誘惑のマネジメント
ゼミナール形式での議論と学びの一風景
東北学院大学 経営学部
尾田 基
2016/7/30Hajime Oda1
2016年7月30日
東北学院大学 オープンキャンパス
経営学部 模擬講義 配付用資料
ゼミナールでの学修の紹介
2016/7/30Hajime Oda2
 ゼミナール(seminar,独語)
 教員と学生との少人数・双方向
型の授業形式
 3年生・4年生の2年間を同じゼ
ミで過ごす
 2016年度尾田のゼミでは
4年生ゼミに12名,
3年生ゼミに14名が所属
 この他,経営学部では
1年生向け科目
「読解・作文の技法」,
2年生向け科目
「研究・発表の技法」も
半期のゼミ形式の少人数科目
 輪読
 ゼミの全員で同じ本を読み進めなが
ら,疑問点や事例を出し合って読み
深めていく作業。
 2016年度の前期は Richard H. Thaler
and Cass R. Sunstein (2008), Nudge:
Improving Decisions About Health,
Wealth, and Happiness, Yale University
Press(遠藤真美訳(2009)『実践
行動経済学』日経BP社)を読んだ。
 うちのゼミでは4つのグループに分
かれて,
①スライドを用いた内容発表班,
②質問と別の事例の検討班,
③階層レジュメ(個人ワーク)
④要約レジュメ(個人ワーク)
を順々に行っている。
誘惑のマネジメント?
2016/7/30Hajime Oda3
 人間の弱さ(誘惑,惰性,熟慮の限界・・・)を踏まえた
上で,適切な選択肢を設計すること
 「セイラーは友人をディナーに招き,一本目のワインの
つまみに大きなボウル一杯のカシューナッツを出した。
何分もしないうちに,ボウル一杯のナッツがすべてたい
らげられてしまいそうなこと,そうすればナッツでお腹
がふくれてその後に出される食事をすべて食べられそう
にないこと・・・(中略)・・・セイラーはボウルをつかむと
キッチンに片付けた。セイラーが戻ると,ゲストはナッ
ツを片付けてくれたことに感謝した。」
動学的不整合な選好
2016/7/30Hajime Oda4
 動学的不整合:ある2つの時点間で,選好(取りたい
と思う行動)が異なるような状況
選択肢A
ナッツを食べる
選択肢B
ナッツを食べない
選択肢A
ナッツを食べる
選択肢B
ナッツを食べない
1本目の
ワインを
飲んでいる時
ディナー
が運ばれて
きたとき
時間の流れ
ゼミ生からの質問
2016/7/30Hajime Oda5
 「スーパーに行ったら元々買う予定でないものを
買った。この状態は動学的不整合か?」
選択肢A
選択肢B
スーパーに
行く前
時間の流れ
選択肢A
選択肢B
選択肢C
選択肢A
選択肢B
選択肢C
スーパーで
買い物中
帰宅後
選択肢A
選択肢B
スーパーに
行く前
時間の流れ
選択肢A
選択肢B
選択肢A
選択肢B
スーパーで
買い物中
帰宅後
Case 1:動学的不整合な場合 Case 2:不整合でない場合
誘惑のマネジメント?
→人間の弱さを踏まえた選択肢の設計
2016/7/30Hajime Oda6
 「選択肢が多ければ多いほど人々は最善の選択肢を
選ぶことができるはず」というのが一般的な経済学
の考え方
 心理学や行動経済学の知見を踏まえて,時として選
択肢を絞ることが,人々の幸福につながる
リバタリアン・パターナリズム
2016/7/30Hajime Oda7
 リバタリアニズム
(libertarianism)
 選択の自由を重視する考え
方やその考え方を持つ人々
 パターナリズム
(paternalism)
 人々の暮らしが良くなるよ
うに(選択肢を絞って)政
府は誘導すべきだ,と考え
る
リバタリアン・パターナリズム
 人々がもし熟慮していたら選ばなかったであろう失敗に
対して介入する
 介入は低コストでかつ,強制的では無い形式で行われる
(設計者の介入を人々は拒否することもできる)
選択肢の絞り方の具体例
逃げ回る目覚まし時計 旅行積立
2016/7/30Hajime Oda8
 旅行会社に毎月一定額
を積み立てる
 積み立てたお金はその
会社の旅行プランにし
か使えないが,普通の
銀行の定期預金に積み
立てるよりは得な利率
選択肢の絞り方:ゼミ生の考えた具体例
2016/7/30Hajime Oda9
 小学生がお年玉をすぐに使ってしまわないように
お母さんに預けておく
 ゼミでの議論
 お母さんが使ってしまわないか?
 引き出すときの条件は?翌日に引き出すのでは意味が無
いのでは?
 →良くない選択肢が確かに減るという確約が必要
Nudge 第1部 ナッジの諸条件
2016/7/30Hajime Oda10
 第1章 バイアスと誤謬 What
 第2章 「誘惑」の先回りをする Who 自分→他人
 第3章 言動は群れに従う Who 他人→自分
 第4章 ナッジはいつ必要なのか When,Where
 第5章 選択アーキテクチャー How
Nudge 各章のトピック
2016/7/30Hajime Oda11
 第6章 貯蓄
(特に退職貯蓄)
 第7章 投資
(年金の投資先の選択)
 第8章 借金
(住宅ローン,クレジッ
ト)
 第9章 社会保障制度
 第10章 薬剤給付プログ
ラム(メディケア・パー
トD)
 第11章 臓器提供者を増
やす
 第12章 環境問題
 第13章 結婚の民営化
Nudge いくつかのインサイト①
RECAP (Record, Evaluate, and Compare Alternative Prices)
2016/7/30Hajime Oda12
 RECAP
 事業者に標準化された
(他社と比較可能な)利
用明細の提供を義務づけ
る
 消費者はその明細書を元
に,他の企業との比較検
討を行う
 携帯料金プランの設定
 電力自由化後の電力会
社選び
 など,複雑なオプショ
ンのついた契約には効
果的
いくつかのインサイト② 臓器提供における
デフォルト(既定)の選択肢の設計
2016/7/30Hajime Oda13
 ①ルーティン的摘出:死亡時に臓器の所有権が国家
に移転する(全て臓器提供される)
 ②推定同意:明確な拒絶の意思表示がない限り,原
則として臓器提供に同意していることとする
 ③明示的同意:明示的に臓器提供に同意している場
合のみ,臓器提供される
 ④強制的選択:運転免許の交付時に,臓器提供に同
意するかしないかを強制的に選択させる
Nudge いくつかのインサイト③
確定拠出型年金のプラン選択の構造化例
2016/7/30Hajime Oda14
金融についての知
識の程度に応じて,
選択肢の幅を変え
ることで,良い選
択への誘導と,選
択の自由を両立
デフォル
ト・プラ
ンを選ぶ
推奨されたプ
ランから選ぶ
デフォルト
プラン
推奨された
プラン
Yes
Yes
No
No
あらゆる
プラン
その他のゼミ活動
2016/7/30Hajime Oda15
 後輩ゼミ生の歓迎会
 グループワーク(別授業)による企業への戦略提案
 懇親会
 ゼミ合宿?卒業旅行?など
最後にすこしだけ宣伝
経営学部,24名の教員という選択肢の豊富さ
2016/7/30Hajime Oda16
企業の内部 企業の外部
お金で測れる アカウンティング(会計学)
• 小池和彰先生(租税論)
• 佐々木郁子先生(管理会計論)
• 高橋志朗先生(税務会計論)
• 山本展雅先生(国際会計論)
• 佐久間義浩先生(監査論)
• 松岡孝介先生(原価計算論)
• 山口朋泰先生(連結財務諸表論)
• 棚橋則子先生(財務諸表論)
ファイナンス(金融論)
• 根市一志先生(基礎統計)
• 松村尚彦先生(ファイナンス)
• 谷内正文先生(数量ファイナンス)
お金以外の要
素を含む
マネジメント(経営学)
• 岡田耕一郎先生(経営組織論)
• 折橋伸哉先生(経営管理論)
• 菅山真次先生(経営史)
• 鈴木好和先生(人的資源管理論)
• 村山貴俊先生(国際経営論)
• 矢口義教先生(企業倫理)
• 板橋慶明先生(経営心理学)
• 秋池篤先生(経営戦略論)
• 尾田基(製品開発論)
マーケティング(商学)
• 斎藤晋一先生(商品評価論)
• 斎藤善之先生(商業史)
• 山岡隆夫先生(流通論)
• 荻原丈男先生(サービス経営論)

誘惑のマネジメント(オープンキャンパス模擬講義)

Editor's Notes

  • #10 選択肢が確かに減ったという強制力がないといけない