ロッキー・フラッツ兵器工場によるプルトニウム汚染と健康被害
- 2. 彼は汚染地域を、
地表地域を、
地表土のプルトニウム汚染度に従って、
3つに分けた。
地域Ⅰはプルトニウム濃度が1850-29.
6ベクレル/m2の地域
(人口約 15 万人)
、
地域Ⅱは29.6-1.4ベクレル/m2の地域(人口約 19 万人)、地域Ⅲは1.4-
0.
37ベクレル/m2の地域
(人口約 25 万人) そして、
。
同じデンバー地区内にある、
汚染が0.37ベクレル/m2以下の地域Ⅳ(人口約 42 万人)と比較した。
1969、1970、1971 の 3 年間、すべてのガンを合計した発ガン率をみると、地域Ⅳを
対照とした場合、
地域Ⅰ、 Ⅲに住む白人男性の発ガン率を見ると、
Ⅱ、
それぞれ 24%、
15%、
8%高かった。女性では、同じ地域について、それぞれ 10%、5%、4%高いという値が
得られた。地域Ⅳは、州全体の発ガン率と統計的に有意の差がなかった。
個別のガンの種類別にみると、肺・気管支ガン、白血病、リンパ腫、骨髄腫、睾丸・
卵巣ガン、消化器ガンなど、ほとんどすべてのガンの発生率の増加が認められた。1969
年―1971 年の 3 年間で、地域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの人口に「統計的に予測されるガン」のケースは
5747 件であるのに対して、実際には 6248 件が観測され、501 の「過剰のガン」があっ
たと推測された。そのうち、とくに罹患者が多く顕著なのは、肺ガン(過剰数 121、24%
増)、直腸および結腸ガン(過剰数 141、22%増)、などであった。
この傾向は、その後も引き続き観測され、1975 年の調査でも、白血病や肺ガンの死亡
率の異常が確認されている。
ロ核兵器産業の中央駅ロッキーフラッツ
春名幹男『ヒバクシャ・イン・USA』P.79~81
- 3. ジョンソン博士は、1976 年 8 月 6 日号の科学誌『サイエンス』に掲載された地質調査
局(USGS)の二人の学者との合同論文で、ロッキーフラッツ工場の東 2.4 キロなど
の地点で、
コロラド州の平均を最高 2000 倍も上回るプルトニウムが検出されたことを明
らかにした。
多いガン発生
博士は“雑音”に惑わされることなくこの問題の追及を続け、
アメリカ国立
ガン研究所から10万ドルの研究費助成を受けて、ガン発生との関連をまとめた。
1969~71 年の全米ガン調査の結果を基に、①ロッキーフラッツ工場から3~21 キロ帯に
住む白人の人口約 15 万人(地表のプルトニウム汚染度は1平方キロ当たり 0.8~40 ミリ
キュリー) ②その外側の 21~29 キロ帯・約 19 万人
、
(同 0.2~0.8 ミリキュリー) ③29~35
、
キロ帯・約 25 万人(同 0.1~0.2 ミリキュリー)、④35 キロ以遠・約 42 万人(同 0.1 ミ
リキュリー以下)-の 4 地域に分け、白人の住民だけを対象に調べた結果、白血病や肺
ガンなどあらゆる種類のガン発生率はコロラド州全域に比較して、①地域は男性 24%・
女性 10%(男女合わせて 16%)高く、②地域は同じ順に 15%・5%(10%)、③地域で
は 8%・4%(6%)-といずれも高いことがわかった。この研究報告はスウェーデン王
立科学アカデミー誌『アンビオ』の 1981 年第 4 号に掲載された。
プルトニウム汚染の原因は何か。ジョンソン博士は、ロッキーフラッツ工場の排気筒
に取り付けられた5枚重ねの”高性能“フィルター(HEPA)では、直径 0.3 ミクロン以
下の粒子は外に漏れ、しかも工場内から出るプルトニウム粒子の半数は 0.1 ミクロン以
下であるためだ、と指摘している。このためエネルギー省が常時観測している全米 51 の
測定所のうちロッキーフラッツ周辺の大気のプルトニウム濃度は常に最高で、1970~77
年の平均ではニューヨーク市の 70 倍近くにのぼっている。
それ以上に、1957 年と 69 年に起きた火災によるプルトニウム漏れの方が深刻だった