130615木造建物と地震の話2. 自己紹介
• 1970 年生まれ
• 実家は大阪府、本籍は兵庫県
• 平成 2 年 4 月 京都大学工学部建築系学科に入学
• 平成 11 年 3 月 京都大学大学院工学研究科生活空間
学専攻単位認定退学
• 平成 11 年 4 月~平成 17 年 3 月 豊橋技術科学大学建
設工学系助手
• 平成 17 年 4 月~平成 18 年 9 月 独立行政法人国立高
等専門学校機構高松工業高等専門学校建設環境工学
科講師
• 平成 18 年 10 月~鳥取環境大学助教授のち准教授
• 現在に至る
鳥取環境大学公開講座
5. 木造住宅の耐震性能と耐震規定
◆1950 年(昭和 25 年)に建築基準法が制定される
木造建物に対する耐震規定ができる
⇒壁量規定のみ、接合部に関する規定はなし
◆ 耐震規定の改定
壁量規定については、その後 2 度改定されているが、
1981 年以前に建設された住宅には、耐震性に問題
がある場合が多い。特に壁量以外に基礎や接合部
に問題がある場合が多い。
鳥取環境大学公開講座
6. 1950 年 1954 年 1981 年 2000 年
建
築
基
準
法
改
正
1988 年頃からホールダウン
金物(通し柱)
壁
量
基
礎
筋
か
い
柱
の
固
定
かすがいを使用
12cm/m2 21cm/m
2
29cm/m2
接合金物
柱すべて
ホールダ
ウン金物
木造住宅の変遷(法的規定)
鳥取環境大学公開講座
1979 年頃から山
型プレート
9. 木造住宅が地震被害を受けた主な地震
• 兵庫県南部地震以降
– 1995 年・兵庫県南部地震
– 2000 年・鳥取県西部地震
– 2001 年・芸予地震
– 2003 年・宮城県北部地震
– 2004 年・新潟県中越地震
– 2005 年・福岡県西部沖地震
– 2007 年・能登半島地震、新潟県中越沖地震
– 2008 年・宮城岩手内陸地震
– 2011 年・東北地方太平洋沖地震
鳥取環境大学公開講座
すべて
内陸性直下型地震
11. 被害の概要
• 淡路・神戸などで震度 7 が初めて適用された
• 最大加速度として 800gal を超える値が観測される
など、きわめて強い揺れを示した
• 人的被害、建物被害、また鉄道・高速道路の被害
も大きく「阪神・淡路大震災」と呼ばれること
になった
• 木造では、古い木造住宅がきわめて多数倒壊した
鳥取環境大学公開講座
14. 木造建物の被害の概要
• 淡路島の一宮町や北淡町では全壊率が 40% 前後
• 神戸市長田区、灘区では世帯数の約 1/4 が大被
害
– 神戸市全体でも約 1/10
– 特に長田区では、火災による焼失を含めると 35%
の全壊率
• 火災で 7000 棟以上が消失
– 地震火災ではモルタル被覆は機能しなかった
– むしろ、木材の腐食を促進していることもある
鳥取環境大学公開講座
16. 木造大被害の要因 ( 鈴木有 )
• 大地震動と古い街並のドッキング
– 日本の現代都市のあちこちに存在する
• 工法の変質による耐力の低下
– 木造耐震化の原則を守っていた建物は激甚
地でも被害が軽微だった
• 土地政策・住宅政策の影響
– 「既存不適格」という古い建物のストック
• 気密化の進行とメンテナンスの不在
– 入り込んだ水分が抜けない
鳥取環境大学公開講座
18. 1 階傾斜 2 階傾斜 1 階崩壊
水平移動 小屋組以外崩壊
構造建物の倒壊類型図
( 1995 年兵庫県南部地震)
2階の方が安全
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22. 2000 年鳥取県西部地震
• 平成 12 年 10 月 6 日 13 時 30 分
• マグニチュード 7.3
• 最大震度 6 強 ( 日野町、境港市 )
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27. 常時微動計測
• 倒壊を免れた木造住宅を対象 ( 下榎、黒
坂 )
• 周辺地盤、 1 階床、 2 階床、 ( 可能なら
ば ) 屋根裏に速度計を設置し微少な振動
を計測
• 残存建物の振動特性を評価
– 地震を受ける前の状態は不明
鳥取環境大学公開講座
43. 新潟県中越地震
• 2004 年 10 月 23 日 17 時 56 分発生
• マグニチュード 6.8
• 新潟県の川口町で最大震度7を観測
鳥取環境大学公開講座
45. 1.地震の概要 ( 気象庁調べ )
※震度6弱以上のもの
( 1 ) 発生日時 : 平成 16 年 10 月 23 日 17 時 56
分頃
震度7 新潟県川口町
( 2 ) 発生日時 : 平成 16 年 10 月 23 日 18 時 11
分頃
震度6強 新潟県小千谷市
( 3 ) 発生日時 : 平成 16 年 10 月 23 日 18 時 34
分頃
震度6強 新潟県十日町市、
川口町、小国町
( 4 ) 発生日時 : 平成 16 年 10 月 23 日 19 時 45
分頃
震度6強 新潟県小千谷市
( 5 ) 発生日時 : 平成 16 年 10 月 27 日 10 時 40
余震に注意
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57. 地震の概要
• 発震: 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分 18 秒
• 震央:三陸沖
• 地震の規模:マグニチュード 9.0
• 最大震度: 7 ( 宮城県栗原市 )
• 東日本大震災
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75. 鳥取環境大学公開講座
京都の土塗り壁
• 貫は 4 段または 3 段
– 15×105mm 断面
• 柱を貫通し、楔留め
• 間渡し竹 ( エツリ竹 ) と小舞竹は共に割り
竹
• 横貫と立貫の接する面が柱心と合う
• 荒壁の厚さは約 30mm( 貫の厚さ )
• 中塗りの厚さは、“ちり”で決まる
78. 鳥取環境大学公開講座
荷重と変形の関係 ( 筋かいなし )
-400
-300
-200
-100
0
100
200
300
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
No.1b -400
-200
0
200
400
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
No.2b
600
400
200
0
-200
-400
-600
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
No.3b
-1000
-500
0
500
1000
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
No.4a
1. 貫のみ
2. 貫 + 下地
竹
3. 荒壁 4. 中塗り壁
79. 鳥取環境大学公開講座
-1500
-1000
-500
0
500
1000
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
-800
-600
-400
-200
0
200
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
変形角
荷重と変形の関係 ( 筋かい付 )
-1500
-1000
-500
0
500
1000
1500
Load(kgf)
-0.15 -0.10 -0.05 0 0.05 0.10 0.15
deformation angle (rad)
変形角
5. 貫 + 下
地
6. 荒壁 7. 中塗り
壁
筋かい破断後、壁土が耐
力を発揮して、筋かいな
しの試験体と同様の挙動
を示す。
81. 鳥取環境大学公開講座
試験体軸組 ( 外壁側 )
3000
1820
880910910300
455 455 455 455
105x240桁 米松
105x105土台 ヒバ
90x15貫 米松 楔締め
105x105柱 桧
45x30間柱 米松
竹小舞組
18203000
82. 鳥取環境大学公開講座
荷重と変形の関係
• 最大荷重は 1/60rad
時に 1390kgf
(13.6kN)
• 包絡線やスリップ
形状は京都での
実験結果に近い
- 1500
- 1000
- 500
0
500
1000
1500
load(kgf)
- 0.10 - 0.05 0 0.05 0.10
s tory de formation angle (rad)
Toyohas hi
Kyoto
84. 試験体 Py (kgf) Pu (kgf)
P120
(kgf)
Pmax
(kgf)
D0 (mm) Du (mm)
豊橋 792.4 1278.2 1114.1 1390.0 22.7 103.9
1京都中塗り 1072.6 1122.0 924.0 1367.0 29.7 181.2
2京都中塗り 734.9 1144.2 972.3 1302.0 21.3 94.6
試験体 μ Ds
2/ 3Pmax
(kgf)
Pu×
0.2/ Ds
(kgf)
Pe (kN) 壁倍率
豊橋 4.58 0.35 926.7 730.1 7.2 2.0
1京都中塗り 6.10 0.30 911.3 751.1 7.4 2.1
2京都中塗り 4.44 0.36 868.0 642.1 6.3 1.8
鳥取環境大学公開講座
壁倍率では地域による違いはな
い
85. 壁倍率
• 建築基準法施行令第 46 条
– 土塗り壁は 0.5
• 実験結果
– 大工・左官の通常の作り方で、約 2.0
• あれぇ?
– 全国一律に同様の性能が発揮されるわけで
はないからという理由で、法令ではきわ
めて低く見積もられているだけ
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89. 120× 120柱
120× 120土台
120× 240桁
120× 40鴨居
15× 105胴貫
45mm 厚小壁
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試験体概要
120× 240桁
18× 45立貫
120× 120柱
120× 120土台
120× 40鴨居
18× 105貫
1820
2730
小壁
90. 120× 120土台
120× 120柱
18× 45立貫
18× 105貫
18× 105貫
18× 105貫
18× 105貫
120× 240桁
全面壁
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試験体概要
120× 240桁
18× 45立貫
120× 120柱
120× 120土台
120× 40鴨居
18× 105貫
1820
2730
小壁
91. -15
-10
-5
0
5
10
15
20
-0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08
(rad)見かけの変形角
(kN)荷重
-6
-4
-2
0
2
4
6
-0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15
(rad)見かけの変形角
(kN)荷重
-6
-4
-2
0
2
4
6
-0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15
(rad)見かけの変形角
(kN)荷重
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最大耐力と見かけの変形角
最大耐力: 4.55kN
見かけの変形角:
0.051rad
小壁
最大耐力: 4.98kN
見かけの変形角:
0.061rad
45mm 厚小
壁
最大耐力: 14.79kN
見かけの変形角:
0.018rad
全面壁
95. -6
-4
-2
0
2
4
6
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
計測ステップ
(kN)荷重
荷重 柱の負担せん断力
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柱の負担せん断力
小壁
P
Q 左柱 Q 右柱
P=Q 左柱 +Q 右
柱
となるか検討
水平力をほとんど柱で
受け持つこと、木材で
もひずみは正確に計測
できるということを確
認
96. 鳥取環境大学公開講座
2006 年度の実験 ( 徳島 )
• 80mm 厚全面壁の壁厚さを少しでも薄くす
るように改良し
• 70mm と 55mm の試験体を作製
• 70mm でも柱脚の損傷は免れない
が、 80mm 厚より変形性能が向上する
108. 壁要素実験
• 実大振動台実験の事前シミュレーション
• 乾式荒壁パネル (PW) 試験体と湿式土塗り
壁 (MW) 試験体
– 土台仕様 (D) と足固め仕様 (A)
• 金沢工業大学 ( 後藤 ) 、鳥取環境大学 ( 中
治 ) 、福山大学 ( 鎌田 ) 、岡山理科大学
( 山崎 ) 、横浜国立大学 ( 中尾 ) で分担
•
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109. 試験体一覧
湿式 (振動実験試験体 No.4 を想定) 乾式 (振動実験試験体 No.3 を想定)
足固め仕様 略称 数 土台仕様 略称 数 足固め仕様 略称 数 土台仕様 略称 数
1P 全面 MWA-1 3 1P 全面 MWD-1 3 1P 全面 PWA-1 3 1P 全面 PWD-1 3
2P 全面 MWA-2 3 2P 全面 MWD-2 3 2P 全面 PWA-2 3 2P 全面 PWD-2 3
4P 全面 MWA-3 1 4P 全面 MWD-3 1 4P 全面 PWA-3 1 4P 全面 PWD-3 1
2P 垂れ壁 MWA-4 3 2P 垂れ壁 MWD-4 3 2P 垂れ壁 PWD-4 3
2P 腰壁 MWA-5 3 2P 腰壁 MWD-5 3 2P 腰壁 PWD-5 3
2P 垂れ壁+
腰壁
MWA-6 3 2P 垂れ壁
+腰壁
MWD-6 3 2P 垂 れ 壁
+腰壁
PWD-6 3
4P 開口付(6
種)
MWA-7 1 4P 開口付
(6 種)
MWD-7 1 4P 開 口 付
(6 種)
PWD-7 1
MWA-8 1 MWD-8 1 PWD-8 1
MWA-9 1 MWD-9 1 PWD-9 1
MWA-10 1 MWD-10 1 PWD-10 1
MWA-11 1 MWD-11 1 PWD-11 1
MWA-12 1 MWD-12 1 PWD-12 1
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PWD-3 は、
• 乾式 ( 荒壁パネル )
• 土台仕様
• 4P 全面
MWA-7 は、
• 湿式 ( 中塗り仕上げ )
• 足固め仕様
• 1P 全面+ 2P 垂れ壁・腰壁+ 1P
全面
110. 土台仕様試験体
1 2 4 5 6
1P全面 2P全面 2P垂壁 2P腰壁 2P垂壁・腰壁
3
2P +2P全面 全面
9
2P +2P垂壁・腰壁 垂壁・腰壁1P +2P +1P全面 垂壁・腰壁 全面
8
1P +2P +1P全面 垂壁 全面
7
12
2P +2P垂壁 垂壁
10
1P +3P全面 垂壁
11
1P +3P全面 垂壁・腰壁
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116. 土台仕様湿式土壁試験体の耐力性状
0
5
10
15
20
25
0 20 40 60 80 100
(x10真の変形角 - 3
rad)
(kN)荷重
MWD7 MWD8
MWD9 MWD10
MWD12
0
2
4
6
8
10
12
14
0 20 40 60 80 100
(x10真の変形角 - 3
rad)
(kN)荷重
MWD1 MWD2
MWD4 MWD5
MWD6
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2P 試験体 4P 試験体
125. 土塗り壁の力学性能の特徴
• 耐力 ( 強度 ) は大きくない
• 変形性能は大きい
– エネルギー消費性能はじゅうぶんある
• 壊れると土ぼこりがたいへん
– 大学の実験室はエライことになってます
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137. 地震のゆれに備える ?
• 建物の耐震性能の確保
– 耐震診断を受けましょう
– わが家だけのことではありません
• 屋内被害の軽減対策
– 倒れやすいものはありませんか?
– 崩れやすいものは?
– いざというときの逃げ道は?
• 地震警報を軽視しない
– テレビやラジオ、携帯電話などで緊急地震速
報を利用
– …はずれることもあるけれど
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145. その他の情報 (2011 年現在 )
• あんしんトリピーメール
– http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1
270772425736/index.html
• ハザードマップ・避難所一覧
– http://www.city.tottori.lg.jp/www/genre/0000
000000000/1236934241574/index.html
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Editor's Notes 1
81
81
83
83
89
89
90
90
91
91
92
92
93
93
108