SlideShare a Scribd company logo
1 of 23
Download to read offline
page. 1page. 1
G-SEC 復興リーダー会議
~地域コミュニティの行政と住民の意思疎通
において、中間組織ができること~
石井 重成 (Ishii Kazunori)
page. 120140621
page. 2page. 2
目次
3.この研究を続けるとしたら…
1.テーマ選定とその背景
2.事例調査サマリー
page. 3page. 3
復興リーダー会議第2期では…
地域コミュニティの行政と住民の意思疎通において、
中間組織は何ができるのか?/何をすべきか?
注: 「中間組織」は、地域コミュニティにおいて、行政と住民の間で復興まちづくりの合意形成
(主に土地利用計画)に関する活動をおこなう組織、と定義
page. 4page. 4
そもそもの問題意識
復興はなぜ進まないのか…(スピード)
あたらしくできたまちは「自分たちのまち」になるのか…(代表性)
page. 5page. 5
住まいが再建されるのは…
出所:岩手県HP
(https://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/001/806/honbuinkaigi_daigokai.pdf)
<災害公営住宅供給予定戸数(年度別・岩手県内)>
page. 6page. 6
復旧・復興事業における合意形成プロセス(釜石市の場合)
page. 7page. 7
様々な立場、優先順位、行政への不満…
そもそも「合意形成」とは?
◆ 立場の違いによる意見・関心の違い
◆ 複雑・煩雑なシステム
伝わらない情報 ◆
◆ ミスコミュニケーションの発生
行政への不満 ◆
◆ スピードと丁寧さの板挟み
合意形成のあるべき姿とは? ◆
<住民合意形成のダウンスパイラル(イメージ)>
page. 8page. 8
議論のポイント
自治体
地域
NPO
企業
中間組織が
担うべき役割
震災後に拡大した
パブリックサービス
地域の社会関係資本
によって提供できる機能
自治体
地域
NPO
企業
<パブリックサービスの変化(イメージ)>
震災前 震災後
注:「社会関係資本」について、本稿では「人々の協調行動を活発にすることで、社会の効率性を改善できる、信頼・
規範・ネットワークといった社会組織の特徴」というパットナムの論を参照
page. 9page. 9
研究テーマとその意義
❏課題認識
 合意形成における
– スピード
– 代表性(町内会・自治会の組織率低迷、女性や若い世代の意見)
 一方で、外部組織・人材が「中間組織」を支援し、地域コミュニティにおける意思
疎通をサポートするケースが散見
❏目的と意義
 住民と行政の意思疎通について、中間組織の果たす役割を明らかにする
• 次の震災や福島の復興における先行事例として外部人材活用の知見
• 日本のあらゆる地域コミュニティにおいて適用可能なエッセンス
page. 10page. 10
目次
3.この研究を続けるとしたら…
1.テーマ選定とその背景
2.事例調査サマリー
page. 11page. 11
岩手・宮城4地域において、ヒアリング調査を実施グループ2(地域コミュニティにおける住民と行政との意思疎通)
意思決定テーマ ○○地区土地利用(区画整理、高台移転)
地域名 ○○県○○町○○集落
上記地域の基礎情報
人口 ○○人
構成 漁業関連○割、主婦○割、高齢者○割・・・
関連行政機関 ○○県、○○町、復興庁、・・・
行政の担当者の人数 ○人
(開始日)○年○月○日、(決定日)○年○月○日、計○ヶ月間
中間組織・中間人材
○○町連絡協議会、○○町中心市街地活性化委員会、NPO○○・・・・
(名称を記載)
人数 ○○人(うち、行政と住民の意思疎通に関わった人数○人)
構成
漁業関連○割、主婦○割、高齢者○割・・・
ヨソモノ(○○県から移住してきた○○さん、等?)
上記構成メン
バー間の目的の
共有度
同じ目的を共有、利害が異なるメンバーが混在、等?
活動形態
活動の財源
復興予算・企業からの補助金等があるか、どれくらい入っているか。
復興予算、企業からの補助金等により派遣されている人材がいるか。等
活動頻度 週1回2時間MTG、月1回ワールドカフェ開催等?
活動期間 ○年○月~○年○月、等(震災後に新しく組織されたものか。)
外部人材 地域外から新たに来た人がメンバーにいるか。どのような人か。
意見聴取対象 どのような人の意見を聞く活動をしたか。(意見を聞いた人の属性など)
意見聴取の密度 ○人規模の説明会・ミーティングを○回開催、等
その他 自由記載
事例調査シート
意思決定テーマに関
する協議期間
 テーマ:土地利用、高台移転
 方法:現地ヒアリング
 対象地区:
釜石市鵜住居地区、気仙沼市唐桑町大
沢地区、石巻市湊町1丁目、女川町
 調査内容:
地域コミュニティ内の対象人数、市担当者の
人数、中間支援組織・人材、活動の財源、
活動内容・頻度、合意形成の状況など
※福島は土地利用計画に関する合意形成のフェーズ
が異なることから調査対象から除外
page. 12page. 12
仮説
仮説1:
中間組織がある地域は、行政と住民の意思疎通がスムースに出来ている
仮説2:
地域が有する社会関係資本によって、中間組織がやるべきことは変わる
page. 13page. 13
ケース① 岩手県釜石市鵜住居地区
 「鵜住居地区復興まちづくり協議会」
– 2012年11月設立 30歳~40歳代を中心に構成、鵜住居中心市街地が活動エリア
– 週2回の定例協議、数か月単位の地区住民全員を対象とする説明会の開催(市と
共催)、復興新聞の作成・全戸配布など、土地区画整理事業の合意形成に関する
活動
 「釜石東部漁協管内復興市民会議」
– 2012年5月設立 複数集落の町内会長や漁業関係者、婦人部で構成、漁村部が
活動エリア
– 月一回の総会、各種ワーキンググループの活動を通じ、箱崎半島の土地利用計画策
定や漁業振興に向けた活動
出所:インタビューより抜粋
page. 14page. 14
ケース① 岩手県釜石市鵜住居地区
<市内の中間組織を支援する、「釜援隊」の取り組み>
A団体/地域 B団体/地域 C団体/地域
釜援隊
釜石市役所
RCF復興支援
チーム
企業
他地域
NPO・個人
連
携 連
携
支援
市内
市外
・釜援隊は釜石市の復興支援員として委嘱を受けている個人事業主の総称
・市内NPOやまちづくりの議論をおこなう団体、市関係機関を継続的に支援
page. 15page. 15
ケース② 宮城県気仙沼市唐桑町大沢地区
 「大沢地区防災集団移転促進事業期成同盟会」
– 2011年6月設立、40歳代の地区有志を中心
– 大沢地区全戸を対象とした住民アンケートを実施。事務局は、21名体制で
30歳代から60歳代
– 2012年5月に、気仙沼市の先陣を切って、防災集団移転促進事業における
国土交通大臣合意
 「気仙沼みらい計画大沢チーム」
– 2011年8月設立、横浜市立大学、神戸大学、東北芸術工科大学、武庫
川女子大学で構成、 ワークショップのファシリテーター約
– 多数の学生が800年の歴史を持つ賀茂神社のお祭りに参加、大沢地区の魅
力を地域が再認識するきっかけに
– 公益社団法人Civic Forceによる資金提供
出所:インタビューより抜粋
page. 16page. 16
ケース③ 宮城県石巻市湊町1丁目
 「湊町一丁目みなといち会まちづくり協議会」
– 石巻市から設置依頼、町内会役員6名と2名(女性と若年層、一般公募
)+建築コンサルタントで構成
– 2か月に一回の定期会合、地域住民の意見収集
出所:インタビューより抜粋
page. 17page. 17
ケース④ 宮城県女川町
 「女川町まちづくり推進協議会」
– 女川町が設置、WGは30歳~40歳代の若手・中堅のリーダー35名(協議
会推薦60%、一般公募40%)で構成、毎月の定例会、協議会に答申
– ジュニアリーダーの文化、女川商工会青年部の活性化
– 震災前から「まちづくり塾」、原発に頼らないまちづくりの模索
出所:インタビューより抜粋
page. 18page. 18
仮説の検証
仮説1:
中間組織がある地域は、行政と住民の意思疎通がスムースに出来ている
仮説2:
地域が有する社会関係資本によって、中間組織がやるべきことは変わる
• 全ケースにおいて、震災後に地区住民の多様な意見収集が必要となり、中間組織が
大きな役割を果たしていることを確認
• 利害調整には、利害関係者の直接な対話だけではなく、全体を俯瞰して様々な利害
関係者の意見を調整する「第三者」の役割が必要なケースが多くみられる
• 地区によって中間組織の果たしている役割に差異が認められる
• 「中間組織が担うべき役割」=「震災後に拡大したパブリックサービス」-「地域の社会
関係資本によって提供できる機能」とすると、地域の社会関係資本だけではまかないき
れない機能を把握し、中間組織が担うべき役割を定義していくこと求められる
• 被災地に限らず、自然災害などパブリック・サービス領域が拡大される事態に備え、社
会関係資本(ソーシャルキャピタル)をあらかじめ強化する仕組みを構築していく必要
page. 19page. 19
目次
3.この研究を続けるとしたら…
1.テーマ選定とその背景
2.事例調査サマリー
page. 20page. 20
この研究を続けるとしたら…① 「失敗」ケースの検証
なにがコミュニティ内・間のコミュニケーションを阻害するのか
page. 21page. 21
この研究を続けるとしたら… ② 数のジレンマ
small is beautiful ?
しかし、時には大きいほうがよいこともある?
“デモクラシーの単位が小さくなれば、それだけ市民参加の可能性が大き
くなり、市民が政治的決定を代表に委ねる必要性は減少する。単位が大
きくなれば、市民にとって重要な諸問題を処理する能力は大きくなるが、
市民が代表に決定を委ねなければならない必要性も増大する”
出所:『デモクラシーとは何か』 (ロバート・ダール)
page. 22page. 22
この研究を続けるとしたら… ③ 余白のマネジメント
(震災復興に限らず)コミュニティ内・間における「余白」を
だれが、どうマネジメントすべきか?
<地域性×テーマ性のクロスファンクション(釜援隊)>
page. 23page. 23
石井 重成(Ishii Kazunori)
❏所属
釜石市復興推進本部事務局 兼 総合政策課
係長(官民連携推担当)
❏略歴
釜石の復興コーディネーター集団「釜援隊」をプロデュース。
コミュニティ支援、地域公共交通改革、人材の流動化など
官民連携プロジェクトを通じて、復興まちづくりを推進。
経営コンサルティング会社勤務を経て現職。
kaishii617

More Related Content

Similar to Community-catalyst-resilience@G-SEC_20140621

何でも勉強会(協働)201301302010
何でも勉強会(協働)201301302010何でも勉強会(協働)201301302010
何でも勉強会(協働)201301302010
嶋津 幸男
 
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.02011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
Junya Shiraishi
 
20130411未来のために社会を変える!(本番用)
20130411未来のために社会を変える!(本番用)20130411未来のために社会を変える!(本番用)
20130411未来のために社会を変える!(本番用)
Tomoyuki Hashimoto
 

Similar to Community-catalyst-resilience@G-SEC_20140621 (11)

何でも勉強会(協働)201301302010
何でも勉強会(協働)201301302010何でも勉強会(協働)201301302010
何でも勉強会(協働)201301302010
 
礒野先生 レジュメ
礒野先生 レジュメ礒野先生 レジュメ
礒野先生 レジュメ
 
MyCityForecast
MyCityForecastMyCityForecast
MyCityForecast
 
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.02011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
2011.03.27ちいきをつくるって@東出雲町Ver2.0
 
市民活動のこんなこと・こんなひと
市民活動のこんなこと・こんなひと市民活動のこんなこと・こんなひと
市民活動のこんなこと・こんなひと
 
090706東洋大学演習資料公開版
090706東洋大学演習資料公開版090706東洋大学演習資料公開版
090706東洋大学演習資料公開版
 
20200525 ris cd 2
20200525 ris cd 220200525 ris cd 2
20200525 ris cd 2
 
nl
nlnl
nl
 
少子高齢化社会における人間と人工知能の協働のマネジメント
少子高齢化社会における人間と人工知能の協働のマネジメント少子高齢化社会における人間と人工知能の協働のマネジメント
少子高齢化社会における人間と人工知能の協働のマネジメント
 
たのしい国際協力学
たのしい国際協力学たのしい国際協力学
たのしい国際協力学
 
20130411未来のために社会を変える!(本番用)
20130411未来のために社会を変える!(本番用)20130411未来のために社会を変える!(本番用)
20130411未来のために社会を変える!(本番用)
 

More from Kazunori Ishii

More from Kazunori Ishii (8)

20170325 civictechforum2017_ishiikazunori
20170325 civictechforum2017_ishiikazunori20170325 civictechforum2017_ishiikazunori
20170325 civictechforum2017_ishiikazunori
 
Kamaishi MaruMaru Kaigi_20150913
Kamaishi MaruMaru Kaigi_20150913Kamaishi MaruMaru Kaigi_20150913
Kamaishi MaruMaru Kaigi_20150913
 
Higashi no Mado no Kai Event_20150208
Higashi no Mado no Kai Event_20150208 Higashi no Mado no Kai Event_20150208
Higashi no Mado no Kai Event_20150208
 
Collaboration projects in kamaishi city 20140929
Collaboration projects in kamaishi city 20140929Collaboration projects in kamaishi city 20140929
Collaboration projects in kamaishi city 20140929
 
Recruiting project in kamaishi city@work fortohoku 20140709
Recruiting project in kamaishi city@work fortohoku 20140709Recruiting project in kamaishi city@work fortohoku 20140709
Recruiting project in kamaishi city@work fortohoku 20140709
 
Public Transportation of Kamaishi City_20131024
Public Transportation of Kamaishi City_20131024Public Transportation of Kamaishi City_20131024
Public Transportation of Kamaishi City_20131024
 
what is "resilience"@iwate university_20131031
what is "resilience"@iwate university_20131031what is "resilience"@iwate university_20131031
what is "resilience"@iwate university_20131031
 
politics & career development@Musashino university_20121025
politics & career development@Musashino university_20121025politics & career development@Musashino university_20121025
politics & career development@Musashino university_20121025
 

Community-catalyst-resilience@G-SEC_20140621