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サプライチェーンの強靭化と経済安全保障
- 3. 3 中国からの輸⼊途絶の⽇本経済への影響の シミュレーション ⽇本の100万社以上の企業と その詳細な取引先を含む 東京商⼯リサーチの データを利⽤ 輸⼊減の割合 40% 60% 80% シミュレーションによる中国からの輸⼊減による⽇本 の付加価値⽣産の減少額（対GDP⽐％） Sources: Inoue and Todo (2023), PLOS ONE. 中国からの輸⼊途絶の影響は国内サプライチェーンを通じて増幅 ⾮常に⼤きな効果・途絶レベルの⼩さな差が⼤きな差へ 途 絶 期 間
- 4. より上流の財の輸⼊途絶の効果は⼤きい 4 Based on Inoue and Todo (2023), PLOS ONE.
- 6. 6 地理的に多様なサプライチェーンは強靭 アメリカのハリケーン・サンディが サプライチェーンを通じて企業の売上に及ぼした影響 Kashiwagi, Todo, Matous (2021), Rev. Int. Econ. Analysis using firm-level data for publicly listed firms in the world. 海外企業とつながった 企業への影響は⼩さい サプライヤー・顧客企業 の代替が可能
- 7. 7 トップ３顧客企業の所在国数 トップ３サプライヤーの所在国数 ASEAN・インド企業のうち、 コロナ禍でも強靭だった企業の割合（％） 強靭な企業：ある取引先との取引が減少しても別の取引先との取引が増加 Todo et al. (2022), World Economy. 地理的に多様なサプライチェーンは強靭
- 8. 8 貿易データによる分析： より多様な国から中間財を輸⼊していた国の⽅が コロナ渦中の輸出の減少度が⼩さかった Ando and Hayakawa (2021), J. of Int. Trade and Econ. Dev. ⾃動⾞産業におけるサプライヤー国の多様化指標 タイ インドネシア ⽇ ドイツ ⽶ フィリピン シンガポール マレーシア 地理的に多様なサプライチェーンは強靭 英 中
- 10. 10 Source: UN Comtrade. 3-month moving averages. ⽇中・⽶中貿易は2021年後半以降減少傾向 Japan to China China to Japan US to China (right scale) China to US
- 11. 11 とはいえ、特定品⽬の輸⼊では ⽇本の中国依存度は⼤きい 電気・電⼦機器 ⾃動⾞部品 Source: UN Comtrade. 3-month moving averages. 中国のシェア 中国のシェア
- 12. 12 アメリカの中国依存度は減少傾向 Source: UN Comtrade. 3-month moving averages. 電気・電⼦機器 ⾃動⾞部品 中国のシェア 中国のシェア
- 13. 13 半導体関連品⽬の輸出 アメリカから中国は減少 ⽇本から中国は⽐較的減少幅が⼩さい Source: UN Comtrade. 3-month moving averages. 半導体製造装置 集積回路 半導体製造装置 集積回路
- 14. ⽇本から中国への電機・電⼦関連の直接投資は 減少傾向・ASEANへは増加傾向だが、⼤幅ではない 14 製造業総計 電気・電⼦機器 Source: Bank of Japan. 2023年の数字は第1・2四半期×2．
- 16. 現状の要約 • ⽇⽶から中国への輸出は⼤幅に減少 経済的利益の損失（⼤きすぎる？） • 半導体関連の⽇⽶から中国への輸出は減少 経済安保の強化（アメリカ並みにもっと必要？） • ⽇本は電気・電⼦機器や⾃動⾞部品で中国からの輸⼊に ⼤きく依存・ASEANへの代替も進んでいない サプライチェーンの強靭化・経済安保の強化が不⼗分 16 改善必要
- 17. 過度な国内回帰の問題点 17 南海トラフ地震の経済被害のシミュレーション Inoue and Todo (2019) Nature Sustainability ● ⼤幅な⽣産減の企業 • 経済的効率性の損失 企業は⽣産・販売拠点を世界に効率よく配置すること で発展してきた • 国内にもサプライチェーン途絶のリスクはある
- 19. 政策提⾔（1）：フレンドショアリング • 強靭化のため、友好国間でサプライチェーンを 多様化し、中国への依存度を減らす – 欧⽶だけではなく、グローバルサウスにも – 障害 • ⺠間企業の低いリスク認識： 政府による情報共有必要 • 海外企業の情報⼊⼿のコスト： IPEFなどを使った情報共有システム構築 19
- 20. 政策提⾔(2): グローバルサウスとのフレンドショアリング • ⽇本にとっての利益 – コストの低い⽣産・調達拠点 – 近い将来の巨⼤市場へのアクセス確保 • 障害 – ⻄側と中国とのバランスを取りたいグローバルサウス – グローバルサウスにとって経済的利益が不⼗分・ 様々な制約 20
- 21. 政策提⾔(2): グローバルサウスとのフレンドショアリング • ⻄側諸国が協⼒することで、 グローバルサウスにより⼤きな経済的利益を供与 – ⺠間投資 – インフラ構築 – 技術協⼒：⽇本の新しいODA憲章 • 政治的・経済的制度の差異に柔軟に対応 – 中⻑期的に政治的・経済的⾃由を求めていくにしても、 急速な変化を求めない – 環境、⼈権問題、労働問題についても同様 – ⽇本の役割：欧⽶とグローバルサウスとの懸け橋 21
- 22. ２国間貿易と政治的制度（⺠主化度合い）の差異の 負の相関 22 Country pairs between OECD countries and their partners; 2010-22 Sources: UN Comtrade, V-Dem Note: Changes by 1 in logs roughly mean changes by 100% in raw values.
- 23. 23 Sources: UN Comtrade, V-Dem ⽇本との貿易 (2022) アメリカとの貿易 (2022) ２国間貿易と政治的制度（⺠主化度合い）の差異の 負の相関は、アメリカより⽇本の⽅が弱い
- 24. 24 Country pairs between OECD countries and their partners; 2010-22 Sources: UN Comtrade, Heritage Foundation ２国間貿易と経済的制度（所有権等）の差異の 負の相関
- 25. 政策提⾔（３）："Small yard, high fence" （限定的な品⽬に⾼い規制を）のルールの明確化 貿易・投資規制の対象品⽬は拡⼤中 25 ⽇本の対中輸出（品⽬別） Sources: UN Comtrade ⺠間企業は過剰反応 しているのかも 政府は対象品⽬を 透明で予測可能な ルールで決定すべき 重要品⽬と⾮重要品⽬の対中輸出は 同様に減少
- 26. 政策提⾔（４）：知的フレンドショアリング 多様化した知的ネットワークはイノベーティブ 26 友好国間での共同研究は促進されるべき イノベーションの質を表す特許引⽤数に対する 共同研究の効果 国際共同研究 国内共同研究 Iino, Inoue, Saito, Todo (2021), Jap. Econ. Rev.
- 27. Source: OECD Science, Technology and Innovation Scoreboard ⽇本の国際共同研究は活発でない 特許申請数における国際共同出願の シェア（2017年）
- 28. • 情報共有（G7, IPEFなどの国際的枠組みを利⽤） • 国際共同研究に対する資⾦援助（例えばHorizon Europe） 28 Recent project by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) https://www.tia-nano.jp/data/doc/1635482975_doc_66_0.pdf 国際共同研究を促進する政策
- 29. イノベーションはサプライチェーンの強靭化にも 経済的威圧に対抗するためにも必須 29 Source: UN Comtrade (HS codes 280530 and 2846) 2010年中国の対⽇レアアース輸出規制⽇本は中国依存縮⼩ • ベトナム・タイ・オーストラリアなどでの鉱⼭開発 • レアアースを利⽤しない代替技術の開発 ⽇本のレアアース輸⼊ 総輸⼊額 https://global.toyota/en/newsroom/corporate/21139684.html 中国のシェア トヨタによる代替技術開発の例
- 30. まとめ • 中国との貿易途絶リスクへの対応必要だが、 現状は必ずしも⼗分ではない • フレンドショアリングの拡⼤ 強靭化 – 企業のリスク認識、情報⾯で政策の役割 – グローバルサウスへの拡⼤にも政策対応必要 • 知的フレンドショアリングの拡⼤ – 友好国との知的連携でイノベーション拡⼤ サプライチェーン強靭化・安全保障に貢献 30