Web3で分散化社会は可能か
湯川鶴章
元新聞記者。在米20年して帰国。
ブログメディアTechWaveを創業し
編集長に。その後、フリーランス。と
きどきサラリーマン。性格はいいか
げん。
自己紹介
「私は政治と軍事を勉強する。そうすることで、私の子供たちは数学や哲学を学
ぶ自由を手にできるであろうから。私の子供たちは、数学や哲学、地理、歴史、
船の設計、航海術、ビジネス、農業を学ぶだろう。そうすることで、彼らの子供た
ちは、絵画や詩、音楽、建築、彫刻、タペストリー、陶芸を学ぶ権利を得ることが
できるであろうから」
ジョン・アダムズ第2代米国大統領
ジョン・アダムズ第2代米国大統領のビジョンは3世代では実
現できなかった。
でもAIが莫大な富を産むようになった。あとは社会全体にAI
を応用し、Web3でその富を分散させるだけ。ベーシックイン
カムより実現可能性が高いかもしれない
そのためには、個人にデータを戻し、個人が積極的にデータ
を共有するようになり、富を分散する仕組みが必要
①ブロックチェーンを中心とした技術的なパラダイム
②価値観変化でもある
SDGsなどともベースは同じ。
定義
インフラ技術の話。詳しい人しか分からない。
トランジスタ→情報化社会 予測できなかった
ぼくも分かりません
黄金期
•「今はテクノロジー業界の黄金期」(巨額クリプトファンドを立ち上げたベン
チャーキャピタリストのクリス・ディクソン氏)
•黄金期は、進化著しい技術、熱気、優秀な人材の参入
•前回の黄金期はInstagramなどの企業が誕生した2009年から11年。
•今はweb3の黄金時代。
1. Programmableなブロックチェーンは十分に進化している(技術)
2. 多種多様なアプリが数千万人のユーザーを獲得し始めた(先行事例)
3. 昨年から世界レベルの人材が大量にweb3に入ってきている(熱気)
今回の黄金期
熱気は日本にいると分かりづらい
技術の進化
代替可能トークン(仮想通貨) あなたの1ビットコインと私のビットコ
インは交換可能
NFT(代替不可能) あなたの絵とわたしの絵は図柄が違うので、代
替できない
SBT(譲渡不可能) 運転免許証を他人にゆずっても使えない
SBTはWeb3過去最高のイノベーションの1つ
先行事例:NFT
•NFTは、本物であることを保証するデータ
•アーチストが食えるようになった
•投機の話は、無視してOK
•証明書に利用可能
先行事例:メタバース
•「3次元仮想空間」「ネットとリアルの主従逆転」の2つの定義
•「3次元仮想空間」は、ゲーム、訓練、教育が有望
•一般的なコミュニケーションツールになるのには、10年以上かかる
•「ネットとリアルの主従逆転」は、リモート勤務の会社で既に起こってい
る。今後、Web3関連技術がDXの主流に
先行事例:X to Earn
遊べば遊ぶほど稼げる:play to earnのAxie Infinity
動けば動くほど稼げる:move to earnのStepN
X to Earn続々登場
Let Me Speak 勉強して稼ぐ learn to earn
Sleep Future よく寝て稼ぐ sleep to earn
Poppinland 健康的に食べて稼ぐ eat to earn
Classcoin 水を飲んで稼ぐ drink to earn
Mindland 瞑想して稼ぐ  mindfulness to earn
ビジネスモデルだいじょうぶ?
•マルチ商法?
•最初に入会したほうが得
•トークン価格が下落すると
ユーザーが逃げる
これまでのビジネスモデル
•コミュニティ
•AI
Web3
Web2
時間
ユーザーへ
提供する価値
トークン価格
伸び率
ネットワーク効果
AIの正のスパイラル
Web3企業のビジネスモデル
コミュニティ、AI につなげないNFT、メ
タバースは難しい
メタバース
NFT
Web3企業も結局目指しているところ
は、テック大手と同じ?
今のWeb3は確かにそうかも
今のWeb3は第一フェーズ(DeFi)
これからは第二フェーズ(DeSoc)
全体の1%のイノベーションもまだ起こっていない
から
情報化社会で言うと、まだトラン
ジスタラジオも誕生していない
段階。ICチップ、PCの登場まで
情報化社会を想像できない
●Web3のオピニオンリーダー、ビタ
リック・ブテリン氏が9月に本を出
版
●「お金中心のWeb3」から「より平
等なWeb3」に
注目ポイント
ここからがWeb3の真髄。ユーザー
主導でしっかり保護された個人
データをAI が解析し、科学、技術、
経済が大きく発展
結論
Decentralized Society:Finding
Web3’s Soul
参考資料
Soul Bound Token
(SBT、譲渡不可能トークン)
• 個人は社会が交差するところに出現し、社会は個人が交差するところに出現する(ゲオルク・ジンメル)
• SBTは、卒業証書、社員証、運転免許証、オンラインコース修了証、受賞歴、論文、ブログ記事、写真、アート作
品、履歴書
• SBTの数が増えてくると、まったく同じSBTを持っている人はほぼいないので、ソウル(ウォレット、アプリのこと)
を本人認証につかえる
• ペルソナごとにソウルを所有
• その人のスキル、所属するコミュニティが分かる 何がすごいの?
Soul Bound Token
(SBT、譲渡不可能トークン)
• 関係性を持つ2つのソウル(Ex:大学と卒業生)が同じSBT(卒業証書)を持つの
で、一方が誤って削除しても復元可能。
• ソウルを誤って削除しても、他のソウルですべてのSBTの復元が可能なので、
ソウルの復元も可能。
• 数字ではなく、関係性で本人を認証する時代
SBTが可能にする新しい経済の形
産業革命以来、ビジネスモデルは大量生産型、収益逓減型
Marco Isansiti, Karim R.Lakhani著
Competing in the Age of AI
インターネット普及以来、ビジネスモデルは収益逓増型
儲かる企業はどんどん儲かる
テック大手だけが成長
そのアンチテーゼがWeb3
Web3最大のポイントはコレ!
あらゆるデータの組み合わ
せが可能になり、Web 2と
は比較にならないレベルの
価値が創造される
ほんとにそんなことができるのか
•「個人情報はなるべく出さない」から「積極的に共有する」に変
わるのか
•富を分散化できるのか
一般ユーザーが積極的に個人データを
共有するようになるためには
•セキュリティ
•インセンティブ
•社会貢献
社会貢献(科学・技術)
• 地球上のほとんどの人が、食事、運動、睡眠、ライフスタイル、DNAなど
のデータを提供し、癌になったかどうかのデータを合わせて解析できるよ
うになれば、癌を撲滅できるかもしれない」(データ共有を促進するボラン
ティア団体OpenMined)
• 痴呆、うつ病、幸福感などに関する研究開発が大幅に進歩する
社会貢献(経済)
• 経済全体の成長曲線が、テック大手
の成長曲線を超える!?
• 富は、少数の企業や人が独占するの
ではなく、データ提供料として一般
ユーザーで分配
セキュリティ
•ソウル(SBTを格納するウォレットのようなアプリ)を複数用意する
•個人データは、手元のデバイス、信頼できるクラウドサービス、分散型ストレージ(InterPlanetary
File System)に保管。個人データのハッシュ値だけをオンチェーンに。
•SBTがどの情報を、どの程度、だれに、どれくらいの期間、共有するかを細かく設定
•ゼロ知識証明で、ハッシュ値から「山田さんは成人である」ことを証明できる。
•Garbled Circuitsは、集計者がいなくても、投票の結果だけを知ることができる。
•Designated-Verifier Proofで特定の人にだけ証明、verifiable delay functionで一定時間の間
だけ証明
インセンティブ
• トークン・インセンティブのパワフルさは、X2Eで証明された。
• 「米国の金融当局もブロックチェーンが過去の技術で最も安全で早く、低
コストなデータ転送システムであることに、既に気づいている」(One
River Asset Management社のEric Peter氏)「問題は当局がいつ採用
するか。IfではなくWhen。20年後とか、そんな先の話ではないと思う」
企業よりも消費者のほうが
データ共有に積極的
• 電子カルテの共通化はなかなか進まず
• データ銀行のコンソーシアムも全社様子見
• 遊園地で鉛筆、風船と引き換えに個人情報提出する消費者
分散化
DAOとは
• 非中央集権・自律型・組織
• 共通の目的のために集まったオンラインコミュニティで、運営のための投
票がブロックチェーン上に記録されるスマートコントラクトをベースに行わ
れる組織。
•ナカモト係数 過半数に達するのに、「明らかに独立した存在」
がいくつ必要なのか。筆頭株主が31%、次の株主が20%だ
と、ナカモト係数は2。
•ハーフィンダール・ハーシュアマン指数(HHI)。市場シェアを2
乗したものが、 10000にどれだけ近いか。
DAOの多様性を計測
DAO運営の技術「相関スコア」
• SBTをベースに、組織内の分散化がどの程度なのかを示す指標
• 運営幹部は男性中心?年齢層の高い人が多い?人種、地域、職とは?
最大派閥に牛耳られないように
• 幹部選挙は、一票の重さがSBTをベースに自動的に決まる。高齢者が多
いDAOでは、高齢者の票の重さが1.0以下になり、若者の票の重さが1.0
以上になる。多数派の票を軽くすることで、少数意見に耳を傾けることがで
きる組織になる。
• 性別、人種、地域、所得層などでも、多数派が力を持ち過ぎないようにす
る
忖度が起こらないように
• 出身校が同じだったり、共通の友人が多ければ忖度やエコひいきが起こ
りがち。人間の性質。
• 相関性が高く同じ選択肢に投票した人の票を軽くし、バックグラウンドが異
なるのに同じ意見の人の票を重くする。「相関性スコア」の計算式で、自動
的に重さを調整。
クワドラティック投票
• 選挙は一人一票。その人の熱意はカウントされない
• 株主総会は、一株一票。お金持ちが有利
• クワドラティック投票はその中間。熱意を重視し、お金を軽視
する
クワドラティック投票
• 一人の寄付額の平方根を集計したものの2乗した額の不足分を組織が補う
• 例えば自治体が、図書館と公民館の建設を計画。どれくらいの建設費を出す
べきか、住民にクワドラティック寄付で問う
• 図書館建設には10人が賛成。一人一ドルずつ寄付。一ドルの平方根は1。そ
れが10人なんで10ドル。その2乗は100ドルで、これが建設予算。住民から
10ドル集まったので、自治体は不足分の90ドルを支払う
•公民館建設には一人が賛成。10ドルを寄付。
•10ドルの平方根の2乗は10ドルなので、それが建設費。全部
住民の寄付で賄えれるので、自治体からの出資はなし。
•人数と熱意を汲み取る投票、寄付の方法
クワドラティック投票
•公民館賛成者が権力者なので、忖度して公民館建設に賛成する人
がいるかも。忖度ではなく、公民館賛成者が友人なので、単純に支
援したい場合も。そういう思いでクワドラティック投票が機能しなくな
る
•SBTで同じ案件に投票した人の相関を計測し、相関が高い人(同じ
大学の卒業生、仕事仲間)の票の重さを軽くする
クワドラティック投票の弱点
•メンバーの属性の変化に伴い、運営チームの構成が変化する
ように、あらかじめ設定可能
•多くのサブグループに属しているメンバーを運営チームに自動
的に推薦
DAOのリーダーを決める
SBTのそのほかの用途
Sybil Attack予防
• 一人が複数のウォレットを持って投票数を増やす手法
• SBTの数が極端に少ないソウルはあやしい。職歴など本人認証として価値
のあるSBTを持つソウルの票の重さを重くできる
• 社会的信頼のあるDAOが、新興DAOのために信頼できるメンバーであるこ
とを証明するSBTを発行
• 特定の案件で同じ選択肢に投票した複数のソウルの中身を確認し、同じよう
なSBTを持っている表の重さを軽くする
Soul Bound Tokenのその他の用途
• 作者に無断で作品のNFTを発行する詐欺の防止。本物のアーチストなら、美術学校卒業やコンテスト入賞の
SBTを持っている可能性が高くなる
• アーチシストがNFTではなくSBTを発行すれば、作品の価格、所有者の記録をソウルに保存し、公開できる
• フェイクニュース防止にも
• 融資の際のクレジットヒストリーの証明。AIでSBTを解析することで、返済能力を予測可能に。関係性をベースに
したコミュニティ内金融も。SBTの数が信用を担保する
秘密鍵保管にも
• シードフレーズ 「About」から「Zebra」まで2048個の単語の組み合わせ。12個なら 2048の12
乗、24個なら24乗。でも覚えるの大変。書き留めているとコピーされる
• マルチシグ 例えば3つの鍵のうち2つが揃えば解錠できる。失くす可能性
• ソーシャルリカバリ 複数の個人、組織に鍵の管理人になってもらう。結託、死亡の可能性
• コミュニティリカバリ ランダムに選ばれたSBTの発行人、組織に、鍵の再発行の判断になってもら
う。
コミュニティ活性化にソウルドロップ
• コミュニティの早期支援者への返礼として無償でトークンを配布するエアドロップ。トーク
ンを多く持つ人が多くもらえる。権力が集中する。エアドロップ目当ての人やボットが集ま
る。
• ソウルドロップは、勉強会に参加した人やコミュニティに貢献した人にSBTやPOAPを配
布し、それをベースに返礼の換金可能なトークンを配布。一定期間が経過すると売買可
能なNFTに変わるSBTを配布することも可能。
•バンパイアアタックは、オープンソースをいいことに後発企業がコードを丸
写して類似サービスを始める手法。2020年にSushiSwapがUniswapの
コードを丸写し
•移籍に応じなかったソウルにどうソウルドロップ。売却期間制限付きの
SBTを発行などが可能
•ウォレットは複数個持てるので、移籍したかどうか分からない
バンパイアアタックを防止
• 使用する権利(usus) 消費、破壊する権利(abusus)、利益を得る権利
(fructus)
• 社会が進化すれば、所有権が多様化する
• SBTで所有権を細かく設定可能。アクセス権、データ提供権、地域住民重
視の地域通貨、年齢以外の基準による選挙権、SALSA
• 不動産は個人のものでもあり、コミュニテイのものだでもあるという考え
方。
所有権の多様化
• ネットワークスタックの異なるレイヤーのソウルのSBTの相関性を計測す
る。投票履歴の相関性や、トークン所有数、ガバナンス関連のコミュニ
ケーション件数、コンピューティング資源などの相関性を計測することで、
レイヤーを超えてネットワーク全体の多様性を確認
Web3エコシステム全体の分散化
• 予測する仕組みは、①「予測市場」②「AI」
• ①「予測市場」 例:株式市場
• 予測市場は、勝者と敗者を作る。お金を多く賭けることができる人が未来を読めている
わけではない。
• ①'「チーム予測アンケート手法」 チームで情報共有、過去の成績やチームの評価で
票の重さが変動
• 実験では、チーム予測アンケート手法>予測市場>アンケート
• +クワドラティック投票で、リターンが2乗にする。情報共有のインセンティブが働く。
• SBTで、専門性を考慮に入れることができる
AIの進化
• GPT-3がSBTを考慮に入れて、専門性の高い人のテキストを重視
• 特定の分野に特化したAI
• どのデータを企業に提供するのかは消費者が決める。パワーバランスが
消費者に移行
• 巨大汎用AIから、無数の特化したAIへ
• 個人に特化したAI
• 個人に特化したAIが予測市場モデルに参加。予測市場モデルとAIが合体
AIの進化
本人認証の仕組みが誕生すれば
Web3サービスが爆発的に増え、分
散型社会の新しい基盤になる
①ブロックチェーンを中心とした技術的なパラダイム
②価値観変化でもある(この認識がどの程度かが重要)
個人の情報を共有し社会を発展させ、富を分
配する、という大きな流れ。逆らえない
「私は政治と軍事を勉強する。そうすることで、私の子供たちは数学や哲学を学
ぶ自由を手にできるであろうから。私の子供たちは、数学や哲学、地理、歴史、
船の設計、航海術、ビジネス、農業を学ぶだろう。そうすることで、彼らの子供た
ちは、絵画や詩、音楽、建築、彫刻、タペストリー、陶芸を学ぶ権利を得ることが
できるであろうから」
ジョン・アダムズ第2代米国大統領
ジョン・アダムズ第2代米国大統領のビジョンは3世代では実
現できなかった。
AIが莫大な富を産むようになった。あとはWeb3でその富を分
散させるだけ。ベーシックインカムより実現可能性が高いかも
しれない

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