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WEB博物館作成方法マニュアル
- 1. WEB 博物館作成方法マニュアル 池田麻衣子・村田和代ゼミナール 0.初めに 私たちは龍谷ミュージアムに WEB 掲載による「インクルーシブミュージアム」を提案 した。この提案は龍谷ミュージアムの「大学博物館の枠を超え、街に開かれた仏教総合博 物館として仏教文化の普及に努める」という理念を達成することや博物館として「学びを 提供する施設」の役割を果たすため今まで排除されていた方々に学びを提供することを目 的としている。多様な対象者が学習できるように、多様な解説と支援教材を作成した。視 覚障がい者向けの音訳・音声ガイド・地域に根差した言葉・一般・やさしい日本語（外国 人向け・聴覚障がい者向け）・手話動画・多言語の 8 種類の解説とぬりえ・鑑賞ポイン ト・ポージング・クイズの４種類の支援教材を取り入れることで、より多くの方に博物館 を楽しんでもらえるようになると考える。インクルーシブミュージアムは龍谷ミュージア ムだけでなく日本の博物館でも実践可能だと考える。インクルーシブミュージアムで使用 した解説と支援教材の作成方法は以下の通りである。 １.音訳 対象者：視覚障がい者 今回作成した音訳は、視覚障がい者向けに龍谷ミュージアムオリジナルの解説に加え写 真の情報を入れた解説である。視覚障がい者を専門とする先生方の講演から、点字が読め ない視覚障がい者も多く、視覚障がい者は本や雑誌・写真集を読む際、音訳を用いること がわかった。解説そのものを知りたい方、写真の情報を知りたい方を対象に作成した。 音訳とは、読み手の解釈で感情を入れず、書いてあることをそのまま読むのが一般的で
- 2. ある。しかし、健常者であるゼミ生で実際に音訳ボランティアの方に作成して頂いた音訳 を聞いたところ、抑揚がなく単調で理解が難しいと感じた。そこで、視覚障がい者の方々 に抑揚無しの音訳と抑揚有りの音訳の２種類を聞き比べてもらい、聞きやすい音訳につい てコメントを頂いた。その結果、抑揚があり話すスピードは少しゆっくりである方が良い ことが明らかとなった。さらに、難しい言葉が出てきた際に考える時間が必要なため、一 時停止や戻り機能が付いていると便利であるという意見も得られた。 龍谷ミュージアムの仏像の解説では、文章と文章の間を空けることも意識し、47 秒で 161 字を読み上げた。（NHK アナウンサーのニュースの読み上げ速度は１分で 300 字程度） 【音訳作成チェックポイント】 （１）写真の情報も取り入れる（大きさ、形、色、など） （２）読み手の感情を入れない （３）書いていることをそのまま読んでいる（脚色しない） （４）抑揚をつける （５）ゆっくりとしたスピードで読む （６）音訳を一時停止や戻って聞くことができる機能がある ２.音声ガイド 対象者：仏教についてあまり知識を持たない方 聞いて理解できる解説を目指すため、オリジナルの解説の難しい語彙（専門用語など） はわかりやすい説明を付け加えた。聞きやすいように抑揚をつけゆっくり読み上げている。 【音声ガイド作成チェックポイント】 （１）難しい語彙の説明を付け加える （２）抑揚をつける （３）ゆっくりとしたスピードで読む ３.地域に根ざした言葉 対象者：地域の言葉に興味がある方 方言は標準語と比べるとインフォーマルやカジュアルなイメージがあるが、歴史的・文 化的に重要なものである。現在方言を保存する取り組みは各地で行われている。私たちは 龍谷ミュージアムで使用することで、京ことばの発音や言葉の保存に貢献できると考えた。
- 3. 文化を伝承し、方言の重要性を伝えていくために解説で方言を使用した。また、龍谷大学 学長（龍谷ミュージアム元館長）・学芸員の先生方へのインタビューや一般の方々へのア ンケートを行った。その結果、龍谷ミュージアムの理念の中にある「街に開かれた博物館」 とは地域に根差したものであるという意見も得られた。今回私たちは「2.音声ガイド」で 使用した原稿を京都の方言である京ことばで音声情報にして提供した。 4．一般人向け 対象者：仏教の知識を持たない一般の方向け 一般的に博物館の解説は博物館からの一方的な伝達であり、来館者の解説や展示品のへ の理解を促せるものではない。そのため、一般人向け解説の作成にあたり 10 代から 90 代 の方々に調査を行った。龍谷ミュージアムオリジナルの解説を読んでもらい、理解が困難 なところを挙げてもらった。調査結果として、読みや意味が難しい単語が多くあった。例 えば、仏坐像の解説では「結跏趺坐」「通肩」「螺髪」「漆喰」が難しいと共通して挙げ られた。龍谷ミュージアムオリジナルの解説では、結跏趺坐や通肩といった一部の漢字に のみルビが振られていたため、難しいという意見があった全ての漢字にルビを振った。加 えて、仏教用語などの意味が説明されていなかったため、語句の意味を補足するために脚 注を付けた。仏教の知識が無くとも理解できる文章になるように工夫した。専門用語が使 用されている解説を用いている場合、一般人向け解説を作成することは、より多くの人に 利用してもらうために効果的である。 【一般解説作成チェックポイント】 (1)なるべく多くの鑑賞者から解説の困難点について意見をもらい、それを反映させる。 (2)困難な読みの漢字にはルビをふる。 (3)専門用語には脚注をつける。 5.外国人向けやさしい日本語 対象者：少し日本語がわかる外国人、子供、高齢者 龍谷ミュージアムオリジナルの解説を基に、村田和代ゼミが作成した「やさしい日本語 ガイドブック」を参考にして改稿した。 【やさしい日本語を作る 12 個のルール】 ①難しい言葉を避け、簡単な語句を使う。