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シンポ第2部報告
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第2部
第2部は、健康被害防止です。
冒頭に、田部知江子事務局次長から、翌日の人権大会で採択を予定している決
議案の説明です。
決議案全体は
1
被害の完全救済
2
健康被害の防止
3
脱原発
の3つに分かれ、そのうち「2
健康被害の防止」では
1
支援地域・放射線量基準の定義の再設定と住民意思を尊重した支援
2
健康被害調査を受ける権利
3
被曝労働による健康被害の防止
4
食品の安全
5
大気・水・土壌の汚染への対処と居住地域における現状回復
の5つを提言しています。
1
支援地域・放射線量基準の定義の再設定と住民意思を尊重した支援
現在、年間20ミリシーベルトが避難対象地域となっていますが、ICRP
の基準に鑑みれば、1ミリシーベルトを基準とすることが、健康被害防止のた
め必要です。
子ども被災者支援法の趣旨に従い、避難に必要な支援が十分なされる必要があ
ります。
2
健康被害調査を受ける権利
福島県以外では、無償健康調査が行われていません。また福島でも、セカン
ドオピニオンを事実上禁止する通達により、医療を受ける権利が保障されない
状況にあります。必要な医療が保障されなければなりません。
3
被曝労働による健康被害の防止
あらたな被ばくによる被害者を出すことがありません。収束作業においても、
十分な健康管理、そして万が一被害が生じた場合は、労災認定がなされる必要
があります。
4
食品の安全
5ミリシーベルトへの緩和は、国際基準から逸脱しています。住民、特に子
どもの安全確保の観点から、外部被ばく・内部被ばくを合計した年間実効線量
- 2. 2
が1ミリシーベルトを超えないよう見直しを行うことを国に求めます。
5
大気・水・土壌の汚染への対処と居住地域における原状回復
汚染水の漏えいなど、本件事故の収束と廃炉に向けた作業について、東京電
力任せにすることなく、組織、人材、予算等あらゆる資源を投入してさらなる
抜本的な対策を講じ、国際社会と国民の不安を一刻も早く取り除くよう強く求
め、その進捗状況を自ら国民に公表することが必要です。
また、除染については、汚染物質を除去することはできず、移転するにすぎ
ないこと等その本質的限界を踏まえた、長期にわたる管理が必要です。
続いて、パネルディスカッションです。
コーディネーター:中下裕子委員、中川重徳委員
パネリスト:津田敏秀氏(岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)
今中哲司氏(京都大学原子炉実験所助教)
西尾正道氏(独立行政法人国立病院機構
北海道がんセンター名誉院長)
足立修一委員(広島弁護士会)
以下の事項について、議論がなされました。
1、 避難指示の基準である年間20ミリシーベルトについて、低線量被ばく
のリスクをあまり考えなくてよいということでしょうか。
(津田氏)
科学は、まず仮説から出発し、そこから観察・実験によるデータを分析し、そ
こから法則を立てていきます。医師は、「観察・実験」の部分が中心です。
しかし、原因と結果は医師が観察できますが、因果関係は、直接観察できませ
ん。データからの分析が必要です。その時には、この病気は、要因Aのある人
はそうでない人の何倍多発しているか、を主に見ていく。データが多いほど正
確に予測できる。
「観察」の世界(必ずしも正規分布に従うとは限らない)と「概念(理論)」の
世界をつなぐのが統計学。95%の信頼区間、あるいは90%の信頼区間を採
用することが多い。
日本政府の見解「しかしながら、ガンリスクの推定に用いる疫学的方法は、お
よそ100ミリシーベルトまでの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにす
る力を持たないという一般的含意がある」
これは、広島・長崎のデータを「根拠」にしたものであるが、そもそもこのデ
ータは、今日ではサンプル数が少ないものとみなされている。例えば被ばく者
- 5. 5
比較し、統計的に優位な差が観察された。
(西尾氏)
現状は多発とまでは言えないと考えている。1000人に1人でも、全く多
いとは思っていない。生涯で見ると2人に1人はガンになる時代で、5000
人に1人では多いとは思わない。高校生で3000人に一人発見されていると
いうデータもある。
健康管理調査を十分にやるべきであり、それなしで数字だけ指摘してもあま
り意味はない。登録しているごく一部の人だけで調査すると不正確な数字にな
ってしまう。
(今中氏)
私は医師でないのでガン自体はよく分からない。しかし、チェルノブイリの経
験からすると、福島健康管理調査で、「チェルノブイリに比べて早すぎる。これ
は原発事故によるがんでない」という結論が出たのを見て、吹き出してしまっ
た。チェルノブイリのとき、西側メディアでは「広島に比べて早すぎる。これ
は原発事故によるがんでない」という指摘が出た。これが山下氏の発言。
(津田氏、西尾氏への反論を促され)
私としては、観察されたデータを見ない限り発言できない。1000人に1人
という場合、ほとんどは大人。今、問題にしているのは、子どもたちの話。今
後の対策を考えるにあたって、多発傾向を認識しておくのは重要。
3、 県民健康管理調査について
(今中氏)
2011年5月ころの構想だが、本来ならこれは国が責任を持ってやるべき仕
事。福島県の事業なので、福島県でしかやっていない。栃木、宮城、それに東
京などを対象とすべき。それによって十分なデータが得られる。
(西尾氏)
診断学が進歩して、2~3センチのほう腫でないと分からなかったのが数ミリ
で分かるようになっている。いろいろなデータも出るようになっている。チェ
ルノブイリの現実も慢性疾患がたくさん増えている。そうしたチェックがなさ
れていない。十年二十年続く健康対策が、福島でしか行われないのでは、健康
管理ができない。厚労省が健康管理を環境省に丸投げしているので、診療報酬