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水銀に関する水俣条約と
国内対策
平成27年4月
環境省
2
水銀に関する水俣条約の概要
○2001年:国連環境計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染に係る
活動を開始
○2002年:人への影響や汚染実態をまとめた報告書を公表(世界
水銀アセスメント)
• 水銀は様々な排出源から様々な形態で環境に排出され、分
解されず、全世界を循環。
• 人への毒性が強く、特に発達途上(胎児、新生児、小児)の
神経系に有害。食物連鎖により野生生物へも影響。
• 先進国では使用量が減っているが、途上国では依然利用さ
れ、リスクが高い。
• 自然発生源もあるが、人為的排出が大気中の水銀濃度や堆
積速度を高めている。
• 世界的な取り組みにより、人為的な排出の削減・根絶が必要。
3
世界水銀アセスメント(2002)
4
○ 環境中に排出される水銀(年間5,500~8,900トン)のうち人為的排出は約30%、自然的発生
は約10%、再排出・再移動は約60%。
○ 水銀の人為的排出の削減は、将来的に環境中を循環する水銀量を削減するために極めて
重要.。
(出典:Global Mercury Assessment (UNEP 2013))
地球規模の水銀循環
5
○ 水銀使用量は年間約3800トン(2005)。近年、減少傾向にあるが、依然として様々な用
途に使用。
○ 零細小規模金採掘(ASGM)が最大の用途。次いで塩ビモノマー製造、クロルアルカリ
工業での使用。電池・計測機器等の水銀添加製品への使用も4割程度。
世界の水銀使用の実態
出典:Mercury- Time to Act. (UNEP 2013)
ASGM
21%
VCM
20%
塩素アルカリ
工業
13%
電池
10%
歯科用アマル
ガム
10%
計測機器
9%
照明
4%
電気機器
5%
その他
8%
零細小規模
金採掘
塩化ビニルモノ
マー製造
世界の水銀用途(2005年)
(出典: Technical Background Report to the
Global Atmospheric Mercury Assessment (UNEP 2008))
世界の水銀の使用量の推移及び供給源(1985 - 2005)(t)
=ストック
=クロルアルカリ工業
=リサイクル水銀
=鉱出
6
○2010年の世界各地域の排出状況を見ると、アジア地域の排出量が多い。
○排出源別では、金採掘(37%)、化石燃料燃焼(25%)、非鉄金属製錬(10%)など
※1 the Commonwealth of Independent States(独立国家共同体)
※2 汚染地からの排出量の総計
※3 塩素アルカリ工業(1%)水銀鉱山(1%)石油精製(1%)歯科用アマルガム(<1%)
(出典: UNEP Global Mercury Assessment 2013 (2013))
世界における水銀の排出状況
7
○ 零細小規模金採掘(Artisanal and Small-scale Gold Mining : ASGM)は世界70ヶ国以上(主にアフ
リカ、アジア、中南米の開発途上国)で行われており、約1,000~ 1,500万人程度が従事。うち、450
万人が女性、100万人が子供。
世界のASGMの実態
注:水銀排出量(トン)及びASGM従事者数は
UNEPによる推計値。薄い橙色に塗られた国は
ASGMが報告されており、塗られていない国で
は報告がないことから、水銀排出量の推計がさ
れていない。
出典: Mercury- Time to Act. (UNEP 2013)
ASGMが行われている国・地域、水銀排出量及び従事者数
輸入原燃料に
含まれる水銀
73
水銀輸出
72
水銀合金の輸入 3.1
水銀含有製品輸入
1.4
最終処分(埋立)
4~9
INPUT OUTPUT
大気排出
17 ~ 22
水銀
輸入
・
特定
有害
廃棄物
<0.01
国内生産原燃料中
の水銀
6.5
水銀含有製品輸出
2.5
水
銀
輸
出
公共用水域
排出
> 0.30
土壌排出
> 0.45
排
出
水銀含有製品国内生産
原燃料の工業利用
廃棄物等からの水銀回収・再生
etc
市中保有等
【単位:トン】
我が国の水銀収支(2010年度ベース)
(出典:水銀に関するマテリアルフロー(2010年度ベース)から環境省作成)
○ 我が国に入る水銀の大半は輸入原燃料に含まれる。
○ これが、国内で回収・利用等される中で、最終的に20トン程度が排出。
8
処
分
ランプ類
38.1%
医療用計測
器
23.8%
無機薬品
14.7%
ボタン電池
12.5%
工業用計量
器
10.6%
歯科用水銀
0.3%
(出典:資源統計年報)
注:蛍光ランプは昭和31年~53年は機器計器、昭和54年以降は電気機器に該当
9
我が国の水銀使用
○ 我が国の水銀需要は昭和39年(1964年)をピークに急速に減少。
○ 現在では、年間8トン程度の水銀を使用(照明、計測・制御器、無機薬品、電池等)。
年間需要8トン
注:この他に試薬としての水銀利用量が推計されているが確認中。
(出典: 我が国の水銀に関するマテリアルフロー(2010年度ベー
ス、2013年度更新))
10
Mercury
(水銀法)
Diaphragm
(隔膜法)
Ion-exchange membrane
(イオン交換膜法)
国内における製造工程での水銀使用の転換
○ か性ソーダ生産量の推移
11
国内における製品中の水銀使用の削減
出典:社団法人日本電球工業会提供資料
注: 生産量データは、薬事工業生産動態統計年報(厚生労働省)に基づく。
水銀含有量は、体温計は1.2g/ 本として、血圧計は47.6g/ 個として計算。
出典:環境省推計データ
医療計測機器における推計水銀使用量の推移
水銀使用光源製品における水銀使用量の推移
0
10
20
30
40
50
60
1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004 2009
水
銀
含
有
量
(
㎎
/
本
)
西暦(年)
出典:社団法人日本電球工業会提供資料
蛍光ランプ1本あたりの水銀含有量推移
出典:社団法人電池工業会提供資料
一次電池の国内生産における水銀総需要量の推移
○ 様々な水銀添加製品における水銀フリー化又は水銀含有量の低減の取組が進められている。
12
水銀の国際流通
○ 2004年にはEUから750トン以上、旧ソ連地域から700トン以上が世界中に輸出。
○ EUは、2011年から金属水銀と水銀化合物の輸出を、米国は2013年から金属水銀の輸
出を、それぞれ原則禁止。
年 EU(域外輸出) 米国 日本
(※年度ベース)
2009 1221 753 129
2010 973 461 72
2011 311 133 96
2012 22 103 84
2013 ―
(データ無し) 359(※) 77
(出典)EU,米:UN-Comtrade、日:財務省貿易統計より作成
金属水銀の貿易フロー(2004)
日米欧の金属水銀輸出量推移(2009-2013)(t)
主な国の金属水銀輸出量(2012)
(出典)UN-Comtradeより作成
輸出国
輸出量
(t)
1 スペイン 951
2 シンガポール 478
3 メキシコ 262
4 中国(香港を含む) 245
5 アルゼンチン 188
6 スイス 165
7 ドイツ 108
8
米国(プエルトリコ、
USヴァージン諸島を
含む)
103
9 カナダ 73
10 日本 69
11 オランダ 67
12 インド 50
13 チリ 50
14 ポルトガル 26
15 マレーシア 19
(※)米国貿易統計によれば、「水銀」として計上されていたものの相当量は「硫化物等」の誤り
であったと訂正されている。http://www.census.gov/foreign-trade/statistics/corrections/index.html
(出典: Summary of supply, trade and demand information on mercury (UNEP 2006))
○政府間交渉委員会(INC)(主催:UNEP)
・組織(全INC共通)
・議長:フェルナンド・ルグリス氏(ウルグアイ)
・ビューロー(議長団):国連各地域(5地域)から各2名選出(アジ
ア太平洋地域は中国とヨルダン)。書記はスウェーデンが兼務。
・日本はアジア太平洋地域のコーディネーターを務める。
13
○INC1 2010年 6月 ストックホルム(スウェーデン)
○INC2 2011年 1月 千葉
○INC3 2011年10月 ナイロビ(ケニア)
○INC4 2012年 6月 プンタ・デル・エステ(ウルグアイ)
○INC5 2013年 1月 ジュネーブ(スイス)
○INC6 2014年11月 バンコク(タイ)
INCの開催状況
政府間交渉委員会
14
10月7日(月)・
8日(火)
準備会合(熊本市)
・決議案等に関する議論・合意
10月9日(水)
~11日(金)
外交会議(水俣市及び熊本市)
・9日(水): 開会セレモニー(現地視察を含む)(水俣市)
・10日(木)・11日(金): 条約の採択・署名(熊本市)
水銀に関する水俣条約外交会議の概要
○ 60か国以上の閣僚級を含む139か国・地域の政府関係者の他、
国際機関、NGO等を含め、1,000人以上が出席。
○ 我が国からは外務省、農林水産省、経済産業省、環境省から
なる政府代表団、NGO等が出席。
○ 9日に安倍総理のビデオメッセージ、10-11日の外交会議は石
原環境大臣が議長、10日に岸田外務大臣が条約及び外交会議
の最終議定書に署名。
15
外交会議の成果
○ 条約の採択
○ 決議の採択
・暫定期間におけるアレンジメント:INCの継続設置による事前準備、大気排出に
関するガイダンスを検討する専門家グループの設置、GEFへの途上国の早期締
結支援のための資金提供の要請など。
・資金に関する取決め、他の国際機関との関係、日本政府への謝辞
○ 外交会議の最終議定書(Final Act:条約・決議・会議記録)の採択
○ 条約及び最終議定書への署名(条約への署名は92の国・地域)
○ 参加国・地域、国際機関、NGOからのステートメント
○ 2001年、国連環境計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染に係る活動を開始。
○ 2010年6月に第25回UNEP管理理事会(GC25)の決定に基づき政府間交渉委員会(INC)における条約交渉が開始。
○ 2013年10月「水銀に関する水俣条約外交会議」を熊本市及び水俣市で開催。水銀に関する水俣条約を全会一致で採択し、署名を開始。
 外交会議には、60か国以上の閣僚級を含む139か国・地域から1,000人以上が出席
 2015年1月16日現在、署名128カ国、締結10カ国
○ 前文に水俣病の教訓について記述。
○ 水銀鉱山からの一次産出、水銀の輸出入、小規模金採掘等を規制。
○ 水銀添加製品(蛍光管、体温計、血圧計等) の製造・輸出入、水銀を使用する製造工程(塩素アルカリ工業等)を規制(年限を決めて廃
止等)。
○ 大気・水・土壌への排出について、利用可能な最良の技術/環境のための最良の慣行(BAT/BEP)を基に排出削減対策等を推進。
大気への排出については、石炭火力発電所、非鉄金属鉱業等を対象として削減。
○ 水銀廃棄物について既存条約(バーゼル条約)と整合性を取りつつ適正処分を推進。
○ 途上国の能力開発、設備投資等を支援する資金メカニズムの創設。
条文の概要
○ 条約は、50カ国が締結してから90日後に発効。
○ 条約暫定事務局によれば、本年末頃から来年の間にも条約発効が見込まれる。
○ 我が国からは、水俣条約暫定事務局への拠出等を通じて途上国の締結支援を実施。
○ 2014年3月に「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策について」中央環境審議会へ諮問し、環境保健部会、大気・騒音振動
部会、及び循環型社会部会においてそれぞれ審議・答申(2014年12月~2015年2月)。
○ できるだけ早期に条約を締結すべく、関連法案を2015年3月10日に閣議決定し、同日付で通常国会へ提出。
条約締結・発効に向けた取組
採択までの経緯
水銀に関する水俣条約の概要 ( 平 成 2 7 年 4 月 現 在 )
16
条文 主な内容
前文 水銀のリスクの再認識、水俣病の重要な教訓 等
目的(第1条) 水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護
定義(第2条) 用語の定義
供給及び貿易(第3条) 鉱山からの水銀の採掘及び国際貿易の規制
水銀添加製品(第4条)
水銀添加製品(電池、スイッチ、ランプ、計測機器(体温計、血圧計を含む)な
ど)の製造・輸出入の規制
製造工程(第5条) 特定の製造工程における水銀及び水銀化合物使用の規制
適用除外(第6条) 附属書A及びBに掲げる製造等禁止期限の適用除外の登録
零細及び小規模の金採掘
(第7条)
零細及び小規模の金採掘における水銀及び水銀化合物使用の削減
大気への排出(第8条) 大気への排出の規制、排出目録の作成
水・土壌への放出(第9条) 水・土壌への放出の規制、放出目録の作成
暫定的保管(第10条) 水銀及び水銀化合物の環境上適正な暫定的保管
水銀廃棄物(第11条) 水銀廃棄物の環境上適正な方法による管理
汚染サイト(第12条) 水銀により汚染された場所の特定、評価
資金・技術支援(第13, 14条) 資金源及び資金メカニズム、技術支援等
普及啓発、研究等
(第15~22条)
情報交換、公衆の情報・注意喚起と教育、研究・開発とモニタリング、健康的側
面、実施計画、報告、有効性の評価
水俣条約の主な項目
17
18
○ 先進国と途上国が協力して、水銀の供給、使用、排出、廃棄
等の各段階で総合的な対策に世界的に取り組むことにより、水
銀の人為的な排出を削減し、越境汚染をはじめとする地球的規
模の水銀汚染の防止を目指すもの。
○ 世界最大の水銀利用・排出国である中国や、化学物質・廃棄
物に関する条約をこれまで批准していない米国も積極的に交渉
に参加。多くの国の参加を確保しつつ、その中で水銀のリスクを
最大限削減できる内容に合意できた。
○“Minamata Convention“の命名は、水俣病のような健康被害
や環境破壊を繰り返してはならないとの決意と、対策に取り組
む意志を世界で共有する意味で有意義。また、水俣病の教訓や
経験を世界に伝えるとともに、現在の水俣市の姿を内外にア
ピールできる。
「水銀に関する水俣条約」の意義
19
MOYAIイニシアティブ
~日本のもやいから世界のMOYAIへ~
※「もやい」とは、船と船をつなぎとめるもやい網や農村での共同作業のこと。 「もやい直し」は、対話や共同による水俣の地域再生の取組。
・使用排出実態の把握
例)排出インベントリー
マテリアルフロー
・水銀を適正に管理す
る法規制の整備
・水銀の測定や管理の
ための人材育成
・水銀対策技術の途
上国での実現可能性
を調査等
・我が国の優れた技
術を国際展開
例)製品中の水銀を
削減する技術
水銀回収・リサイクル
技術
・国水研で簡便な水
銀計測技術を開発し、
各国に提供
・最新の知見、技術を
共有するための国際
的なシンポジウムを
水俣で開催
・胎児性患者等の生活
の支援など
・地域のきずなを取り
戻す「もやい直し」
・環境をてこにした足
腰強い経済・心豊かな
地域社会の構築
例)バイオマス発電
不知火海の観光
資金の支援
(160万ドル)
技術の支援
(約1億円)
技術開発と共有
(約0.4 億円)
環境再生モデル
(約9億円)
※金額は平成26年度予算(「資金の支援」は平成25年度補正予算)
20
水銀に関する水俣条約を踏まえた
今後の水銀対策
21
国内対策の検討経緯
■H26年
3月17日
環境大臣より「水俣条約を踏まえた今後の水銀対策について」中央環境審議
会会長に諮問。
⇒ 中環審会長より、環境保健部会、循環型社会部会、大気・騒音振動部会
の各部会に付議、各部会において審議。
■ 環境保健部会 【水銀に関する水俣条約対応検討小委員会】(産業構造審議会と合同)
・水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策について(循環型社会部会及び大
気・騒音振動部会の所掌に係るものを除く。)(第一次答申)(H26.12.22)
■ 大気・騒音振動部会 【水銀大気排出対策小委員会】
・ 水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀の大気排出対策について(答申)
(H27.1.23)
■ 循環型社会部会 【水銀廃棄物適正処理検討専門委員会】
・水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀廃棄物対策について(答申)
(H27.2.26)
実施計画
(§20等)
一次鉱出
(§3-3)
水銀の輸出入
(§3-6,8)
外為法等による措置
水銀の暫定保管
(§10)
新法案による措置
水銀廃棄物
(§11)
資金メカニズム(§13)、技術支援(§14)、健康上の側面(§16) 、情報交換(§17) 、
公衆のための情報・啓発と教育(§18) 、研究・開発 ・モニタリング(§19) 等
汚染サイト
(§12)
水銀添加製品の製造
(§4)
新法案による措置
特定製造工程
での水銀の使用
(§5)
人力小規模金採掘
(§7)
鉱業法改正及び
新法案による措置
(実態なし)
新法案による措置
(実態なし)
新法案による措置
(実態なし)
<廃掃法上の廃棄物>
廃掃法政省令改正
による措置
土壌汚染対策法及び水
質汚濁防止法で担保済
中央環境審議会答申と水俣条約の関係
※青色部分:中環審答申(環境保健部会関係)(H26.12.22)の対象
インベントリー作成 (§8-7,9-6)
大気への排出
(§8)
水・土壌への放出
(§9)
水銀添加製
品の輸出入
(§4-5)
外為法等による措置
水銀の越境移動 水銀の使用
環境への排出
廃棄
<バーゼル条約上の廃
棄物>
新法案による措置
水質汚濁防止法で担保済大気汚染防止法改正案による措
置
○新規の水銀鉱山開発は各締約国の条約発効後禁止。
○既存鉱山からの産出は各締約国の条約発効から15年以内に禁止。この水銀は、条約
上認められた用途にのみ使用可。
○条約締約国への水銀の輸出は、条約上認められた用途又は一時保管に限定。水銀の
輸出に当たっては、輸入国の書面による事前同意が必要。
○ 非締約国からの水銀の輸出/輸入は、相手国が条約上必要な措置を講じていること
/新規一次鉱山等以外の供給源に限定(その証明書が必要)。
23
水銀供給の削減と国際貿易の削減(3条)
条文と答申の対応関係:詳細(3条)
<答申の内容>
○水銀採掘については、実態はないものの法的には禁止されておらず、法的措置が
必要。
○水銀及び特定の水銀化合物の輸出については原則禁止とし、条約上許可された用
途であって最終使用者等を確認できる場合に限り許可(ただし、ASGM用途は全面禁
止)。
○非締約国向け輸出は、人健康及び環境保護の確保を説明する証明書を厳格に審
査。
○また、輸出後に使用状況の報告を求める。
○非締約国からの輸入は、一次採掘由来等でないことの証明書がある場合のみ許可。
製品の使用削減(4条)
◆水銀を使用する以下の製品の製造・輸入・輸出を2020年までに禁止
(年限については、第6条に基づき、国によって必要な場合、最大10年間まで延長可)
条文と答申の対応関係:詳細(4条)①
品目 例外
電池 水銀含有量2%未満のボタン形亜鉛酸化銀電池・ボタン形空気
亜鉛電池
スイッチ及びリレー 監視・制御装置に用いられる超高精密キャパシタンス/損失
測定ブリッジ、高周波RFスイッチ及びリレーで、水銀含有量が
20mg以下のもの
一般照明用蛍光ランプ・高圧水銀ランプ、電子ディ
スプレイ用冷陰極ランプ(CCFL)・外部電極蛍光ラ
ンプ(EEFL)
一定含有量以下の一般照明用電球型・直管型蛍光ランプ、一
定含有量以下の電子ディスプレイ用冷陰極ランプ・外部電極蛍
光ランプ
肌の美白用石鹸及びクリームを含む化粧品(水銀
1ppm超)
効果的・安全な代替防腐剤がない場合に、水銀を防腐剤として
使用している眼部化粧品
農薬、非農薬用殺生物剤、局所消毒薬 ―
非電化の計測機器(気圧計、湿度計、圧力計、温
度計、血圧計)
適当な水銀フリー代替品がない場合に、大型装置に取り付け
られたもの又は高精度測定に使用されるもの
歯科用アマルガムについては段階的使用削減のための措置 24
25
条文と答申の対応関係:詳細(4条)②
<答申の内容>
(1)水銀添加製品の製造・輸出入の禁止の措置
○電池、ランプ、計測器(工業用、医療用)、スイッチ、リレー等の各製品につ
いて、条約の禁止要件・廃止期限の深掘り・前倒しを検討すべき。
○また、水銀添加製品の他の製品への組込みを防止するための具体的措置
を検討すべき。
(2)国内で流通する製品への措置
○製品の水銀含有に関する情報提供を何らかの形で法的に位置づけ、その
あり方を検討すべき。
○廃製品の分別・回収についても、何らかの形での法的な位置づけを検討し、
また市町村等による分別収集の徹底・拡大等を図るための国としての施策
を検討すべき。
○国内で流通する水銀添加製品等の数量の把握のため、関係事業者への資料提出
要求等を法的に位置づけ、そのあり方や具体的手法について検討する必要がある。
(3)その他の措置
○規制の効果の確認のため、試買調査を実施する等の具体的手法を検討することが
適当。
26
○ 塩素アルカリ工業及びアセトアルデヒド製造施設(附属書B・Part I)を対象に
、製造プロセスにおける水銀の使用を禁止。(それぞれ2025年、2018年まで。
ただし、年限については、第6条に基づき、国によって必要な場合、最大10年
間まで延長可)
○ 塩化ビニルモノマー、ナトリウムメトキシド又はエトキシド、カリウムメトキシド
又はエトキシド、ポリウレタンの製造プロセス(附属書B・Part II)での水銀使用
を削減(附属書に規定した措置の実施)
条文と答申の対応関係:詳細(5条)
製造プロセスにおける水銀使用の削減(5条)
<答申の内容>
○ 日本国内では実態として水銀等を使用しない代替工程が既に確立されてお
り、クロルアルカリ製造等2つの製造工程及び塩化ビニルモノマー製造等3
つの製造工程全てに おいて水銀等の使用を禁止することが適当。
27
○ 水銀及び水銀化合物の使用・環境中への放出を削減、可能であれば廃絶
のため行動。
○ 領土内のASGMがわずかでない(more than insignificant)と判断する締約
国は、事務局に通知し、国家行動計画を策定・実施するとともに、3年ごとにレ
ビューを実施。
○ 水銀及び水銀化合物のASGMへの転用防止、教育、非水銀代替策の研究
等について協力
零細及び小規模の金の採掘(ASGM)(7条)
条文と答申の対応関係:詳細(7条)
<答申の内容>
○ 日本国内ではASGMにおける水銀及び水銀化合物の使用実態は確認されていない
が、法的には禁止されておらず、条約担保のためには法的措置が必要。現状を後退
させないため、禁止することが適当。
28
廃棄物の水銀以外の水銀の暫定的保管(10条)
条文と答申の対応関係:詳細(10条)
○締約国会議は、バーゼル条約に基づいて作成された関連する指針等を考慮して、暫
定的保管に関する指針を採択する。
○締約国は、上記指針およびその要件に従い、暫定的保管が環境上適正な方法で行わ
れることを確保するための措置をとる。
<答申の内容>
(1)管理指針等
○条約における「環境上適正な暫定的保管に関する指針」は条約発効後の締約国会
議で採択されることから、それまでの間、国が管理指針等を策定し環境上適正な取扱
い等を定めることが適当。
○管理指針等を検討する際は、バーゼル条約の指針を考慮することが適当。
(2)保管の報告
○条約第10条(暫定的保管)の対象物が水銀廃棄物となった場合に第11条(水銀廃棄
物)に基づき適正に管理される制度とするため、一定量(30kg)以上の水銀を保管す
る事業者に対し定期的にその保管状況等の報告を求めることが適当。
29
○ 水銀廃棄物に関して、今後締約国会議が採択する追加の条約附属書の要件に従い、
環境上適正な方法で管理することが求められる。
水銀廃棄物の環境上適正な方法による管理
条文と答申の対応関係:11条
<答申の内容>
○ 廃棄物処理法の廃棄物に該当するものは同法に基づく措置で対応。条約上の廃棄
物(注:バーゼル条約の定義を引用)であって廃棄物処理法の廃棄物に該当しないも
の(例:非鉄金属製錬から生ずる水銀含有スラッジ)について、条約担保のための法
的措置が必要。
○その際、管理指針等の対象事業者について限定を設ける必要はない。ただし、条約
上の廃棄物は条約発効後に水銀含有濃度等の基準値が定められることも踏まえ、適
切な基準値を設けるべきである。
30
○ 国内の事情を考慮してこの条約の義務を履行するために実施計画を作成し、実施す
ることができるとされている。
実施計画
条文と答申の対応関係:20条
<答申の内容>
○ 条約の求める水銀のライフサイクルにおける対策の対象範囲は極めて広く、ステーク
ホルダーも広範であり、多くの既存法令も関係していることから、条約を受けて実施す
る水銀対策の全体像や将来像を包括的に示し、各種施策の密接な連携を確保する
ため、国において実施計画を作成することとし、策定方法、定期的なフォローアップ等
を確保することも検討すべきである。
○実施計画には、関係者の責務、各種の法令で担保するもの、条約で努力規定として
定められている各種の事項等を包括的に含めることを検討すべきである。
○我が国の先進的な水銀使用・排出低減技術やリサイクルシステム等を用いて世界に
おける水銀の使用削減に貢献することが重要であることから、こうした技術・システム
の海外展開の促進についても盛り込むべきである。

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