下されることになる。
食品産業に“サイエンスありき!”。それ
とともに消費者教育の根本にいったい何が必
要であるか?今一度わが国の現状に思いを
せる日々を過ごしている。巨大企業のビジネ
スと食糧問題, FDAはひとつのターニングポ
イントを迎えている。
85

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養殖は、魚介類生産進化の決定要因となりうるか?

  • 1. 世界の食品・原材料・添加物卜ピ、ソクス⑥ 養殖は魚介類生産進化の決定要因となりうるか!? AquaBounty社 一 GMOAquAdvantageSalmon (遺伝子組換え鮭) IFTフードテクノロジー誌 編集長 NeilMermelstein氏による報告と最新動向と展望について フードテクノロジー誌エディター: ToniTarver 翻訳・ライテイング久保村喜代子 1.はじめに 養殖とは,人類の消 費やスポーツフイツシ ングにより絶滅寸前に ある種の個体数をキ− NeilMermelstein氏 プするために,受精能 1'ρllOW or11:'1 IS Edit~;E~eri~s~~fFood力を管理した状態で, Technology 海水魚,淡水魚,甲殻類, 植物を生産する事であ る。養殖は4,000年以上前から行われてきた 技術であるが,最近の40年で技術革新が急速 に進み,最新の食品製造技術分野として位置 づけられている。 国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書 「2012年世界の漁業と養殖の現状Jによると, 世界の水産物の捕獲量は, 1990年代半ば以降 横ばいとなっており,養殖生産の増加が世界 の水産業成長の原動力となっている。世界の 水産物消費における養殖の貢献度は1980年代 の9%から2010年には47%まで増大した。野 生の魚が限りある資源であるのに対し養殖は 魚のタンパク質を世界の人口成長に合わせて 増産していく唯一の方法である,と FAOは ている。養殖では鮮化から消費まで全般 的な制御が可能となりつつある。水産物の トータルな生産コストを減少し小売市場に おいてはより安定的に高品質な製品を提供で きる手法である。 80 AquAdvantageSalmon 2.養殖システムの規制と認定 海から遠い内陸部にある養殖油,閉ざされ たコンテナ室内の再循環システム,屋外での 再循環システム,ケージや自然に浮遊した囲 いネット,自然な水の流れを利用したフロー スルーの導水システムなど多種多様な養殖シ ステムが存在する。養殖システムの良否につ いては世界中で窓見を異にしているが,安全 性と持続可能性を踏まえた養殖システムおよ び作業方法の基準や認証の設定が進められて いる。米国において養殖は,米国食品医薬品 局(FDA),農務省,米国環境保護庁,米国 海洋大気庁(NOAA),国内魚類野生生物局, 州および地方の機関が共同で規制している。 FDAは養殖過程において使用される薬 剤の承認を行っている。水産物加工業者は HACCP(HazardAnalysisandCriticalControl Points)に必要な手段として提携する養殖業 者にこの承認を要求している。またFDAは他 の国家機関や各州、lの行政機関と協力して,兵 月干リフードケミカル 2013-11
  • 2. 類や甲殻類の衛生管理についての認証フ。ログ ラムを実施している。 NOAAは検査プログラムのための任意有料 サービスを提供し,製品の品質評価等級付け を行い,証明書を供給している。 JIFSANCTointInstituteforFoodSafetyand Nutrition;食品安全と栄養のための合同研究 機関)は,メリーランド大学と FDAと共同で, GoodAquaculturePractice (GAP;水産養殖 工程管理手法)プログラムを作成した。環境 資源維持手法,製品品質,安全性に対しての 保証を行い,効率的で信頼できる水産養殖の 発展を促進するための手引きとなっている。 2013年2月, JIFSANはFDAの輸入規制を遵守 するために海外の水産養殖業者のためのオン ライントレーニングモジュールの提供を開始 した。このトレーニングモジュールはどのよ うにFDAが養殖水産物のための薬剤を規制 するかを明確にしている。 FDAの新しい動物 医薬品評価のための獣医局センターは,他の 政府機関や水産養殖協会と連携し養殖産業 従事者が利用可能な,安全かっ効果的な薬剤 の数を増やすための活動をしている。 FAOは「動物の健康と福祉,食品の安全性, 環境保全性および、水産養殖システムの社会経 済的側面のための認定基準開発における最低 限度の基準」を発刊している。他にも多くの 公的機関が環境と持続可能性の問題に取り組 んでおり,さまざまな規格や認証のガイドラ インなどを作成している。 小売業者らは近年,購買する魚が持続可 能な方法で生産され,消費者の健康,環境 保全を尊重し,児童労働などの倫理的社会 的問題に対処する方法で処理している事の 保証を必要としている。例えば, Walmart (www.corporate.walmart.com) は , 水 産 物 の販売に際し,販売する全ての鮮魚および 冷凍魚,養殖および天然漁獲物について持 続可能な方法で生産していることに係る第 三者機関での認証を要求している。羽市ole FoodsMarket(www.wholefoodsmarket.com) は養殖水産物に関する基準を設定, Costco WholesaleCorporation(www.costco.com)は MarineStewardshipCouncil (海洋処理協 会)とAquacultureStewardshipCouncil (水 産養殖処理協会)と共に環境と持続可能性の ガイドラインを定め総合的に認証しており, 水産物について供給源を一本化する方向で動 いている。 表 1 水産物養殖関連団体 I 棚AC間 側 側 側 抑 制 鋪 附 I睡眠縁側側側 I w捌 筏 I DOC陸 馴 I Aquacul鈎reSt君”ardshlpC骨割控訴l 事cs宿泊制事事問普跨As事聾ti書偽陣 ぬ泌総dA事r!tultureOrg締役遺書io師 事lobal均雄総ultureAlll語紙器 WWW,書事c-aqua.m費 ASC:Th普fut担f聖母u号制調側ltureCerti時call繍 ) 艇 附 刻1害総nfurm健闘場 ね1l1昨日際A償 問I蜘 閥 抗f(lplt!事 曹資拡f謹白.org T控室主削除JGuldelln鈍器時的uacultur担伐r凶器鈎tion 駐車tAquacul初穂F随£紙記童書 Glob葺lfi.A.乳 事胴II.宮1lob量!gap.or書 Aq世誕ult叫f量Sta割dar誌 i目ternatlonalOrga軒lzat!o罫forStandar詰iza討司時 WWII.ISO.由時 j自初日目stlt輔t聖lwFo減免iet砲事nd麓紙同様車n i;演劇w.jif軍総.闘機.ed韓 請昌討瞳nalAquacult誼reA磁器ti量t!on htt評,:lft封勝aa.net 伝説骨凶ProductsA総書eia!lon w蜘靴軍関’food.tllll 弘主事時t.ofA事政ulture W膚執凶ね喝容拶 11.S:喜劇lm軒mentalf守番線tt~鮒典型車揖符 U.S.f抑制開制『勾Admin秘tr州司祭 事荷風fda品目V 蜘 rldWildlif量f(lu目散眠障自 信省跡事醐i崎 臨 rid削繍tullu隙吉自主i均 衡 糊 淵s.or事 月干Uフードケミカル 2013-11 蜘凶器 ISO/TS22002-3:2011,Pf書問qu!sl!e許『句除mson!\母odSaf・訴払ぬ防止 Fanni『1警 告oodAquac剖Ill.If,墨,JPractlc総Tra知i轟gPfO軍ram書開張緩週間割高L書ml 設1llneJra謝罪書偽dulefmf;器reignAqua凶t附陶du.c附 始。ut詰ふAq匝韮cult珪『苦 )紛AAflsllerl豊,s,W量,100胸泌総量Df費総書fAq泌伐』1泌総 Salmont韓間協! Pia時 Aq鵬 首ll!慨 Aquacult諮問 叡世間i糊 Aquacul臨時 2013Abstrac:t主 81
  • 3. 3.遺伝子組換え養殖アトランティック サーモン(北大西洋産,同沿岸河川に遡 河するタイセイヨウサケ) 鮭や海老は世界中の水産物市場で、最も多く 販売されている水産物である。米国水域では 太平洋鮭の商業漁獲が禁止されているため, 米国で消費されるアトランティックサーモン の94%は輪入されており,そのほとんどが ヨーロッパ産である。また消費されている鮭 のうち3分の2が養殖である。 消費需要増に伴う野生アトランティッ クサーモンの個体数窮境を軽減するのが, 24年 以 上 か け て 開 発 さ れ たAquaBounty Technologies社(www.aquabounty.com) の 遺 伝子組換え養殖技術で育ったAquAdvantage Salmonで、ある。同品は他の養殖アトラン ティックサーモンのおよそ半分の期間で市場 流通サイズの7lb-lllb(約3∼ 5kg)に成長 する。同社はAquAdvantageSalmonが生態環 境に影響を及ぼさないように,養殖場には浮 遊性ネットの囲いをつけ,不妊の雌鮭のみを 飼育している。本技術は世界の養殖鮭の99% 以上で利用されている。 1989年に開発された当初の遺伝子組換え鮭 はキングサーモン成長ホルモン遺伝子を野生 のアトランティックサーモン受精卵(日が見 えるまで、に育った卵)に挿入した。この遺伝 子組換えラインは現在まで10代に渡りその特 質を遺伝させている。 FDAはFederalFood,Drug,andCosmetic Act(連邦食品医薬品化粧法)による新しい 動物医薬品規定に従い遺伝子組換え動物を規 制している。 AquaBountyTechnologiesネ土は 1995年,新しい食素材として本品を申請したo FDAは本品の安全性データと技術について 評価した後,外部専門家による獣医学諮問委 員会を開催し, 2010年9月に「遺伝子組換え 鮭は安全性において既存のアトランティック サーモンと同等で、あり,提案された使用条件 82 下で環境に脅威を与えることはない」との予 備的評価を報告した。 FDAはEA(EnvironmentalAssessment;環 境アセスメント)ドラフトを2012年12月, FONSI(FindingofNoSignificantImpact;米 国環境影響アセスメント評価制度)を2013年 2月に発表し, 2013年4月初日までパブリック コメントを募集した。スクリーニング段階で EAが行われその結果が公表され,意見募集 を行い,環境への影響が微小であると判断さ れると FONSIとして分類され,評価書を作 成せずに使用が許可されるという仕組みであ る。現時点(2013年10月)では既にパブリッ クコメントは締め切られているが,本件につ いてその後FDAからの発表は未だない。 FDA の広報担当者によると, FDAは全てのパブ リックコメントに目を通しており,意見を参 照してより良いEAおよびFONSIの作成を進 めている。この作業にかかる時間を現段階で 予測するのは難しいとしている。 AquaBountyTechnologies社セールスマー ケ テ イ ン グ 副 社 長HenryC.Clifford氏 は 「AquaAdvantageSalmonは栄養学的かつ生物 学的により早く成長する以外は通常の鮭と同 等であり,環境に有害な影響を及ぼすことは ないJとしている。 同社の事業計画によると, AquaAdvantage Salmonはカナダのプリンスエドワード島にあ るFDAの承認を受けた施設において三倍体(全 て雌個体)を生産し,卵に日(小黒点)が見 える位に発育させてからパナマ内陸へ輸送し, 専用タンクにおいて市場で販売されるサイズ まで成長させて漁獲する。同社が所有する両 施設のある場所は,完全に陸地で自然魚がい ない場所である。鮭が逃げ出せないように囲 われており,仮に逃げることがあっても自然の 中に戻って生きていくことは不可能である。そ のため現存の野生鮭との間で遺伝子が交差す る可能性や,組換え遺伝子の野生種への流出 による突然変異のリスクを避けられる。 月干リフードケミカル 2013-11
  • 4. 現在アラスカで養殖されている鮭のプール FAOにおいてアトランティックサーモンの 海洋ネット囲いによる養殖は長い間論議の的 となっている。最大の問題は,限られた狭い 地域で発生する飼料残j査や魚、糞を栄養とした 環境汚染である。魚粉や魚油を餌とする鮭生 産では養魚場で化学的処理により汚れを抑え, また魚の病気を抑えるために動物用医薬品や 抗生物質を使用していることが多い。こうした 養殖の魚が脱出して野生の鮭と交わると地域 化学汚染や病気を巻き散らかす可能性もある。 生け賛の中では,養魚数の多さ,混雑ぶりが問題になっ ている 月刊フードケミカル 2013-11 「AquAdvantageSalmonの 申 請 は パ ナ マ 唯一の成長産業を育てる意味もある」と Clifford氏は語っている。海洋から 100キロ以 上離れた内陸地でFDAによる立ち入り検査 が行われた。この検査からさらに再考し,鮭 を監禁するための水産養殖システムは21のバ リアで二倍体鮭を閉じ込め,さらに脱出を妨 げるいくつかのハードルが含まれている。鮭 にとって致命的なのは高温環境である。環境 の自然な熱によるバリアで管理することによ り,個体を養殖場内部に封じ込め海洋への移 動を予防し,万が一逃げ出した鮭がいても自 然に生き抜くことはできない。さらにこの鮭 は全て不妊の雌であり,たとえ脱出を成し遂 げても環境において他の魚と生殖活動が確立 できない。 AquAdvantageSalmonの養殖は, 従来の海洋養殖より資源、維持に貢献し,環境 にも{愛しい。 AquaBountyTechnologiesネ土は 今後はパナマの現場で、AquAdvantageSalmon の生産を行い,米国内で加工した製品を輸出 していくことを目指している。 FDAに よ るAquAdvantageSalmonの 承 認 は,米国における鮭の輸入,販売,消費量を 増加するであろう。パナマからの鮭の輸出は パナマにおける商業生産の活性化,消費拡充 にも貢献する。そして何よりもパナマ人の規 制要件に合致,遵守していなければならな い。これは同社がAquAdvantageSalmonを生 産するあらゆる国で当てはまる。仮に同社が 鮭の新しい動物匿薬品について承認を受けた なら,各国の生産現場においての使用を見極 めるために,これらの現場ごとに補足申請を 83
  • 5. 提出しなければならない。補足申請は本申請 と同様の精査を受ける事になる。承認のため に,各現場はFDAと当局公共事業機関により さらに厳格な条件で調査される。 FDA承 認 が2013年以内に得られた場合, 2014年にはAquAdvantageSalmonが出荷発送 され米国内のストアに出現するであろう。 4.さまざまな識者や専門家の最新の見解 遺伝子組換え鮭について, FDAは「食べて も安全である Jと表明している。しかし,米 国消費者協会の主席科学者MichaelHausen氏 はFDAのこの評価と見解に対して反論のコ メントを出している。 MichaelHausen氏 「魚は常に濡れており, しかもあちらこち らに動き回る不安定な生物である。正式な審 議は依然として閉ざされた密室の中で行われ ている。そして全てのデータはメーカーであ るAquaBounty社によって供与されたもので ある。遺伝子スプライシング(形成した組換 えDNAを生細胞に導入して複製させる技術) による遺伝子組換え鮭が認可されることによ り,遺伝子が利益至上主義で操作される傾向 になっていくのではないだろうか。 また,アラスカ州上院議員MarkBegich氏 は,「FDAはこの決定にあたり,人々がこの 危険で冒険的な開発を望んでいるか,本当に 必要性があるかを公表して問うことを考慮す べきであるJと語っている。 これらのコメントに際してAquaBoun付社 RonStotish氏は「このプロジェクトを批判し ている人々は, FDAにより公表されたデータ 84 を読んでいない事は明白である」と主張して いる。 米国ではこのように公表されたデータを多 くの識者が見てコメントを発表している。一 方,わが国日本では,何年か前の特定保健用 食品のデータに対して,サンプル数がいくつ の臨床実験の結果であったかがほとんど話題 にならない。米国では新しい技術による鮭の データの個体数はいったい何匹であったの か?当然,専門家により指摘されている。あ るメディアによれば今春のパブゃリックコメン ト締め切りまでに100万通以上のコメントが 寄せられたそうだ。 5.食用としての鮭 鮭はおよそ80兆円にのぼる米国水産市場 の半分以上を占める食品であり,消費量は 増加の一途を辿っている。遺伝子組換え食 品とその背景の科学技術については常に論 争となり,消費者は「人類の健康と環境へ の影響力」について強い疑問を投げかける。 AquaBounty社はこうした声の激しい反対に もめげずプロジェクトを進行し続けている。 魚卵は全て雌であり野生に逃げ出しでも交配 不可能である事,水産物由来の高品質なタン パク質を提供できるこの製品は消費者と環境 に利益をもたらすものである事, トレーサピ リティを明らかにできる事を強く訴え,この プロジ、エクト開発の継続と結論に導いた。 2020年までに動物性タンパク質のグローバ ルな需要は 1年につき 2,000万トンと予測さ れている。既存の鮭水産養殖の技術と比較し た場合,より少ない時間でより多量の魚を 産できる組換え鮭は,市場のニーズに応える ものになるだろうと主張している。 月刊フードケミカル 2013-11
  • 6. AquaBounty社の鮭は「大洋;海洋Pout (TrispoterusLuscus)Jと呼称される,ヨーロツ パや大西洋岸に生息する鱈科の食用魚の不凍 液からの遺伝子によって,組換え交配種の成 長速度を増すように設計されている。巨大に 成長した鮭を,人々は「フランケンシュタイ ンブイツシュ! Jと日乎ぶ。そのネーミングか ら人々の印象が推し量れるところだ。 6.GMO∼鮭と表示問題から 米国では栄養成分やアレルゲンなどの表示 は必須であるが, AquaBoun匂r社の技術によ り生産される鮭は生物学上通常の鮭と同等で あり,健康上の問題はないと FDAが決定を下 している。そのため現状の法律では遺伝子組 換え製品としての表示は不要である。 7鮒市場展望 人類初の遺伝子組換え水産物である鮭に対 し,米国の大手小売業者ら2,000店以上が参 画し,℃ampaignforGeneticallyEngineered -FreeSeafood ”とする不買表明が2013年 3月に発表されている。参画したのは大手 がTraderJoe’s367 店舗, Aldi1,230 店舗, WholeFoods346店 舗 , 地 域 小 売 がMarsh Supermarkets(インデイアナ,オハイオ) 93店舗, PeeNaturalMarkets(ワシントンナ!?) 9店舗, Co-OPS(ミネソタ,ニューヨーク, カリフォルニア,カンザス),さらにその後 ウォルマート,コストコ,セイウェイと米国 全土に広がっている。 月干リフードケミカル 2013-11 市販された最初の遺伝子組換え食品は, 20 年近く前のFlavrSavr(最初に商業的に ライセンス化されたトマトの品種)である。 日持ち向上を目的として米国カリフォルニア のバイオベンチャーである Calgenネ土によっ て開発され, 92年FDAにより承認され, 94年 に世界で始めて販売が許可された。 IFI'年次 大会でさまざまな発表がなされたのが記憶に ある。このトマトは賞味期限が長く,風味に 違和感がなかった事から当初は好意的に市場 に受け止められたが,その後さまざまな風評 で人気を落とし今は栽培されていない。 日本人の食文化と鮭のかかわりを考える 時,食べものの工業化の道のりに思いを馳せ る。養殖はサイエンスの進化と共に変わりゆ く食の典型的な姿である。 FDAによる遺伝子組換え水産物の評価を数 十件が待つ状態だ。遺伝子組換え鮭がFDAの 承認を経て商業化に向かう道程は厳しいもの になるであろう。商業化で成功するかしない かの鍵は全て消費者が持っている。 FDAの承 認に際してサイエンスデータが公表されると 世界中から科学的評価が下されることになる。 食品産業に“サイエンスありき!”。それ とともに消費者教育の根本にいったい何が必 要であるか?今一度わが国の現状に思いを せる日々を過ごしている。巨大企業のビジネ スと食糧問題, FDAはひとつのターニングポ イントを迎えている。 85