SlideShare a Scribd company logo
1 of 16
コミュニティサイクル
「まちのり」のさらなる推進に向
けて
奥島ゼミ 学籍番号:201410380 澤田 宏二郎
アウトライン
1.背景・・・・・・・・まちのりについて
2.問題意識・・・・まちのりの現状
3.仮説・・・・・・・・まちのりの課題
4.仮説検証・・・・選択型実験による分析
5.考察
コミュニティサイクルとは
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
自転車の共用利用を提供するサービス
利用者はサービスの圏内に設置された
ポートをそれぞれ起点にして、自転車の
借用と返却が可能になる
観光回遊性向上、渋滞緩和、CO2削減
通勤時間短縮、地域交通充実がメリット
日本の現状と目標
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
H27/11.1時点 全国77都市が本
格導入
国交省は2020年までに全国100市
町村での本格導入を目標に設定
コミュニティサイクルのビジネスモデル
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
運営主体 運用モデル 利益の生み方 例
広告会社
サービスの提供による街路の広告
権の獲得
・利用料金
・広告費
Smart Bike(アメリカ)
Cyclocity(フランス)
公共交通機関
サービスの提供による公共交通機
関の成長
・利用料金
・政府からの補助金
・ポートと自転車の広告費
HPB(中国)
Call a Bike(ドイツ)
地方政府
サービスの設計もしくは買取りによる
地方福祉向上
・政府基金
・利用料金
・ポートと自転車の広告費
City Bikes(デンマーク)
OV-fiets(オランダ)
Nubija(韓国)
You Bike(台湾)
SPB(中国)
営利事業
政府からの介入が最小限のサービ
ス提供
・利用料金
・ポートと自転車の広告費
Next Bike(ドイツ)
非営利事業
公共機関や政府の援助によるサー
ビスの提供
・官民連携基金
・利用料金
・地方基金
BIXI(カナダ)
Hourbike (イギリス)
Bicincittà (イタリア)
日本の概況
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
実施地 ポート数 自転車数 登録者数 延べ利用回数 1日平均利用 回転率
金沢市 20 155 125,916 492,479 350 2.26
岡山市 35 332 38,024 536,055 607 3.1
横浜市 39 400 37,132 300,010 447 1.49
高松市 7 1250 31,436 306,580 840 0.7
江戸川区 11 1000 23,400 411,560 564 0.62
鹿児島市 21 174 18,384 136,507 405 2.3
千代田区 45 300 16,486 198,629 407 1.55
札幌市 44 350 12,763 95,047 517 1.7
神戸市 10 70 8,524 18,934 62 0.9
富山市 19 170 7,269 277,998 162 0.96
姫路市 10 100 4,779 7,087 87.5 1.1
金沢「まちのり」
登録者や回転率
などロールモデル
としてのポテンシャル
が高い
まちのり推進が日本の
コミュニティサイクル
推進につながるのでは
まちのりと世界の比較
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
都市 サービス名 ポート数 サービス範囲 ポート密度 利用度
パリ Vélib 1,751 135km2 13.0 6.7
ロンドン Barclays Cycle Hire 554 66 km2 8.4 3.1
バルセロナ Biing 420 41 km2 10.2 10.8
モントリオール BIXI 411 50 km2 8.2 6.8
リヨン Vélo'v 347 45 km2 7.7 8.3
ニューヨーク Citi Bike 323 30 km2 10.8 8.3
メキシコシティ EcoBici 279 19 km2 14.7 5.5
ワシントン Capital Bikeshare 238 57 km2 4.2 2.4
ミネアポリス Nice Ride 146 70 km2 2.1 1.4
ボストン Hubway 113 36 km2 3.1 4
デンバー B-cycle 82 21 km2 3.9 2.8
リオデジャネイロ Bike Rio 56 20 km2 2.8 6.9
サンアントニオ B-cycle 42 11 km2 3.8 0.4
マディソン B-cycle 32 9 km2 3.6 2.2
ブエノスアイレス Mejor en Bici 28 28 km2 1.0 3.8
ボルダ― B-cycle 22 2 km2 11.0 1
金沢 まちのり 20 3 km2 6.7 3.8
観光客の利用
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
金沢市見込観光客数 まちのり利用回数 観光客のまちのり利用回数 観光客利用率
約2,887,894人 216,837回 約1621941回 約5.6%
世界水準でみても利用度(自転車1台あたりの1日利用回数)は低水準
観光客利用率(筆者概算)は約5.6%にとどまっている
観光客利用向上の妨げになっている問題を解明し改善する必要がある
まちのりの4P分析
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
4P まちのり
製品
ポート数:20ヶ所
自転車数:150台
サービス範囲:3㎞2
どこでも借用・返却ができる
ポートが適切に配置されている
価格
1日200円
1ヵ月1000円
1年9000円
※それぞれ追加料金は30分毎200円、最初の30分は追加料金なし
流通
現金の場合:まちのり事務局、ホテル等の提携窓口
クレジットカードの場合:まちのり事務局、設置されたポート
販促
まちのりオリジナルグッズ
まちのりプロモーションビデオ
まちのりクーポン
料金体系が
限定的
販促の対象が
不明確
選択型実験
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
属性・水準を組み合わせて選択セット
を作成し、回答データをモデル推計する
環境評価手法(コンジョイント分析の一種)
各属性が持つ効用を統計的に推定できる
簡単に言えば、回答者がどれくらい
その要素を重視しているかを特定できる
今回は金沢に北陸新幹線で
旅行に行ったと想定して回答してもらった
選択型実験の準備(1)
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
属性 水準
料金体系
(1)基本200円/1日、追加料金200円/30分
(2)基本400円/1日、追加料金100円/1時間
(3)基本600円/1日、追加料金なし
同行人数
(1) 1~2人
(2) 3~4人
(3) 5人以上
観光目的
(1)自然・景観観光
(2)名所・旧跡観光
(3)食べ歩き・グルメ観光
選択型実験の準備(2)
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
対象
筑波大学国際総合学類2・3年次
時期
2016年12月
有効サンプル数:68
推計モデル
条件付ロジットモデル
π 𝑖 𝐶 =
exp(𝜇𝛽 𝑖
𝑥𝑖)
𝑗∈𝐶 exp(𝜇𝛽 𝑗 𝑥𝑗)
推定結果
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
属性と水準 係数 p値
基本200円/1日 追加料金200円/30分
基本400円/1日 追加料金100円/1時間
基本600円/1日 追加料金なし
1.0073
1.003
0.964
0.000***
0.000***
0.000***
1~2人
3~4人
5人以上
1.401
1.068
0.265
0.000***
0.000***
0.11
自然・景観観光
名所・旧跡観光
食べ歩き・グルメ観光
1.031
1.148
0.841
0.000***
0.000***
0.000***
選択セットの数 2448
考察(1)
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
水準のうち「料金体系」は回答者の外的性質
料金体系がニーズを満たせていない状況を明確化する目的で設定
「同行人数」「観光目的」は回答者の内的性質
販促すべき対象とメッセージを明確化する目的で設定
考察(2)
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
料金体系―まちのり標準の「1日200円」プラン以外の料金プランも効用が同程度
⇒追加料金なしのプランも導入して、潜在ニーズを満たす必要性
同行人数―「5人以上」の効用が低い
⇒今後ターゲットオーディエンスには設定しないほうがよい
観光目的―「名所・旧跡」の効用が高い
⇒販促のメッセージは「名所・旧跡」にまつわるものが望ましいか
今後の課題
研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察
アンケート実施時に「まちのり」のそもそもの認知度についても質問したが
「まちのりを知っている」と答えたのは68人中5人に留まった
今回は特にまちのりの質を向上させることにフォーカスしたが
今後はまちのりの認知そのものをどのように拡大するかを検討する必要がある

More Related Content

Similar to コミュニティサイクル「まちのり」のさらなる推進に向けて

Similar to コミュニティサイクル「まちのり」のさらなる推進に向けて (8)

1 udon
1 udon1 udon
1 udon
 
1 udon
1 udon1 udon
1 udon
 
1 udon
1 udon1 udon
1 udon
 
1 udon
1 udon1 udon
1 udon
 
1 udon
1 udon1 udon
1 udon
 
1 udon 2
1 udon 21 udon 2
1 udon 2
 
高知圏交通ICカード「ですか」の現状と未来
高知圏交通ICカード「ですか」の現状と未来高知圏交通ICカード「ですか」の現状と未来
高知圏交通ICカード「ですか」の現状と未来
 
14 水戸市ラックバス
14 水戸市ラックバス14 水戸市ラックバス
14 水戸市ラックバス
 

コミュニティサイクル「まちのり」のさらなる推進に向けて

  • 3. コミュニティサイクルとは 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 自転車の共用利用を提供するサービス 利用者はサービスの圏内に設置された ポートをそれぞれ起点にして、自転車の 借用と返却が可能になる 観光回遊性向上、渋滞緩和、CO2削減 通勤時間短縮、地域交通充実がメリット
  • 4. 日本の現状と目標 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 H27/11.1時点 全国77都市が本 格導入 国交省は2020年までに全国100市 町村での本格導入を目標に設定
  • 5. コミュニティサイクルのビジネスモデル 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 運営主体 運用モデル 利益の生み方 例 広告会社 サービスの提供による街路の広告 権の獲得 ・利用料金 ・広告費 Smart Bike(アメリカ) Cyclocity(フランス) 公共交通機関 サービスの提供による公共交通機 関の成長 ・利用料金 ・政府からの補助金 ・ポートと自転車の広告費 HPB(中国) Call a Bike(ドイツ) 地方政府 サービスの設計もしくは買取りによる 地方福祉向上 ・政府基金 ・利用料金 ・ポートと自転車の広告費 City Bikes(デンマーク) OV-fiets(オランダ) Nubija(韓国) You Bike(台湾) SPB(中国) 営利事業 政府からの介入が最小限のサービ ス提供 ・利用料金 ・ポートと自転車の広告費 Next Bike(ドイツ) 非営利事業 公共機関や政府の援助によるサー ビスの提供 ・官民連携基金 ・利用料金 ・地方基金 BIXI(カナダ) Hourbike (イギリス) Bicincittà (イタリア)
  • 6. 日本の概況 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 実施地 ポート数 自転車数 登録者数 延べ利用回数 1日平均利用 回転率 金沢市 20 155 125,916 492,479 350 2.26 岡山市 35 332 38,024 536,055 607 3.1 横浜市 39 400 37,132 300,010 447 1.49 高松市 7 1250 31,436 306,580 840 0.7 江戸川区 11 1000 23,400 411,560 564 0.62 鹿児島市 21 174 18,384 136,507 405 2.3 千代田区 45 300 16,486 198,629 407 1.55 札幌市 44 350 12,763 95,047 517 1.7 神戸市 10 70 8,524 18,934 62 0.9 富山市 19 170 7,269 277,998 162 0.96 姫路市 10 100 4,779 7,087 87.5 1.1 金沢「まちのり」 登録者や回転率 などロールモデル としてのポテンシャル が高い まちのり推進が日本の コミュニティサイクル 推進につながるのでは
  • 7. まちのりと世界の比較 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 都市 サービス名 ポート数 サービス範囲 ポート密度 利用度 パリ Vélib 1,751 135km2 13.0 6.7 ロンドン Barclays Cycle Hire 554 66 km2 8.4 3.1 バルセロナ Biing 420 41 km2 10.2 10.8 モントリオール BIXI 411 50 km2 8.2 6.8 リヨン Vélo'v 347 45 km2 7.7 8.3 ニューヨーク Citi Bike 323 30 km2 10.8 8.3 メキシコシティ EcoBici 279 19 km2 14.7 5.5 ワシントン Capital Bikeshare 238 57 km2 4.2 2.4 ミネアポリス Nice Ride 146 70 km2 2.1 1.4 ボストン Hubway 113 36 km2 3.1 4 デンバー B-cycle 82 21 km2 3.9 2.8 リオデジャネイロ Bike Rio 56 20 km2 2.8 6.9 サンアントニオ B-cycle 42 11 km2 3.8 0.4 マディソン B-cycle 32 9 km2 3.6 2.2 ブエノスアイレス Mejor en Bici 28 28 km2 1.0 3.8 ボルダ― B-cycle 22 2 km2 11.0 1 金沢 まちのり 20 3 km2 6.7 3.8
  • 8. 観光客の利用 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 金沢市見込観光客数 まちのり利用回数 観光客のまちのり利用回数 観光客利用率 約2,887,894人 216,837回 約1621941回 約5.6% 世界水準でみても利用度(自転車1台あたりの1日利用回数)は低水準 観光客利用率(筆者概算)は約5.6%にとどまっている 観光客利用向上の妨げになっている問題を解明し改善する必要がある
  • 9. まちのりの4P分析 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 4P まちのり 製品 ポート数:20ヶ所 自転車数:150台 サービス範囲:3㎞2 どこでも借用・返却ができる ポートが適切に配置されている 価格 1日200円 1ヵ月1000円 1年9000円 ※それぞれ追加料金は30分毎200円、最初の30分は追加料金なし 流通 現金の場合:まちのり事務局、ホテル等の提携窓口 クレジットカードの場合:まちのり事務局、設置されたポート 販促 まちのりオリジナルグッズ まちのりプロモーションビデオ まちのりクーポン 料金体系が 限定的 販促の対象が 不明確
  • 10. 選択型実験 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 属性・水準を組み合わせて選択セット を作成し、回答データをモデル推計する 環境評価手法(コンジョイント分析の一種) 各属性が持つ効用を統計的に推定できる 簡単に言えば、回答者がどれくらい その要素を重視しているかを特定できる 今回は金沢に北陸新幹線で 旅行に行ったと想定して回答してもらった
  • 11. 選択型実験の準備(1) 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 属性 水準 料金体系 (1)基本200円/1日、追加料金200円/30分 (2)基本400円/1日、追加料金100円/1時間 (3)基本600円/1日、追加料金なし 同行人数 (1) 1~2人 (2) 3~4人 (3) 5人以上 観光目的 (1)自然・景観観光 (2)名所・旧跡観光 (3)食べ歩き・グルメ観光
  • 12. 選択型実験の準備(2) 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 対象 筑波大学国際総合学類2・3年次 時期 2016年12月 有効サンプル数:68 推計モデル 条件付ロジットモデル π 𝑖 𝐶 = exp(𝜇𝛽 𝑖 𝑥𝑖) 𝑗∈𝐶 exp(𝜇𝛽 𝑗 𝑥𝑗)
  • 13. 推定結果 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 属性と水準 係数 p値 基本200円/1日 追加料金200円/30分 基本400円/1日 追加料金100円/1時間 基本600円/1日 追加料金なし 1.0073 1.003 0.964 0.000*** 0.000*** 0.000*** 1~2人 3~4人 5人以上 1.401 1.068 0.265 0.000*** 0.000*** 0.11 自然・景観観光 名所・旧跡観光 食べ歩き・グルメ観光 1.031 1.148 0.841 0.000*** 0.000*** 0.000*** 選択セットの数 2448
  • 14. 考察(1) 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 水準のうち「料金体系」は回答者の外的性質 料金体系がニーズを満たせていない状況を明確化する目的で設定 「同行人数」「観光目的」は回答者の内的性質 販促すべき対象とメッセージを明確化する目的で設定
  • 15. 考察(2) 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 料金体系―まちのり標準の「1日200円」プラン以外の料金プランも効用が同程度 ⇒追加料金なしのプランも導入して、潜在ニーズを満たす必要性 同行人数―「5人以上」の効用が低い ⇒今後ターゲットオーディエンスには設定しないほうがよい 観光目的―「名所・旧跡」の効用が高い ⇒販促のメッセージは「名所・旧跡」にまつわるものが望ましいか
  • 16. 今後の課題 研究背景 問題意識 仮説 仮説検証 考察 アンケート実施時に「まちのり」のそもそもの認知度についても質問したが 「まちのりを知っている」と答えたのは68人中5人に留まった 今回は特にまちのりの質を向上させることにフォーカスしたが 今後はまちのりの認知そのものをどのように拡大するかを検討する必要がある