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研究発表を準備する
お茶の水女子大学
伊藤研究室 ゼミ資料
※2005年伊藤研発足時に作成した資料の修正版
※2016年6月現在 (随時更新中)
その1:研究発表の前提知識
はじめのひとこと
 発表スライドは壁紙であり、主役は発表者である
ここに写真が載っていたが割愛
スライドを主役にしてはいけない
 画面上で口頭説明を補うために使う…ということは:
 聞き手にスライドを読ませるようでは論外
 スライドに読まされているような発表も論外
 あくまでも口頭を助け、口頭を印象付ける存在と考えよ
 画面上では1ページずつしか見えない
 見せる順番が非常に重要である
 先に見せたページへは後戻りしないので、
聞き手にできるだけ内容を記憶してもらうことが大切である
 発表会場は自分のディスプレイとは違う
 どこでも見やすいように、無難なフォント・色・図形を選ぼう
例外:読むことを想定したスライド
 配布資料を兼用したスライド
 セミナー資料・講義資料
 Slideshareなどに載せる資料
 例えば伊藤の講義資料の場合
 紙やモバイル機器で読む人が多いので、少しくらい字が小さくてもよい
 欠席時にも試験勉強時にも読めば理解できる書き方をしている
 1ページあたりの話す時間が全く異なる
→ 伊藤研の皆さんの学会発表資料は伊藤の講義資料を参考にしないほうがよい
 もっとひどい例はいくらでもある
 企業に就職したらWORDやEXCELなみの細かい文字で
スライド作りを強要される機会も珍しくない(困ったものだ…)
さらに例外:ポスターの作成
 大きな1枚をパネルに貼りつけてインタラクティブに発表する
 情報を多数のページで伝える登壇発表とは、情報デザインの
指針が根本的に異なる点に注意
 すべてのページが一気に目に入る、という環境の中で、
どこに注目させるかをよく考えること
 必ずしも話す順番通りに並んでなくても、なんとかなる
 上半分だけを説明しても話が通じるようにして、さらに細かく聞きたい
人のために下半分を用意する、というようなレイアウトが便利なときも
※PowerPoint等は本来はポスターを作るソフトではないが、
予算と手間の節約のためにポスターもPowerPoint等で
作ってしまう人は私の知るだけでも非常に多い
多様な発表機会 ~ お茶大伊藤研の場合
(1)登壇発表
 研究室合宿・研究室交流会など
 まだ実行結果のないB4のうちから発表の機会
 5~10分程度
 せめて「背景・目的・問題点」と「研究の全体像」「処理手順」を話す
 時間があれば「進捗」「これから着手すること」を話す
 卒業研究発表会・情報処理学会全国大会など
 目安は12分+質疑3分
 「実験結果」「類似研究との比較」などにも重点を置く
 もっと本格的な口頭発表
 15~25分+質疑5~10分
 「なぜそういう方法をとったのか」「評価と議論」などにも時間をかける
B4 前半
B4 後半
M1以降
多様な発表機会 ~ お茶大伊藤研の場合
(2) ポスター発表
 研究室合同合宿など
 まだ実行結果のないB4のうちから発表の機会
 せめて「背景・目的・問題点」と「研究の全体像」「処理手順」を話す
 聞き手も初心者の場合が多い
 各研究集会で企画するポスターの時間
 卒業研究発表と同程度の進捗で発表できる
 「実験結果」「類似研究との比較」などにも重点を置く
 非常にいろんな人からフィードバックをもらえる
 うまくいけば研究協力者が見つかるかも
その2:発表資料を作る
発表スライドを作り始める前に
もう一度考えて欲しいこと (1)
 最も聞き手に覚えて欲しいことは何なのかを考える
 例えば…これから提案したい手法の強み、新しさ、実用性など
 話す順番を考えてみる
 原稿の構成とおりに話すものと決めつけてはいけない
 トップダウン:
全体像を先に説明して、それから個別の方法について説明する
というように順番を組み立てる
 場合によっては、最初に少しだけ実行結果を見せると印象が増す
(学会・分野ごとに慣習があるので注意)
 とにかく「最も覚えて欲しいこと」を印象つける順番を組み立てよ
 目次を紙に書いてみよう
 各ページのタイトルを見ただけで発表内容がわかるとよい
発表スライドを作り始める前に
もう一度考えて欲しいこと (2)
 内容量を考えよう
 あくまでも目安として『1分1ページ』を提案する人が多い
 図や数式は優先順位をつけて、大切なものだけを使う
 文章はできるだけ短く、ぶつ切りに
 思い切って内容をバッサリ切り落とす勇気も、時には必要
 単調にならないようにしよう
 どのページも同じレイアウト、というのは避ける
 各ページごとに、どこを最初に見て欲しいかを考える
 普通はタイトルを最初に見るはず
 普通は見て欲しいものから順にレイアウトするはず
 よって、図が上になる場合もあれば、文章が上になる場合もある
 例外として、下地に色がある領域、派手な文字、は早く目につく
初期段階で用意し忘れやすい論点
 関連研究とのシンプルな比較
 関連研究は○○だけど、自分の手法は□□、と一言で説明できる
比較を用意しておく
 これを用意せずに目次をつくっても、ストーリー性に欠ける
 提案手法の全体像 (フローチャート等)
 まず全体を説明して、それから個々の手法を説明する、という順番で
説明したほうが理解しやすいことが多い
 実行結果に対する解説・議論
 単に結果を見せるだけでなく、その結果の「どこがよかったのか」
「どこが課題として残っているのか」を説明できるようにしておく
 数字で説明できることは、できるだけ数字で説明する
スライド作成中の落とし穴
~(1) デザイン選び
 発表内容より装飾が目立つデザインを選んではいけない
(派手すぎる色や模様は厳禁)
 フォント選び
 日本語発表: 明朝体は使わない
 英語発表: 日本語フォントの英数字は避けたほうがよい
 環境の違いで表示されなくなるフォントを避ける
 縦横比
 例えばPowerPointでは4:3と16:9のデザインが混在している
※本来なら研究室全員が常に同じデザインを使うのが最も簡単。むしろ企業ではそれが普通。
(伊藤はそのような統制を好まないので、あえて個人の自由に任せています。)
スライド作成中の落とし穴
~(2) 型通りすぎる構成
 論文の構成と同じでなくてもよい…例えば
 研究内容によっては結果やデモを先に見せるのが効果的
 関連研究との比較を最後に回したほうがわかりやすいこともある
 各ページのタイトルに一工夫せよ
 「背景」「提案手法」だけではメッセージが何もないに等しい
そのページが何を言いたいのかを的確にとらえること
こんな傾向に気をつけよ:資料作成編
 つい派手な背景デザインを選んでしまう
 本論より目立つデザイン、面積を縮小してしまうデザイン、
文字や画像にかぶってしまうデザインは特に避ける
 PC画面では読みやすいのに、スクリーンでは読みにくい
 文字の大きさや色合いは、スクリーンでの見た目を優先すべし
 むしろ、自分のPC画面上での見かけを信用しすぎないこと
 文章が長い
 目安として3行以上になるくらいなら箇条書き等に分ける
 読点「、」は使ってもいいけど句点「。」は使うべからずという意見も
 フォントの大きさ・種類・色の工夫によって解決できる場合も
 教員や先輩のスライドの文章をそのまま使ってしまう
 たいていの場合、そのページだけ発表が下手である
最近ウェブで見かけるプレゼン批判 (1)
 表紙に書かれていること(タイトル・所属・名前)をわざわざ
全部丁寧に読み上げなくてよい
 冒頭の目次は根本的に不要では
 5秒くらいしか見せてくれない発表が多くて存在意義が無い
 まだ内容を知らないのに目次で専門用語を見せられても意味不明
 逆に、最初に見せて意味がわかる目次なら説明自体が不要
 アニメーション部品が重なるパワポを人からもらっても…
 印刷しても読めないので、読む気がなくなることがある
 2ページにまたがるアニメーションにしてくれたほうがよい
最近ウェブで見かけるプレゼン批判 (2)
 「ご清聴ありがとうございます」だけのページは不愉快
 「ご清聴」という言葉使いの問題ではない:
発表内容が書かれていないページで締めくくるのが失礼だという問題
 むしろ「ご清聴」だけを批判する行為は本質を欠いている
 「まとめ」「今後の課題」を出しっぱなしにしたほうが質疑しやすい
 それが聴衆への礼儀だと考えるべき
 そ れ で も 「 ご 清 聴 」 を 載 せ た け れ ば 、 「 今 後 の 課 題 」 等 の
ページの下部に、発表内容よりも小さい文字で載せるのがよい
 謝辞を最後に述べる必要があっても、そのあと「まとめ」等の
スライドに戻って締めくくるほうがよい
その3:発表練習&発表本番
発表練習前に:初心者は台本を書いてよい
 自転車の補助輪・水泳のビート板に近い存在
 初心者の上達を早める手段としては有効
 ただし、いつまでも台本が必要なままでは情けない
 「読む」ためではなく「発表する」ためにある
 必要であればアニメーション等のタイミングも台本に記入する
 練習して話しにくければ台本を崩せ
 論文の文章は口頭に向いてなくて当然
→ 話しやすい言葉で発表せよ
 せめてスライドの1ページ目は台本を書くな
 1ページ目は名乗るだけ・1ページ目はスクリーンに写ることが多い
→「名乗るだけでも台本が必要なのか」というカッコ悪い印象を与える
 実は短い発表のほうが時間遵守のために台本が重要
発表練習(1) 初期段階
 自分で通して話してみて時間を測定する
 全体の所要時間だけでなく、各部分の時間も測定する
 どこで口が回っていないか、まず自分でチェックする
(原因は練習不足なのかスライドが悪いのかを特定する)
 完成してなくてもいいから人にチェックしてもらう
 論理の流れが適切であるか
 わかりにくいスライドはないか
 時間のバランスが悪くないか
 印象の悪い話し方になっていないか
 発表練習とスライド修正を繰り返す
 不要になったページも捨てない(質問回答時に使うかもしれないので)
発表練習(2) 本番直前
 発表に使うPCを決めて、そのPCで練習する
 本番通りに画面を指しながら話す
(必要であればレーザーポインタを使うなど)
 ディスプレイの解像度も本番と同程度(例えば1024x768)にしてみる
 アニメーションの再生タイミングにも注意を払う
 本番にできるだけ近い環境で練習する
 腰の高さくらいの台にPCを置いて、起立して練習する
 PCを持参してプロジェクタに接続するところから練習する
 質問してもらう
 回答用のバックアップページは十分に用意されているかも確認する
 台本の棒読みは致命的なイメージダウンと心得よ
 声色が悪い、抑揚が無い、目線が合わない、表情が見えない… 最悪
発表本番直前のチェックポイント
 PC選び
 トラブルの発生しにくいPCを選ぶ
 ビデオやCGの動作・プログラムの実行などをチェックする
 Windowsで作った資料をMacで表示する(またはその逆)必要が
あるときには特に要注意
 複数人で同じPCを使う必要がある場合には早めに打ち合わせる
 プロジェクタへの接続
 本番で使うPCでのプロジェクタ使用のためのキー操作の確認
 適切な解像度の確認
 特にMacの場合にはディスプレイアダプタの不調が多いので注意
 当日会場についたら遠慮なく休み時間等に接続テストしてみる
発表して終わりではない (1)
~「発表は質疑の前座である」
 質問対策=事前準備+現地での誠意
 発表に直接使わないスライドも質問回答時に出せるように
 本当に知りたがっている質問者には真摯に対応すべき
(回答が難しくても「今後の課題」の一言で逃げたりしないように)
 コメントを持ち帰ろう
 ちゃんとメモする(あるいは同行者にメモしてもらう)
 大学に帰って冷静になってからコメントを精査すべし
 有名な先生・シニアな先生のコメントが正しいとは限らないので注意
※経験的に言って以下のコメントに3等分される
・本当に採用したいコメント
・勉強するに値するけど採用するほどでもないコメント
・あまり適切でないコメント
発表して終わりではない (2)
~「質疑は懇親会の前座である」
 学会の懇親会には高い価値がある
 公衆の面前で言いにくいアドバイスを聞かせてくれる
 就職活動やインターンシップ探しに役立つこともある
 人脈を拡げられる
 懇親会より前に発表が終わっていると特にラッキー
 リラックスして懇親会を楽しめる
 発表内容について声をかけてくれる
 名刺を作っておくとよい
 特に自分から誰かに声をかけたいときに重要
 懇親会が充実している学会を選ぶ、という発想もあってよい
こんな傾向に気をつけよ:口頭発表編
 せわしない発表
 発表時に5秒くらいしか見せてないページがある
 まだ話し終わっていないのに次のページを見せてしまう
 じれったい発表
 PCとスクリーンの設定を練習してないため、発表を始められない
 口頭より遅い(あるいは、凝りすぎた)アニメーションを使っている
 発表者と聞き手が全く目が合わない
 スクリーンやPCから目を離し、聞き手に目を合わせる時間をつくるべし
 質問の時間がとれないくらい時間オーバーしてしまう
 「質問の時間がなくなる」のは失礼極まりない!!
 練習時に時間オーバーするようなら、内容の一部を削るのが礼儀
 人の質問を最後まで聞かないうちに回答したくなる
 質疑はあわてがちなので、とにかく落ち着くべし
その4:場面別対策
場面別対策(1)
ポスタープレビュー
 ポスター発表前に実施する1分程度の予告プレゼン
 「マッドネス」とか「ショートプレゼン」とかいろんな呼び方がある
 研究の中身を全て紹介する必要はない
 むしろ動機だけ説明して詳細はポスターに来て下さいと言うべし
 とらわれる必要はない
 学会によっては、ビデオ上映、寸劇、小道具、その他なんでもあり
 同じ学会に出たことのある先輩に雰囲気を聞くとよい
 台本を書いて時間を計ってみるべし
 スライドを事前提出する場合には特に重要
場面別対策(2)
ポスター発表
 発表を短く切り上げる (伊藤研ローカルルールでは5分未満)
 たくさんポスターを見たい人のための礼儀
 発表途中でもどんどん質問が来るものと思え
 内容をわかっている人は数十秒聞いただけで要点を質問できる
 PCでデモやビデオを見せることを熱烈推奨
 こんなものを用意しておいてもよい
 配布物 (ポスター縮小印刷、名刺…)
 ポスターに載せきらなかった実行結果などを印刷したもの
 ポストイット (聴講者にコメントを書いて貼ってもらう)
場面別対策(3)
国際会議・その他英語での発表
 1日でも早く発表資料を作るべし
 英作文に慣れていない人にはとても時間のかかる作業
 日本語より完成度が低ければ添削者の時間も大きくなる
 台本を早めに読んでみる
 どの単語で口が回らなくなるかを早めにチェック
 口頭発表は論文よりも簡単な単語に置き換えてよい点が多々ある
 見た目にわかりやすい台本をつくる
 区切りでない部分で文が折り返されてはいけない
 強調する単語を太字にする
(強めに発音するだけでなく、踏みしめるように発音する)
 スライドのアニメーションとの同期が必要なら印をつける
その5:おまけ
伊藤研ローカルルール(1)
~発表する学会を学生自身で選ぶ
 参加したい学会めがけて研究を進めて原稿を書く
 本来は「成果ができたとき投稿募集している学会に投稿する」のが
王道かもしれないが、ゴールありきで研究を進めてもかまわない
 発表先選びの本来あるべき基準の例
 自分の研究内容にあった場所
 研究の達成度に相応なステータスや原稿執筆量など
 こんな基準も時には有効
 どんな人に聞いて欲しいか、どんな人と議論したいか
 どんな分野の発表を聞きたいか、誰に会いたいか
 自分のキャリア(就職活動等)にどう役立つか
 料理、酒、温泉、観光…
伊藤研ローカルルール (2)
~ 準備と本番の日常
 発表準備
 どんな来客や交流にも備えて、5分間プレゼンを常に用意する
 ポスター発表も5分以内で話せるように練習する
 ポスターでは40ポイント未満のフォントは極力使わない
 英語の発表では台本も含めて事前添削必須
 当日持参するPCでの練習必須
 発表本番
 万が一発表時間をオーバーしたら、内容を割愛してまとめに向かう
 質疑内容について必ずメモをとる
(特にポスターにて必須、登壇ではできるだけ同行者が協力する)
伊藤研ローカルルール (3)
~ スライドの使い回し
 学内発表・研究室合同合宿
 単著(=著者は自分のみ)
 自分の所属には研究室名や学年も書く
 自分と教員以外の関係者全員に謝辞を述べる
 学会発表
 共著者全員の名前を書く
 所属は学科名や研究科名まで(研究室名や学年は書かない)
 共著者への謝辞を削除する
もっと良く出来た資料へのリンク
 発表の心得
 http://blog.chase-dream.com/2011/08/14/1812
 http://ml.cs.yamanashi.ac.jp/media/article02.pdf
 http://www.slideshare.net/akinoriito549/ss-44191399
 http://d.hatena.ne.jp/kzhk/20091215/p2
 スライド作成テクニック
 http://www.slideshare.net/yutamorishige50/how-to-present-better
 http://tsutawarudesign.web.fc2.com/
 http://ppt.design4u.jp/recommended-websites/
他にも見つけ次第追加します
ひとりごと
 本資料は2005年のお茶大赴任当時にゼミ資料として作成し、
現在も随時改変中。
 現在ではいろんな人がプレゼンのノウハウをウェブに載せている
が、2005年当時はあまり載ってなかったので自分で作った。
 現在ではプレゼンのノウハウについていろんな資料があるけど、
それぞれの組織に特有の練習方法や対策があるので、
依然として研究室固有のノウハウはあったほうがよい。
 ゼミ資料は徐々に研究室外に晒す方向に。そうするといろいろな
フィードバックが返ってくるので結局は自分のため。
 我々は授業料だけでなく税金も預かって研究をしているので、
ゼミ資料の公開はそのお礼を兼ねていると考える。