「昨今の援助潮流とその背景」(Jica 古川光明氏)
- 1. 「昨今の援助潮流とその背景」
英国事務所
古川 光明
≪経歴紹介(援助協調関連)≫
・アジア・太平洋地域国際災害救助暫定議長
・タンザニア事務所(1997-2001)次長
・外務省経済協力局政策課国別計画策定室課長 補佐
(援助協調ユニット班長)(2001-2002)
・総務部総合調整チーム長(2003-2005)
≪著書≫
「アフリカを取り巻く援助動向とその対応(一考察)」
(JICA、2004)など
- 3. 1.「パリ援助効果宣言」に至る援助アプローチの流れ
1980年代 1990年代 1990年中盤~ 2000年代~
S モ マ
W ン ラ
冷戦の M ト ケ
債務 A C
終結 P D D レ ロ ッ パ
問題 G イ ー シ
(9 F ・開 リ
M (1 S 国 マ 援
援助疲れ 0 (2 際 調 発
貧困問題 年 T 9 P 助
9 0 資 和 成 効
中 E R 化 果
従来型(プロジェ
盤 8 S 0 金 果
クト)支援の反省 F ) P 0 宣 マ
~ ) 開 ネ 宣
(1 発 言 ジ 言
) (2
構造調整プログ 9 会 メ (2
ラムへの批判 9 合 0 ン
9 0 ト 0
) (2 会 0
3 合 5
ニューパブリック 0 )
0 ( )
マネジメント 2
2 0
(NPM)の台頭 ) 0
4
)
グローバリゼ HIPCイニシア 拡大HIPCイニシア
ーション ティブ ティブ(1999)
レベル1 レベル2 レベル3
個別案件を中心とし プログラムベースを中心 途上国政府・ドナー・援助関係者と
た緩やかなドナー間 としたドナー間の援助協 ともに進める開発協調
の援助協調 調
- 4. 2.援助効果向上体制の構築
「個別型支 「協調型支 「開発協調型支
援」 C
援」 援」
G
体 被援助国の主導
制 援助利害関係
個別ドナー や 者共有の援助 の下で援助利害
の政策 各 政策調整 関係者共有の援
分 助政策作成
野
個別ドナー で 援助資金の共 被援助国政府の
の
同使用:コモン
の予算 作 国家予算への援
業 ファンド 助資金の直接導
部
会 入
ドナー独自 調和化(援助
等
手続の簡素 被援助国のシス
の援助方 の
設 化・調和化) テムの活用
法 置
- 5. 3 援助効果のイメージ
オーナーシップ→
相手国がバスを運
転する 相手国が優
先順位を決定
整合化→
ドナーは相手国が運
相手国の優先 相手国の制度
転するバスに乗る を使う
順位に沿う
調和化→
ドナーは運転手の ドナー共通の 手続きの合理 情報共有
邪魔をしない 取り決め 化
この理念の実践を図る文書が「パリ援助効果宣言」
- 7. 4.従来型の援助アプローチの弊害と新たな援助のあり方
従来の援助 対外依存度の高 課題・問題点 新規SWAp 中
中 貧
貧
アプローチ い国、行政能力 期 困
困
期
の低い国 削
支
支 削
開発計画の脆弱性 基 共通の政策・開発 出
出 減
減
本
計画 枠
枠 戦
戦
形
S 組
組 略
略
断片的な オーナーシップへ W
国家予算と整合した 書
書 書
書
受動的援助受入 A
プロジェクト の悪影響 p 財政/支援計画
援助の予測可能性の
援 取引費用が増加
促進
助
の
氾 政府が掌握し、 組織・実施体制へ フ 援助手続きの調和化
ドナー独自の
濫 管理することが の悪影響 ァ
アプローチ
困難 ン
ジ
経常経費の適正な コモン・バスケット・
ビ
確保の困難さ ファンド等財政支援
リ
テ
規格・仕様の ィ プロジェクト型から
不一致 の プログラム型援助へ
議
論 ローカルリソースの
マクロレベル 活用
持続性を阻害
単にマクロ的に財
政管理を行うだけ 限定的な効果発現 覚書の締結
では一元的な予算
管理、財政均衡の
達成は困難
- 9. 5.レベル3における日本の援助
システムとのギャップ
日本型(個別型支援) レベル3(協調型支援)
援助アプローチ 相手国のオーナーシップの尊 途上国・ドナー共同責任
重と自助努力支援
(援助哲学) 経常経費の負担と技術移転を 途上国・ドナー共同責任
受けるカウンターパートの配置
途上国・ドナー共同責任
他ドナー支援との重複回避
援助受入れのための実施体 途上国・ドナー共同責任
制もある程度整備
案件発掘・形成 要請主義(東京で採択) 途上国・ドナー共同
(プロセス重視)形成
個別案件単位による要請 プログラムベース
実施・運営 途上国・ドナー共同責任
バイの実施
モニタリング・評 途上国・ドナー共同責任
価 バイの実施
- 10. 6.平和構築支援との融合
冷戦終結
多発する国内紛争への対応の必要性
B a d p e rfo rm e r G o o d p e rfo rm e r
(通 常 の 開 発 )
きわめてガ 紛 争リス 政府に改善 貧困削減に資する
バナンス状 クの高い 意志の欠如し 政 策 の 実 施 ・開 発
況の悪い紛 破綻国家 ている脆弱な 能力の脆弱な国
争終結国 国家
MDGs
2001年 9月 11日
米国テロ事件
より広範なアプローチの必要性:軍事的 パリ援助効果宣言
枠 組 ・ 政 治 的 枠 組 ・ 人 道 /開 発 支 援 の 枠 組
の共有
紛 争 終 結 国 を 含 め 、 調 和 化 ・ア ラ イ メ ン トを 目 指 す 包 括 的 な ア プ ロ ー チ へ
早 期 か つ 包 括 的 な PRSPの 策 定 、 ア フ ガ ン ・コ ン パ ク ト等 ド ナ ー 行 動 綱 領
- 13. <参考>国連ミレニアム宣言と
ミレニアム開発目標(MDGs)
国連ミレニアム宣言(2000年)
国連ミレニアムサミットで世界中の元首が集まり、
189ヶ国の合意のもと、採択。
(地球規模の平和と安全、開発と貧困、環境、人権などに
関する問題を、21世紀の世界の課題に。)
ミレニアム開発目標(MDGs)
現在、世界が深刻な状況に直面している様々な問題
に対し、達成期限(2015)と具体的な数値目標を定めた
世界共通の行動指針
(貧困、飢餓、教育、保健・医療、環境など)
- 14. ミレニアム開発目標(MDGs)
目標1: 極度の貧困及び飢餓の撲滅
• ターゲット1 2015年までに1日1ドル未満で生活する人を
半減させる。
• ターゲット2 2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半
減させる。
目標2: 普遍的初等教育の達成
• ターゲット3 2015年までに、すべての子供が男女の区別
なく初等教育の全課程を修了できるようにする。
目標3: 男女平等及び女性の地位強化の推進
• ターゲット4 初等・中等教育における男女格差の解消を
2005年までに達成し、2015年までにすべての教育レベル
における男女格差を解消する。
目標4: 乳幼児死亡率の削減
• ターゲット5 2015年までに5歳未満時の死亡率を3分の2
減少させる。
- 15. MDGs(続き)
目標5: 妊産婦の健康の改善
• ターゲット6 2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少
させる。
目標6: HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病との闘い
• ターゲット7 HIV/AIDSの蔓延を2015年までに阻止し、そ
の後減少させる。
• ターゲット8 マラリア及びその他の主要な疾病の発生を
2015年までに阻止し、その後発生率を下げる。
目標7: 環境の持続性の確保
• ターゲット9 持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略
に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。
• ターゲット10 2015年までに、安全な飲料水を継続的に利
用できない人々の割合を半減する。
• ターゲット11 2020年までに、最低1億人のスラム居住者
の生活を大幅改善する。
- 16. MDGs(続き)
目標8: 開発のためのグローバルなパートナーシップの推
進
• ターゲット12 開放的で、ルールに基づいた、予測可能でか
つ差別のない貿易及び金融システムの更なる構築を推進す
る。
• ターゲット13 最貧国の特別なニーズに取り組む。
• ターゲット14 内陸国及び小島嶼開発途上国の特別なニー
ズに取り組む。
• ターゲット15 開発途上国の債務問題に包括的に取り組み、
債務を長期的に持続可能なものとする。
• ターゲット16 開発途上国と協力し、適切で生産性のある仕
事を若者に提供するための戦略を策定・実施する。
• ターゲット17 製薬会社と協力し、開発途上国において、人々
が安価で必須医薬品を入手・利用できるようにする。
• ターゲット18 民間セクターと協力し、特に情報・通信分野の
新技術による利益が得られるようにする。
- 19. モントレイ会合のフォローアップ
途上国の成長、貧困削減及び2015年のミレニアム
開発目標達成に向けた開発パートナーシップの強化
2003年2月 ローマ調和化ハイレベルフォーラム
「ローマ調和化宣言」
・ プログラム・ベース・アプローチの実施
・ 財政支援やプールファンドなどの新規援助モダリティ
導入
・ 援助手続きの調和化(ドナー間、ドナー・途上国)・簡素
化
・ ドナーサイドの援助予測性向上
・ 開発成果マネジメント導入等
2004年2月 マラケッシ 開発成果マネジメント会合
2005年2月~3月 パリ・DAC援助効果ハイレベル会
合
- 20. 本年2月~パリ・DACハイレベル会合
「パリ援助効果宣言」
(1)オーナーシップと整合性
(2)途上国制度の利用
(3)キャパシティ・ディベロップメント
(4)調和化
(5)補完性
(6)予測性
(7)相互責任
(8)調達
(9)開発成果マネジメント
(10)援助のアンタイド化 (11)脆弱な国家 (12)ドナーの
インセンティブ (13)環境影響評価
- 22. <参考>日本が直面している事項例
(援助システムの見直し)
■援助形態の見直し
• プロジェクト型援助(個々の開発活動レベルで管理)
→プログラム型援助(開発活動を「面」すなわちセクター・
レベルで管理)※例:Sector Wide Approach (SWAP)
• 財政支援(Budget Support)の形態を採用するドナー増
■「調和化・アラインメント」
• レポーティングなどの手続きや、調査団派遣の調整、情報の共有
によって途上国のコストを減らす(調和化)
• 途上国の開発計画や予算・調達など諸制度への整合性をとる
(アラインメント)
• 援助資金を国家予算のなかで捉えられるようにする