「アカデミズムの『使い方』」
               の社会的前提条件と
          立命館大学博士キャリアパス推進室の取組

                            西田亮介
             立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授
                    ryosukenishida@gmail.com
             2013年2月24日@立命館大学衣笠キャンパス創思館
          「アカデミズムの使い方 ─越境する知と多様化するキャリアパス」



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13年2月25日月曜日
博士人材の
                            需給ギャップ
              •   政策的措置:大学院重点化、COE等によって、大学院の重点化、定員増加、新設
                  が相次ぎ進学者も増加。

              •   博士課程修了者と大学教員新規採用者数の需給ギャップは1997年以来継続。

                  •   2000年時点で約2000人の需給ギャップ、2003年で約4000人、2006年で
                      約4500人程度

                  •   大学の本務教員数自体は増加しているものの、37歳以下の若手教員が占める
                      割合が、2007年で21.3%であり、1998年の25.2%から一貫して下降トレン
                      ドにある。

                  •   ポストドクターののべ数:約18000人。

                  •   キャリアパスの構築の失敗:PDの転職で最も高い割合を占めるのはPDから
                      PD(調査対象者の約60%が同一機関でのPD継続、それに次ぐ約14%が他機
                      関でのPD継続、大学教員は約8%。)

                      •   『平成23年度産業技術調査事業 中小中堅企業におけるポスドク等高度技
                          術人材の活用可能性等に関する調査報告書』より引用

                                       2
13年2月25日月曜日
博士人材の
              需給ギャップ




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13年2月25日月曜日
(就職した)博士課程修了者進路
                の内訳




                   4             文科省「大学院教育の現状について(資料)」
                http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/san_gaku_kyodo/sanko4.pdfより引用
13年2月25日月曜日
経済産業省「我が国の大学・大学院の現状」
               http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/san_gaku_kyodo/sanko4.pdfより引用


                                              5
13年2月25日月曜日
なぜ博士課程の人材問題
                  は放置され続けるのか
              •   政策当局と(多くの)大学が抱える諸問題のなかで相対的に見ると、大学院
                  博士課程とPDのキャリアの問題は「規模の小さい問題」であるため、問題
                  解決の優先順位が低くなってしまいがち?

                  •   全国の大学生の数は2008年時点で学部学生は約250万人

                  •   大学院生約26万人で10分の1程度の規模

                  •   (博士課程に限ると、近年は7万5千人程度で推移)

                  •   立命館:学部生約3万2千人、修士課程約2300人、博士課程約430人。

              •   需要不足にもかかわらず、供給の論理で議論を行なっている?

              •   政策・施策の担当者は「非当事者」であり、かつ、担当組織が分散していて
                  縦割り行政の狭間に落ちてしまいやすい?

              •   当事者自身は自身のキャリアについては主体的に取り組むはずだが、構造的
                  な問題解決に取り組む誘因を欠く?

                                    6
13年2月25日月曜日
立命館大学の状況
         • 2011年度学位取得者・満期退学者:99名
         • アカデミズムへの就職者(含む、任期付教員、
              非常勤講師、PD):33名



         • 「博士課程後期(一貫制博士)課程修了者の進
              路」http://www.ritsumei.ac.jp/ru_gr/g-
              career/common/file/201103_d-career.pdf

                               7
13年2月25日月曜日
立命館大学の状況




                 8
13年2月25日月曜日
立命館大学の取り組み
         •    『未来をつくる R2020――立命館学園の基本計画 前半期(2011年度から 2015
              年度)の計画要綱』

                 3.研究 −特色あふれる「グローバル研究大学」をめざして−

                 特色あふれる「グローバル研究大学」をめざして、以下の取り組みを進めま
                 す。

                 (1)立命館らしい特色あふれる研究を推進します。

                 (2)研究の国際化を重視したグローバルな展開を推進します。

                 (3)知識基盤社会を支える学術研究を通じた人間育成、大学院博士課程の強化
                 を含めた、研究者ライフコースの視点による若手研究者等の育成に努めます。

                 (4)自然科学系、人文・社会科学系および融合した領域の研究を推進し、研究
                 成果を広く社会に発信します。

                 (5)研究者が活き活きと研究に取り組める環境を醸成します。



                                  9
13年2月25日月曜日
立命館大学の施策
         •    大学院博士キャリアパス推進室



              立命館大学では、博士課程後期課程院生のキャリアパス形成を支援し、アカデミッ
              ク・ノンアカデミックを問わず国内外で広く活躍する人材を育成することを目的と
              して、2010年4月に博士キャリアパス推進室を設置しました。博士キャリアパス推
              進室では、博士課程後期課程院生のキャリア支援のための各種プログラムを企画運
              営するとともに、後期課程での研究活動を促進するため奨学金・研究助成制度を実
              施します。また、平成22年度より、文部科学省の科学技術関係人材のキャリアパス
              多様化促進事業に採択された「産学連携コーオプ型高度人材育成プログラム」の運
              営事務局として、企業の研究開発を担いうる実践力を有した人材の育成に取り組み
              ます。



              (http://www.ritsumei.ac.jp/ru_gr/g-career/about/outline.html/より引用)



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13年2月25日月曜日
立命館大学の施策
         •    大学院博士キャリアパス推進室

              •   2010年から総合的な支援を開始

              •   博士課程学費50万円

              •   キャリアパス形成支援(自己力向上支援プログラム)

              •   奨学金研究助成制度



              •   他大学では類を見ない、充実しかつ自校の状況を踏まえた先駆的な支援制
                  度。

              •   ただし現行制度は、エビデンスがない状態で、五月雨式に支援を拡大した
                  という課題も。無制限の支援は学費50万円政策との折り合いも。




                                 11
13年2月25日月曜日
立命館の施策
         •    2013年度から博士キャリアパス推進室は、大学院キャリアパス支援室
              に改組。



         •    第3期大学院キャリアパス支援制度を近日施行。



         •    調査(実態把握)・個別総合的支援の拡充・問題の社会発信を三位一
              体で実施(仮)。



         •    専門性の向上・汎用スキルの向上・キャリア支援を学内のみならず、
              多様なステイクホルダーと実施。


                             12
13年2月25日月曜日
立命館の施策
                     人材育成目的の達成・キャリアパスの明確化
                            研究科の教育・研究指導等

                            教育・専門性・研究力
                            の向上

                                                 研究部

                            ②「共通認識」と         ①研究者・教育者と
              教学部           「共通能力」開発支        して の キ ャ リ ア 開 発
                                             支援
                            援
              社会課題解決力の向     ③フレキシビリティ         キャリア開発力の向
              上             の開発支援             上



                            ④若手研究者情報の         ⑥産官学連携のキャ
                            蓄積・周知             リア創出支援

              ⑤若手研究者問題      社会発信力の向上
                                                キャリアセンター
              の社会発信         (博士問題の周知)

                          ⑦若手研究者の実態把握と形式知化




                                  13
13年2月25日月曜日

20130224立命館シンポジウム

  • 1.
    「アカデミズムの『使い方』」 の社会的前提条件と 立命館大学博士キャリアパス推進室の取組 西田亮介 立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授 ryosukenishida@gmail.com 2013年2月24日@立命館大学衣笠キャンパス創思館 「アカデミズムの使い方 ─越境する知と多様化するキャリアパス」 1 13年2月25日月曜日
  • 2.
    博士人材の 需給ギャップ • 政策的措置:大学院重点化、COE等によって、大学院の重点化、定員増加、新設 が相次ぎ進学者も増加。 • 博士課程修了者と大学教員新規採用者数の需給ギャップは1997年以来継続。 • 2000年時点で約2000人の需給ギャップ、2003年で約4000人、2006年で 約4500人程度 • 大学の本務教員数自体は増加しているものの、37歳以下の若手教員が占める 割合が、2007年で21.3%であり、1998年の25.2%から一貫して下降トレン ドにある。 • ポストドクターののべ数:約18000人。 • キャリアパスの構築の失敗:PDの転職で最も高い割合を占めるのはPDから PD(調査対象者の約60%が同一機関でのPD継続、それに次ぐ約14%が他機 関でのPD継続、大学教員は約8%。) • 『平成23年度産業技術調査事業 中小中堅企業におけるポスドク等高度技 術人材の活用可能性等に関する調査報告書』より引用 2 13年2月25日月曜日
  • 3.
    博士人材の 需給ギャップ 3 13年2月25日月曜日
  • 4.
    (就職した)博士課程修了者進路 の内訳 4 文科省「大学院教育の現状について(資料)」 http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/san_gaku_kyodo/sanko4.pdfより引用 13年2月25日月曜日
  • 5.
    経済産業省「我が国の大学・大学院の現状」  http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/san_gaku_kyodo/sanko4.pdfより引用 5 13年2月25日月曜日
  • 6.
    なぜ博士課程の人材問題 は放置され続けるのか • 政策当局と(多くの)大学が抱える諸問題のなかで相対的に見ると、大学院 博士課程とPDのキャリアの問題は「規模の小さい問題」であるため、問題 解決の優先順位が低くなってしまいがち? • 全国の大学生の数は2008年時点で学部学生は約250万人 • 大学院生約26万人で10分の1程度の規模 • (博士課程に限ると、近年は7万5千人程度で推移) • 立命館:学部生約3万2千人、修士課程約2300人、博士課程約430人。 • 需要不足にもかかわらず、供給の論理で議論を行なっている? • 政策・施策の担当者は「非当事者」であり、かつ、担当組織が分散していて 縦割り行政の狭間に落ちてしまいやすい? • 当事者自身は自身のキャリアについては主体的に取り組むはずだが、構造的 な問題解決に取り組む誘因を欠く? 6 13年2月25日月曜日
  • 7.
    立命館大学の状況 • 2011年度学位取得者・満期退学者:99名 • アカデミズムへの就職者(含む、任期付教員、 非常勤講師、PD):33名 • 「博士課程後期(一貫制博士)課程修了者の進 路」http://www.ritsumei.ac.jp/ru_gr/g- career/common/file/201103_d-career.pdf 7 13年2月25日月曜日
  • 8.
    立命館大学の状況 8 13年2月25日月曜日
  • 9.
    立命館大学の取り組み • 『未来をつくる R2020――立命館学園の基本計画 前半期(2011年度から 2015 年度)の計画要綱』 3.研究 −特色あふれる「グローバル研究大学」をめざして− 特色あふれる「グローバル研究大学」をめざして、以下の取り組みを進めま す。 (1)立命館らしい特色あふれる研究を推進します。 (2)研究の国際化を重視したグローバルな展開を推進します。 (3)知識基盤社会を支える学術研究を通じた人間育成、大学院博士課程の強化 を含めた、研究者ライフコースの視点による若手研究者等の育成に努めます。 (4)自然科学系、人文・社会科学系および融合した領域の研究を推進し、研究 成果を広く社会に発信します。 (5)研究者が活き活きと研究に取り組める環境を醸成します。 9 13年2月25日月曜日
  • 10.
    立命館大学の施策 • 大学院博士キャリアパス推進室 立命館大学では、博士課程後期課程院生のキャリアパス形成を支援し、アカデミッ ク・ノンアカデミックを問わず国内外で広く活躍する人材を育成することを目的と して、2010年4月に博士キャリアパス推進室を設置しました。博士キャリアパス推 進室では、博士課程後期課程院生のキャリア支援のための各種プログラムを企画運 営するとともに、後期課程での研究活動を促進するため奨学金・研究助成制度を実 施します。また、平成22年度より、文部科学省の科学技術関係人材のキャリアパス 多様化促進事業に採択された「産学連携コーオプ型高度人材育成プログラム」の運 営事務局として、企業の研究開発を担いうる実践力を有した人材の育成に取り組み ます。 (http://www.ritsumei.ac.jp/ru_gr/g-career/about/outline.html/より引用) 10 13年2月25日月曜日
  • 11.
    立命館大学の施策 • 大学院博士キャリアパス推進室 • 2010年から総合的な支援を開始 • 博士課程学費50万円 • キャリアパス形成支援(自己力向上支援プログラム) • 奨学金研究助成制度 • 他大学では類を見ない、充実しかつ自校の状況を踏まえた先駆的な支援制 度。 • ただし現行制度は、エビデンスがない状態で、五月雨式に支援を拡大した という課題も。無制限の支援は学費50万円政策との折り合いも。 11 13年2月25日月曜日
  • 12.
    立命館の施策 • 2013年度から博士キャリアパス推進室は、大学院キャリアパス支援室 に改組。 • 第3期大学院キャリアパス支援制度を近日施行。 • 調査(実態把握)・個別総合的支援の拡充・問題の社会発信を三位一 体で実施(仮)。 • 専門性の向上・汎用スキルの向上・キャリア支援を学内のみならず、 多様なステイクホルダーと実施。 12 13年2月25日月曜日
  • 13.
    立命館の施策 人材育成目的の達成・キャリアパスの明確化 研究科の教育・研究指導等 教育・専門性・研究力 の向上 研究部 ②「共通認識」と ①研究者・教育者と 教学部 「共通能力」開発支 して の キ ャ リ ア 開 発 支援 援 社会課題解決力の向 ③フレキシビリティ キャリア開発力の向 上 の開発支援 上 ④若手研究者情報の ⑥産官学連携のキャ 蓄積・周知 リア創出支援 ⑤若手研究者問題 社会発信力の向上 キャリアセンター の社会発信 (博士問題の周知) ⑦若手研究者の実態把握と形式知化 13 13年2月25日月曜日