32歳の時にくも膜下出血で倒れてから高次脳機能障がいになった当事者が、4年半の体験を簡単にまとめたものです。 高次脳機能障がいの症状は人それぞれ違うと思いますが、誰かの参考になればと思い共有します。

1. 当事者が経験から学んだ
高次脳機能障害との付き合い方
2016年2月14日
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2. 自己紹介
• 仕事：
– 組織人事コンサルティング会社に勤務。
– 計数集計・分析、サービス開発のための調査、CSR等を担当。
• 病歴：
– 2011年6月、32歳の時に朝起きてベッドから起き上がった瞬間にくも
膜下出血を発症。その後、脳血管攣縮が起きたことの後遺症で高次脳
機能障害になりました。
• 家族：
– 2013年10月に長男誕生。
– 最近の趣味は美味しいコーヒーの淹れ方の研究。
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3. 認識している私の高次脳機能障害
• 脳血管攣縮を起こしたことにより、言語野から前頭葉ま
で広く脳を損傷する。
• 認識している後遺症
– 前頭葉：マルチタスクでの業務が苦手
– 言語：「てにをは」がうまく活用できない
– 言語：文章を理解するのに時間がかかる
– 言語：簡単な指示が理解できない時がある
– 言語：咄嗟に判断を求められると思考が停止する
– 右脳：映像や図を理解するのに時間がかかる
– 全体：脳が疲れやすい（脳疲労）
– 身体：左手に感覚マヒなどの不自由なことがある
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4. 倒れてから現在まで紆余曲折
休職期間
復職職場
転職職場
復職
転職
再転職
再
リハビリ
嬉
し
い
悲
し
い
復帰
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安定するまでに幾度か大きな波を乗り越えてきました

5. 今回お伝えしたいこと
• 職場復帰で直面した課題
• どのように課題を乗り越えたか
• 障害を認知・受容していく過程
• スムーズな社会復帰に必要なこと
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6. 職場復帰で直面した課題と対処
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7. 発症から回復まで
急性期 回復期（転院） 慢性・維持期（通院）
• 脳血管攣縮で3回の緊
急手術
• 左手機能不全
• 失語症（口頭指示が理
解出来ない）
• 左半側空間無視
• 四則演算も微妙
• 体力づくりリハビリ
• 左手リハビリ
• 言語リハビリ
• 1日3時間
• お手玉の練習
• 英語の練習
• お試し外泊
• 3か月半で退院
• 週2回の通院
• 左手リハビリ
• 言語リハビリ
• NPO活動参加
• 買い物料理
• 録音再生
1ヶ月半 ２ヶ月間 ３ヶ月間
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とにかく早く元の生活に戻りたい→（半年で復職）

8. 職場復帰後の迷走
仕事に戻れ
た！ なんでこんなミ
スしちゃうんだ
こんなじゃな
かったはず。。
もうどうすりゃ
いいんだ。。
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自分の変化を受け入れきれずパニック状態に。。

9. 職場復帰後の関係性の変化
よく戻っ
てきてく
れた！
どうした！
しっかりし
てくれよ。
もういい加
減勘弁して
くれ！
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お互い変化を受け入れられないので、対処もできない

10. 職場復帰後何が起きていたのか
項目 具体的なトラブル例 起きた原因
感情 失敗を他責にしたり、感情的に
なって言い訳する
自分の状況の変化をまだ認めることが
出来ない。（脱抑制）
言語 突然から外れたとんちんかんなこ
とを言ってしまう
伝える時に言葉の選び方を間違ってし
まう（錯誤）
言語 資料を読むスピードに遅く、議論
についていけない
失語症により、長い文章は理解するの
に時間がかかる
言語 口頭で指示されたことがすぐに理
解できない
失語症のため、口頭命令では理解に時
間がかかる
処理
能力
夜に資料を作成して送ったら朝に
確認すると誤字脱字だらけ。
脳疲労に気づかずにそのまま、仕事を
注意障害も発生
処理
能力
約束していた会議の予定を忘れて
しまう。
他の仕事に集中していて、他に意識が
向かなかった。（過集中状態）
処理
能力
段取りを組むのにミスや無駄が多
い
関係者を考慮せず自分中心で予定を考
えてしまう（前頭葉の障害）
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11. どのように課題を乗り越えたか
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12. 将来が見えないまま試行錯誤する日々
家族会へ
の参加
献立から
料理まで
英会話の
勉強
資格取得
の勉強
毎日5キロ
ジョギング
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自分の状態を知るためにあらゆることを試す

13. 試行錯誤で見えてきたトラブルへの対処策
項目 具体的なトラブル例 起きた原因
感情 失敗を他責にしたり、感情的に
なって言い訳する
水や深呼吸で落ち着く。ミスを認めて
対応を早くする
言語 突然から外れたとんちんかんなこ
とを言ってしまう
間違えた時は自分からミスを認めて、
自虐的にネタにする
言語 資料を読むスピードに遅く、議論
についていけない
極力事前に読み込む。わからないまま
進めず待ってもらうように依頼する
言語 口頭で指示されたことがすぐに理
解できない
図に書くなどの工夫して、自分の理解
が正しいかを確認する
処理
能力
夜に資料を作成して送ったら朝に
確認すると誤字脱字だらけ。
時間をおいて再確認する時間まで、作
業時間含めて作業を行う
処理
能力
約束していた会議の予定を忘れて
しまう。
時計のアラート機能などを活用して、
時間にきづくようにする
処理
能力
段取りを組むのにミスや無駄が多
い
マインドマップなどを活用し、段取り
の見える化を行うことでミスを防ぐ
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14. 無能
無自覚
無能
有自覚
有能
有自覚
有能
無自覚
×：以前と全く同じことが出来る
○：違うやり方でも同じことが出来るようになる
出来てない
ことに気づ
かない
出来てない
とに気づ
く！
意識すれば
出来る！
意識せずに
出来る！
対処策を身につけるには日々の積み重ね
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15. 復帰後、仕事は変化に合わせて見直していく
高い
低い
高い低い
重
要
度
緊急度
この領域についてできることを
一緒に考えていく。
例）
・社内情報の整理・分析・発信
・社外情報収集・社内への発信
会社：やってもらいたい
本人：もともとやっていた領域
の仕事だが今の能力では、対
応できる自信がない。
怖さもあるが、猫の手も借りた
いという状況にある時には手
伝う。
必要な仕事だと理解しつつも、
そんな仕事ばかりをやっていて
も楽しくない。以前に近いような
仕事もまたやりたい。
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出来ることに目を向けてゆっくりと伸ばしていく

16. 障害を認知・受容していく過程
～改めて経験したことを振り返る～
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17. 自己受容していく過程（下る）
・日常で自分が出来ないことに
どんどん直面していく
・努力ではどうにもならないこ
とを実感する
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自分の状況をきちんと自覚するまでには時間がかかる

18. 受容していく過程（昇る）
・過去との比較を辞める
・出来ないことを認めた上でど
うすればいいかを考える
・未来に昨日より向けてよく
なった点を探す
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一度底まで行き着くことで将来に進めるようになる

19. 受容していく道のりは決して平坦ではない
・能力は徐々に改善していくの
で、境目は固定されず変化する
・そのため、可能性をさぐりた
い気持ちが常につきまとう
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やる気と挫折を繰り返しながら現在の境目を探る

20. 当時の状況を振返って思うこと
• 高次脳機能障がいの当事者の会に早い段階で参加出来れ
ば良かった
• 職場と出来ないことが見えてきて辛い段階が来るという
ことを共有出来ていると良かった
• 家族とも日常生活に戻る中で、出来ないことが見えてく
るショックがあることを共有出来ていると良かった
• 過去に出来なくなったことよりも日々出来る様になった
ことに目を向ける志向を早く持てると良かった
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21. スムーズな社会復帰に必要なこと
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22. スムーズな社会復帰のために
■過去の方々の経験を
参考に自分もかなり悩
む可能性があること理
解してもらう。
※障害の程度によって、
程度は異なり、障害を
自覚出来ているかでも
状況は変わります。
これから起きうることを
医者・家族・職場が知っ
ておくことでお互いの
ショックを和らげる
未来の自分
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一旦は落ち込む時期があることをみんなで共有する

23. スムーズな社会復帰のために
参考：当事者の経験
発症後1年半 発症後4年
※記載している期間は
自身が一段落つくまで
に要した期間です。
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未来を予期することで状況を受け止めて対応できる