ペーパーレス・はんこレスに向けたマネーフォワードの提言(20200501)

1. ペーパーレス・はんこレスに向けた
マネーフォワードの提言
株式会社マネーフォワード
2020年5月1日

2. 1
はんこは、メソポタミアのシュメール人によって作られた
と言われています。そこから中国を経て、日本へと伝わり
ました。その後、国内で独自の発展を続け、現在に至るま
で押印*の慣習は続いています。
*押印：はんこを押すこと
出典：https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E7%AD%92%E5%8D%B0%E7%AB%A0
http://www.inshou.or.jp/rekishipage/japanpage/nihon1.html

3. 2
みなさんの日常生活でも、さまざまな場面ではんこを押
す機会があると思います。
婚姻届を提出する宅配便を受け取る 銀行口座を開設する
マイホームを購入する スポーツクラブに入会する仕事を始める

4. そんなはんこが、
今まさに変わろうとしています。

5. 4
4月27日には、安倍総理から、対面でのやりとりや押印と
いった慣習・法規制を見直す方針が発表されました。
出典：令和2年4月27日第6回経済財政諮問会議（ https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/27keizaishimon.html）から抜粋

6. 今なぜ、紙やはんこがこんなに
話題になっているのでしょうか？

7. 6
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、13の特定警戒都
道府県を中心に、人との接触を８割減らすことが要請さ
れています。
企業においても、テレワーク（在宅勤務）の実施が推奨
されています。

8. 7
しかし、現実的には社員全員がテレワークを実施すること
は難しく、その大きな妨げとなっているのが「紙とはん
こ」であることが、明らかになりました。
経理・財務担当者1000名を対象とした調査結果
83%が、テレワークを実施できていない
決算対応、請求書の作成・押印・発送・受取な
ど紙書類の対応や押印を要するものが理由
33%
42%
43%
47%
契約書類の押印・発送
請求書の受け取り
請求書の作成・押印・発送
決算対応
出典：MF KESSAI「経理財務・会計担当者のテレワークの対応状況」に関する調査 （https://corp.moneyforward.com/news/release/20200427-mf-press/）

9. そもそも、会社の中で、
はんこはどういう時に
使われているのでしょうか？

10. 9
契約を交わす
モノやサービスを
売買する
行政手続きを行う
紙とはんこは、企業間の取引や行政手続きなど、さまざ
まな場面で使われてきました。

11. 10
• 実印
法務局に登録を行った印鑑。外側に会社名・内側に「代表取締役印」「代表
之印」とされることが一般的。
• 銀行印
金融機関との取引に用いる印鑑。実印や認印と同一の場合もある。
• 認印
法務局に登録しない「代表取締役印」「代表之印」と字入れされた印鑑。
• 役職印
「部長之印」「支店長印」など代表者以外の役職名が字入れされた印鑑。
• 角印
会社名、部署名、支店名などが字入れされた印鑑。
はんこは一種類ではありません。一般的に、会社では何
種類ものはんこが使用されています。
企業で使われる主なはんこ

12. 11
書類の種類 具体例 一般的な押印
社内手続き 内部統制関連書類 出勤簿、稟議書 個人認印・ネーム印
会社法関連書類 取締役会議事録、株主総会
議事録
会社実印、個人認印
民間企業と
のやりとり
国税関係書類（証憑） 請求書・納品書・領収書・
契約書等の証憑
認印・役職印・角印、
個人認印・ネーム印
契約書 NDAなど、国税課税文書以
外の契約書
実印・銀行印・認印・
役職印
銀行関係書類 申込書、変更書 銀行印
行政手続き 登記添付書類 取締役会議事録、株主総会
議事録、就任承諾書
会社実印、個人実印・
認印
各種申請書 実印・認印
書類の種類や目的に応じて、はんこの種類が使い分けら
れています。

13. 12
たとえば、会社を設立する（法人登記）時は、実印の登
録が必須となります。
法務局

14. 13
また、企業間でモノやサービスを売買する際には、一般
的に８回はんこを押す場面が発生します。
買
い
手
売
り
手
取引基本契約
見積書
発注書
受注書
納品書・業務完了報告書
請求書
領収書
押印が発生印
印
印
印
印
印
印
印
印

15. 14
さらに、買い手企業、売り手企業ともに、社内手続きも
合わせると、はんこを押す回数は17回に増えます。
買
い
手
売
り
手
取引基本契約
契約稟議 契約稟議
見積書 見積稟議
発注書発注稟議
受注書 受注稟議
納品書・業務完了報告書 押印稟議
請求書 押印稟議
領収書押印稟議
支払稟議
自社内のプロセス
印
印
印
印
印
印
印
印
押印が発生印
印
印
印
印 印
印
印
印
印

16. こんなにも、紙とはんこが
求められる理由は
何なのでしょうか？

17. 16
まず紙でのやりとりは、いつ誰によって、何がどのよう
に行われたのかを残すために、利用されてきました。口
頭のやりとりで物事を進めてしまうと、「言った」「言
わない」といった水かけ論になりやすく、当事者以外の
人には判断がつきません。

18. 17
そして、紙だけでは偽造や複製が簡単にできてしまうた
め、はんこを押すことで、特定の人物が正しい内容で文
書を作成したであろうということを担保しています。

19. 18
このように、紙とはんこは、いつ誰によって、何がどのよ
うに行われたのかを証明するために、使われてきました。

20. この紙とはんこを
デジタル化するとは、具体的に
どういうことなのでしょうか？

21. 20
紙とはんこのデジタル化は、紙を電子データに、押印の
代わりに電子署名を用いることで、実現できます。
株
式
会
社
◯
◯

22. 21
たとえば、契約書や請求書をデジタル化する以下のよう
なサービスが、利用者数を伸ばしています。
出展：スマートキャンプ株式会社「SaaS業界レポート2019」（https://boxil.jp/mag/a6562/）から抜粋
見積書/請求書発行契約
※記載されている会社名および商品・製品・サービス名（ロゴマーク等を含む）は、各社の商標または各権利者の登録商標です。

23. しかし、紙とはんこのデジタル化は
進んでいるとは言えません。

24. 23
企業間の取引において、両社がデジタル化できている場
合は、電子署名と電子データがやりとりされ、紙と押印
は必要なくなります。
①電子署名・電子データ
の受領
②電子署名・電子データ
の返送
自社 取引先
両社がデジタル化対応すれば、紙と押印がなくなる

25. 24
しかし、自社内でデジタル化を進めていても、取引先が
従来の紙と押印によるやり取りを続けている場合、デジ
タル化がしづらい状況になります。
①押印された紙を受領
②押印した上で紙を返送
自社 取引先
一社だけではデジタル化がしづらい

26. マネーフォワードは、紙とはんこの
デジタル化が進まない理由を
次のように分析しています。

27. 26
1. デジタル化への移行プロセスが複雑である
2. デジタル化するメリットが分からない
3. 押印が慣習として使われ続けている
4. 法令上、紙とはんこが必要な契約が残っている
紙とはんこのデジタル化推進の課題

28. 27
４つ目の課題については、政府の方で検討が始まる見込
みです。
1. デジタル化への移行プロセスが複雑
2. デジタル化するメリットが分からない
3. 押印が慣習として使われ続けている
4. 法令上、紙とはんこが必要な契約が残っている

29. マネーフォワードは、
残る３つの課題に対して、
「デジタルを原則にする社会」の
構築を目指し、
次の提言を行います。

30. 29
提言１：電子帳簿保存法スキャナ保存の要件を緩和する
提言２：法人設立登記時に、電子証明書の登録を義務化する
提言３：デジタル化のインセンティブを設計する
提言４：電子契約と電子署名に関するガイドラインを作成す
る
提言

31. 提言１
電子帳簿保存法スキャナ保存の
要件を緩和する

32. 31
紙のデジタル化については、「電子帳簿保存法」という
法律があります。電子データや紙の保存方法について定
められたもので、このうち紙をスキャンし保存する方法
を「スキャナ保存」と言います。
スキャナ保存の流れ
紙で受け取った領収書、
レシート、請求書など
スキャンする 電子保存する 紙書類は破棄
してもよい

33. 32
スキャナ保存を始めるには税務署への届けが必要ですが、
2019年までに届け出を出し、承認された企業は、たった
の2,888社。
税務署
出展：国税庁「税務統計 電子帳簿保存法に基づく電磁的記録による保存等の承認状況」の平成23年度以降の承認件数を当社で合算

34. 33
スキャナ保存に対応する企業が増えない理由として、
以下が挙げられます。
（１）電子データとして保存するための要件が厳しい
・データの訂正・削除・追加の履歴が反映されるシステムを利用する
・保存データがディスプレイとプリンターにはっきりと出力できる等
（２）社内規程を整備し運用する必要がある
・経理やシステム運用の規定などを整備する
・内部統制を前提とした事務処理要件を構築する等
（３）３ヶ月前までに税務署に提出して承認を得る必要がある

35. 34
知識やノウハウがない企業にとって、スキャナ保存対応
の要件は厳しいため、マネーフォワードは、これらの紙
での保存では求められていない要件の緩和が必要である
と考えています。
（１）電子データとして保存するための要件が厳しい
（２）社内規程を整備し運用する必要がある
（３）３ヶ月前までに税務署に提出して承認を得る
必要がある
要件緩和
要件緩和
承認制を廃止
届出制へ

36. 提言２
法人設立登記時に、
電子証明書の登録を義務化する

37. 36
会社を設立時の実印登録の際に、電子署名の検証に使わ
れる「電子証明書」登録を義務化すれば、会社設立と同
時に電子署名が使えるようになり、デジタル化に対応し
やすくなります。
法務局

38. 提言３
デジタル化のインセンティブを
設計する

39. 38
紙とはんこをデジタル化するには、オペレーションをゼ
ロから構築し直す必要があるため、企業にとって負担が
かかります。社会全体としてデジタル化を進めていくに
は、以下のようなインセンティブが必要であると考えま
す。
• 帳簿、国税課税文書について、電子保存を行っている企業は、税務調
査の頻度を落とす（電子化により国税調査の負担も減り、実効性の向
上が期待される）
• 税額控除枠の設定
• 税率の一部変更など
インセンティブのアイデア

40. 提言４
電子契約と電子署名の
ガイドラインを作成する

41. 40
押印は、長きにわたって日本のビジネスシーンを支えて来ました。しかし
押印がなくても契約は成立し、現在では、電子メールでのやり取りやオン
ライン上でのサービス申込みなども徐々に増えてきています。
自社 取引先
「商品をX個注文します」
「注文を承りました」
電子メールのやり取りだけでも、契約は成立する
ユーザー サービス
サービス提供
オンライン申込・
規約に同意
オンライン上でサービスの規約に同意して、利用開始するケース

42. 41
このように、従来の「紙＋はんこ」が「電子データ＋電子署名」にとって代
わるには、２つの方法に同等の効力が求められます。しかし、現在の法律や
判例では、同等の効力は認められていません。これにより、デジタル化への
不安が残り、移行しづらいケースがあると考えられます。
株
式
会
社
◯
◯
＋ ＋≠

43. ・電子契約と電子署名の有効性
・活用シーンの事例
・契約の種類によるリスク分析
・
・
etc.,
42
企業が慣習的に「紙+はんこ」で行ってきた業務を見直し、
デジタル化に安心して移行するためには、ガイドライン
の作成が必要であると考えます。

44. 以上が、紙とはんこのデジタル化
実現に向けた、私たちの
提言となります。

45. マネーフォワードは、
出社を余儀なくされている人を
少しでも減らし、安全で安心な
社会づくりに貢献していきたいと
考えています。

46. そのために、
政府や経済団体、
さまざまな企業などと一緒に、
紙とはんこのデジタル化を
推進していきます。

47. 「お金を前へ。人生をもっと前へ。」