Lilien, G.L. & Rangaswamy, A. (2004) Marketing Engineering: Chapter 44. ポジショニングとは?
ポジショニングにおける次元の例
① ライフスタイル:MTV - 若者向け音楽番組
② 製品属性:Amazon.com – 世界最大の書店
③ 製品ベネフィット:吉野家「うまい、やすい、はやい」
④ 競争:ダイソン「他のどの掃除機よりも確実にゴミを吸い取ります。」
⑤ 時間:ワンダ モーニングショット - 朝専用缶コーヒー
差別化: 製品のある重要な次元(観点)において、競争相手との
間に具体的または漠然とした違いを作る事。
→ What you do to a product.
ポジショニング: 競合製品の違いを認識してもらい、自社製品が
顧客の心の中の重要な位置を占めるよう働きかける戦略の一連。
→ What you try to do to the minds of customers.
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5. ポジショニング戦略
今日の市場
・ 大量の製品が存在:どのように顧客に製品をアピールする?
・ 断片化:セグメント数 × 製品数 × 競合数 + ノイズ
体系的なアプローチ
① 自社製品のポジションを顧客目線かつ対競合比でとらえる。
② 自社製品のポジショニングを評価する。
③ 差別化戦略においての重要な要素を洗い出す。
例)ポカリスエットは、適切な濃度と体液に近い組成の電解質溶液のため、すばやく吸収されます。
そのためスポーツ、仕事、お風呂上り、寝起きなど、発汗状態におかれている方に最も適した飲料です。
[http://pocarisweat.jp/]
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ポジショニングステートメント:(製品名)は、(シンプルな最重要根
拠)であるため、(セグメント)のために(ポジショニング主張)である。
例)ネット検索結果などでは
無関係な情報も混じる
個別に多様なコミュニケーションが必要
7. ポジショニングの描写法 - パーセプショナルマップ
特徴
① 製品間の距離は顧客が考える類似性を表す。
② 属性は空間上の規模と方向を矢印(ベクトル)で表現される。
③ 軸は顧客が比較する最も特徴的な属性/潜在的なベクトル。
→ 直交の必要は無く、解釈のため反転した軸に適当な名前をつける事も。
リミテーション
・ 顧客の好みは考慮しない。
良い使い方例(自動車メーカ)
魅力的な車体特徴の調査で「四角いボディ」は好まれない事が解っている。
知覚マップで情報を整理すると「ボンネット形状」、「バンパー形状」、「フロント
ガラス傾斜」、「サイドミラーデザイン」等が「四角いボディ」と相関がある事がわ
かり、潜在的な属性「空力学的」に気がついた。
パーセプショナル(知覚)マップ:競争構造の理解のため、競い合う
製品をユークリッド空間に写実的に表現したもの
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8. ポジショニング分析 - パーセプショナルマップ
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ビール市場の例(架空)
ヘビー
ライト
プレミアム
安い
フルボディ
風呂上り
お値打ち
予算内
重い 男性的
特別な日
外食
プレミアム
女性的
少量
軽い淡い
①ブランド間の距離:
・ エビスとプレモルは直接的な競争相手。
・ オリオンビールの競合は少ない。
・ 一番搾りにとって、黒ラベルとスーパードライ
は同程度のライバルである。
②ブランドとアトリビュートの距離:
・ プレモルはプレミアムビールと知覚されている。
・ トップバリュは高級イメージとかけ離れている。
③ベクトル間の角度(=相関性):
・ 外食に飲むビールはプレミアムビールである。
・ 女性的なビールは男性的でないビールとは
限らない。
・ 横軸を「安い~プレミアム」と解釈可能。
・ 縦軸を「ライト~ヘビー」とする。
④ベクトル線の長さ(=区別の容易さ):
・ ビールは「お値打ち」であるかで仕分ける事
が困難。
・ 「男性的」であるか仕分けるほうが容易。
●一番搾り ●スーパードライ
●ハートランド
●エビス
●プレモル
●コロナ
●ヒューガルデン
●オリオンビール
●トップバリュ
●黒ラベル
9. ポジショニングマップ手法 - 分類
マッピング方法の分類:インプットデータの種類により処理が異なる。
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A. 類似性ベースモデル
パーセプショナル(知覚)マップ
(製品スペースマップ)
B. アトリビュートベースモデル
C. 理想点モデル(展開モデル)
プレファレンス(選好)マップ
(選好スペースマップ)
D. ベクトルモデル
E. PREFMAPモデル
ジョイントスペースマップ
(知覚と選好を一緒にマッピング)
F. 修正パーセプショナルマップ法
○が無いモデルについてはテキスト詳しい説明が書かれていない。
ただし Positioning Analysis: Marketing Engineering Technical Note (http://decisionpro.biz/) が一部参考になる。
12. ② データの取得:
・ ターゲットセグメントへのアンケート調査などを実施。
・ 製品毎にアトリビュートを順位またはスコア付けしてもらう。
【仮定】 同一セグメントにおいて個人間の知覚に大きな差はない。
・ データによっては事前にクラスター分析等でグループ分けを行う。
・ 回答の平均を計算したデータ行列を作成。
③ 処理の実行:
・ 各アトリビュートが情報的にユニークなものである場合は珍しい。
・ 潜在的なベクトルを探すための方法を選択。
因子分析(主成分法)の例 →
アトリビュートベースモデル
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13. 因子分析(主成分法)の例
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・ 行:製品、列:アトリビュートの製品スコア行列を作成
製品スコア行列(𝑋)=
𝑥11 ⋯ 𝑥1𝑗 ⋯ 𝑥1𝑛
𝑥 𝑘1 ⋯ 𝑥 𝑘𝑗 ⋯ 𝑥 𝑘𝑛
⋮ ⋮ ⋱ ⋮
𝑥 𝑚𝑚 ⋯ 𝑥1𝑗 ⋯ 𝑥 𝑚𝑚
※カラムは𝑥1, 𝑥2 … 𝑥 𝑛と表記
・ 𝑿 𝑺 =列に対して標準化された製品スコア行列
標準化:𝑥 𝑠 = (𝑥 − 𝑥̅)/𝜎
情報量:Σ分散=n
・ 因子(𝑭𝒋) = 𝒂𝒋𝒋 𝒙 𝟏 + 𝒂𝒋𝒋 𝒙 𝟐 + ⋯ + 𝒂𝒋𝒋 𝒙 𝒏
・ 係数𝒂𝒋𝒋, 𝒂𝒋𝒋, … 𝒂𝒋𝒋について以下の基準を満たすように求める
第1因子: 𝑋𝑆の情報を最大限とらえる(分散が最大)
第2因子:第1因子に対し直交(無相関)、残りの情報を最大限とらえる
⋮
← アトリビュート →
←製品→
14. 因子分析(主成分法)の例
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・ 元データ(𝒙 𝒌𝒋) ≈ 𝒛 𝒌𝟏 𝒇 𝟏𝒋 + 𝒛 𝒌𝟐 𝒇 𝟐𝒋 + ⋯ + 𝒛 𝒌𝒌 𝒇 𝒓𝒓
因子数 𝑟 <アトリビュート数(n)
もし𝑟 = 𝑛なら上の式は「=」となる。
標準化因子得点行列(𝑍𝑠)=
𝑧11 ⋯ 𝑧1𝑗 ⋯ 𝑧1𝑟
𝑧 𝑘𝑘 ⋯ 𝑧 𝑘𝑘 ⋯ 𝑧 𝑘𝑟
⋮ ⋮ ⋱ ⋮
𝑧 𝑚𝑚 ⋯ 𝑧 𝑚𝑚 ⋯ 𝑧 𝑚𝑟
= マップ上の座標
因子負荷の転置行列(𝐹 𝑇)=
𝑓11 ⋯ 𝑓1𝑗 ⋯ 𝑓1𝑛
𝑓𝑘𝑘 ⋯ 𝑓𝑘𝑘 ⋯ 𝑓𝑘𝑛
⋮ ⋮ ⋱ ⋮
𝑓𝑟𝑟 ⋯ 𝑓𝑟𝑟 ⋯ 𝑓𝑟𝑟
= アトリビュートと因子の相関行列
←製品→
← 因子 →
← アトリビュート →
←因子→
15. 因子分析(主成分法)の例
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・ 因子寄与= 𝒇𝒊𝟏
𝟐
+ 𝒇𝒊𝟐
𝟐
+ ⋯ + 𝒇𝒊𝒏
𝟐
→ 𝐹 𝑇
の行
・ 共通性= 𝒇 𝟏𝟏
𝟐
+ 𝒇 𝟐𝒋
𝟐
+ ⋯ + 𝒇 𝒓𝒓
𝟐
→ 𝐹 𝑇の列
もし𝑟 = 𝑛なら上の式は「共通性=1」となる
・ 因子数 𝒓 :パーセプショナルマップでは通常2~3個
もし共通性が低い(=独立性が高い)場合、因子数を2→3に増やす。
因子寄与が1以上であるべき。
・ 解釈のため必要に応じて(単純構造をめざし)因子を回転する。
21. プレファレンス(選好) とは
パーセプション(知覚) → 「ボルボは最も安全な車だ」
プレファレンス(選好) → 「ボルボが好きだ」
① 理想点プレフェレンスモデル
② ベクトルプレファレンスモデル
③ 部分効用モデル → コンジョイント分析(7章) 21
プレフェレンス
アトリビュート
プレフェレンス
アトリビュート
顧客ごとに理想の好みレベルがある。
例)カレーの辛さ
顧客はいつも多い量を好む
例)製品クオリティ
顧客はいつも少ない量を好む
例)電話が繋がるまでの待ち時間
25. PREFMAPモデル
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③ 処理方法を選択:
理想ポイントモデルによる処理
・ 𝒔� 𝒊𝒊 = プレファレンス推定値、𝒅𝒊𝒊 = 理想点(𝑰𝒊)と製品𝒋の距離
・ 推定値の誤差 𝑒𝑖𝑖 の二乗和が最小になるような 𝑏, 𝑎 を求める。
・ 𝑎は負の数である場合 → アンチ理想点
ベクトルモデルによる処理
・ 𝒚𝒋𝒋 = 次元 𝒌における製品𝒋の座標位置、𝒙𝒊𝒌 = 次元 𝒌における選好ベクトル
𝒓 = 次元数
・ 推定値の誤差 𝑒𝑖𝑖 の二乗和が最小になるような 𝑎𝑖, 𝑏𝑖, 𝑥𝑖𝑖 を求める。
𝒔� 𝒊𝒊 = 𝒃 + 𝒂𝒅𝒊𝒋
𝟐
𝒔� 𝒊𝒊 = 𝒂𝒊 � 𝒙𝒊𝒊 𝒚𝒋𝒋
𝒓
𝒌=𝟏
+ 𝒃𝒊
30. まとめ
30
① 何を描写するか
・ パーセプション
・ プレファレンス
+ 他データ(価格やシェアなど)
③ どうやって聴取するか
・ 順位/スコア
・ 理想点
② 何をベースにするか
・ アトリビュート
・ 類似性
④ どうやって表現するか
・ ベクトル
・ 点(または面積)
・ 次元
両方
(別ソース可)