勉強会で使った資料です。

1. データベース入門（第３回）

2. 前回のあらすじ。
データベースを使うためにはSQLという言葉を使います。
そのSQLにはDDL、DML、DCLといった種類がありました。
テーブルを作るときなどはDDLである、CREATE文なども使いますが、
データベースのテーブルの中のデータを操作するのに使うのは主に、
DMLである、SELECT、INSERT、UPDATE、DELETEでしょう。
そしてこれらと密接にかかわってくるのが、COMMIT、ROLLBACKなどの
DCLの存在です。
今日はこの、COMMITやROLLBACKによってできることを
ざっくりと、説明します。

3. トランザクションとは。

4. トランザクション。
そもそもトランザクションという言葉は、データベースの世界だけの言葉では
ありません。
いろいろな分野で、トランザクションという単語が使われています。
今回のトランザクションというのは、あくまで
「データベースの世界」に閉じた話だということを頭の片隅に
置いていてください。
また、トランザクションにはロックという概念、
「鍵をかけてほかの人が触れないようにする」といった意味合いの言葉が
密接に絡んでくるのですが、この話も時間がかかるので割愛します。

5. トランザクションの定義。
データベースとしてのトランザクションの定義としては、おおまかに以下のよ
うに書くことができます。
１）複数のデータの登録や削除や更新をすべて有効なものとする（これを「コ
ミットする」といいます）、もしくはすべて無効なものとして元の状態に戻す
（これを「ロールバックする」といいます）といった、半分だけ登録されてい
るといった中途半端な状態にならないようにするための機能
２）ほかの人の操作からの影響を防ぐ（Aさんが編集中のデータをBさんは編
集できない、または見ることもできない）
２のほうは、データベースにかかわらず、ネットワーク共有フォルダのExcel
ファイルを複数人で開いたときのことを考えると、わかりやすいかもしれませ
ん。

6. 意味不明なので。
１）複数のデータの登録や削除や更新をすべて有効なものとする、もしくはす
べて無効なものとして元の状態に戻す
というのは、
Aさん「トランザクション開始！」
Aさん「１のデータをデータベースに登録したよ！」
Aさん「２のデータを消したよ！」
Aさん「トランザクション完了！（コミット！）」
⇒こうすると、１のデータが登録され、２のデータが削除された状態で確定に
なります。
つまり、Excelなどで考えれば、いろいろ書いて、シートも１つ消して、保存
ボタン押してExcelを終了したら、書いた内容は保存されていて、削除した
シートもなくなっている状態になっているということです。

7. 意味不明なので。
１）もしくはすべて無効なものとして元の状態に戻す
というのは、
Aさん「トランザクション開始！」
Aさん「１のデータをデータベースに登録したよ！」
Aさん「２のデータを消したよ！」
Aさん「やっぱやめ！（ロールバック！）」
⇒こうすると、１のデータは登録されず、２のデータも削除されていない状態
に戻った状態になります。
つまり、Excelなどで考えれば、いろいろ書いて、シートも１つ消したけど、
保存しないでExcelを終了しちゃったら、書いた内容はなくなっちゃうし、
シートも削除されていない状態に戻っちゃう、ということです。

8. 意味不明なので。
２）ほかの人の操作からの影響を防ぐ（Aさんが編集中のデータをBさんは編
集できない、または見ることもできない）
というのは、
Aさん「トランザクション開始！」
Aさん「１のデータを変更したよ！」
Bさん「１のデータを見よう！でもなんか変更できない！」
Bさん「なら、２のデータを見よう！みれた！」
Aさん「２のデータを消したよ！」
Aさん「トランザクション完了！（コミット）」
Bさん「もう一度検索しよう。あれ？１のデータが変わってる？」
Bさん「あれ？２のデータがない！」
⇒このように、１のデータは変更され、２のデータは削除された状態になりますが、A
さんがトランザクションを完了（コミット）した場合は、Bさんは開いているときは見
えたままですが、SELECTを再実行すると変更後の状態が見えるようになります。

9. よくある説明。
トランザクションの説明でよく出てくる例が、銀行の口座振込みの例です。
例えば、Aさんの口座からBさんの口座に、５０万円を振り込みました、
って時の場合、Aさんの口座から50万円引くのは正常に終わったけど、
Bさんの口座に５０万円移すときに障害が起こって、Bさんの口座には５０万
円は入らなかった。。。。Aさんは大損ですね。

10. それをなくすためには。
この振込みをする前に、
「トランザクション開始！」と叫んでみましょう。
「Aさんの口座からの引落⇒Bさんの口座への入金」という一連の流れを
トランザクションのなかで行うということです。
そうすれば、Bさんに入金失敗しても、魔法の呪文「ロールバック！」を唱え
れば、Aさんの口座にはお金が戻ってきます。

11. ACID特性。
ちょっと難しい言葉と話になりますが、
トランザクションはACID特性を持っています。
Atomicity（原子性）：トランザクションは実行が完了するか、あるいはまっ
たく実行されないかのどちらかとなる
Consistency（整合性）：トランザクションの開始と終了時には、データベー
スは整合性を保った状態となっている
Isolation（分離性）：トランザクションは別のトランザクションの影響を受け
ない
Durability（持続性）：トランザクションが正常に完了し、変更が確定された
データは確実に保持される
先ほどの銀行口座のお話も、これらを満たしていると、正しく処理が行われる
ことになります。

12. ACID特性。
・原子性
もし２の処理を行った時点でトランザクションが終了した場合、Ａさんの口座から
1000円が引かれただけの状態になってしまいます。原子性はこういった中途半端な状
態になることを防ぎます
・整合性
もし２の処理で間違ってＡさんの口座から20000円を引いてしまい、３の処理でＢさ
んに20000円正常に足してしまった場合、トランザクション終了時にＡさんはマイナ
スの残高となってしまいます。これはありえないので、正しくない状態になることを防
ぎます
1振り込み開始前 Aさんの口座１００００円、Bさんの口座５０００円
2Aさんの口座から１０００円引く Aさんの口座９０００円、Bさんの口座５０００円
3Bさんの口座に１０００円足す Aさんの口座９０００円、Bさんの口座６０００円

13. ACID特性。
・分離性
２の処理中に、Ａさんとは別にＣさんがＢさんの口座に1000円振り込んだ場合、Ｂさ
んの残高は6000円となります。それとは別に２の処理の後にＡさんの振込みの結果と
して、Ｂさんの残高を6000円で上書きしてしまうような状況が発生すると、本来はＣ
さんからの振込みが1000円、Ａさんからの振込みが1000円でＢさんの残高が7000
となるところが6000円になってしまいます。
分離性はこのようにトランザクションが別のトランザクションの影響を受けてしまうこ
とを防ぎます。
・持続性
完了したトランザクションが消失してしまった場合、どのトランザクションをやり直す
のか判別して再度やり直すのかを判別し、場合によっては再度実行する必要があります。
持続性は、完了したトランザクションの結果は消失するのを防ぎます。
1振り込み開始前 Aさんの口座１００００円、Bさんの口座５０００円
2Aさんの口座から１０００円引く Aさんの口座９０００円、Bさんの口座５０００円
3Bさんの口座に１０００円足す Aさんの口座９０００円、Bさんの口座６０００円

14. 出てくるコマンド。
トランザクションに関係するＳＱＬとしては、
トランザクションの開始と終了を自分で宣言する場合に使う、
BEGIN（TRANSACTION）、START TRANSACTION、
トランザクションを終了して変更などを確定するCOMMIT、
トランザクションを中止して変更などをなかったことにして元の状態に戻す
ROLLBACKなどがあります。
データベースの種類によってはトランザクション開始を宣言しなくても、
勝手に始まって、勝手に終了するものもあります。
勝手に始まる場合、暗黙のトランザクションといって、
裏でトランザクションが使われているような感じです。

15. コミットしたら確定して保存される。
Excelでも、保存ボタンをクリックしたら、編集した内容がファイルに保存さ
れます。一度保存したら、そのファイルを削除しない限り、ずっと残ります。
データベースもこれと同じです。
COMMITを実行したら、データベースに変更した内容が保存されます。
データベースの内部では、このCOMMITのタイミングで裏でいろいろ小人さ
んが作業をしているのですが、
その内容はOracle、PostgreSQL、MySQL、SQLServerなどで
やっていることが違います。
でも、使う人はとりあえず、COMMITしたら保存が確定する、と覚えておけ
ばいいかなと思います。

16. ロールバックしたらもとにもどる。
Excelでも、保存さえしなければ、閉じて開きなおしたら、元の状態に戻りま
すし、「CTRL＋Z」キーで、たいていのアプリケーションは１つ前の状態に
戻ります。データベースと同じようなことをしています。
なぜ戻れるかといえば、変更した情報をすべて保存しているので、
なにをやったかが記録されていて、戻すときは保存した場所から古い情報を
もってきて、昔の状態にもどすということです。
なにを変更したか記録を保存する方法や、保存している場所は、
データベースによって仕組みが違います。
やり直したい、元に戻したい、というときは、とりあえずロールバックすれば
いいと覚えておけばいいかなと思います。
ただし、一度でもコミットしてしまったら、そこまでしかもどりません！

17. まとめ。
・トランザクションはDBが標準的に持っている機能です。
・トランザクション開始～コミットまたはロールバックで、一つのトランザク
ションが成立します。
・確定するか、なかったことにするか、そのどちらかの状態しかありません。
・コマンドは細かい違いはあれど、OracleでもMySQLでもPostgreSQLでも
かわりません。COMMITとROLLBACKは存在します。
・COMMITは保存、ROLLBACKは全部取り消し、みたいなものです。
・プログラムを作るときは、自動的にトランザクション制御をやってくれる場
合もあります。
・もちろん自分でトランザクション開始処理やCOMMIT処理を書かなければ
ならない場合もあります。
・プログラムによるトランザクション制御の違いは、実際に使うときに覚えて
ください。

18. つぎ。
次回は、SQLの関数や文法などを掘り下げるか、
インデックスなどのデータベース内のオブジェクト
について話すか、検討中です。

19. ご清聴ありがとうございました。