就職活動

1. アナーキーシナリオによるグローバリゼーションの
終わり方
―「論理の圧縮」がもたらすものはなにか―

2. 著者紹介
櫻井公人（さくらい きみひと）
・現立教大学経済学部経済政策学科教授
研究分野：国際関係論、応用経済学、経済政策
主な報告
・「お金儲けの鉄則その３について―少しは顔の見え
る国際政治経済学」（2004）
・「アメリカ資本主義信頼の危機」(2003)

3. はじめに
グローバリゼーション
今日における重要問題を指示する用語
多次元的な性格をもつ
何が指示され、どう論じられるかを鳥瞰的に把握することが重要
グローバリゼーションについての理解
ある次元に適合的な学問的スタイルでアプローチ
全体像のうちの一部分だけをとらえて誇張してはいけない
→多次元性、グローバリゼーション過程の複合性に留意する
現代における重要な問題がいずれの論点と関わるか個々に検討
グローバリゼーションの表と裏、グローバリゼーションと反グローバリゼーションとの
相克をどう理解すべきか
人の移動と文化変容を理解するために必要な、グローバリゼーション研究における
諸論点について検討課題を明確化

4. １.グローバリゼーションの終わり方と「破綻国家」（１）
• 19世紀のグローバリゼーション（第一期グローバリゼーション）
↓ 激しい反動
20世紀に崩壊
一度グローバリゼーションの終わり方を経験している
1930～1970頃 20世紀の新たなシステムが形成
70～80年代 再びグローバリゼーション活発化
冷戦終結後～90年代 グローバリゼーション全面開花
→かつてのグローバリゼーションの終わり方と相同の傾向
①国内金融の好況とバブル経済、周辺諸国、発展途上諸国の資本移動
その反面、バブル経済の崩壊、通貨危機→グローバル・カジノの発生
②周辺国・発展途上国の放置
グローバル経済離脱・反動、大不況、民族問題「火薬庫」→世界大戦の要因

5. １.グローバリゼーションの終わり方と「破綻国家」（２）
グローバリゼーションの内実
国家の規制力放棄、ガバナンスの欠如の進展
↓
「非極」とアナーキーの世界
①第一期グローバリゼーションから学んだ1930～70年代の制度の解体
マネーの奔流抑制、国家的な保護によるグローバリズムの反動を抑えるはずだった
②周辺国における「破綻国家」の存在と放置
軍事行動がビジネスや経済の原理に従う
③周辺部からの移民問題
ユーロアラビアという移民労働者への依存
→高齢化の進展との対比で深刻な問題
「論理の逆転」「論理の圧縮」が周辺部の諸問題のヒント

6. 意図せざるギャンブラー
スティーガー
グローバリゼーション研究の問われるべき点
①不可避で非可逆的か
②その原動力、決定要因は何か
③古いのか新しいのか
④利益はスピルオーバーするのか、格差は広がるのか
⑤民主化は進むのか
⑥国家は退場しつつあるのか強化されるのか変容するのか
⑦アメリカ化と同一か、文化帝国主義があるのかどうか
マネーの急激な移動による成長と破綻のコントラスト
お金もうけの鉄則が支配する地域が広がる→誰もが意図せざるギャンブラー
「表」の展開→「効率」の向上 「裏」の側面→金融犯罪の促進
例）裁定取引

7. お金もうけの鉄則
• 三つの鉄則
• その１
• 安く買って高く売る
• その２
• 高く売って安くして買い戻す
• その３
• 新たな取引市場をつくりだしてその胴元になる
• 例）エンロン社
• 鉄則３に従うもうけ→市場を操作した試みが明るみにでて破綻。

8. 行列の原理
• 利益獲得のためには将来予測が肝心
しかし「結果」だけが重要で、その原因は何でもよいとする傾向
が増加。
因果関係における原因のスキップ、論理の圧縮、論理の逆転と
いった状況は見過ごされがち。
「行列の原理」
商品の内容を知らない消費者→評判の良い店は行列ができる
原因:良い商品 結果:行列
お店の経営者が行列をつくる→利益増加の可能性。
原因:良い商品？行列？
論理の逆転

9. その他いくつかの「禁じ手」と「誤発注」
• 市場の持つ有効な機能→リスクの顕在化
• 望ましくない状態や是正すべき危うい状況を警告
• 価格変動のために仕組まれたテロ事件（お金もうけ鉄則２）
→その理由は事故とみなされれば解決？
• 誤発注事件
• ライブドア株の空売り注文により高騰しても買い戻さざるを得
なかった
→暴落や高騰、原因が犯罪ではないことはきわめて好都合

10. おわりに
• グローバリゼーションにおける時空圧縮
→空間的な距離の圧縮
→地球上のどこかの出来事がさらに身近に
• グローバリゼーションの収束
• グローバル・カジノの問題とのつながり
• 放置された周辺地域の問題
• ここで論理の逆転→直接的なつながりが見えにくい
• 問題は放置されれば第二期のグローバリゼーションをア
ナーキーなシナリオで収束させかねない可能性を秘めてい
る点

11. 評価すべき点
・グローバリゼーションを人やお金の移動の視点から解明し、
研究をするにあたってのいくつかの問題点が明確にあげられて
いる。
疑問点
・さまざまな比喩で例えられているのは、かえって要旨が捉えに
くい？
・報告者の具体的な意見や解決策が述べられていない。