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10.21.2020 D3 佐野

Chiu, Ivey, and Li H. Shu.
"Investigating effects of oppositely related semantic stimuli
on design concept creativity."
Journal of Engineering Design 23, no. 4 (2012): 271-296. (文献リンク)
• 言語刺激を用いた創造的なコンセプト発想促進の提案

• 対義語や類義語の刺激が創造的なコンセプト発想を促進するか実験

• 実験から得た知見と言語学的理論から対義語動詞とのインタラクションが創造性にもたら
す効果を説明するモデルを作る

文献紹介

概要

2/24
● 言語が認知に影響を与え,認知が言語に影響を与える (Levinson 1996, Pinker 2007) 

● デザインは情報収集,概念操作,意思決定を伴う認知活動 (Simon 1969他) 

● 言語と認知の関係をデザインの創造性促進,そのメカニズム理解に応用できる

● 対義語と類義語の刺激を与えた被験者が発想するデザインコンセプトを比較

● 機能やアクションを表現できる「動詞」に着目

3/24
デザインと言語
● 単語がデザイン刺激に最適:意味を伝え,操作が容易で(Bruner 1964)、解釈に柔軟性

● 単語はそれ自体の意味だけでなく,付随する様々な知識を連想させる(Carroll 1999)
● 言語をデザインの刺激にする研究多数(Thomas and Carroll 1984,Nagai and Taura 2006ほか) 

● デザインにおけるメタファー、アナロジーの効用 (Gordon 1961)

4/24
● 対義語/類義語は直感的に知覚されやすい (Fellbaum 1993, Murphy 2003) 

● TRIZ (Rittel and Webber 1984, Altshuller and Shulyak 1996, Fantoni et al. 2006, Jin et al. 2007) 

● 相反する要求を含む議論の過程で新しい解決が生まれる (Rittel and Webber 1984) 

● 認知的不協和の解消を動機に創造的な解決が発想される (Hubka and Eder 1996)
デザインにおける対置(対立概念)
5/24
● 創造性は新規性と有用性が両方必要 

○ 新規性にはオリジナリティと驚きが必要 (Wilson 1951, ほか) 

○ 有用性には適切さと価値が必要 (Besemer and Treffinger 1981, ほか) 

● 個人や方法論の創造性計測値としてアイデア生成数を使うこともある (Torrance 1974, ほか) 

● 本研究では個々のコンセプトを新規性、有用性、整合性を直接評価して計測する

デザインにおける創造性の計測
6/24
1. 類義語群と対義語群を両方与えられ,デザインコンセプトを描かせる実験
○ 対義語を一つ以上使った人のアイデアの新規性(統計的希少性)が高かった

○ 但し,両方与えたのでどちらの効果か不明.刺激語をどのように使ったかも不明

2. 類義語群と対義語群どちらかを与えられた参加者が思考発話しながら発想

○ 対義語を与えられた群が新規性の高いアイデアを多く出した(有意差なし)

○ プロトコル分析(品詞分類)をしたところ対義語を与えらた群の方が有意に刺激語を動詞として多用し
た

○ 対義語を与えられた群がより多くの新語、新フレーズ(NWPs) を導入した(有意差なし)

著者らの直近の研究
7/24
3. Experiment 1 

H1: 対義語刺激は全ての創造性指標(新規性、実用性、整合性)を向上させる

H2: 動詞として使われた対義語刺激はNWPsの導入を促進させる(新語=新概念という前提)

● コンセプトを発想して描かせる実験:4つの問題

(1)ブッシュとピン問題... パーツ同士をセンタリングして嵌合させる方法

(2)卵問題...生卵を同じ方向に向けて並べる方法

(3)研削問題...柔らかい素材を研削盤の目詰まりを起こさず研削する方法

(4)ひまわり油問題...ひまわりの種から油を抽出して殻を取り除く方法

● 以下の条件のいずれかで実施

(1) 対義語刺激

(2) 類義語刺激

8/24
Experiment 1
メソッド
参加者とプロセス
● Pen-and-paper法 (Thomas and Carroll 1984, ほか) 

● 9名の工学部修士学生(男7女2,うち8名が工業設計経験有)

● 全員が4つの問題(各10分)に参加

○ 問題と刺激語のレビュー

○ 機能の検討.何をする必要があるか?

○ 刺激語を選択.それを使って解決法を発想

対義語刺激群

類義語刺激群

ランダムに割り当て

9/24
Experiment 1
メソッド
問題と刺激の設定
● 問題ごとに刺激語(動詞)を設定

○ 物質をある状態から別の状態へ変化させるアクション語 (Pahl and Beitz 1996) 

○ 抽象度の高い動詞から類義語辞典、WordNet3.0で刺激語を選出

● ひまわりの種:

○ ”Extraction”: ‘empty’, ‘withdraw’, ‘insert’, ‘fill’ 

○ ”Separation”: ‘disconnect’, ‘divide’, ‘join’, ‘combine’

類義語  対義語

与えられない
 与えられる

10/24
Experiment 1
メソッド
コンセプトの評価方法
● 創造性は単に新規性だけの問題ではない(Cross 2006, Brown 2008) →独立した人間の 評価者
(工学系男3女1)を採用して新規性、実用性、整合性指標で評価(0-10)

● 評価者は指標毎に高低2レベルの基準を与えられる(アンカー法 Engen 1972)

11/24
Experiment 1
実験結果
評価者間の合意状況
● ケンドールの一致係数W: 異なる審査員や回答者によって被験者につけられた順位の
関係性や一致度.0が合意なし、1が完全に一致(0.1低,0.3中,0.5高)

係数としては中程度から高程度の
一致を示すがサンプル数不足で有
意差なし

但し、4つの問題全て合算すると

新規性、整合性で合意度の高さが有意

12/24
Experiment 1
実験 結果
創造性 言語使用状況の結果
● ひまわりの種問題、卵問題で対義語刺激を与えた群のアイデアの創造性指標
が有意に優れている(卵問題の新規性を除く) 

● 対義語を与えられた群が類義語を

  与えられた群に比べて有意に多くの刺激語を

使用した, T(51)=2.791, p=0.0035

各コンセプト>評価指標への評価者のスコアを刺激語群ごと
に平均を取ってt検定

13/24
Experiment 1
実験 議論
● ひまわりの種問題,卵問題の結果が良かったが,問題の属性が一般領域だったため,エ
ンジニア(評価者)にとって新鮮だった可能性がある

● 参加者にとっても,評価者にとっても,過去に得た持ちネタだったのか,この場で思いつ
いたのか,判断が難しい.

● 刺激語の使用状況を見ると対義語優位に見える.実際の使われ方について発話 プロト
コル分析でより詳しく見る必要がある.

14/24
Experiment 2
メソッド
参加者とプロセス
● 思考発話プロトコル法 (Thomas and Carroll 1984, ほか) 

● 14名の工学部学生(男13女1,機械工学部生と博士課程学生)

● 全員が3つの問題(各15分)に参加









○ ワークシートにアイデア記入&その間の全ての思考を発話させる

刺激なし

対義語刺激群

類義語刺激群

刺激種類を問題ごとに交
互に入れ替え

15/24
Experiment 2
メソッド
問題と刺激の設定
● 3つの問題

(1)ブッシュとピン問題... パーツ同士をセンタリングして嵌合させる方法

(2)積雪の断熱効果問題...積雪の断熱効果を低下させる氷結を解決する方法

(3)石炭問題...火力発電燃料を石炭にした時の石炭保管場所問題を解決する方法

● 実験1と同様の方法で類義語,対義語を選出

16/24
Experiment 2
メソッド
コンセプトの特定と評価方法
● 参加者の発話を全て文字起こし(独立)

● 評価者と著者らが共にコンセプトを特定.どちらかだけが認定したコンセプトも評価に含
める.

● 合計195コンセプトを特定

○ (1)ブッシュとピン問題... 59

○ (2)積雪の断熱効果問題...59

○ (3)石炭問題...77

● 実験1と同じスコア法、アンカリング法を使って評価

17/24
Experiment 2
実験 結果
評価者間の合意状況 創造性結果
● 有意に高い合意度

● 対義語/類義語の差は仮説をサポート,但し

  刺激なしが最も新規性を促進

○ 新規性:     対義語 >類義語に有意差 

○ 有用性&整合性: 対義語>類義語(ボーダー) 

○ 対義語と刺激なし群には有意差なし 

2水準間の t 検定(計画的比較)
18/24
Experiment 2
実験 結果
言語使用状況の結果
● 計測パラメータ

○ 名詞、動詞、形容詞の数(POS タグで発話プロトコルを品詞分類)

○ 刺激語から派生したNWPs(刺激語+問題文と生成されたコンセプト文を比較)







● 結果: 

○ 動詞がより多くのNWPsを誘発

○ 対義語動詞が(1)ブッシュとピン問題と(2)積雪の断熱効果問題へ最も多くのNWPsを誘発した 



(A) Constrict the motion of heat [from leaving the house] NWPあり:与えられなかった語が登場 

(B) ...constrict snow.  NWPなし



○ 品詞と刺激タイプを2要因でNWPsの平均を2Way ANOVAで比較

19/24
Experiment 2
実験 結果
言語使用状況の結果
1要因2水準間の F検定(計画的比較)...
1. 品詞がNWPsを誘発する効果があるか?

○ ブッシュ問題, 積雪問題,石炭問題とも: 

■ 動詞 >名詞に有意差あり 

■ 形容詞、名詞に有意差なし 

20/24
Experiment 2
実験 結果
言語使用状況の結果
(1)ブッシュとピン問題 (2)積雪断熱問題 (3)石炭置き場問題
MeanNWPs
2. -刺激タイプがNWPsを誘発する効果

-刺激タイプ*品詞の交互作用がNWPsを誘発する効果

● 対義語がほとんどのNWPsを誘発 

有意差なし

● 刺激タイプ*品詞の交互作用なし 

● 対義語がほとんどのNWPsを誘発 

有意差あり

● 刺激タイプ*品詞の交互作用あり

● 類義語がより多くのNWPsを誘発 

有意差あり

● 刺激タイプ*品詞の交互作用なし 

21/24
22/24
Experiment 2
実験 議論
● 対義語刺激がより創造性を増進させる.

○ ただ,刺激語を与えたコンセプトに刺激語なしより高い創造性が確認されなかった

○ 言語刺激を使いながら発話するプロセスは認知負荷が高く、パフォーマンス低下を招いた可能
性.刺激使用・不使用の認知負荷を揃えられないのは大きな制約

● 動詞が他の品詞より多くのNWPsを誘発し,対義語動詞がベスト(*Scopeによる?)

○ 石炭問題では多くの対義語が「不明」な使われ方(コンセプト記述に現れないが,発話されている) 

23/24
全体議論
● 対義語刺激が,より一般的な領域でのデザイン創造性の呼ひ水になる.

● 動詞が他の品詞よりもNWPs生成を促進する.

● (S+V+Oの構文から,)前後に主語と目的語としての名詞連想を誘発する

● 積雪問題では、”constrict”という語は「圧縮するな」という解決方向性と矛盾する.が,
「熱の動き」という新語を導入することで「熱の動きを集結させる」という納得の行く議論を
誘発する

動詞が(状態に)変化をもたらす

アクションを導入する(Croft 1991)

(A) Constrict the motion of heat NWPあり

(B) ...constrict snow.  NWPなし

24/24
全体議論
対義語動詞

が創造性のあるコンセプト生成に

効果的であることを説明するモデル

類義語は問題に対する一貫性ある
解決案を出す 

対義語は新語の導入を強制的に促進 

新語は新コンセプトを誘発 

動詞のプロパティ 

- 暗黙的な意味フィルターの役割 

- 柔軟性

- 意味のパラメータ(強さ) 

(フツーの)コンセプト 

創造的なコンセプト  

Borgianni, Yuri, Lorenzo Maccioni, Lorenzo Fiorineschi, and Federico Rotini.
"Forms of stimuli and their effects on idea generation in terms of
creativity metrics and non-obviousness."
International Journal of Design Creativity and Innovation (2020): 1-18. Harvard

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文献紹介:chiu2012investigating

  • 2. Chiu, Ivey, and Li H. Shu. "Investigating effects of oppositely related semantic stimuli on design concept creativity." Journal of Engineering Design 23, no. 4 (2012): 271-296. (文献リンク) • 言語刺激を用いた創造的なコンセプト発想促進の提案
 • 対義語や類義語の刺激が創造的なコンセプト発想を促進するか実験
 • 実験から得た知見と言語学的理論から対義語動詞とのインタラクションが創造性にもたら す効果を説明するモデルを作る
 文献紹介
 概要
 2/24
  • 3. ● 言語が認知に影響を与え,認知が言語に影響を与える (Levinson 1996, Pinker 2007) 
 ● デザインは情報収集,概念操作,意思決定を伴う認知活動 (Simon 1969他) 
 ● 言語と認知の関係をデザインの創造性促進,そのメカニズム理解に応用できる
 ● 対義語と類義語の刺激を与えた被験者が発想するデザインコンセプトを比較
 ● 機能やアクションを表現できる「動詞」に着目
 3/24
  • 4. デザインと言語 ● 単語がデザイン刺激に最適:意味を伝え,操作が容易で(Bruner 1964)、解釈に柔軟性
 ● 単語はそれ自体の意味だけでなく,付随する様々な知識を連想させる(Carroll 1999) ● 言語をデザインの刺激にする研究多数(Thomas and Carroll 1984,Nagai and Taura 2006ほか) 
 ● デザインにおけるメタファー、アナロジーの効用 (Gordon 1961)
 4/24
  • 5. ● 対義語/類義語は直感的に知覚されやすい (Fellbaum 1993, Murphy 2003) 
 ● TRIZ (Rittel and Webber 1984, Altshuller and Shulyak 1996, Fantoni et al. 2006, Jin et al. 2007) 
 ● 相反する要求を含む議論の過程で新しい解決が生まれる (Rittel and Webber 1984) 
 ● 認知的不協和の解消を動機に創造的な解決が発想される (Hubka and Eder 1996) デザインにおける対置(対立概念) 5/24
  • 6. ● 創造性は新規性と有用性が両方必要 
 ○ 新規性にはオリジナリティと驚きが必要 (Wilson 1951, ほか) 
 ○ 有用性には適切さと価値が必要 (Besemer and Treffinger 1981, ほか) 
 ● 個人や方法論の創造性計測値としてアイデア生成数を使うこともある (Torrance 1974, ほか) 
 ● 本研究では個々のコンセプトを新規性、有用性、整合性を直接評価して計測する
 デザインにおける創造性の計測 6/24
  • 7. 1. 類義語群と対義語群を両方与えられ,デザインコンセプトを描かせる実験 ○ 対義語を一つ以上使った人のアイデアの新規性(統計的希少性)が高かった
 ○ 但し,両方与えたのでどちらの効果か不明.刺激語をどのように使ったかも不明
 2. 類義語群と対義語群どちらかを与えられた参加者が思考発話しながら発想
 ○ 対義語を与えられた群が新規性の高いアイデアを多く出した(有意差なし)
 ○ プロトコル分析(品詞分類)をしたところ対義語を与えらた群の方が有意に刺激語を動詞として多用し た
 ○ 対義語を与えられた群がより多くの新語、新フレーズ(NWPs) を導入した(有意差なし)
 著者らの直近の研究 7/24
  • 8. 3. Experiment 1 
 H1: 対義語刺激は全ての創造性指標(新規性、実用性、整合性)を向上させる
 H2: 動詞として使われた対義語刺激はNWPsの導入を促進させる(新語=新概念という前提)
 ● コンセプトを発想して描かせる実験:4つの問題
 (1)ブッシュとピン問題... パーツ同士をセンタリングして嵌合させる方法
 (2)卵問題...生卵を同じ方向に向けて並べる方法
 (3)研削問題...柔らかい素材を研削盤の目詰まりを起こさず研削する方法
 (4)ひまわり油問題...ひまわりの種から油を抽出して殻を取り除く方法
 ● 以下の条件のいずれかで実施
 (1) 対義語刺激
 (2) 類義語刺激
 8/24
  • 9. Experiment 1 メソッド 参加者とプロセス ● Pen-and-paper法 (Thomas and Carroll 1984, ほか) 
 ● 9名の工学部修士学生(男7女2,うち8名が工業設計経験有)
 ● 全員が4つの問題(各10分)に参加
 ○ 問題と刺激語のレビュー
 ○ 機能の検討.何をする必要があるか?
 ○ 刺激語を選択.それを使って解決法を発想
 対義語刺激群
 類義語刺激群
 ランダムに割り当て
 9/24
  • 10. Experiment 1 メソッド 問題と刺激の設定 ● 問題ごとに刺激語(動詞)を設定
 ○ 物質をある状態から別の状態へ変化させるアクション語 (Pahl and Beitz 1996) 
 ○ 抽象度の高い動詞から類義語辞典、WordNet3.0で刺激語を選出
 ● ひまわりの種:
 ○ ”Extraction”: ‘empty’, ‘withdraw’, ‘insert’, ‘fill’ 
 ○ ”Separation”: ‘disconnect’, ‘divide’, ‘join’, ‘combine’
 類義語  対義語
 与えられない
 与えられる
 10/24
  • 11. Experiment 1 メソッド コンセプトの評価方法 ● 創造性は単に新規性だけの問題ではない(Cross 2006, Brown 2008) →独立した人間の 評価者 (工学系男3女1)を採用して新規性、実用性、整合性指標で評価(0-10)
 ● 評価者は指標毎に高低2レベルの基準を与えられる(アンカー法 Engen 1972)
 11/24
  • 12. Experiment 1 実験結果 評価者間の合意状況 ● ケンドールの一致係数W: 異なる審査員や回答者によって被験者につけられた順位の 関係性や一致度.0が合意なし、1が完全に一致(0.1低,0.3中,0.5高)
 係数としては中程度から高程度の 一致を示すがサンプル数不足で有 意差なし
 但し、4つの問題全て合算すると
 新規性、整合性で合意度の高さが有意
 12/24
  • 13. Experiment 1 実験 結果 創造性 言語使用状況の結果 ● ひまわりの種問題、卵問題で対義語刺激を与えた群のアイデアの創造性指標 が有意に優れている(卵問題の新規性を除く) 
 ● 対義語を与えられた群が類義語を
   与えられた群に比べて有意に多くの刺激語を
 使用した, T(51)=2.791, p=0.0035
 各コンセプト>評価指標への評価者のスコアを刺激語群ごと に平均を取ってt検定
 13/24
  • 14. Experiment 1 実験 議論 ● ひまわりの種問題,卵問題の結果が良かったが,問題の属性が一般領域だったため,エ ンジニア(評価者)にとって新鮮だった可能性がある
 ● 参加者にとっても,評価者にとっても,過去に得た持ちネタだったのか,この場で思いつ いたのか,判断が難しい.
 ● 刺激語の使用状況を見ると対義語優位に見える.実際の使われ方について発話 プロト コル分析でより詳しく見る必要がある.
 14/24
  • 15. Experiment 2 メソッド 参加者とプロセス ● 思考発話プロトコル法 (Thomas and Carroll 1984, ほか) 
 ● 14名の工学部学生(男13女1,機械工学部生と博士課程学生)
 ● 全員が3つの問題(各15分)に参加
 
 
 
 
 ○ ワークシートにアイデア記入&その間の全ての思考を発話させる
 刺激なし
 対義語刺激群
 類義語刺激群
 刺激種類を問題ごとに交 互に入れ替え
 15/24
  • 16. Experiment 2 メソッド 問題と刺激の設定 ● 3つの問題
 (1)ブッシュとピン問題... パーツ同士をセンタリングして嵌合させる方法
 (2)積雪の断熱効果問題...積雪の断熱効果を低下させる氷結を解決する方法
 (3)石炭問題...火力発電燃料を石炭にした時の石炭保管場所問題を解決する方法
 ● 実験1と同様の方法で類義語,対義語を選出
 16/24
  • 17. Experiment 2 メソッド コンセプトの特定と評価方法 ● 参加者の発話を全て文字起こし(独立)
 ● 評価者と著者らが共にコンセプトを特定.どちらかだけが認定したコンセプトも評価に含 める.
 ● 合計195コンセプトを特定
 ○ (1)ブッシュとピン問題... 59
 ○ (2)積雪の断熱効果問題...59
 ○ (3)石炭問題...77
 ● 実験1と同じスコア法、アンカリング法を使って評価
 17/24
  • 18. Experiment 2 実験 結果 評価者間の合意状況 創造性結果 ● 有意に高い合意度
 ● 対義語/類義語の差は仮説をサポート,但し
   刺激なしが最も新規性を促進
 ○ 新規性:     対義語 >類義語に有意差 
 ○ 有用性&整合性: 対義語>類義語(ボーダー) 
 ○ 対義語と刺激なし群には有意差なし 
 2水準間の t 検定(計画的比較) 18/24
  • 19. Experiment 2 実験 結果 言語使用状況の結果 ● 計測パラメータ
 ○ 名詞、動詞、形容詞の数(POS タグで発話プロトコルを品詞分類)
 ○ 刺激語から派生したNWPs(刺激語+問題文と生成されたコンセプト文を比較)
 
 
 
 ● 結果: 
 ○ 動詞がより多くのNWPsを誘発
 ○ 対義語動詞が(1)ブッシュとピン問題と(2)積雪の断熱効果問題へ最も多くのNWPsを誘発した 
 
 (A) Constrict the motion of heat [from leaving the house] NWPあり:与えられなかった語が登場 
 (B) ...constrict snow.  NWPなし
 
 ○ 品詞と刺激タイプを2要因でNWPsの平均を2Way ANOVAで比較
 19/24
  • 20. Experiment 2 実験 結果 言語使用状況の結果 1要因2水準間の F検定(計画的比較)... 1. 品詞がNWPsを誘発する効果があるか?
 ○ ブッシュ問題, 積雪問題,石炭問題とも: 
 ■ 動詞 >名詞に有意差あり 
 ■ 形容詞、名詞に有意差なし 
 20/24
  • 21. Experiment 2 実験 結果 言語使用状況の結果 (1)ブッシュとピン問題 (2)積雪断熱問題 (3)石炭置き場問題 MeanNWPs 2. -刺激タイプがNWPsを誘発する効果
 -刺激タイプ*品詞の交互作用がNWPsを誘発する効果
 ● 対義語がほとんどのNWPsを誘発 
 有意差なし
 ● 刺激タイプ*品詞の交互作用なし 
 ● 対義語がほとんどのNWPsを誘発 
 有意差あり
 ● 刺激タイプ*品詞の交互作用あり
 ● 類義語がより多くのNWPsを誘発 
 有意差あり
 ● 刺激タイプ*品詞の交互作用なし 
 21/24
  • 22. 22/24 Experiment 2 実験 議論 ● 対義語刺激がより創造性を増進させる.
 ○ ただ,刺激語を与えたコンセプトに刺激語なしより高い創造性が確認されなかった
 ○ 言語刺激を使いながら発話するプロセスは認知負荷が高く、パフォーマンス低下を招いた可能 性.刺激使用・不使用の認知負荷を揃えられないのは大きな制約
 ● 動詞が他の品詞より多くのNWPsを誘発し,対義語動詞がベスト(*Scopeによる?)
 ○ 石炭問題では多くの対義語が「不明」な使われ方(コンセプト記述に現れないが,発話されている) 

  • 23. 23/24 全体議論 ● 対義語刺激が,より一般的な領域でのデザイン創造性の呼ひ水になる.
 ● 動詞が他の品詞よりもNWPs生成を促進する.
 ● (S+V+Oの構文から,)前後に主語と目的語としての名詞連想を誘発する
 ● 積雪問題では、”constrict”という語は「圧縮するな」という解決方向性と矛盾する.が, 「熱の動き」という新語を導入することで「熱の動きを集結させる」という納得の行く議論を 誘発する
 動詞が(状態に)変化をもたらす
 アクションを導入する(Croft 1991)
 (A) Constrict the motion of heat NWPあり
 (B) ...constrict snow.  NWPなし

  • 24. 24/24 全体議論 対義語動詞
 が創造性のあるコンセプト生成に
 効果的であることを説明するモデル
 類義語は問題に対する一貫性ある 解決案を出す 
 対義語は新語の導入を強制的に促進 
 新語は新コンセプトを誘発 
 動詞のプロパティ 
 - 暗黙的な意味フィルターの役割 
 - 柔軟性
 - 意味のパラメータ(強さ) 
 (フツーの)コンセプト 
 創造的なコンセプト  

  • 25. Borgianni, Yuri, Lorenzo Maccioni, Lorenzo Fiorineschi, and Federico Rotini. "Forms of stimuli and their effects on idea generation in terms of creativity metrics and non-obviousness." International Journal of Design Creativity and Innovation (2020): 1-18. Harvard