2015jpa sympo ishimori7. システム論の発展と家族療法 (十島, 2001)
• 第一世代:Minuchinらの構造主義的家族療法
差異縮減的な負のフィードバックによる治療・安定状態(世代間の境界を備え
た健康な家族)の回復
• 第二世代:ミラノ学派、Mental Research Institute
リフレーム(症状の肯定的意味づけ)や逆説療法により、偽解決という悪循環
プロセスに介入し、問題解消の方向への自己組織化を促す。
• 第三世代:ナラティブ・アプローチ
理解の途上にとどまりつづける 「無知のアプローチ」によって、家族内で問題
を産出しつづけている一連のオートポイエーティックな作動様式の変化を援助
し続ける。
⇒臨床事例に基づく分析は行われているものの、計量的データに基づく分析は
不十分。分析のための統計的モデルが理論に追いついていなかった?
9. 家族心理学におけるマルチレベル分析
Journal of Family Psychology, Vol 19(1), 2005
Special Issue: Methodology in Family Science
• 時間を通じての、夫婦と家族の相互作用を反映したデータを分析する
ためのマルチレベルモデリングのテクニックに焦点化した3本の論文を掲載。
• Howe, Dagne, & Brown (2005) は、家族の相互作用の観察的なコーディングによって
生成された時系列データのマルチレベルモデリングに関連して、データセットの構造
化と統計的なプログラミングの手続きについて論述。
• Laurenceau & Bolger (2005) は、日記データを引き出し、保存するための技術的な進
展とマルチレベルデザインを用いた分析を記述。
• Atkins (2005) は、応用事例を記述することで、マルチレベルモデリングのテクニック
の議論を夫婦と家族の治療研究へと拡張。
• これらの多様な研究事例に渡るマルチレベルメソッドの重要性、およびこの方法に
よって提起され得る独自の疑問は、家族研究における、このデータ分析的ストラテ
ジーの成長しつつある重要性を裏付けている(Snyder & Kazak, 2005)。
10. Sayer, A., & Klute, M. (2005). Analyzing
couples and families: Multilevel methods.
In V. Bengtson, A. Acock, K. Allen, P.
Dilworth-Anderson, & D. Klein (Eds.),
Sourcebook of family theory & research.
(pp. 289-315). Thousand Oaks, CA: SAGE
家族研究、特に二者関係にマルチレベル
分析を適用すること(HLMの利点)につい
て論述。
11. 家族システム論に基づく家族研究でマルチレベル分析を
用いる必要性とメリット( Sayer & Klute, 2005)
• そもそも同一グループ内の個々人からデータを収集する場合、それらのデー
タはたいてい“独立している”データではない。
例) 夫婦では、何らかの点で類似した者同士が結婚するだろうし、結婚
生活の中で類似の文脈的要因から影響を受け、互いに影響しあう。
• 家族研究においては、メンバー間の依存性はうまく回避されるべき厄介ごと
ではなく、むしろ、しばしば研究の対象となっている現象の重要な一部である。
例) 配偶者選択、共有された文脈の個人への効果、夫婦間の影響過程
• データが収集されたレベルとは異なるレベルのリサーチクエスチョンを検討
するための分析法を提供する。
例) 夫と妻という個人の結婚満足度質問紙に対する回答に基づいて、
夫婦という二者関係を検討する。
13. Jeon et al. (2014)は、ML-SEMを用いた分析の結果、より多くの家族の社
会経済的リスクをもち、より高いレベルの不利な境遇の地域にある子ど
もは、認知的スキルの得点がより低いことを示した。
19. OlsonのFACESの因子分析結果 (最尤法、プロマックス回転)
因子名と項目 1 2 3 4 5
<家族の共行動>
私の家族では、自由な時間は家族と一緒に過ごしている .832 .037 -.145 .045 .013
家族で何かをする時は、みんなでやる .829 .018 -.039 .026 -.028
私の家族は、みんなで一緒にしたいことがすぐ思いつく .819 -.134 .123 -.016 -.021
家族の行動)私の家族は、お互いに密着している .810 .056 -.084 .041 .002
私の家族は、みんなで何かをするのが好きである .738 .211 .143 -.267 -.008
<家族のまとまり>
私の家族は、困った時、家族の誰かに助けを求める .005 .628 .005 .074 .049
家族は、それぞれの友人を気に入っている .053 .596 .180 -.095 -.038
家族の方が、他人よりもお互いに親しみを感じている .230 .572 -.093 .117 .051
家族がまとまっていることは、とても大切である -.051 .512 .028 .272 .049
私の家族では、叱り方について親と子で話し合う .239 -.462 .428 .255 .121
<家族の柔軟性>
家族を引っ張っていく者(リーダー)は状況に応じて変わる .021 .074 .707 -.066 -.246
私の家族では、問題の性質に応じて、その取り組み方を変えている -.052 .131 .663 .093 .037
家族の決まりは、必要に応じて変わる -.142 .249 .479 .017 .119
私の家族では、家事・用事は、必要に応じて交代する .140 .058 .321 -.078 .198
私の家族では、子供が自主的に物事を決めている -.077 -.006 .238 .199 .065
<家族のコミュニケーション>
私の家族では、問題の解決には子供の意見も聞いている .028 .163 -.043 .831 -.114
私の家族は、子供の言い分も聞いてしつけている -.120 .034 .106 .785 .002
私の家族では、何かを決める時、家族の誰かに相談する .291 .212 .052 .365 .034
<家族の役割分担>
私の家族では、みんなを引っ張っていく者(リーダー)が決まっている -.008 .032 -.098 -.073 1.046
私の家族では、誰がどの家事・用事をするか決まっている -.022 .101 .117 .025 .290
22. 夫婦ペアでの級内相関
• 測定した尺度の各因子について,清水
(2014)が開発したHAD14.101を用いて,夫婦
ペア間での級内相関係数を算出した。
• その結果,主観的幸福感(ICC=.394),うつ
(ICC=.492)など、すべての尺度において級内
相関が有意であった。
• 当然ながら,夫婦関係満足度等の夫婦関連
の因子における級内相関は、夫婦関係外ア
プローチを除いて.70以上と高かった。
• これらの結果から、個人関連の項目、夫婦関
係関連の項目、家族関連の項目、そして地
域コミュニティ関連の項目において、夫婦間
には相互依存的な関連があることが確認さ
れたので、マルチレベル分析の必要性が確
認されたといえる。
夫婦ペアでの各因子の級内相関係数と信頼区間
個人レベル
夫婦関係
家族関連
地域関連
因子 級内相関 95%下限 95%上限
主観的幸福感 .394 .277 .499
うつ .492 .386 .586
身体的不調 .274 .148 .391
孤独感 .345 .224 .455
夫婦関係満足度 .740 .674 .794
夫婦関係内アプローチ .788 .732 .833
夫婦関係外アプローチ .366 .247 .474
夫婦コミュニケーション .780 .723 .826
夫婦共行動 .883 .850 .909
子どもとのコミュニケーション .154 .024 .280
家族の共行動 .684 .608 .748
家族のまとまり .582 .488 .662
家族の柔軟性 .429 .316 .531
家族のコミュニケーション .534 .433 .621
家族の役割分担 .481 .373 .576
家族安定性 .461 .351 .558
地域での生活満足度 .297 .173 .412
居住継続意図 .423 .309 .525
連帯・積極性 .321 .199 .434
自己決定 .394 .277 .499
他者依頼 .290 .165 .406
愛着 .309 .185 .422
地域での参加交流 .249 .122 .368
地域での孤独・孤立 .473 .365 .569
25. • Wheeler, et al. (2010)は、アメリカのメキシコ生まれの227組の夫婦を対
象に、配偶者との葛藤解決方法と、ジェンダー的態度、文化的志向性、
および結婚の質との関連性を検討。
• 葛藤解決方法として、葛藤に関する直接的なコミュニケーションをとる、
妥協するなどの「解決志向(solution orientation)」、相互作用を独占し、
持続的に自分自身の地位を増進させようとする「支配(control)」、そして
沈黙するなどして不一致から撤退する「直面回避(nonconfrontation)」
の3タイプに分類。
• 観測値の依存性を統制するマルチレベル分析の結果、夫と妻ともに、
「結婚満足度」に対して、「直面回避と支配」は有意な負の影響を、「解
決志向」は有意な正の影響が確認された。
• 同一の概念ではないものの、夫婦間の葛藤解決に「解決志向」な態度
で臨むことが「結婚満足度」とのポジティブな関連性をもつことは、「夫
婦関係内アプローチ」が「夫婦関係満足度」にポジティブな影響を及ぼ
すという本研究の結果と一致する傾向。
29. 主観的幸福感を目的変数とするML-SEMの結果
説明変数 推定値 標準誤差 95%下限 95%上限
子どもとのコミュニケーション 0.043 0.051 -0.057 0.143
家族との共行動 0.320 ** 0.073 0.176 0.463
家族のまとまり 0.030 0.080 -0.127 0.188
家族の柔軟性 0.157 * 0.080 0.000 0.313
家族のコミュニケーション 0.002 0.071 -0.138 0.141
家族の役割分担 -0.084 0.058 -0.197 0.029
子どもとのコミュニケーション 7.613 10.473 -12.913 28.139
家族との共行動 -1.803 2.616 -6.930 3.323
家族のまとまり 0.576 1.540 -2.442 3.594
家族の柔軟性 0.074 1.229 -2.335 2.484
家族のコミュニケーション -2.378 3.640 -9.513 4.757
家族の役割分担 0.771 1.545 -2.257 3.798
個人
レベル
二者関係
レベル
31. 家族の安定性を目的変数とするML-SEMの結果
説明変数 推定値 標準誤差 95%下限 95%上限
夫婦関係内アプローチ 0.373 ** 0.078 0.220 0.525
夫婦関係外アプローチ 0.195 ** 0.052 0.092 0.298
夫婦コミュニケーション -0.153 0.103 -0.354 0.049
夫婦共行動 0.043 0.121 -0.195 0.280
夫婦関係内アプローチ 0.085 0.134 -0.178 0.348
夫婦関係外アプローチ -0.362 ** 0.134 -0.625 -0.099
夫婦コミュニケーション 0.187 0.170 -0.145 0.520
夫婦共行動 0.107 0.086 -0.061 0.276
個人
レベル
二者関係
レベル
33. 地域での生活満足度を目的変数とするML-SEMの結果
説明変数 推定値 標準誤差 95%下限 95%上限
連帯・積極性 0.092 0.095 -0.094 0.279
自己決定 0.030 0.112 -0.189 0.249
他者依頼 -0.173 +
0.093 -0.356 0.009
愛着 0.342 ** 0.090 0.167 0.518
地域での参加交流 0.004 0.072 -0.138 0.146
地域での孤独・孤立 -0.159 0.082 -0.320 0.001
連帯・積極性 -0.485 1.105 -2.652 1.681
自己決定 -0.052 0.527 -1.085 0.982
他者依頼 0.501 0.626 -0.725 1.728
愛着 1.081 ** 0.325 0.445 1.718
地域での参加交流 0.158 1.028 -1.856 2.172
地域での孤独・孤立 -0.083 0.403 -0.873 0.706
個人
レベル
二者関係
レベル