セキュリティキャンプ2021z4トラックの発表スライド

1. BGPピアの実装
山口 雄翔

2. 概要
• 既にあるBGPピア(Dockerコンテナ上で動くFRRouting)と接続しBGP通
信を行うBGPクライアント。
• 内部にステートマシンを持っており、状態に合わせてBGPメッセージ
の送受信を行う。
• 受信した経路情報を、このプログラムが動いているローカルマシン
上のルーティングテーブルに反映する。
• 通常のBGPピアに存在するがこのプログラムには実装できなかった
機能が多々ある。(後述)

3. 実装できなかった箇所
能力的、時間的制約から実際のBGPにある機能で実装できていない
部分が多々ある。
• クライアントとしてしか動かない。
• 1つのピアとしか繋がることができない。
• 接続が切れた時に再接続をすることができない。
• Keepaliveメッセージを時間ごとに送信しない。
• Capabilityを実装していないため4バイトASなどを扱うことができない。
• Notificationメッセージの送受信ができない。 etc...

4. 自作BGPピアの挙動(BGP接続の確立まで)
• 指定した接続先ピア(プログラム中でipアドレスを指定)にTCPクライア
ントとして接続し、openメッセージを送ったのちOpenSent状態に入
る。
• openメッセージが返ってくるとkeepaliveメッセージを送り、
OpenConfirm状態に入る。
• keepaliveメッセージが返ってくるとEstablished状態に入る。

5. 自作BGPピアの挙動(BGPのMessage交換)
• Establishedになるとまず、jsonで書いたconfigファイルに載っている接
続先情報をBGPテーブルに登録する。
• その情報をupdateメッセージに載せて送信する。
• その後は、相手から送られてきたメッセージに反応して処理を行うよ
うになる。
• keepaliveメッセージが送られてきた場合はkeepaliveを送り返す。
• updateメッセージが送られてきた場合はその情報をBGPテーブルと
ルーティングテーブルに反映し、そのASパス情報に自分のAS情報を
付け加えてupdateメッセージとして送る。(このピアは単一のピアとし
か繋がれないので今のところ無意味である。)

6. 自作BGPピアの挙動(経路情報の管理)
• BGPテーブルは構造体の配列を用いて実現。
• ルーティングテーブルへの書き込みはsystem関数でrouteコマンドを
呼び出すことによって実現。
• updateメッセージで受け取った経路の情報は宛先アドレスごとに整
理し、ベストパスセレクションを行う。(経由するAS数が一番短いもの
をベストパスとする。)
• updateメッセージにて広告を行う経路はベストパスのみ。

7. 実験環境
R1で自作BGPプログラム、R2でFRRoutingのBGPピアを動かす。
R1の左側をAS1、R2の右側をAS2と設定する。
R1とR2で経路情報を交換しあい、C1からC4までpingが通ることを確認できた。

9. 難しかった点
• パケットに詰め込むデータが少しずれるだけで全く意味を成さないパ
ケットになってしまうので、デバッグが難しかった。
• 構造体のアラインメントなど言語処理系の知識も必要であると感じた。
• 状態遷移を管理しながら処理を行うプログラムを作るところが難し
かった。

10. よかった点・感想
• TCPクライアントなどよりさらに進んだネットワークプログラミングを学
ぶことができた。(BGPプログラム等の自作は市販の本とかでもなか
なか扱っているものがない分野)
• Docker、Makefile、Vimなどの開発ツールについて学ぶことができた。
• ネットワーク関係の研究や開発などをする上での第一歩になったと
思う。
質問に丁寧に答えてくださった講師の方々、本当にありがとうござい
ました!!