重症熱傷患者さんが、受傷から各地域の病院を経由して当院に転送されてくるまでの時間について調査しました。 平時だけでなく、大規模災害時の広域搬送の参考にもなると思います。 2016年2月6日に三重県津市開催された、日本熱傷学会東海地方会で発表しました。

1. 救命救急センターを経由して
当院に転送された
重症熱傷患者
についての検討
JCHO 中京病院 救急科
黒木雄一 上山昌史 大須賀章倫 中島紳史
宮尾大樹 松浦裕司 大西伸也 米田和宏

2. 背景
• 当院は東海地方各地から多くの重症熱傷患者を受け入れている
• 受傷から当院搬入までの時間は，当院までの距離以外に，各地域
における救急医療体制による影響を受けると考えられる

3. 目的
• 他施設から当院に転送された重症熱傷患者の受傷から当院
搬入までの時間について地域別に集計し検討する
• 救命救急センターを経由した場合と経由しない場合（主に
2次病院）とを比較検討する

4. 対象と方法
•2001年から2014年の14年間に他施設から当院に転送された重症
熱傷（TBSA≧15%または気道熱傷合併）患者365例を対象とした．
• 診療録をもとに，受傷から当院搬入までの時間を調査し，比較検討
した．

5. 愛知
224
三重
104
岐阜
25
滋賀
2
静岡
7
＜転送患者数地域別内訳2001-2014＞
他，大阪1，岡山1，秋田1

6. TBSA（%）
EC経由 EC非経由 P value
愛知 30 [8-45] 18 [5-31] 0.016
三重 30 [17-41] 32 [24-48] 0.357
岐阜 30 [18-30] 24 [17-30] 0.822
静岡 58 [46-63] 44 [37-50] 0.439
全体 30 [15-42] 22 [10-36] 0.025
値は中央値[IQR]

7. PBI
EC経由 EC非経由 P value
愛知 70 [48-98] 71 [43-88] 0.207
三重 79 [54-96] 89 [67-108] 0.128
岐阜 80 [48-106] 52 [27-98] 0.471
静岡 111 [87-129] 67 [61-74] 0.245
全体 74 [46-96] 76 [50-101] 0.441
値は中央値[IQR]

8. 気道熱傷合併率
EC経由 EC非経由 P value
愛知 62% 64% 0.782
三重 58% 50% 0.43
岐阜 46% 30% 0.678
静岡 40% 50% 1
全体 58% 57% 0.915

9. 転送前気管挿管率
EC経由 EC非経由 P value
愛知 49% 9% <0.001
三重 46% 28% 0.069
岐阜 46% 10% 0.088
静岡 80% 50% 1
全体 48% 15% <0.001

10. 受傷場所から当院までの距離(km)
EC経由 EC非経由 P value
愛知 22 [16-33] 18 [9-28] 0.001
三重 42 [42-64] 81 [43-106] 0.038
岐阜 60 [49-165] 47 [42-52] 0.007
静岡 101 [101-132] 155 [143-167] 0.219
全体 33 [22-46] 26 [12-50] 0.003
値は中央値[IQR]

11. 受傷場所から当院までの距離(km)
EC経由 EC非経由 P value
愛知 22 [16-33] 18 [9-28] 0.001
三重 42 [42-64] 81 [43-106] 0.038
岐阜 60 [49-165] 47 [42-52] 0.007
静岡 101 [101-132] 155 [143-167] 0.219
全体 33 [22-46] 26 [12-50] 0.003
値は中央値[IQR]
愛知や岐阜とは逆に，三重においては，
2次病院のほうが遠距離であった

12. ヘリ搬送率
EC経由 EC非経由 P value
愛知 7% 3% 0.247
三重 59% 42% 0.111
岐阜 40% 20% 0.402
静岡 80% 50% 1
全体 28% 15% 0.002

13. 受傷から当院搬入完了までの時間（hr）
EC経由 EC非経由 P value
愛知 3.6 [2.2-5.6] 2.4 [1.5-4.2] 0.001
三重 5.0 [3.7-16.5] 12.6 [2.9-40.1] 0.419
岐阜 6.7 [3.5-28.9] 4.1 [2.3-9.3] 0.267
静岡 16.6 [6.6-41.5] 6.7 [4.6-8.7] 0.245
全体 4.1 [2.7-11.9] 2.8 [1.8-10.4] 0.001
値は中央値[IQR]

14. 0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=92
2006-10
n=78
2011-14
n=54
EC経由率_愛知
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=40
2006-10
n=32
2011-14
n=32
EC経由率_三重
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=14
2006-10
n=4
2011-14
n=7
EC経由率_岐阜
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=1
2006-10
n=5
2011-14
n=1
EC経由率_静岡
EC経由 EC非経由

15. 0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=92
2006-10
n=78
2011-14
n=54
EC経由率_愛知
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=40
2006-10
n=32
2011-14
n=32
EC経由率_三重
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=14
2006-10
n=4
2011-14
n=7
EC経由率_岐阜
EC経由 EC非経由
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2001-5
n=1
2006-10
n=5
2011-14
n=1
EC経由率_静岡
EC経由 EC非経由
特に三重ではEC経由率
が年々増加している

16. 考察
特に三重において，5年ほど前までは，遠方の2次
病院が，広範囲熱傷患者を，救命救急センターの
手を借りずに，苦労して転送していた状況があっ
たが，近年は救命救急センターへの集約化が進
み，状況は改善してきているように思われる．

17. 結語
• 特に三重において，重症熱傷患者の救命救急センターへの集約化
が進んでいた
• 送り手と受け手がさらに連携を密にし，治療面や安全面において
ベストな転送のタイミングを，今後も検討し続ける必要がある