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コンビニの明日
~24h 寄り添う存在として~
経営管理論
澤田幹
尾曽幸平 駒野智紀 櫻井史織 高田紗希 長坂雅人 西村星香 東野沙紀 吉田杏花
2015/12/04
2
目次
第 1 章 コンビニの概要 P6~P15 (執筆担当:櫻井史織)
1. 小売業の中での「コンビニ」
2. コンビニとは
2-1. コンビニの定義
2-2. コンビニの特徴
2-3. コンビニの性質
2-4. コンビニの位置づけ
3. コンビニの店舗数と売上の推移
3-1. 国内コンビニ業界の店舗数の推移
3-2. 国内コンビニ業界の店舗数ランキング
3-3. 国内コンビニ業界の売上の推移
3-4. 国内コンビニ業界での売上ランキング
4. 寡占化
4-1. 寡占化が進むコンビニの現状
4-2. 寡占化の定義
4-3. 経済的観点からみた寡占化の特徴
4-4. コンビニ業界における寡占化
5 第 1 章まとめ.
第 2 章 セブン‐イレブンの強さ P16~P44
1. セブン‐イレブンとは (執筆担当:吉田杏花)
1-1. 会社概要
1-2. 沿革
1-3. セブン‐イレブン・ジャパンの歴史
2. 財務分析 (執筆担当:吉田杏花)
2-1. 営業利益・経常利益・売上
2-2. 店舗数
2-3. 設備投資額
2-4. 他のコンビニとの比較
3. セブン&アイ・ホールディングス (執筆担当:尾曽幸平)
3-1. セブン&アイ・ホールディングスとは
3-2. オムニチャネルとは
3
3-3. オムニ 7 とは
4. 出店戦略 (執筆担当:尾曽幸平)
4-1. セブン‐イレブンの出店戦略
4-2. ドミナント方式のメリット・デメリット
5. プライベートブランド (執筆担当:高田紗希)
5-1. プライベートブランドとは
5-2. セブンプレミアム
5-3. 消費者ニーズへの対応
5-4. チーム MD
6.情報システム (執筆担当:尾曽幸平)
6-1. POS システムとは
6-2. セブン‐イレブンの情報システムの変遷
6-3. 第 6 次総合情報システム
7. 4 つの強みの相互作用 (執筆担当:吉田杏花)
7-1. ①グループの規模・プライベートブランドの関係
7-2. ②情報システム・出店戦略の関係
7-3. ③プライベートブランド・出店戦略の関係
7-4. ④情報システム・グループの規模の関係
7-5. ⑤情報システム・プライベートブランドの関係
7-6. まとめ
第 3 章 追随するコンビニ P45~P47
1. ローソンの独自戦略 (執筆担当:東野沙紀)
1-1. 多業態戦略
2. ファミリーマートの独自戦略 (執筆担当:西村星香)
2-1. 一体型店舗
3. まとめ (執筆担当:東野沙紀)
第 4 章 日本の将来に対応するコンビニ P48~P60 (執筆担当:駒野智紀)
1. コンビニの課題と可能性
1-1. コンビニ店舗数の現状
1-2. コンビニが新たに抱える課題
1-3. 今後のコンビニの可能性
2. 今までに整備された社会的インフラ
2-1. 雇用・人材育成
2-2. 防犯対策
4
2-3. 災害時の対応
2-4. 社会的インフラとして機能することの意義
3. 「人」から見る将来の日本
3-1. 人口減少
3-2. 日本の高齢化
3-3. 人口集中
3-4. 世帯の変化
4. 今後の社会的インフラの整備
4-1. 過疎化への対策と地域活性化
4-2. 多様化するニーズ
4-2-1. 野菜・栄養に関するニーズ
4-2-2. 医薬品・医薬サービスに関するニーズ
5. 第 4 章まとめ
第 5 章 コンビニと社会的インフラ P61~P74
1. 健康に対する人々の意識 (執筆担当:東野沙紀))
2. 健康への取り組み ~セブン‐イレブンとファミリーマート~
2-1. セブン‐イレブン
2-2. ファミリーマート
3. 健康への取り組み ~ローソン~ (執筆担当:東野沙紀)
3-1. キャッチコピーの変更
3-2. ミールソリューション
3-2-1. ナチュラルローソン
3-2-2. 生鮮野菜
3-3. セルフメディケーションサポート
3-3-1. 医薬品の取り扱い
3-3-2. 新しい取り組み
3-4. ローソン まとめ
4. 地域密着 ~セイコーマート~ (執筆担当:長坂雅人)
4-1. セイコーマートとは
4-2. セイコーマートの特徴
4-3. セイコーマートのプライベートブランド
4-4. 独自の出店戦略
4-4-1. 買い物弱者
4-4-2. セブン‐イレブンとの出店戦略の違い
4-5. 出店による影響
5
4-6. セイコーマート まとめ
5. 経営統合 ~ファミリーマート~ (執筆担当:西村星香)
5-1. 概要
5-2. 経営統合による影響
5-3. 経営統合の問題
5-4. 経営統合が与える社会の変化
5-5. ファミリーマート まとめ
第 6 章 まとめ p75~76 (執筆担当:長坂雅人)
1. これまでのコンビニ
2. ニーズの多様化
3. これからのコンビニの在り方
参考文献
経営管理論
澤田幹
尾曽幸平 駒野智紀 櫻井史織 高田紗希 長坂雅人 西村星香 東野沙紀 吉田杏花
6
第1章
コンビニの概要
第 1 章では前提として、コンビニエンスストア(以下コンビニとする)の定義をはじめと
して、性質や特徴を挙げていき、現状についても詳しく述べていく。
1. 小売業の中での「コンビニ」
小売業の中でも代表的業態であるスーパーマーケット、百貨店、コンビニの売上の 16
年間の変化を見ることで、コンビニの小売業の中での存在の変化を考察する。そこで下記
の小売業業態別売上高の推移を示すグラフとともにその変容をみていく。
<図表 1-1>
(出典)経済産業省「コンビニエンスストアの経済・社会的役割に関する報告書」
をもとに作成
0
2,000,000
4,000,000
6,000,000
8,000,000
10,000,000
12,000,000
14,000,000
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
小売業業態別売上 推移
百貨店 スーパー コンビニ
(百万円)
(年)
7
図表 1-1 を見ると、スーパーの売上は横ばい、百貨店の売上は年々減少がそれぞれ見ら
れる。しかし、コンビニの売上は増加を続けている。
また、店舗数に関して、スーパーは若干の増加をしているが、百貨店は減少している。
その一方でコンビニの店舗数は順調に増え続けている。
つまり、売上と店舗数を共に増加させているコンビニが、小売業の中での存在を大きく
させていることが読み取れ、今や小売業の中心といえる存在になっていると考えられる。
近年ではコンビニの動向がニュースや新聞に大きく取り上げられることが多くなった。
このようにコンビニの存在が大きくなり、国民により身近な存在になったことが、その理
由の一つであると考えられる。
2. コンビニとは
近年コンビニは売上・店舗数を増大させ、小売業の中でも存在を大きくしている。そこ
で、コンビニの特徴や性質を述べた上で私たちの生活におけるコンビニの位置づけについ
て考察する。
2-1. コンビニの定義
まず、「コンビニ」の定義について触れておきたい。経済産業省「商業動態統計」によ
ると、コンビニとは、飲食料品を扱っている売り場面積 30 ㎡以上 250 ㎡未満であり、か
つ営業時間が 1 日 14 時間以上のセルフサービス販売店のことを意味する。
2-2. コンビニの特徴
次に主なコンビニの特徴として 4 つ挙げていく。「セルフサービス型の販売店であるこ
と」、「主となる取扱商品は『飲食料品』であること」、「売り場面積が狭いこと」、「営業時
間が長いこと」の 4 つである。
1 つ目の特徴である「セルフサービス型の販売店」とは、自分の好きな商品を自分で選
択し、自分でレジまで持って行き購入するという販売方法である。またこれは百貨店など
に見られる店員が顧客とともに一緒に商品を選ぶところから会計までの一連の流れを行う
サービス重視型とは正反対の方法である。昨今はセルフサービス型の小売店が主流となっ
ており、スーパー、ドラッグストア、アパレルでもセルフサービス型の販売方法が行われ
ている。
2 つ目の特徴である「主となる取扱商品は『飲食料品』であること」について見てい
く。定義上は主となる取扱商品は飲食料品となっているが、現在コンビニでは雑誌から日
8
用品まで豊富な商品を取り扱っている。またそれ以外にも公共料金の支払いや銀行 ATM
の利用などコンビニで享受できるサービスは多岐にわたる。
3 つ目の特徴である「売り場面積が狭い」ということについて見る。コンビニの定義で
も挙げていたが、コンビニの売り場面積は 30 ㎡以上 250 ㎡未満であり、中でも 150 ㎡前
後の売り場面積を持つ店舗が多い。小売業における他の代表的な業態の売り場面積の平均
は、総合スーパーが 9,403 ㎡、専門スーパーが 1,168 ㎡、百貨店が 23,630 ㎡、最近では
大型化しているドラックストアが 375 ㎡である。これらの売り場面積と比較してみるとコ
ンビニの売り場面積が特に小さいことが分かる。売り場面積が小さいため、たくさん出店
することが可能になる。そのためコンビニはスーパーや百貨店よりも店舗数が圧倒的に多
くなっている。
4 つ目の特徴である「営業時間が長い」ということについて見る。実態としてコンビニ
の多くの店舗が、24 時間かつ年中無休で営業している。このことによって、顧客に安心感
や手軽さを与えている。最近では、24 時間営業をしているスーパーも増え始めているが、
店舗数などを考慮すると、その手軽さではやはりコンビニに劣っていると言える。
2-3. コンビニの性質
コンビニは以下に示す 3 つの性質を有している。
1 つ目に、固定客が多いことである。ここで言う固定客とはある特定のコンビニに週に
1 回以上通っている顧客と定義する。一つのコンビニに対する固定客は約 80%である。こ
れは上述したコンビニの特徴である営業時間が長いことや、顧客が通勤・通学時に立ち寄
ったり、自宅の最寄りのコンビニを利用したりすることがその理由であると考えられる。
2 つ目に、店舗内の平均滞在時間が短いことである。コンビニの店舗面積が狭いことや
一顧客当たりの買い物量が少ないことが大きな理由であり、特に滞在時間が 5 分以内とい
う顧客が約 80%を占める。
3 つ目に、面積に対する生産性が高いということである。商業統計によると、コンビニ
は単位面積当たりの売上高が小売業態の中で最高値である。
2-4. コンビニの位置づけ
このようなコンビニの特徴や性質を踏まえた上で、我々は自分たちの生活におけるコン
ビニの位置づけを、「人々の生活における利便性を向上させるための小売店」であると結
論付けた。安さや生鮮食品の販売の面ではスーパーに勝つことは難しい。手厚いサービス
や品揃えでは百貨店に勝つことはできない。しかし、コンビニはスーパーや百貨店の良さ
を真似る必要性はないのである。むしろ営業時間の長さやその手軽さを生かすことで、ス
ーパーや百貨店では行うことができない、サラリーマンなどの一人暮らし、高齢者などあ
9
らゆる補完的なニーズに対応することが重要なのである。
3. コンビニの店舗数と売上の推移
コンビニの店舗数と売上の推移を見ていき、その変化や現在のコンビニの現状について
も関連付けて述べていく。
3-1. 国内コンビニ業界の店舗数の推移
まず初めに、国内のコンビニ業界の店舗数の推移について見ていく。
<図表 1-2>
(出典)ローソンアニュアルレポートをもとに作成
2004 年から 2014 年までの 11 年間分の推移では、店舗数は年々増加しており、2014 年
時点では 2004 年と比較して、約 14,000 店舗増加の 52,725 店舗となっている。
近年においてコンビニ業界では出店ブームが起こっている。特に 2011 年から店舗数は
急増しており、5 年足らずで 1 万店舗以上増加していることがわかる。
38,621 39,600 40,183 40,405 40,745 41,724 42,347 43,373
47,801
50,234
52,725
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
国内コンビニ業界の店舗数 推移(店)
(年)
10
3-2. 国内コンビニ業界の店舗数ランキング
<図表 1-3>
(出典)各コンビニ会社の HP 資料をもとに作成
2015 年 10 月末時点での日本国内における各コンビニ会社の店舗数を比較すると、最も
多い店舗を有している会社がセブン‐イレブン、その次がローソン、そしてファミリーマ
ート、サークル K サンクスと続いている。セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマー
トはそれぞれ 1 万店舗を超えており、その中でも業界 1 位のセブンイレブンの店舗数は、
2 位のローソンの店舗数を約 1.5 倍もある。
11
3-3. 国内コンビニ業界の売上の推移
では次に日本国内におけるコンビニ業界全体の売上の推移について見ていく。
<図表 1-4>
(出典) ローソンアニュアルレポートをもとに作成
2001 年から 2014 年の 14 年間分の推移では、店舗数と同様に、売上も毎年順調に増加
している。14 年間で売上は約 3 兆 5,000 億円増加し、2014 年では 10 兆 4,200 億円とな
っている。
通信販売といった無店舗型小売業の成長や、業態間における取扱商品の差別化がしにく
くなったことで、スーパーや百貨店といった小売業を代表する業態の売上は、近年伸び悩
みを見せている。しかし、コンビニは順調に売上を伸ばし、その存在感は年々大きくなっ
ている。
6680000
10423000
0
2,000,000
4,000,000
6,000,000
8,000,000
10,000,000
12,000,000
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
国内コンビニ業界 売上推移(百万円)
(年)
12
3-4. 国内コンビニ業界での売上ランキング
<図表 1-5>
(出典)各会社の HP 資料をもとに作成
2014 年における各コンビニ会社の売上を比較すると、最も多い売上をあげた会社はセ
ブン‐イレブンで、その次はローソン、そしてファミリーマート、サークル K サンクスと
続いている。
売上では店舗数以上にセブン‐イレブンの強さがわかり、2 位のローソンの売上に 2 倍
以上の差を拡げ、コンビニ業界全体の売上の約半分を占めていることになる。
このように、店舗数と売上においてコンビニ業界を牽引するセブン‐イレブンの強さは
一体何か。第 2 章ではセブン‐イレブンの成長を、コンビニ業界の代表として詳しく述べ
る。
13
4. 寡占化
4-1. 寡占化が進むコンビニの現状
<図表 1-6>
(出典) ローソンアニュアルレポートをもとに作成
2000 年から 2014 年の売上の中で、高い割合を占める 3 社(セブン‐イレブン、ローソ
ン、ファミリーマート)のシェア率の合計の推移に着目した。図表 1-6 は大手 3 社における
シェア率の推移を表したものである。
これを見ると、2000 年には 3 社合計 62.3%であった割合が、2014 年には 75.1%にまで
年度 2000 ⇒ 2014
大手3社の割合 62.3 ⇒ 75.1
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ業界全体に占める上位3社の割合
(年)
14
高くなっており、約 13%もの増加が見られる。このことは、大手コンビニ 3 社の寡占化が
進んでいることを意味している。
また昨年 10 月にファミリーマートとサークル K サンクスが経営統合の合意を行ったこ
とで、サークル K サンクスのシェア率がファミリーマートに加わることになるため、コン
ビニの寡占化の進行はますます激しくなることが考えられる。
4-2. 寡占化の定義
そもそも寡占化とは、完全競争でも完全独占でもなく,少数の売手または買手が競争し
ながら,ある程度社会全体の需給量と市場価格とを支配しうる市場状況のことである。
コンビニ業界における寡占化は売り手である供給者が少数であるため、それらが市場を
支配している状態によって起こる。
4-3. 経済的観点からみた寡占化の特徴
寡占化について 3 つの特徴を挙げる。
1 つ目に、戦略的関係が起きやすいことであり、このことは相互依存性とも言われる。
寡占企業の戦略は他の市場参加者がとり得る反応をあらかじめ推測し立案されることにな
る。これは、少数の会社が市場を支配しているために、ある会社の決定が他の会社に影響
を及ぼすからである。
2 つ目に、価格下方硬直性が起きやすいことである。数社だけで価格の調整を行うこと
で、価格が高騰する場合は他社も追随する動きをとるが、価格が下落する場合は、他社は
追随しないために、価格の下方硬直性が起こる。
3 つ目に、消費者の不利益を被る可能性があるということである。これは寡占状況下に
おいては、新規参入が困難であることや価格競争や技術競争、サービス競争が起きにくい
ためである。
4-4. コンビニ業界における寡占化
寡占化によって供給者がプライスメーカーとなり、消費者にそれによって悪影響を及ぼ
す可能性がある。しかし、コンビニとは価格で勝負するのではなく、その手軽さや安心感
を強みとしている。よって、多少の価格の変動は消費者側の大きな負担になることは考え
にくい。また、上述のようにファミリーマートとサークル K サンクスの経営統合の合意か
ら、大手コンビニ 3 社による寡占化はこれからも進行していくことが予想される。
15
5. 第 1 章まとめ
小売業は消費者の生活を支え、顧客にとって最も身近な業種である。しかし、昨今
において、その代表的業態であるスーパーマーケットや百貨店の売上・店舗数は伸び
悩んでいる。一方で、コンビニは売上・店舗数ともに年々増加し続け、その存在感は
ますます大きくなっていると言える。
コンビニは狭い店舗面積でも、豊富な品揃えや幅広いサービスを取り扱い、多くの
店舗を出店することで高い売上を実現させている。これが小売業におけるコンビニの
強みであると考えられる。
また、店舗を多く出店することには大きな資本力が必要であるため、コンビニ業界
は現在寡占化が進んでいる。「セブン‐イレブン」、「ローソン」、「ファミリーマート」
の 3 社による寡占状態であり、その 3 社が占める売上の割合は年々上昇している。
そして、その中でも現在最も多くの店舗数、高い売上を有しているのはセブン‐イ
レブンである。セブン‐イレブンはどのようにして成長を遂げてきたのか。第 2 章で
詳しく見ていく。
16
第 2 章
セブン‐イレブンの強さ
1. セブン‐イレブンとは
セブン‐イレブンはアメリカ合衆国発祥、日本最大手のコンビニである。そして株式会社
セブン&アイ・ホールディングスの子会社である株式会社セブン‐イレブン・ジャパンによ
って展開されている。ここからはセブン‐イレブンがどのような歴史を歩み日本最大手に
なったか、そしてどのような戦略をとっているのかを説明していく。
1-1. 会社概要
<図表 2-1>
名称 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
住所 〒102‐8455
東京都千代田区二番町 8 番地 8
代表取締役会長・
最高経営責任者(CEO)
鈴木 敏文
代表取締役会長・
最高執行責任者(COO)
井阪 隆一
設立 昭和 48 年 11 月 20 日
資本金 172 億円
従業員数 7191 人(平成 27 年 2 月現在)
(出典)セブン‐イレブン・ジャパン公式 HP をもとに作成
17
1-2. 沿革
<図表 2-2>
1973(S.48)
1974(S.49)
1975(S.50)
1978(S.53)
1981(S.56)
1982(S.57)
1990(H.2)
1991(H.3)
1992(H.4)
1993(H.5)
1997(H.9)
1999(H.11)
2000(H.12)
11 月:「(株)ヨークセブン(*1)」設立 米国サウスランド社(*2)
(現 7-Eleven,Inc.以下同じ)と エリアサービスおよびライセン
ス契約締結
5 月:第 1 号店出店(東京都江東区・豊洲店)(*3)
6 月:24 時間営業開始(福島県郡山市・虎丸店)
9 月:ベンダーの集約化、共同配送開始
1 月:社名を「(株)セブン‐イレブン・ジャパン」に改称(*4)
8 月:ターミナルセブンによる発注開始
8 月:東証第 1 部に指定替え
10 月:POS(販売時点情報管理)システム開始
9 月:第 4 次総合情報システム導入開始
3 月:米国サウスランド社の株式を取得し経営に参画
5 月:ISDN(総合デジタル通信網:NTT)導入開始
2 月:店舗イメージリフレッシュ開始
10 月:新本部情報システム導入開始
12 月:ヴァウチャー(共通食券)取扱い開始
11 月:衛星通信による第 5 次総合情報システム導入開始
3 月:新型 POS レジスター導入開始
8 月:お食事配達サービスの「株式会社セブン・ミールサービス」設立
18
2001(H.13)
2002(H.14)
2003(H.15)
2004(H.16)
2005(H.17)
2006(H.18)
2007(H.19)
2008(H.20)
2009(H.21)
9 月:上記サービス開始
4 月:イトーヨーカ堂と共同出資により「株式会社アイワイバンク銀行
(現 セブン銀行)」設立
5 月:アイワイバンク銀行(現 セブン銀行)の店内 ATM(現金自動預
け払い機)設置開始
8 月:「保存料・合成着色料」を使用しないオリジナル・ファスト・フ
ード商品を販売
5 月:冷蔵でも加温でも販売できるオープンケース設置開始
11 月:マルチコピー機を活用したチケットサービス等の取扱い開始
8 月:出店数 10,000 店舗達成
1 月:合弁会社「セブン‐イレブン北京有限会社」設立
4 月:中国北京で第 1 号店出店(北京市東城区・東直門店)
9 月:持株会社である「株式会社セブン&アイ・ホールディングス」設
立(*5)
「株式会社セブン&アイ・ホールディングス」東証第 1 部へ上場
5 月:チケット販売のイープラスと提携、サービス開始
第 6 次総合情報システム本格導入開始
3 月:セブン‐イレブンが小売業として世界最大の チェーン店舗数を
達成(*6)
4 月:独自の電子マネー「nanaco(ナナコ)」導入開始
8 月:「セブンプレミアム」をセブン‐イレブン店舗で販売開始(*7)
10 月:カウンター調理(フライヤー)商品の販売開始
11 月:岐阜県、三重県に初出店(*8)
12 月:情報メディアと小売業を融合させた「日テレ 7」設立
4 月:「セブン‐イレブン中国有限公司」設立
7 月:セブン‐イレブンネット開始
1 月:富山県と福井県に初出店(*9)
19
2010(H.22)
2011(H.23)
2012(H.24)
2013(H.25)
「セブンプレミアムが日経優秀製品・サービス賞 2008」の「最優
秀日本経済新聞賞」を受賞
2 月:島根県初出店(*9)
6 月:大衆薬の 24 時間テスト販売を開始
11 月:鉄道駅構内に初出店(*10)
石川県に初出店(*9)
12 月:「セブンネットショッピング」サービス開始
ぴあ(株)と業務・資本提携
9 月:「セブンプレミアム」のワンランク上の品質を実現した「セブン
ゴールド」を発売(*11)
セブン‐イレブン全店舗で「visa」「マスターカード」「アメリカ
ンエキスプレス」「ダイナーズクラブ」のクレジット決済サービ
スの開始(*12)
11 月:北海道キヨスク(株)と業務提携(*13)
店頭マルチコピー機でチケットぴあの販売開始(*14)
12 月:世界のセブン‐イレブン出店数が 40,000 店舗を突破
「セブン‐イレブン成都有限公司」設立
3 月:日本における「セブン‐イレブン」の商標権を取得
鹿児島県に初出店(*15)
5 月:オリジナル商品の内容、ロゴ、パッケージを全面リニューアル
お買物支援向け移動販売「セブンあんしんお届け便」開始
店内照明・店頭看板の LED 化等の節電対策を本格導入(*16)
1 月:チェーン店全店売上高 3 兆円を突破(*17)
5 月:セブンライフスタイル販売開始
秋田県に初出店(*18)
7 月:超小型電気自動車による商品お届けサービス
「セブンらくらくお届け便」開始
1 月:「セブンカフェ」販売開始(*19)
2 月:出店数 15,000 店舗突破
3 月:世界のセブン‐イレブン出店数が 50,000 店舗を突破
20
2014(H.26)
2015(H.27)
香川県と徳島県に初出店(*20)
10 月:新京成電鉄(株)と業務提携(*21)
1 月:「セブンカフェ」が日経優秀製品・サービス賞 2013 の「最優秀
日本経済新聞賞」を受賞
3 月:愛媛県に初出店(*20)
西日本旅客鉄道(株)ならびに JR 西日本デイリーサービスネッ
トと業務提携(*22)
7 月:四国旅客鉄道(株)と四国キヨスク(株)と業務提携(*22)
3 月:高知県に初出店(*23)
11 月:「オムニ7」開始(*24)
(出典)セブン‐イレブン・ジャパン公式 HP
セブン&アイ・ホールディングス事業概要(投資家向けデータブック)をもとに作成
1-3. セブン‐イレブン・ジャパンの歴史
1974 年、東京都豊洲に日本初のセブン‐イレブンがオープンした(*3)。もとはアメリカ
より発祥したコンビニエンスストアである。当初、朝 7 時から夜 11 時まで、毎日営業する
チェーンとして、店名を「7-Eleven」とした。セブン‐イレブンのルーツといってもいいだ
ろう。この数字の”7”と"ELEVEN"を組み合わせたものをロゴにし、それが原型となって
現在のロゴマークがある。
セブン‐イレブンには創業時に掲げられた理念がある。それは、「既存中小小売店の近代
化と活性化」、「共存共栄」の 2 つである。この創業理念は、昭和 30~40 年代(1950 年代
中頃~1970 年代前半)の高度成長期、大量生産・大量販売による空前の消費ブームが巻き
起こっていく中でうまれた。
消費者構造が「売り手市場」から「買い手市場」へと変化し始めていく中で、中小小売業
の経営環境は問題を抱えていた。中小小売業は依然として家族的な労働を中心に営まれて
おり、労働生産性があがらず、新たな人材は製造業に奪われてなかなか確保できないという
状況であった。
そんな中、昭和 30 年代に勃興したチェーンストア(大型店)は出店規模をどんどん拡大
していた。大型店が新規出店をする際に、厳しい経営環境にある地元商店街と直接交渉する
こととなった。このような大型店の進出が、中小小売店の経営不振の原因なのではないか、
という見方も広まったという。その結果、1973 年、中小小売商業振興法、大規模小売店法
が成立した。
1970 年度末時点で 22 店舗を展開していたイトーヨーカドーは首都圏を中心に急速に店
21
舗数を増やしていたが、やはり地元商店街との交渉機会が増え、中小小売店の意見に直面し
ていた。しかしイトーヨーカドーは中小小売店との「共存共栄」をはかっていた。中小小売
店の生産性があがらないのは大型店との競争のせいだというのは間違いで、「規模の大小に
かかわらず、生産性をあげて人手を確保し、きめ細かくニーズに対応していけば必ず成長の
道が拓かれ、大型店と中小小売店の共存共栄は可能になる。」と当時のイトーヨーカドー取
締役(現セブン&アイ・ホールディングス代表)鈴木敏文は言った。だが実際、生産性があ
がった中小小売店経営の実例はなかったため、地元商店街の人々への説得が難しかった。
そこで北米 4000 店舗の小規模店舗を展開し、なお成長し続けていた「サウスランド社」
のセブン‐イレブンに目をつけた(*2)。この企業のやり方を学ぶためにイトーヨーカドー
はサウスランド社と提携し、設立されたのが「株式会社ヨークセブン」である(*1)。「中
小小売店経営の近代化と活性化と、大型店との共存共栄の実現」を目指して、国内ではコン
ビニエンスストア事業に批判的な意見が多かったが、それでもセブン‐イレブンの導入に
踏み切ったのだ。具体的には店舗運営をチェーン化、システム化することで生産性を高める
という。こうしてセブン‐イレブンは国内の実情をふまえた本格的なフランチャイズ方式
の確立に力を注いでいき、セブン‐イレブンの創業理念ができた。
このような創業理念のもと、セブン‐イレブンは顧客に対して、「いつでも、どの時代も、
あらゆるお客様にとって便利な存在であり続けたい」としている。近年、移り変わりやすい
消費者の需要に応えるべく、セブン‐イレブンは「近くて便利」というなじみやすいキーワ
ードで顧客に訴えかける。このような考えは以下の社是に忠実に沿っているからではない
かと考える。
こうした企業観念を掲げているセブン‐イレブンは、どのようにして頂点に登りつめた
のだろうか。そしてこれからも成長の余地はあるのだろうか。財務データやセブン‐イレブ
ンの戦略をみていき、私たちの考えをまとめていく。
【社是】
・私たちは、お客様に信頼される誠実な企業でありたい。
・私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される誠実な企業でありたい。
・私たちは、社員に信頼される誠実な企業でありたい。
セブン‐イレブン・ジャパン公式 HP より
22
2. 財務分析
2-1. 営業利益・経常利益・売上
<図表 2-3>
<図表 2-4>
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
営業利益
HLDGS合計 コンビニ
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
350,000
400,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
経常利益
HLDGS. セブン‐イレブン・ジャパン
23
<図表 2-5>
(出典) 図表 2-3、2-4、2-5 はセブン&アイ・ホールディングス事業概要
(投資家向けデータブック)をもとに作成
これらは 2004 年から 2014 年までのセブン‐イレブンに関する財務データである。まず
は営業利益と経常利益そして売上高から見ていく。オレンジのグラフがセブン&アイ・ホ
ールディングスであり、緑で表されているのがセブン‐イレブン・ジャパン(コンビニエ
ンスストア事業)のグラフである。このように二つのグラフに分けたのは、セブン‐イレ
ブン・ジャパンのコンビニエンスストア事業がセブン&アイ HLDGS.全体のどれだけを占
めているのかを明確にするためである。
図表 2-3 営業利益と図表 2-4 経常利益をみると 2004 年~2008 年まで急上昇しているこ
とがわかる。2007 年にはセブン‐イレブンのプライベートブランドであるセブンプレミア
ムを販売開始している(*7)。2009 年は一時的に急落しているが、これは 2008 年のリー
マンショックによる世界的な金融危機の深刻化や景気の下振れの懸念によるものだと考え
る。それ以降はまた上昇傾向にある。2010 年にセブンゴールドの販売開始によって消費者
の選択肢が増えた(*12)。加えてクレジット決済サービスの開始によって消費者は支払い
手段が増え、売上の更なる増加につながった(*13)。また、チケットぴあの販売開始もし
ている(*13)。新しいサービスを設けることで新たな顧客を引き入れることとなった。
このようにして 2012 年にはセブン‐イレブン全店舗の年間売上高が国内の小売業で初
めて 3 兆円を突破した(*18)。2015 年 11 月よりオムニチャネル戦略による「オムニセブ
ン」を開始したため、今後の業績にどう影響してくるのか、注目したいところだ(*26)。
0
500,000
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
3,000,000
3,500,000
4,000,000
4,500,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
売上
24
2-2. 店舗数
<図表 2-6>
(出典) セブン&アイ・ホールディングス事業概要(投資家向けデータブック)
をもとに作成
セブン‐イレブンは個人のオーナーと契約を結んで経営するフランチャイズ方式での出
店や、ドミナント戦略によって店舗数をどんどん伸ばしている。このような取り組みにより、
2007 年にセブン‐イレブンが世界最大チェーン店舗数となった(*6)。
2005 年に岐阜県(*5)、2006 年に三重県(*5)、2009 年は北陸三県(富山県・福井県・
石川県)と島根県(*9)、2011 年に鹿児島県(*15)、2012 年に秋田県(*18)、2013 年
から 2015 年には四国四県(*20)にそれぞれ初出店し、出店地域を増やしていった。この
ようにひとつの地域に集中して店舗を展開している
また、2009 年には鉄道構内に初出店(*10)を成し遂げ、2010 年に北海道キヨスク(株)
(*13)、2013 年に新京成鉄道(株)(*21)、2014 年には西日本旅客鉄道(株)と株式会
社 JR 西日本デイリーサービスネット(*22)と業務提携をして鉄道構内でもセブン‐イレ
ブンの店舗数を拡大していった。
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
全国チェーン店舗数
25
2-3. 設備投資額
<図表 2-7>
<図表 2-8>
(出典) 図表 2-7、2-8 はセブン&アイ・ホールディングス事業概要
(投資家向けデータブック)をもとに作成
次に、図表 2-7 は設備投資額の変化について表したグラフである。2004 年から 2010 年
までは横ばいとなっているが、2011 年から急激に増加していることがわかる。
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
設備投資
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
0
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100000
150000
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2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
設備投資額と店舗増加数の推移
設備投資 店舗増加数
26
図表 2-8 は設備投資額と店舗増加数である。設備投資額の変化と店舗の増加の仕方が似
ているので、このことからセブン‐イレブンは、積極的に店舗新設に投資していることがわ
かる。また、2011 年は店内照明・店頭看板の LED 化等の節電対策を導入した(*16)。こ
れらのことから設備投資額が急激に増えたと推測する。
2-4. 他のコンビニとの比較
では他のコンビニと比較して、セブン‐イレブンがどのような立場にあるのか。ローソン、
ファミリーマートの財務データを照らし合わせながら見ていく。
<図表 2-9>
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ大手3社の営業利益
セブン‐イレブン ローソン ファミリーマート
27
<図表 2-10>
<図表 2-11>
0
500,000
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
3,000,000
3,500,000
4,000,000
4,500,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ大手3社の売上
セブン‐イレブン ローソン ファミリーマート
0
50000
100000
150000
200000
250000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ大手3社の経常利益
セブン‐イレブン ローソン ファミリーマート
28
<図表 2-12>
<図表 2-13>
0
50000
100000
150000
200000
250000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ大手3社の設備投資額
セブン‐イレブン ローソン ファミリーマート
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
20000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
コンビニ大手3社の店舗数
セブン‐イレブン ローソン ファミリーマート
29
(出典)図表 2-9~2-13 はファミリーマート決算資料(2004 年 2 期~2015 年 2 期)、
ローソン 決算短信(2004 年~2014 年)、アニュアルレポート(2004 年~2014 年)
をもとに作成
図表 2-9 から図表 2-11 の 3 つのグラフを見ると、セブン‐イレブンは群を抜いて業績が
高いことが分かる。図表 2-13 の設備投資額に関してもセブン‐イレブンは莫大な資本をも
つため、新エリアに急速なスピードでどんどん出店することができる。よって店舗数もロー
ソンやファミリーマートとは大差をつけてセブン‐イレブンが多い。
以上のように、セブン‐イレブンは圧倒的な数字で他のコンビニエンスストアと大差を
つけている。そこで、「グループの規模」、「出店戦略」、「プライベートブランド」、「情報シ
ステム」の 4 つを強みとして、実際にどのような戦略でこのようなトップの座を勝ち取っ
たのかを説明していく。
3. セブン&アイ・ホールディングス
3-1. セブン&アイ・ホールディングスとは
セブン&アイ・ホールディングスは、セブン‐イレブンを経営する株式会社セブン‐イレ
ブン・ジャパンと株式会社イトーヨーカ堂、株式会社デニーズジャパンの 3 社の株式移転
により、2005 年に設立された持株会社である。また、セブン&アイ・ホールディングスが
対応する事業領域は、コンビニエンスストア、スーパー、百貨店、専門店、銀行、ネット事
業など、多岐にわたり、現在世界 16 か国・地域に約 56,000 店舗、国内に約 19,000 店舗を
展開しており、巨大な流通サービスグループとして機能している。これは、セブン&アイ・
ホールディングスのグループ企業を事業領域ごとにまとめた表である。
30
<図表 2-14>
(出典)セブン&アイ・ホールディングス HP をもとに作成
この図からも、セブン‐イレブンが所属しているセブン&アイ・ホールディングスは巨大
なグループであることが分かる。そして、このグループの規模の大きさがセブン‐イレブン
の強みの 1 つ目である。
セブン&アイ・ホールディングスの中には、イトーヨーカ堂など、思うような業績を上げ
ることができていない事業が存在しており、2015 年 10 月アメリカの投資ファンドが、そ
のような業績の上がらない事業を切り捨てるよう要求してきた事例がある。しかし、セブン
&アイ・ホールディングスはこの要求を退け、業績の上がらない事業を含めたグループ全体
の大きさを武器として活かす方針を取った。そして、このグループの大きさを活かす戦略と
して、「オムニチャネル」があげられる。
3-2. オムニチャネルとは
「オムニチャネル」とは、販売チャネルや流通チャネルを統合することなのだが、ここで
は分かり易くするために、従来の販売・流通チャネルの在り方から説明していく。一番シン
プルなチャネルの在り方が「シングルチャネル」である。シングルチャネルの下では、消費
者は商品を買うとき実店舗だけですべての買い物をしていた。
次第に電話やインターネットが普及することで、「シングルチャネル」から「マルチチャ
㈱セブン-イレブン・ジャパン ㈱セブン&アイ・ネットメディア
7-Eleven,Inc. ㈱セブンネットショッピング
SEVEN-ELEVEN HAWAII, INC. ㈱セブンドリーム・ドットコム
セブン‐イレブン北京有限公司 ㈱セブンカルチャーネットワーク
セブン‐イレブン(天津)商業有限公司 ㈱セブン&アイ出版
セブン‐イレブン成都有限公司 ㈱セブン・ミールサービス
セブン‐イレブン(中国)有限公司 ㈱ごっつお便
㈱イトーヨーカ堂 ぴあ㈱
㈱丸大 ㈱ニッセンホールディングス
華糖ヨーカ堂有限公司 ㈱オッシュマンズ・ジャパン
成都イトーヨーカ堂有限公司 ㈱ロフト
イトーヨーカ堂(中国)投資有限公司 ㈱赤ちゃん本舗
百貨店 ㈱そごう・西武 ㈱セブン美のガーデン
㈱ヨークベニマル ㈱バーニーズ ジャパン
㈱ヨークマート ㈱バルス
㈱シェルガーデン タワーレコード㈱
㈱サンエー アイワイフーズ㈱
㈱ダイイチ ㈱テルべ(特例子会社)
㈱天満屋ストア ㈱ライフフーズ
フードサービス ㈱セブン&アイ・フードシステムズ ㈱モール・エスシー開発
㈱セブン銀行 ㈱IYリアルエステート
㈱セブン・フィナンシャルサービス ㈱池袋ショッピングパーク
㈱セブン・カードサービス ㈱八ヶ岳高原ロッジ
㈱セブンCSカードサービス ㈱ヨーク警備
㈱セブン&アイ・アッセトマネジメント
㈱セブン&アイ・フィナンシャルセンター
(公財)伊藤謝恩育英財団
コンビニエンスストア
総合スーパー
食品スーパー
金融サービス
IT/サービス
その他事業
31
ネル」の時代へと移っていく。マルチチャネルの下で消費者は実店舗での買い物に加え、イ
ンターネットなどを介す通信販売など様々なサービスにアクセスすることが可能となる。
しかしマルチチャネルでは、消費者がそれぞれのチャネルに個別にアクセスする必要があ
り、店舗販売であれば実店舗、通信販売であればオンラインショップといったように、それ
ぞれのチャネルが連携していないという問題点がある。
この問題点を解決するのではないかと期待されているのが「オムニチャネル」である。消
費者が買い物をする際に、すべてのチャネルにシームレスアクセスできることが、オムニチ
ャネルの性質である。これによって、消費者はあるチャネルにアクセスするだけで、時間や
場所を選ぶことなくあらゆるサービスを享受することができる。オムニチャネルが整備さ
れることで、消費者は今までよりもさらに容易かつ便利に商品を手に入れることができる
ようになり、企業側もグループ内の商品をまとめて購入してもらうことでさらなる利益の
拡大が望める。
セブン&アイ・ホールディングスは、このオムニチャネルを整備することで、グループの
規模の大きさを活かそうと考えた。セブン&アイ・ホールディングスは複数の業態を抱えた
上で、セブン‐イレブンというコンビニを全国に約 18,000 店舗展開しているからこそ、オ
ムニチャネルを実現できるともいえる。そしてこのオムニチャネルの考え方に基づき、セブ
ン&アイ・ホールディングスが始めた具体的なサービスが「オムニ 7」である。
3-3. オムニ 7 とは
オムニ 7 とは、セブン&アイ・ホールディングスがグループ内の通販サイト(=チャネ
ル)を統合し、さらには実際の店舗との連携も強化しようと立ち上げた通販サイトで、2015
年 11 月 1 日からサービスが開始された。オムニ 7 で購入した商品は自宅で受け取ること
も、全国のセブン‐イレブンの店舗で受け取ることもできる。対象の企業は、セブン‐イレ
ブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう・西武、ロフト、赤ちゃん本舗、セブンネットシ
ョッピング、セブン&アイ・フードシステムズ、セブンカルチャーネットワークである。対
象となる商品は約 180 万品目となる。
このオムニ 7 では、「ネットショッピング」、「お届けサービス」、「旅行」3 つのサービス
を提供している。「ネットショッピング」部門では、セブンネットショッピング、SEIBU
SOGO e.デパート、イトーヨーカドー、アカチャンホンポ、Loft の商品を購入できる。「お
届けサービス」部門では、セブン‐イレブンのネットサービス、イトーヨーカドーのネット
スーパー、Denny’s 出前など食品を配送するサービスを提供している。「旅行」部門では、
セブン旅ネットで国内国外に関わらず様々な旅行プランを提供している。
セブン&アイ・ホールディングスは今後このオムニ 7 をネット通販事業の中心に据え業績
を伸ばしていきたいという狙いがある。消費者にとっても、セブン&アイ・ホールディング
スにとっても画期的なシステムのオムニ 7 だが、今後は Amazon や楽天市場など他の巨大
32
なネット通販サイトとの差別化を図る必要がある点や、未だにオムニ 7 の知名度が高くな
い点など、多くの課題がある。オムニ 7 を成功させるためには、そういった課題を解決し、
消費者により便利なサービスであると感じてもらう必要があるのではないだろうか。
<図表 2-15>
(出典)オムニ 7HP
4. 出店戦略
4-1. セブン‐イレブンの出店戦略
セブン‐イレブンは、出店戦略としてドミナント方式(高密度多店舗型出店方式)を採用
している。ドミナント方式とは、地域を絞って集中的に出店する出店方式である。今ではド
ミナント方式はどのコンビニも採用しているが、セブン‐イレブンは先駆けて導入してお
り、セブン‐イレブンの強みと言える。セブン‐イレブンはこのドミナント方式によって店
舗数を増やすことで徐々に商圏を拡大させており、現在では沖縄県以外の 46 都道府県に店
舗を展開している。(図表 2-16 参照)
また、セブン&アイ・ホールディングス全体でもこのドミナント方式を採用しており、複
数の業態の垣根を超えた高密度の店舗展開を行うことで、それぞれの業態における消費者
の来店動機や商圏範囲の違いもカバーしている。このドミナント方式はいくつかのメリッ
ト、デメリットを持っており、それぞれを詳しく説明していく。
33
<図表 2-16>
(出典)セブン&アイ・ホールディングス事業概要(投資家向けデータブック)
をもとに作成
4-2. ドミナント方式のメリット・デメリット
まず、ドミナント方式のメリットとデメリットを整理する。
<図表 2-17>
メリット デメリット
①チェーン店の認知度向上 ①店舗が集中した地域に災害が起きた
②来店頻度の増加 場合、壊滅的な被害を受ける恐れ
③物流効率の増加 ②資本のある業界最大手の出店があれば、
④加盟店への経営アドバイス時間の確保 一度に被害を受ける可能性
⑤広告効率の向上 ③互いの顧客を奪い合ってしまうカニバリ
⑥競合参入の阻止 ゼーション(共食い)が発生する可能性
⑦効果的な販売促進
(出典)セブン&アイ・ホールディングス株式会社公式 HP をもとに作成
このようにいくつかのデメリットは存在しているが、2011 年の東日本大震災以降、社会
的に災害に対する危機感が上昇し徐々に対策が講じられていることや、後述の情報システ
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
18,000
20,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
国内店舗数の推移
34
ムの充実などもあり、ドミナント方式のメリットを生かす形で、セブン‐イレブンは着実に
店舗数を伸ばしていると考えられる。
5. プライベートブランド
5-1. プライベートブランドとは
近年、コンビニエンスストアやスーパーなど様々な小売店でお店の名前やマークがつい
た商品をよく見かけるようになり、商品数も年々増加している。それらの商品は、プライベ
ートブランド(PB)と呼ばれている。例えば、イオングループの「トップバリュ」、ユニー
グループの「スタイルワン」、セブン&アイグループの「セブンプレミアム」などである。
通常の全国的に有名なメーカーの商品をナショナルブランド(NB)と呼ぶのに対して、大
手卸や大手小売チェーンが開発した商品をプライベートブランドと呼んでいる。
では何故近年プライベートブランドが注目され、商品数が増えてきているのか。それはプ
ライベートブランドを販売することには、販売する小売業者にだけではなく、メーカー側に
もメリットがあるからだ。
メーカーが小売業者とプライベートブランドを開発・販売するメリットとして 2 つ挙げ
られる。
1 つ目に、小売業者の販売力やマーケティング力が魅力的であるということだ。大手の小
売業者であれば、莫大な店舗数と消費者から支持を受けており、メーカーはそのような小売
店で自社商品を置く棚を確保できる。それによってもともとあったナショナルブランド商
品の広告宣伝を同時に行うことができ、認知度向上による売上向上につながる。
2 つ目に、小売業者と共同開発することができる機会を得ることができるということだ。
多くの消費者と普段から接している小売業者は、リアルタイムの消費者ニーズを知ってい
るので、小売業者と共同開発することでその情報を仕入れることができる。それは、プライ
ベートブランド商品の開発だけに活かされるのではなく、それを自社に持ち帰って、ナショ
ナルブランド商品の開発に活かすことができる。
このように、プライベートブランド商品は小売業界全体の売上上昇に貢献している。
5-2. セブンプレミアム
セブンプレミアムは、セブン&アイ・ホールディングスで展開されているプライベートブ
ランドであり、2007 年に誕生した。セブンプレミアムは、幅広い層に満足してもらえるよ
うに、食料品から生活用品まで購入しやすい価格で販売している商品群である。
35
セブン‐イレブン・ジャパンにおける米飯や調理パン、麺類など、それまで培ってきたオ
リジナル商品の開発手法をベースに、グループ各社のインフラや商品開発ノウハウ、販売力
を結集して開発している。その結果、ナショナルブランドの売れ筋商品と同等以上の味・品
質でありながら、実勢価格と比べて値頃感のある価格設定を実現している。
また、セブンプレミアムをより上質なものにしたプライベートブランドが「セブンゴール
ド」である。セブンゴールドは、「ちょっと贅沢しても美味しいものを食べたい」というニ
ーズに応えている。専門店や繁盛店と同等以上の品質で、買い求めやすい価格設定である。
<図表 2-18>
(出典)セブン‐イレブン HP
セブンプレミアムは、ソフトドリンクやカップラーメンなどの加工食品をはじめ、麺類な
どのファストフード、牛乳や乳製品などの日配品、さらには洗剤や化粧品などの非食品まで、
品ぞろえが豊富である。2014 年度には、セブンプレミアムのチェーン全店の売上がセブン
‐イレブンのチェーン全店売上の約 20%を占めている。そして、年間 100 億円以上売れた
セブンプレミアムの商品は 144 品目もあり、セブン‐イレブン全体の売上に大きく貢献し
ている。
また、毎週約 100 品目もの新商品が取り入れられ、約 70%の商品が入れ替わる。しかし、
全く新しい商品ばかりを開発して入れ替えるというよりは、既存商品をリニューアルする
ところに力をいれているため、次々と変化する消費者ニーズに応える工夫がされている。
36
<図表 2-19> チェーン全店売上の品目別割合
(出典)『セブン‐イレブンの横顔』
<図表 2-20>
(出典)セブン&アイ・ホールディングス事業概要(投資家向けデータブック)
をもとに作成
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
350,000
400,000
450,000
2013 2014
セブン‐イレブンチェーン全店売上に占める
セブンプレミアム売上の割合
セブンプレミアム売上 その他売上
37
5-3. 消費者ニーズへの対応
「常にお客の立場になって考え、時代の変化に対応すればいい。」これは、セブン&アイ・
ホールディングス会長兼CEOの鈴木敏文氏の言葉である。鈴木氏は、時代の変化に対応し、
消費者の立場で考えることをやり続ける必要があると考えている。先述した既存商品をリ
ニューアルするということをはじめ、セブン‐イレブンでは消費者ニーズに応える工夫を
行っている。
それが、「プレミアムライフ向上委員会」である。2009 年に開始され、会員になるとセブ
ンプレミアムの新商品や売れ筋ランキングなどの最新情報を得られる。「噂のセブンプレミ
アム」や「教えてセブンプレミアム」として表示し、消費者に新しいアプローチで提供して
いる。また、会員はセブンプレミアムに関する意見や要望やアイデアを投稿できる。「新商
品みなさまの声をお待ちしております」や「みんなのレシピ!」などの様々なコーナーがあ
る。これらによって、消費者の声に真摯に向き合い、声を大切にする姿勢を貫くことを実現
している。このように「顧客参加型」という大きなポイントのもと商品開発を行っている。
また、セブン‐イレブンは今でこそ全国的に独り勝ちしているが、ドミナント方式によっ
て高密度多店舗出店をしていたので、地域によっては日販が他チェーンと大きく差が出る
ことがあった。日販が小さかった関西で売れ行きを伸ばす方法を考えたところ、食品におけ
る関東と関西のレシピが違うことが判明した。初めにそれを改善したのがざるそばだ。関東
のつゆは濃いが、関西は薄い。そこでつゆの味付けを変えた結果、関西地区のざるそば販売
個数が全国平均を超えた。その後、プライベートブランド商品の肉じゃがやだし巻き玉子を
関西風に変え、日販の伸び率を急上昇させた。このように「地域性重視」の商品開発でより
消費者のニーズに応えている。
5-4. チーム MD
チーム MD とは、様々な分野のメーカーやベンダーなどとチームを組むセブン‐イレブ
ンが取り入れている商品開発プロセスのことを言う。消費者が求めている理想の商品をつ
くるために必要な技術を持つ企業を説得して、最強のチームを編成している。これによって、
業界の垣根を越えて、お互いの強みを生かし、さらに発展させていくことができ、数々のヒ
ット商品を世に送り出すことができる。
38
<図表 2-21> チーム MD における商品開発の仕組み
※ベンダー…売り主。売り手。また、販売会社。
(出典)セブン‐イレブン HP
商品開発のプロセスは、消費者目線で徹底したマーケット分析からスタートする。そして、
POS データや市場動向から商品コンセプトを研究し、モニターや専門家などのアドバイス
をもとにフィードバックを繰り返しながら新商品を開発している。その後、生産・配送・販
売の体制を確立してはじめて店頭に並べる。そして、それだけでは終わらず、販売結果の分
析・検証を通して絶えず改良を繰り返し、最良の商品を提供している。このプロセスがある
からこそ、顧客ニーズに応えた商品をそろえることができる。多様なニーズを持つ顧客・高
い技術力のメーカー・豊富な経験がある本部が三位一体となり商品開発を行っていること
こそ、セブン‐イレブンの商品が売れる秘訣なのである。
39
<図表 2-22> 顧客・メーカー・本部の三位一体
(出典)セブン‐イレブン HP をもとに作成
また、セブンプレミアムの商品開発はメーカーとの連携に関して、他のプライベートブラ
ンドとは違い、誰でも知っているような大手メーカーと共同で開発している。例えば、ビー
ルだけでもサントリーの「金のビール」・「ザ・ブリュー」、アサヒの「ザ・エキストラ」、キ
リンの「まろやかエール」など大手メーカー各社と共同開発している。また、そのメーカー
を表記しているので、消費者は安心して手に取ることができる。このようにして、消費者の
ニーズに応えた安心できる商品を開発している。
6.情報システム
6-1. POS システムとは
セブン‐イレブンは日本のコンビニエンスストア業界に先駆けて、POS(販売時点情報管
理)システムを導入した。POS システムとは、販売店に委託し設置した POS 端末とホスト
コンピューターを連携させ、単品別の販売情報を仕入れや生産にリアルタイムで反映させ
る仕組みのことである。単品管理を徹底し、商品の売れ行きを単品ごとに注意して受発注を
行うことで、売れ筋商品を店から切らさず、消費者があまり必要としていない死に筋商品を
店から減らすことができる。これによって、消費者のニーズの変化に敏感に対応することが
40
できるようになる。
6-2. セブン‐イレブンの情報システムの変遷
前述したように、セブン‐イレブンはコンビニエンスストア業界に先駆けて POS システ
ムを導入したが、当初は受発注業務を簡略化するための簡単なシステムに留まっていた。し
かし、現在では POS システムを中心とした巨大な情報システムを構築するまでに至ってい
る。その変遷を追っていく。
セブン‐イレブンは、それまで電話や注文シートで行っていた受発注業務を合理化する
ため、1978 年に店舗と本部を結ぶオンライン発注を開始し、1980 年には店舗とホストコン
ピューターを結ぶ専用ネットワークを構築した。これが第 1 次店舗システムである。
そして 1982 年からは第 2 次総合情報システムとして、小売業界の供給過剰という社会的
な流れに対応するために POS システムを導入し、単品管理を容易にすることで売り上げを
伸ばした。
1985 年には POS システムをより使いやすくするために第 3 次総合情報システムを導入
した。ここでは、POS データをグラフで表示できる情報分析パソコンを導入した。ビジュ
アル化されたデータをもとに、それぞれの店舗に適した商品を取りそろえることが可能と
なった。
1980 年代末には店舗数の増加に伴い、より大容量のデータを高速に送信する必要性が生
じた。そこで第 4 次総合情報システムとして、高速データ通信を可能にする ISDN 回線を
採用し、消費者のニーズを徹底亭に分析し価値ある商品の開発に注力した。
さらに POS データを活用するために、1997 年に第 5 次総合情報システムを導入した。
ここでは、文字、数値、静止画、動画、音声などのマルチメディア情報を活用できるように
システムを整備し、動画によるテレビコマーシャルの送信、音声や手書きの図による情報交
換までもが可能になり、本部と店舗間できめ細やかな情報が交換され、店舗の発注精度がよ
り向上した。
そして、2007 年からは現在のセブン‐イレブンの情報システムである、第 6 次総合情報
システムが導入される。
6-3. 第 6 次総合情報システム
第 6 次総合情報システムでは、店内ネットワークの無線化、売り場での商品情報・POS
情報の閲覧が実現され、より徹底した単品管理、より精度の高い受発注が可能となった。
さらに、店内のレジスターでは電子マネーを利用できるようになり、店内情報の共有を
進めるための日本語入力キーボードも新設された。本部と店舗間の回線にも光ファイバー
を採用することで、円滑な情報伝達が可能となった。
41
現在のセブン‐イレブンの情報システムでは、本部と店舗のみの連携だけでなく、オン
ラインでメーカーへの受注、温帯別管理による共同配送センターでの鮮度維持・計画的な
納品、セブン‐イレブン地区事務所での会計簿記サービス、そして PHS 通信を利用した
各店舗のオフィス(OFC)携帯パソコンへの的確なアドバイスの提供など、関係各所との
連携も強化されている。(図表 2-4 参照)
このように、セブン‐イレブンは情報システムを時代に合わせて発展させ、単品管理を
徹底し、消費者のニーズに敏感に対応することで業績を伸ばしてきた。
<図表 2-23> 第 6 次総合情報システム
(出典)セブン‐イレブン HP
42
7.4 つの強みの相互作用
<図表 2-24>
これまで私たちは、セブン‐イレブンがコンビニ業界最大手となった強みとして、「グル
ープの規模」、「出店戦略」、「プライベートブランド」、「情報システム」の 4 つを取り上げて
きた。これらの強みはそれぞれが個々に機能しているのではなく、相互に影響しあっている
からこそさらに強力に機能することができる。以下ではこれらの相互の関係について図表
2-24 を用いて 5 つに分けて紹介する。
7-1. ①グループの規模・プライベートブランドの関係
グループの規模を活かした戦略であるオムニチャネルとプライベートブランドのセブン
プレミアムとの相互関係について見てみる。ここでは 2 つの特徴を挙げる。
1 つ目に、様々な顧客ニーズに応えて開発されたセブンプレミアムは、オムニチャネルを
使うことにより、実際にコンビニやスーパーに足を運ばなくても自宅や旅先などで購入す
ることができるという特徴である。
2 つ目は、「グループの規模」そのものを活かして、イトーヨーカドーやそごう・西武な
どのコンビニ以外のグループ企業でもセブンプレミアムを購入することができるという特
徴である。つまり、セブン&アイ・ホールディングスは幅広い層の顧客に対してニーズを満
43
たす多種多様な商品を売ることができるということだ。
以上のような関係により、セブンプレミアムの更なる売上の増加が図られるのである。
7-2. ②情報システム・出店戦略の関係
出店戦略であるドミナント方式と情報システムである第六次総合情報システムとの相互
関係について見てみる。先ほども述べたように、ドミナント方式というのは特定のエリアに
多くの店舗を出店する方式であるが、もちろんそのエリアごとに商圏も客層も違いがでて
くる。ここでセブン&アイ・ホールディングスが長年かけて改良を重ね築き上げた第六次総
合情報システムが効果を発揮する。仮にエリアごとのニーズが似通っていれば、店舗の売れ
行きやニーズの傾向を調査・分析することで、売り切れた商品でもすぐにどの店舗にも商品
を配送・陳列することができ、常に店頭に並べておくべき商品を把握することが可能になる。
このようにしてセブン‐イレブンは、いつ顧客が来店しても欲しいものが揃っている状態
を維持できる。
7-3. ③プライベートブランド・出店戦略の関係
プライベートブランドであるセブンプレミアムと出店戦略であるドミナント方式との相
互関係について見てみる。大きな特徴としては、②で得られた分析結果をもとにセブンプレ
ミアムを開発することにより、エリアごとに顧客ニーズが異なっていても対応できるとい
うことだ。それが先述した関東と関西のレシピを変えたという例である。ドミナント方式だ
からこそ差別化した地域密着型の商品開発が行える。このことから、セブン‐イレブンは
様々なエリアで顧客に満足してもらえるような多種多様な商品開発に力を入れているとい
うことが分かる。
7-4. ④情報システム・グループの規模の関係
情報システムである第六次総合情報システムとグループの規模を活かしたオムニチャネ
ルとの相互関係について見てみる。セブン&アイ・ホールディングス内の多様な販売業態で
商品を売ることで様々な客層の膨大な購入データを管理し、これらのデータを精度の高い
第六次総合情報システムで分析することができる。これにより、顧客それぞれに対応したサ
ービスを提供することが可能になる。これを活かした戦略こそが「オムニセブン」である。
44
7-5. ⑤情報システム・プライベートブランドの関係
情報システムである第六次総合情報システムとプライベートブランドであるセブンプレ
ミアムとの相互関係について見てみる。この関係の特徴は、④の分析結果をもとにセブンプ
レミアムを開発できるということだ。これにより、セブン‐イレブンは顧客の需要にいち早
く対応・開発し、顧客側もセブン‐イレブンへ来店する動機につながる。
7-6. まとめ
以上のように①~⑤まで説明したが、4 つの強みが影響し合っていることで強みを発揮で
きていることがわかる。セブン&アイ・ホールディングスのグループ規模を活かせば多様な
客層のデータが得られる。また、多様な小売業態で同一の商品を提供することもできる。こ
こから得られるデータを情報システムに集結させ、商品開発やエリアごとの出店に活用し、
これらの強みを既存の商品やサービス、戦略を顧客目線で改良していく。
社会構造やニーズの変化を敏感に対応し分析していくことを重点においているセブン‐
イレブンだからこそ、顧客が満足する商品・サービスを提供することができ、顧客から選ば
れる存在となったのである。
45
第 3 章
追随するコンビニ
ここまで、コンビニの代表としてセブン‐イレブンの成長を見てきた。しかし、コンビニ
業界の拡大を支えてきたのはセブン‐イレブンだけではない。この章では、業界 2 位、3 位
の業績を誇るローソンとファミリーマートの独自戦略を見ていく。
1. ローソンの独自戦略
1-1. 多業態戦略
一般的に、コンビニは例えばセブン‐イレブンならセブン‐イレブン、ファミリーマー
トならファミリーマートというように 1 つの業態しかない。しかし、ローソンは「ローソ
ン」という 1 つの大きな枠の中で様々な業態を展開している。以下でその一部を紹介す
る。
まず、健康志向の特に 20 代~30 代の女性をターゲットにしたナチュラルローソンがあ
る。取り扱う商品全てについて、合成保存料不使用(医薬品・医薬部外品を除く)を徹底
し、原材料は国産を優先して使用するなど安心・安全の食品を顧客に提供している。ま
た、主婦や中高齢者をターゲットにしたローソンストア 100 という店舗がある。他のコン
ビニと比べて、生鮮野菜を中心にスーパーの幅広い品ぞろえで価値ある商品を 108 円(一
部商品除く)という安い価格で提供しているのが特徴である。
それから、顧客のニーズやそれぞれの地域に合わせて、新しい商品やサービスをプラス
している、より地域に特化したローソンプラスという店舗も展開している。
このように一社で複数の店舗業態を展開していく戦略は「マルチフォーマット戦略」と
呼ばれる。これまでローソンを含めたコンビニ各社は先頭を走るセブン-イレブンの仕組
みを模倣し、追随してきたと言われてきたが、その中でローソンは出店戦略に関し、独自
の戦略を展開し、他社との差別化を図ってきた。
今までのコンビニはサラリーマンをはじめとした中年男性をターゲットにするのが一般
的であった。しかし、このマルチフォーマット戦略をとることで、異なる顧客層をターゲ
46
ットにでき、より幅広いニーズに応えられるようになった。
しかし、複数の店舗業態を管理することは、仕入れから売り場づくり、接客の仕方まで
もが違ってくるため、一つの店舗業態を管理することよりも効率が悪い。また、取り組ん
でいることの規模が大きい分、失敗した時のリスクも大きい。
実際に全ての店舗業態が上手くいっているという訳ではなく、先に述べたローソンスト
ア 100 は現在、苦戦していると言わざるを得ない。その背景としては、よく似た業態であ
るイオン系列の小型スーパーの台頭や、円安、原材料の高騰が挙げられる。
しかし、このようなデメリットがありながらもローソンはマルチフォーマット戦略をや
めようとはしない。新浪剛史前社長は「常にイノベーションを求めよ。現状のままでは絶
対だめ。」と常々社員に訴えかけていたという。この言葉から、セブン‐イレブンの後追
いをするだけでなく、失敗を恐れることなく試行錯誤しながら取り組んでいくというロー
ソンのチャレンジ精神がうかがえる。
2. ファミリーマートの独自戦略
2-1. 一体型店舗
ファミリーマートならではの店舗経営の一つに、一体型店舗というものがある。これはコ
ンビニとは全く関係のない業態とコラボレーションした店舗のことである。
一体型店舗として提携している業態は、スーパーマーケットのイズミヤ、カラオケ DAM、
コメヤ薬局、外食チェーンのまいどおおきに食堂、旅行代理店の H.I.S.などがある。例えば
スーパーマーケットとの一体型店舗は、家庭のキッチンをコンセプトにし、コンビニならで
はの利便性や商品力と、スーパーマーケットの強みである出来立て惣菜、生鮮食品、日用品、
加工食品などの品揃えを一体化させるという双方の機能を備えた新たなビジネスモデルを
構築した。また、H.I.S.との一体型店舗は、訪日外国人客の取り込み強化を目的としており、
国内のファミリーマートの店舗に H.I.S.が運営するツアーデスクを設置した店舗を展開す
るなどしてコンビニと旅行会社のノウハウを融合している。
最近では 2015 年 11 月 27 日に、TSUTAYA との一体型店舗の第 1 号店を大阪府枚方市
にオープンさせた。コンビニの大きな特徴を用いて 24 時間営業している。このような
TSUTAYA との一体型店舗を今後 3 年間で 100 店の展開を目指しており、大きな注目を浴
びている。
このように他の業態と提携した店舗を出店することで、これまでのコンビニにはなかっ
た商品やサービスの提供を実現する事ができる。一つの店舗の中に様々な商品やサービス
があることで買い物がより便利なものになる。人々の生活をサポートする一つの良いアイ
47
デアである。
3. まとめ
このように、コンビニ業界で圧倒的強さを誇るセブン‐イレブンに追いつこうと他のコ
ンビニはセブン‐イレブンの後追いをするだけでなく、独自の戦略で他社との差別化を図
っている。このように、コンビニ業界はそれぞれが切磋琢磨しながら成長してきた。
48
第 4 章
日本の将来に対応するコンビニ
1. コンビニの課題と可能性
1-1. コンビニ店舗数の現状
第 1 章でコンビニ業界全体の店舗数は年々増加していることを示した。その中でも特に
2011 年からその増加数は顕著に大きくなっている。また第 2 章では、コンビニを代表して
セブン‐イレブンの設備投資額や全国店舗数のグラフでは 2011 年から店舗新設のために投
資額が激増し、全国店舗数の増加数が大きくなっていることを紹介した。こうして現在コン
ビニは新設・増設を絶えず行っており、店舗数の増加を続けている。
そして同時にコンビニ全体の総売上も増加し続けている。つまり、店舗数の増加はコンビ
ニの総売上を増加させる大きな要因の一つにもなっていると考えられる。
このようにコンビニ店舗数の増加は全体の総売上の増加に貢献している一方、コンビニ
が新たに抱える課題や今後のコンビニの発展を支える可能性を生む。以下ではその課題と
可能性について言及したい。
1-2. コンビニが新たに抱える課題
下記に示す図表 4-1 は「セブン‐イレブン」「ローソン」「ファミリーマート」のコンビニ
大手 3 社における一店舗当たりの売上の推移を表したグラフである。
これを見ると、多少の増減は見られるものの、コンビニ一店舗当たりの売上はここ十数年
間において、約 1 億 9000 万円前後を推移している。しかし、その中でも 2011 年からの数
年間の推移を見ると、一店舗当たりの売上は減少していることがわかる。
また、2011 年はコンビニ業界全体の店舗数増加のペースが速まりだした年でもある。そ
れに伴い、コンビニ業界全体の総売上の増加率も高くなっている。しかし、一店舗当たりの
売上は減少している。つまり、現在は店舗数の増加が総売上の増加に寄与しているものの、
一店舗当たりの売上が減少しだしている現状を踏まえると、単純に店舗を増やすことが今
49
後は総売上の増加につながるとは限らない。
すなわち、コンビニが新たに抱える課題とは、コンビニ一店舗当たりの売上の減少によっ
て、今後コンビニ全体の総売上も減少する事態を回避することである。
<図表 4-1>
(出典) セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマート各社アニュアルレポート
をもとに作成
1-3. 今後のコンビニの可能性
コンビニの店舗数の増加によって、上記したような課題はある一方で、消費者全体が享受
することのできる恩恵は拡大しているとも言える。
コンビニは消費者に様々な「利便性」を提供している。食料品や日用品など幅広い商品を
取り扱っているため、少し空腹を感じたときやある生活用品がない時にでも気軽に来店・購
入することができる。それに加え、コンビニは多くの店舗が 24 時間営業を行っているため、
それが深夜、つまり他の小売店舗の開店時間外のことであれば、消費者は更なる利便性を受
けることができる。
また、現在では銀行 ATM の利用や税金の支払いが可能であるなど、コンビニで利用でき
るサービスも多岐にわたる。これらをコンビニで済ますことができればわざわざ銀行や役
50
所に出向く必要がなくなる。そのため、これらのサービスもコンビニにおける消費者への利
便性を支える大きな要因である。
このようなコンビニ独自の利便性を生み出している中核は、「コンビニの社会的インフラ
化」によるものである。
現在、コンビニは日本全国各地に存在し、今でもなおその店舗数は増え続けている。つま
り、近年では人口に対してのコンビニ店舗数が年々増加しているわけである。それは国民一
人ひとりがより身近にコンビニを利用できることになっていると言い換えることもできる。
また、このことはコンビニが社会的インフラとして機能できる基盤を強化していること
を意味している。もしコンビニの数が銀行や役所の数より少なかったら、コンビニにおける
銀行 ATM や税金の支払いサービスの利便性は生まれない。
つまり、このような「コンビニの社会的インフラ化」、すなわちコンビニが社会的インフ
ラとして機能すること、そしてその盤石化によって、今後の日本におけるコンビニの存在意
義が拡大するという可能性を見出すことができる。
2. 今までに整備された社会的インフラ
前節において、コンビニが社会的インフラとして機能することが今後のコンビニが発展
するための可能性だと記したが、実際にコンビニはこれまでも社会的インフラとして機能
してきた事例が多々ある。今節ではその中でも代表的な例を取り上げたい。
2-1. 雇用・人材育成
コンビニは、多くの雇用を創出することができる。アルバイトとして学生などの若者を雇
用したり、パートタイムとして主婦層を雇用したりする店舗が多く、自分の都合の良い時間
帯に労働したい人々の就労の場として人気がある。このようなコンビニ店舗における雇用
はもちろんのこと、物流や生産などの関連産業を含めるとその数は膨大になる。
また、コンビニ店舗の仕事は接客・販売だけでなく、商品の陳列や発注、在庫管理等の商
品のマネジメントから従業員の採用・教育等の人のマネジメント、小売業としての経営マネ
ジメントまで多岐にわたるため、それぞれのマネジメントに関する従業員の様々な力を養
うことができ、それが人材育成にも役立つとされる。
このようにコンビニは、雇用や人材育成の面において影響力が大きい。コンビニは地域の
住民を労働者として多くを雇用し、またその労働者の能力を向上させることが可能である。
つまりこのことはコンビニが雇用・人材育成に関して地域の社会的インフラとして機能し
ていると言える。
しかし、昨今では少子化による若者の労働力不足が懸念されている。また、若者は大学進
51
学や就職などの機会によって大都市部へ流出する場合が多く、大都市と地方都市では人口
の構成比に相違がみられる。そのため、大都市と地方都市との間では若年労働力確保の難し
さに違いが出てくるという点も注意が必要である。
そこで、これからはコンビニにおける新たな労働力として、定年退職後の高齢者や外国人
労働者が有力視されている。
2-2. 防犯対策
経済産業省の定義によると、コンビニは 14 時間以上営業を行う販売店である。しかし、
実際はほとんどの店舗で 24 時間営業を行っている。
こうして深夜にも営業を行うことで、営業中の電灯の明るさによって住民に安心感を与
えたり、緊急事態が発生した場合でも店舗内に避難したりできるため、コンビニは近隣地域
に対して心理的にも物理的にも防犯施設として機能している。
また、コンビニの監視カメラの設置も地域の防犯に貢献している。コンビニは多種多様な
商品を取り扱う上、商品から出入り口が近いため万引きなどの窃盗の被害に遭いやすい。さ
らに現金が置いてあるため、深夜の人が少ない時間帯に強盗に狙われる場合もある。実際に
小売店における強盗事件の約 78%がコンビニで発生していると警察庁が発表している。
このような事件発生時に監視カメラに録画された映像を解析することで早期の解決を図
ったり、また監視カメラの存在自体が犯罪の抑止力増大につながったりすることにも大き
な効果がある。
また、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会は、2000 年警察庁から、「まちの安
全・安心の拠点」としての活動要請を受け、日本フランチャイズチェーン協会に加盟してい
るコンビニ各社は全国各地に多くの店舗を展開していることや長い営業時間などを活かし
て、セーフティステーション活動を開始した。
セーフティステーション活動の目的・意義は、①地域社会(住民・顧客)の安全・安心へ
の貢献、②地域社会とのコミュニケーションの確立、③コンビニエンスストアの社会的責任
への貢献、④日常業務へのセーフティステーション活動の取り込み、これら 4 点が挙げら
れる。セーフティステーション活動を行うことで、女性・子供・高齢者による駆け込みの受
け入れなどの保護や、振り込め詐欺の未然防止などの成果を着実にあげている。
2-3. 災害時の対応
2011 年に発生した東日本大震災の際、被災地となった場所で営業していたコンビニ店舗
が店舗内商品を提供したり、いち早く営業再開することで地域住民に食料や日用品の販売
を行ったりするなど、コンビニが地域のライフラインとして機能した。1995 年に発生した
阪神淡路大震災、2007 年に発生した新潟県中越沖地震などの大災害を経て、災害時のライ
52
フラインが確立することへの期待が高まっていた中での出来事であったため、その重要性
が再認識されることとなった。
しかし、東日本大震災の時には津波の影響によって店舗内商品が流されてしまったり、道
路の破損や遮断によってなかなか商品が輸送されて来なかったりすることで営業再開がで
きないという事態が発生した。
近年ではこうした事態を解消するため、地震等による大規模な災害が発生した場合、被災
者の多様な要望に応えて物資の供給を円滑に実施するための協定である「物資調達支援協
定」を自治体とコンビニ本部との間で締結する動きが広がっている。
また、東日本大震災のような大規模の災害に限らず、地震や火災等の発生によって交通機
関が不通になった場合、帰宅困難者に対して水道水やトイレ、道路情報などの提供・支援を
行うための協定である「帰宅困難者支援協定」も同様に締結の動きが活発化している。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、物資調達支援協定は全都道府
県、帰宅困難者支援協定は 39 の都道府県と 10 の政令指定都市において 1 社以上のコンビ
ニ本部と締結されている(2014 年 12 月末時点)。
2-4. 社会的インフラとして機能することの意義
上述した通り、コンビニは雇用や防犯、災害時の対応を通じて、地域を守る役割を果たし
ている。これは全国各地に多く存在し、幅広い商品・サービスを取り扱い、年中無休 24 時
間営業といった特徴を持つコンビニだからこそ機能しうる社会的インフラとしての役割で
ある。コンビニが社会的インフラとして機能することは消費者だけでなく自治体からの期
待も高い。このことは自治体とコンビニ本社との間で雇用や防犯・防災などに関して様々な
協定が結ばれていることからも窺い知ることができる。
このように、コンビニの社会的インフラ化は消費者や自治体から期待され求められてい
る一方、一店舗当たりの売上の減少による総売上の減少を回避することが課題となってい
る今日のコンビニでは、一店舗当たりの売上を伸ばすための施策が必要となる。そこで我々
経営管理論ゼミは今後のコンビニ経営において売上を伸ばすためには社会的インフラとし
て具体的にどのような面に力を入れていくべきかということを研究対象として考察するこ
ととし、コンビニの消費者である「人」の変化に注目した。
3. 「人」から見る将来の日本
日本は現在そして将来に様々な「人」に関する問題を抱えている。今節ではその中でも小
売業であるコンビニに大きな影響を与えると考えられる「人口減少」「高齢化」「人口集中」
「世帯の変化」という 4 つの点を取り上げたい。
53
3-1. 人口減少
<図表 4-2>
(出典) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」、
総務省「国勢調査」及び「人口推計」をもとに作成
図表 4-2 は日本の総人口の推移を表したグラフである。このグラフにおける 1950 年か
ら 2015 年までの数値は、総務省「国勢調査」および「人口推計」による実績値で示した一
方で、2020 年から 2060 年までの数値は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計
人口」による推計値で示したものである。
第二次世界大戦を終えると、日本の総人口は増加を始め、1967 年には 1 億人を突破した。
その後も順調に増加を続け、2008 年にはピークとなる 1 億 2809 万 9 千人を記録した。
しかし、それから数年若干の減少と増加を経た後、日本は人口減少局面を迎えた。このま
までは日本は人口減少の一途をたどることになる。国立社会保障・人口問題研究所が発表し
た出生中位・死亡中位推計における「日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計)」による
と、日本の総人口は 2030 年には 1 億 1662 万人、2048 年には 1 億人を割って 9913 万人、
2060 年には 8674 万人にまで減少すると予測されている。
このままでは日本は戦後からの人口増加のペースを上回る勢いで深刻な人口減少という
54
事態を迎える。
3-2. 日本の高齢化
<図表 4-3>
(出典) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」、
総務省「国勢調査」及び「人口推計」をもとに作成
図表 4-3 は前項で示した日本の総人口の推移に加えて、それに占める 65 歳以上の高齢者
人口、そして総人口に対して高齢者人口が占める割合である高齢化率の推移を表したグラ
フである。
世界保健機構(WHO)は、高齢化率が 7%以上となった社会を高齢化社会、14%以上となっ
た社会を高齢社会、21%以上となった社会を超高齢社会とそれぞれ定義している。日本は
1970 年に高齢化社会、1994 年に高齢社会、2007 年に超高齢社会となったが、その後も日
本の高齢化率は上昇を続けている。内閣府が発表した平成 27 年版高齢社会白書によると
2014 年時点で高齢化率は 26.0%であり、実に国民の 4 人に 1 人以上が高齢者であるという
現状に至る。
そして、高齢者人口は 2045 年まで増え続け、それ以降高齢者人口は減少すると見込まれ
55
ている。しかし、同時に年少人口、生産年齢人口の減少も進行するため、高齢化率はさらに
上昇を続けるとされている。45 年後の 2060 年には 39.9%、つまり国民の 2.5 人に 1 人が
65 歳以上の高齢者となると予測されている。また、このような深刻な高齢化とともに、少
子化が進むことは、前節で示したような日本の人口減少の元凶となること、そしてその傾向
を強める原因になることがわかる。
3-3. 人口集中
<図表 4-4>
(出典) 国土交通省国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」
図表 4-4 は三大都市圏および東京圏の人口が総人口に占める割合の推移を表したグラフ
である。ここでは三大都市圏とは東京圏、大阪圏、名古屋圏を指すものとする。
これを見ると 2000 年代前半には既に三大都市圏の人口がそれ以外の地域の人口を上回
っていることがわかる。そして、今後もこのような人口集中は加速していくと予測されてお
り、2050 年には総人口の 56.7%を三大都市圏の人口が占めることとなる。
また、このような人口集中によって、今後の日本において大都市圏の人口は安定して伸び
ると予測されている一方、地方都市では人口減少が見込まれている。その中でも特に東京圏
の人口の伸びは高いため、2050 年には総人口の 3 分の 1 が東京圏に居住することになると
46.1%
49.5%
50.2%
56.7%
23.0%
32.5%
53.9%
50.5%
49.8% 43.3%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
55.0%
60.0%
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
三大都市圏、及び東京圏の人口が
総人口に占める割合
三大都市圏 東京圏 三大都市圏以外の地域 (年)
56
読み取ることができる。
3-4. 世帯の変化
<図表 4-5>
(出典) 国民生活基礎調査「グラフで見る世帯の状況」をもとに作成
図表 4-5 は世帯構造別にみた世帯数の構成割合の推移を表したグラフである。
世帯構造別の割合を見ると、近年その存在感が大きくなってきているのが単独世帯であ
る。実際に 2013 年には総世帯数に占める単独世帯数の割合は 26.5%を超え、4 世帯に 1 世
帯以上が単独世帯となっている。
また、日本では戦後から核家族世帯化が問題となっていた。厚生労働省が発表している国
民生活基礎調査では夫婦のみの世帯、夫婦と未婚の子の世帯、ひとり親と未婚の子の世帯を
合わせた世帯を核家族としている。確かに、1960 年には 1611 万世帯であった核家族世帯
数は 1975 年には 1930 万世帯、2001 年には 2727 万世帯、2013 年には 3016 万世帯と、約
50 年で倍増していることがわかる。しかし、総世帯数に占める核家族世帯数の割合は過去
50 年を通じて 60%前後を推移しているため、割合上はそれほどの変化は見られない。
しかしその内訳をみると、ひとり親と未婚の子からなる世帯割合は若干増加しているが、
夫婦と未婚の子からなる世帯割合が大幅に減少しているため、その分夫婦のみの世帯割合
の増加率が大きくなっている。つまり、核家族世帯自体の増加ももちろん大きな変化だが、
その中でも特に注目すべきは、夫婦のみの世帯の増加が取り立てて大きいという事態であ
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