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やさしい世界のつくりかた~少子化社会の Breakthrough ~
目次
1.そして誰もいなくなる
2.仄暗い国の底から
3.夜明け前より
3.1 限りなく空振りに近い留め金
3.2 アカデミックはかく語りき
3.3 focus
4.誰がために国はある
4.1 吾輩の説である
4.2 2.42 までの距離
4.3 産めない社会で考えて
5.生まれる君に花束を
5.1 男性たちは育児休業の夢を見るか
5.2 社会保障の冴えたやり方
5.3 月曜日の朝刊
6.これから
先行研究・参考文献・データ出典
「我が国の人口は、平成 17 年に減少局面に入り、少子化問題は、社会経済の根幹を揺るがしかねない、
待ったなしの課題となっています。子どもは社会の希望であり、未来の力です。
次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境を整備し、
子どもが健やかに育つことができる社会の実現のために、内閣府では、総合的な少子化対策に取り組んでいます。」
●少子化の進行
 では、日本の合計特殊出生率の推移から少子化を確認していく。日本は過去に 2 度のベビーブームを迎えており、第一次ベビーブー
ムがあった(1947 年~ 1949 年)では、4 以上の合計特殊出生率を示し、出生数も 260 万人を超えている。また、第二次ベビーブーム
(1971 年~ 1974 年)では 200 万人を超える出生数を記録している。しかし、2014 年時点では第二次ベビーブームの約半数の 100 万人
の出生数であり、合計特殊出生率も 1.42 にまで落ち込んでいる。
●少子化は様々な社会問題の要因である
 今やこの日本という国で「少子化」という言葉を耳にしたことが無い人はいないのではないだろうか。少子化は世界の先進諸
国においても、重要視されている喫緊の課題として取り上げられており、これにまつわる話題は日々暗いニュースを報道し続けてい
る。それらは労働力人口の減少、過疎化、地域コミュニティの弱体化といった現在の問題に留まらず、将来的な社会保障負担の増大、
経済規模の縮小など多岐に渡った問題の要因としてのしかかっている。
人口を維持するためには 2.07 以上の合計特殊出生率が必要だと言われている。しかし、現状ではそれを大きく下回っており、減少傾
向を示している。このままでは日本の社会は今後も少子化が進行していくと予想され、このままでは、さらに深刻になっていくだろう。
(図 1 厚生労働省「平成 24 年度人口動態統計」より本ゼミ作成)
(内閣府 少子化対策より抜粋)
1
そして誰もいなくなる1.
このままでは少子化が今以上に様々な社会問題を
もたらしてしまう
少子化は育児負担の女性偏重と経済的負担の 2 つの
ハードルから産みたい子ども数を産めないことで起
こっている
国は少子化対策に様々な政策を行ってきたが、産ま
せる政策であったため有効策ではなかった
研究者が考える少子化の改善のためにすべきこと
少子化の改善のためにすべきことは、産みたい人に焦
点を当てた男性の育児休業の拡充と経済支援の拡充
男性の育児休業と日本の経済支援に対して私たちが考
えた仮説
仮説に基づく現状分析
ー育児休業編ー
男性の育児休業推進のため
に企業と個人の意識の差を
埋める施策が必要だ
ー経済支援編ー
育児の経済的負担を軽減
するためには支援水準の
向上させる必要がある
パパさん休業制度
理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子・第 3
子増額
2015 年 11 月 22 日 政策系演習合同討論会
             土山ゼミナール
―――→
―――→
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―――→
―――→
―――→
―――→
―――→
(図 2 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年
    「第 14 回出生動向基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成 )
(図 3 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年
     「第 14 回出生動向基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成)
仄暗い国の底から∼少子化はなぜ起きるのか∼2.
少子化が深刻化する中で、人々は子どもを産みたくないと考えているわけではない。
 子どもの数が減っている理由を探るべく、図 2 をみていく。この図は、平均的に夫婦が生みたいと希望する理想の子どもの数と実際に産んだ子どもの数、
追加で産む予定の子どもの数の差を表したグラフである。
 このグラフによると、
「理想子ども数(産みたかった子どもの数)>現存子ども数(実際に産んだ子どもの数)+追加予定子ども数(今後追加で産む予定の子どもの数)」
という図式はどの年代も変化しておらず、両親は望んだ子ども数を何らかの理由により持つことができていない事がわかる。
 では、なぜ理想の子ども数を産むことが出来ないのだろうか。
理想の子ども数を持てない理由を調査した図3の厚生労働省の資料によれば、「自分の仕事に差し支えるから」や「夫の家事・育児への協力が得られないから」
という育児負担の女性偏重と、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的負担が、理想の子ども数を持てない理由に大きく関わることが確認で
『親が望んでいる人数の子どもをもてるよう支援する政策は、長期的に維持され、家庭と仕事の両立をサポートするものではなければならない。金銭的支援の
導入や増額は一時的には出生率を押し上げる効果がある〔中略〕子供を持つことと仕事は、相互排他的なものではなく、同時に実現可能なものと考えられて
いる。』(OECD「Multilingual Summaries Doing Better for Families」2011)
と記されており、客観的にみても「家庭と仕事のサポート」と「金銭的支援」は合計特殊出生率に対して有効策であることが確認できる。これは、「育児負担
の女性偏重」と「経済的負担」が少子化是正において取り組むべき課題であるという根拠になり、2 つは同時に改善されていくことで解決につながるという両
輪になっていることが、理解できるだろう。
 また、OECD による海外諸国との比較分析においても、
 上述してきた内容より、育児負担の女性偏重、経済的負担の 2 点が産みたいのに産めない根本原因であると考え、本稿はこれらの改善に向けるものと位
置づける。そして、私たちは「産みたくても産めない人々」を対象として、子どもを産むことに対するハードル(= 障壁)を取り除き、それぞれが理想の子
ども数を産むことができる社会を目指すことを目標とする。
2
日本においてなぜ子どもの数が減っているのか、その理由となる背景から、
私たちが考える「少子化対策」の方向性を述べていく。
 また、産みたくても産めない人々がそれぞれ産みたい子ども数を持つことができたならば、平均で2.42人の子どもを産むことができることにつながる。個々
人の意志が尊重され、合計特殊出生率を大きく押し上がるだろう。
 両親が理想の子ども数を産む事ができない現状は、個人の選択の自由や、理想の生活をおくる権利が尊重され
ない社会を生み出している。こうした状況は社会の構造によって、個人の意志が阻害されていることに他ならず、
その要因を取り除かなければならない。それによって両親が生みたい子どもの数を持てるような社会にするこ
とが出来ると私たちは考えた。
(
%
)
●理想子ども数を実現するとは・・・
●取り組むべき課題は 2 つ
●設定する対象と目標
ほの
夜明け前より∼少子化はなぜ止まらないのか∼3.
3.1 限りなく空振りに近い留め金
 
 日本では様々な少子化対策が行われてきた。しかし、現在において少子化は改善さ
れず、進行している。以下では日本の内閣府の少子化対策の変遷を見ていく。
1990 年 仕事と子育ての両立支援など子どもを産み育てる環境づくりの検討
1994 年 エンゼルプラン
     保育の量的拡大や低年齢児保育、多様な保育の充実、保育施設の拡充。
2000 年 新エンゼルプラン
保育関係だけではなく、雇用、母子保健、相談、教育等の幅広い事業内容。
2003 年 次世代育成支援対策推進法
地方公共団体と事業主が次世代育成支援のために計画、実施をする。
2007 年 ワークライフバランス (WLB) 憲章
「働き方の見直しによる仕事と生活の調和(WLB)の実現」を目指すとともに、
     その社会的基盤となる親の就労と子どもの育成の両立と家庭にお
ける子育てを支援する仕組みを同時並行的に取り組んでいる。
2013 年 待機児童解消加速化プラン
待機児童解消に意欲的に取り組む地方自治体に対してはその取り組みを全面
的に支援することとしている。
2015 年 子ども子育て支援新制度
     認定こども園制度の改善や、待機児童解消のための保育機能の確保、結婚支
援などを自治体が主体となって行っていく制度。
 これらのような多数の少子化対策が日本では行われてきたが、 少子化は現在も進行してい
る。 それは、 これまで行われてきた対策は有効でなかったということである。 よって次に、
少子化についての先行研究を見て、 改めてこれから行うべき少子化対策について考察する。
増田雅暢 (2009)
・概要
 20 ~ 30 歳の男女 8000 人へのアンケートをもとに、これまでの日本の
少子化対策を考察し、これからどのような対策を行っていくかについて
論じている
・結果
少子化対策として
①保育サービス②経済支援③WLB④社会全体の「子育て」への意識改革の
充実が必要である。
3.2 アカデミックはかく語りき
吉田浩(2006)
・概要
 ノルウェーで取り組まれている家族政策を日本でも導入した場合の
出生率の変化について分析し、論じている
・結果
保育施設の充実より、男性育休推進のほうが出生率が上がる
脇坂明 (2010)
・概要
 育休が男性の仕事や生活にどのように影響を及ぼすかについて分析し、
論じている
・結果
育休取得は男性の職務能力、WLB 向上に繋がる
育休取得形式は男性は短期型、女性は長期型の傾向が見られた
松田茂樹 (2006)
・概要
 社内風土改革の必要性を認めながらも育休制度そのものに焦点を当て、
論じている
・結果
男性が利用しやすい制度に変更するべき
佐藤博樹、武石恵美子(2004)
・概要
 男性の育休の取得について、企業や個人を対象に定性的に調査を
行っている
・結果
男性の育休取得が低く
①育休制度の法認知度の低さ②女性優先意識③職場雰囲気④昇進への
影響の改善が必要である
阿部彩 (2006)
・概要
 児童手当の使途と子どもへの効用について検証している
・結果
児童手当の給付額の増加は、子どもに好影響を及ぼす
 少子化対策として、政府は様々な策を講じてきたが、それらは少子化を是正するものではなく、「産みたい」
と考えている人に対して有効な策ではなかった。先行研究を確認していくと、少子化を改善するためには
① 働く男性のための長期的なワークライフバランスを向上させる男性の育児休業の拡充
② 育児の経済負担に悩む家庭のための短期的な経済支援の拡充
の 2 つに着目していく必要であることがわかる。
 以上 2 点に着目し、「産みたい」と考えている出産意志の強い人を対象に絞った政策を行うことで、子どもを
産みたい人が産める社会を目指す。その結果、出産意志の弱い人も波及効果で「産みたい」と思えるようになり、
個人の意思が尊重される社会になると考える。
3.3 focus
3
少子化という問題に対してこれまで政府が何を行ってきたか、いくつかの
先行研究と共に確認し、考察していく。
「日本の出生率回復に関するシミュレーション分析」
「児童手当による子どもの効用への影響」
「男性の育児休業取得はなぜ進まないのか
-求められる日本男性のニーズに合った制度への変更―」
「なぜ少子化対策が効果を発揮しないのか
―ニーズに即した総合的な政策の展開を―」
「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」
「育児休業が男性の仕事と生活に及ぼす影響
―ウィン - ウィンの観点から―」
4.1 吾輩の説である
●社会文化の転換による目標の達成
 少子化という問題を前にし、まず私たちは育児負担に目を
向けた。以前、日本では「男性は外で働き、女性は家を守る」
という言葉に象徴されるような文化であった日本の過去から
育児負担とは女性に偏重するものである。
未だ風土として根強く残っている「男性が育児をしなくて
もよい」という社会文化を転換させることを通して、「理想
の子ども数」を産めるように取り組まなければならないので
はないだろうか。
●経済支援の水準を上げる必要性
 また、育児負担の女性偏重と並んで、日本の女性が子ども
を産みたいのに産めていない理由として、「お金がないから」
という経済的な要因に対しても仮説を立てる。政府からの子
育てに対しての経済支援として、様々な支援が行われている
だろう。
しかしながら、少子化が進行していることから改善の余地
があるとが考えられ、経済支援の水準を上げていく必要があ
るのではないだろうかと考えた。
4.2 2.42 までの距離
 まず、育児負担の現状として、育児休業制度について示した後、
男性の育児に対する考え方と、女性への負担偏重の影響、企業側から見た
育児休業制度について論じていく。次に、「経済負担」に関して、どのような
現状があるのかについて触れる。育児にかかる費用を支援する児童手当について
述べ、育児に関して経済的支援を先進的に取り組んでいる海外事例を紹介してい
く。また、それら 2 点の現状を確認した上で、考察と問題意識について述べていく。
4
育児負担の女性偏重
●①出産を機に退職する女性の多さ
 女性の育児に対する精神的・身体的負担が及ぼす結果として出産を機に退職する
女性の割合を確認していく。厚生労働省が公表している 2005 年から 2009 年の期間では、
第1子出産前後における出産前有職者の退職率は約 62%であると本ゼミは試算した。
 この数値は現在、さらに上昇し続けている。その中で、図 4 では「結婚・育児に
専念するため自発的にやめた」、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで
やめた」、「解雇された、退職推奨された」の 3 つで約 74%を占めていることを示している。
 多くの女性は出産を機に仕事を辞めなければならない現状にあり、男性は出産後の子育て
をほとんど女性に任せていることが確認できる。
(図4 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年
         「第 14 回出生同行基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成)
●②男性の育児休業は権利だ
 近年、政府が女性の負担を男性の育児休業推進によって改善する動きも確認できる。
現在、育児・介護休業法では、子どもが最大 1 歳 2 か月になるまで取得が延長され、
女性の産後休暇中も並行して男性が育児休業を取得できるようになった。そして、
男性は 14 か月の期間内であれば、2 度目の育児休業を取得する権利を得ることとなった。
●③男性は育児に関わりたい
 2014 年、ベネッセ教育総合研究所の調査によると「家事や育児に今以上に関わりたい」と
答えた父親は 2005 年調査の 48%より 10%上昇して 58%と増加傾向となっている。
また、図 5 では、男性が育児休業を取得したいと思う割合を示しており、男性の育児休業取
得希望者の割合が約 70%と多数を占めていることがわかる。
 しかしながら、2013 年、男性の育児休業取得率は 1996 年と比較して 1.91%のみとい
う極めて低い上昇率となっており、男性全体のうち 2.03%しか育児休業を取得していな
い。
●④企業の生産性を上げる育児休業
 男性の育児休業は企業にとってもいい影響を与える。
武石恵美子教授らが行った「男性が育児休業を取得していた間の職場全体の生産性」
の調査によると、「変わらない」が 61% と過半数を占めており、ほとんど生産性は変
化しないことが言える。
 また、図 6 の結果を見ると、全体的に男性の育児休業取得が職場の雰囲気にポジティ
ブな影響を及ぼす傾向があるといえる。
 そして、図 6 の研究から、ニッセイ基礎研究所(2012)は男性の育児休業取得を「中
長期的な生産性の向上のチャンスにできる可能性が高い」と位置付けている。
 これらのことから、男性の育児休業の取得は職場の生産性に短期的には変化を及ぼ
さないが、周囲の職場環境に対して中長期的に良い影響を十分に与えうるものであり、
中長期的視点の会社づくりに役立つ施策と言える。
(図5 中公新書 2004 年「男性の育児休業」26 頁より本ゼミ作成) (図 6 こども未来財団 2011 年 「父親の育児に関する調査研究」より本ゼミ作成)
2 つの側面から少子化への影響を分析し、それらを踏まえた私たちの考察を
示した上で、政策提言へとつながる問題提起を行っていく。
4.誰がために国はある∼本質・現状・問題提起∼
た
 育児休業の側面から少子化に歯止めをかけていくために、女性の育児中の負担を
軽減していかなければならない。男性の育児休業取得が低調な取得率を見せている
中で、制度として男性の育児休業は拡充され、男性も取得を希望する人が増加して
いる。さらに、企業に対しても会社づくりにポジティブな影響を及ぼすことも確認
できた。
 男性からのニーズもあり、政府も後押ししているうえに企業にも良い影響を表す
育児休業取得はなぜ推進されないのだろうか。
「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」における「男性の育児休業取得
推進に必要と考えられる対応」のアンケート調査 ( 図 7) では、企業が求める対応と
個人が求める対応に大きな差が表れたものは、「昇進等に影響しないなど人事制度の
整備」である。男性の約 80%が人事制度を整備すべきと感じていることに対し、企
業は約 35%とそのニーズを認知していない。同様に、「育児休業制度の周知・徹底」、
「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」においても差がみられた。
 つまり、取得する側の男性が望むことに対して、企業がその必要性を重要視して
いないというギャップが生じているということが確認でき、よって、企業と個人の
意識の差を埋める施策を必要とする。
 
4.3 産めない社会で考えて −育児休業編ー
 また、経済的負担では、現在の日本の児童手当の制度では、第 2 子、第 3 子を
産むごとに経済的負担は倍増するが、支給額は大きく増額されていない。このま
までは、子どもを産むごとに負担は増えてしまうため、出生率の低下は防げない
と考えられる。
 よって、育児に対する経済的負担を軽減させる施策として経済支援の水準向上
が必要となる。
4.3 産めない社会で考えて ー経済的負担編ー
5
経済的負担
●子どもを産むごとに大きくなる経済的負担
 次に経済的負担の現状を確認していく。
 子ども 1 人が中学生になるまでにかかる教育費は、文部科学省によると、約 1400 万円である。さらに、子
どもを産む人数が増えるたびに出産・子育ての費用も倍増していき、子どもを産む際にかかる費用への経済的
不安は子供を産むごとに大きくなっていく。日本ではこうした現状を打破するため、数多くの子育て支援策が
講じられており、その中のひとつとして挙げられるのが、児童手当である。児童手当は、子ども全体に適応さ
れ広範囲の支援である上に、0 歳から中学生までの長期間での経済支援になるため、経済面で広く影響を及ぼ
すと考え、本稿では児童手当について見ていく。
(表 1 児童手当の最新情報「児童手当金額 2015 年」)
●少子化対策が成功したフランス
 では海外ではどうなのか。日本よりも出生率が高く、手厚い手当の給付によって、少子化対策を行っているフランスをみていく。フランスは出生率が
1.65(1994 年 ) まで低下し、そこから 1.99(2013 年 ) まで回復した経験があることや、性別役割分業などの文化的な背景が似ているため、日本の出生率
回復の参考にする。フランスの家族手当の内容は表 2 に示す。
(表 2 厚生労働省「2014 年海外情勢報告
       フランス共和国社会保障施策」より本ゼミ作成)
●不足している児童手当の現状
 児童手当の支給額は、表 1 に示す。児童手当では高い所得を得ている世帯に対しては、自治体ごとの所得制限が設けられており、それに該当している
世帯では特別給付として、子ども一人につき 5000 円が給付される仕組みになっている。しかし、第 2 章でも示したように、依然として経済的な不安を感
じている人はまだ多く、実際の少子化は現在も進行を続けているため、現行の経済支援の水準では効果があまり見られない。
<日本とフランスの比較>
・フランスは第 2 子以降で 20 歳まで給付されており、
日本に比べて長くもらえる。
・給付額は日本より高い。
●独自の経済支援を行っている東京都江戸川区
 また、国内事例として、東京 23 区トップの出生率を維持している。東京都江戸川区の「乳児養育手当て」を例に挙げる。乳児養育手当は、乳児の
一番大切な時期を保育に専念してもらうために経済支援を行うことを目的としている江戸川区独自の制度で、乳児の保護者に対して1年間、月額 1
万 3000 円が支給され、これも児童手当と同様に所得制限が設けられている。このような独自の支援金制度等があることによって、20 年連続で 23 区
トップの出生率を維持している。このように、自治体が独自で少子化対策を行っているということは、国全体での少子化対策では賄えきれていない
部分があるため行っていると考えられる。
 日本の国としての経済支援を見てみると、支援の水準が低いことがわかる。国で
行っている児童手当などに加え、区独自の手当てを出している江戸川区の事例や、
少子化対策に成功しているフランスの事例のように家族手当が適用される年齢や金
額が手厚くなっている。日本も少子化是正のため、国レベルでの支援の水準を上げ
ていく必要がある。
・高校終了時までの教育費は無料である。
・子どもを産むほど手当が大きくなる制度となっている。
児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 )
0 歳~ 3 歳未満 15000 円
3 歳~小学校修了前 10000 円
中学生 10000 円
特例給付 5000 円
国 フランス
第 2 子 129.35 ユーロ ( 約 1 万 7000 円)
第 3 子 296.05 ユーロ(約 3 万 9000 円)
それ以降 1 人につき 165.72 ユーロ(約 2 万 2000 円)
14 歳~ 20 歳 64.47 ユーロ(約 8500 円)(以上月額)
文化的背景 性別役割分業の過去を持つ
合計特殊出生率 1.65(1994 年 )→1.99(2013 年 )
家族手当の概要 第 2 子以降の 20 歳未満の子供に対して支給
内容
5−1.男性たちは育児休業の夢を見るか?
政策名:パパさん休業制度
実施主体:政府・企業
対象:出産前後の女性とそのパートナー
 図 7 は、「男性の育児休業取得推進に必要と考えられる対応」のアンケート結果をグラフ化したものである。4.3「産めない社会で
考えて」で述べたように企業が求める対応と個人が求める対応に
・「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」
・「育児休業の周知・徹底」
・「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」
の3つで大きく差が現れた。
 この 3 点に焦点を当て、男性の育児休業の拡充について提言を行う。
 
6
●「育児休業の周知・徹底」
 上記の「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」へのアプローチとなる新制度が少子化対策の有効策であることから認知拡大のた
め、本制度を母子手帳の配布時に紙媒体により周知させる。その内容に、「育児休業取得によって不利益取り扱いが禁止されていること」
が法律に明記してあることをも記載しておく。
●「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」
 「男性の育児休業を割り当てる」へのアプローチ、「育児休業の周知・徹底」へのアプローチの 2 つの提言が徹底されることで最も企
業と個人の差が大きい「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」ついての問題も改善されていくと考える。武石、佐藤の調査では、
取得したのちに昇進への影響はほとんどなかったとする企業と個人の感想が述べられており、このことから、「昇進等へ影響しないか」
という取得前の男性の不安を減らすことが必要となるが、取得者が増えることで先行事例が増加し、取得前の男性の不安が解消されて
いくと考えられる。
5.生まれる君に花束を∼私たちの政策提言∼
●こうして「育児負担の女性偏重」は軽減される
 女性の育児による育児負担の女性偏重を軽減し、男性の育児参加を促進していく手段として、男性の育児休業の取得を原則義務化す
ることを提案した。男性が積極的に育児参加することが可能になることで育児休業の取得が常態化される。被雇用者は義務化された 3
週間に加えて、子どもが 1 歳 2 ヶ月になるまでの育児休業を取得しやすい環境を作ることができる。また、企業側も被雇用者が育児休
業を取得する際の対応を学んでいくことで、育児休業の取得に対して寛容になり、義務化期間以外の育児休業取得が可能になっていけ
るようになると考えられる。将来的に、男性が積極的に育児参加できる環境を作ることで、本稿の目的である育児負担の女性偏重を軽
減することができる。
 3 週間という期間に定めた根拠として「床上げは 3 週間」という医学的にも実証されていることわざもあるように女性の産後の身体
的な負担が大きい時期を男性が休業することで、女性の負担を軽減できる。また、吉田浩の先行研究において男性の育児休業取得期間
がノルウェー平均 23 日間の取得により、出生率に大きく変化を及ぼすことからも十分に信頼のおける期間であると考える。
●「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」
 私たちは、目指すべき社会の実現のため「育児・介護休業法を改正し、男性の育児休業を一度目取得内(8 週間内)の出生日から 3
週間(21 日間)を原則義務化する」ことを提案する。( 図 8)
 
 私たちの理想とする「産みたい人が産める社会」の実現のため、本ゼミが考えた提案が表 3 である。
 ここからは、「育児負担の女性偏重」と「経済的負担」を軽減するために
「男性の育児休業の拡充」、「経済支援の拡充」についての具体的説明をしていく。
(表 3)
 しかしながら、様々な要因から男性が取得していない状況が考えられることから、パートナーの署名によって育児休業の辞退や短縮
化をする制度も導入し、育児休業を取得できることを前提として、その取得を被雇用者家族が選択することができる。そして、法律が
改正されるため、本制度の内容を企業規則に追記することを義務付ける。
 (図 7 中公新書 2004 年「男性の育児休業」44 頁より本ゼミ作成)
( 図 8 パパさん休業制度の適応期間 本ゼミ作成)
児童手当
男性の育児休業促進
実施主体 対象 問題
政府
企業
政府
乳幼児を持つ男性
0 歳~中学校の子どもを持つ家庭
女性への育児負担の変調
経済的要因により出産を
ためあらう人が多い
5.2 社会保障の冴えたやり方
 男性の育児休業が日本で文化として浸透するには数十年という時間がかかるため、それまでに即効で効果を示せる策として児童手当の増額を提案する。海外では、教育
費や医療費など現物給付を行っている国も多いが、日本では経済的要因から出産をためらう人が多数存在するということや、子どもの年齢や特性に応じて家庭ごとにお金
を割く場面が異なることから育児家庭が自由に活用できるように支援金という現金支給を行う。財源は、約 1 兆円程度と想定している。
 私たちは児童手当の支給額を 2 万 6000 円に設定する。この額の根拠として、3 つの理由がある。1 つ目は、4 章の東京都江戸川区では、現行制度の給付金に加えて月
額 1 万 3000 円が支給され、合計 2 万 8000 円のため出生率が 23 区トップであることである。2 つ目は、少子化問題に直面する欧州諸国の『子ども手当(家族手当)』の
支給水準が平均約 2 万円であることである。3 つ目は、4 章のフランスの事例においても、約 2 万円の現金支給が行われていることで高い出生率を維持していることであ
る。このように、経済的要因から子どもを産みやすくするには 2 万円の水準が必要であると考える。金額は表 4 の通りになる。所得制限については、この政策は経済的
不安を持つ中間所得者、または低所得者層に向けたものなので、高所得者の世帯にはこれまで通りの所得制限を設ける。
政策名  :理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子、第 3 子増額
実施主体 :政府
対象   :家庭において第 2 子、第 3 子であって、
      0歳~中学校修了までの児童
●児童手当の増額による理想子ども数の実現を後押しするインセンティブ
●理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子、第 3 子増額
 では、経済的要因について政策提言を行っていく。
 児童手当の目的は、「児童を養育しているものに児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な
育成及び資質の向上に資する(児童手当法第一条)」としている。
 児童手当の増額を行う意義としては、理想の子ども数が産めない最大の要因である経済的負担を、児童手当の増額によって軽減し、理想の子ども数を産める環
境を作ることである。「育児休業の義務化」に加え、国というセクターから高い水準の経済支援を行うことで、社会全体で理想子ども数の実現を後押しするインセ
ンティブを作ることができると考える。
●より良い社会を作るために
 不足が懸念される 1 兆円を超える財源を賄うため、所得税の税率を高所得者に向けて 1980 年代後期の水準に戻す。所得税の税率は現在の方が当時と比べ低い水準に
あるので、確かに負担はあると考えられるが、その水準を戻すことによって財源を確保する。具体的には、納税者の約 5000 万人のうち、所得が 900 万円以上の高所得
者に対して、現行の課税率から 10%以内の税率を上げる。これは少子化対策の目的で、納税者の所得に応じて新たに課す。税率の変更は育児休業が文化として広がるま
での期限付きとし、適用期限は 27 年後の 2042 年までとする。適用期限についてはフランスを参考に設定したが、必要に応じて延長、短縮を検討することとする。この
税制では、児童手当増額分の費用が賄える程度の徴収を想定する。
さらに、個人が一生涯働いて払う税金額は 3000 万円程度と言われており、子どもが産まれて働き、税金を支払うことを考慮すれば、その納めた税金によってこの政策
の財源が補填されるので、将来への投資と考えて支給できると考える。
 将来少子化が進行を続ければ、国の社会保障にも危機をもたらす。15 ~ 64 歳までの生産年齢人口は総務省統計局では 2015 年 10 月時点で 7719 万 8000 人と示されて
いる。しかし人口減少が続けば、2040 年で 5787 万人に減少すると推計され、約 1933 万人の生産年齢人口が減ることになる。このまま生産年齢人口が減ることになれば、
税を納める人が少なくなり、社会保障の財源が減って介護費や医療費を賄うのが困難になる。結果として、国の社会保障が破綻することが考えられる。よって、少子化
を食い止めるために、この政策を行うことで経済的負担を軽減し、子どもを産みやすい社会にしていく。
7( 表 1) (表 4)
5.3 月曜日の朝刊
 
「
産
み
た
い
人
が
産
め
る
社
会
」
の
実
現
に
向
け
、
こ
れ
ま
で
の
政
府
の
政
策
に
あ
っ
た
「
産
め
よ
増
や
せ
よ
」
の
内
容
か
ら
、
土
山
ゼ
ミ
ナ
ー
ル
は
、
出
産
意
欲
の
あ
る
人
を
対
象
に
絞
っ
た
政
策
を
行
う
。
そ
の
副
次
効
果
と
し
て
、
出
産
意
志
の
弱
い
人
も
「
産
み
た
い
」
と
思
え
る
よ
う
に
な
り
、
個
人
の
選
択
の
自
由
を
広
げ
る
こ
と
で
少
子
化
問
題
の
解
決
を
図
る
こ
と
が
狙
い
だ
。
 
土
山
ゼ
ミ
ナ
ー
ル
は
二
十
二
日
午
後
、
龍
谷
大
学
で
「
パ
パ
さ
ん
休
業
制
度
」
「
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想
の
実
現
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次
世
代
に
向
け
た
児
童
手
当
の
第
二
子
、
第
三
子
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額
」
の
二
つ
の
政
策
を
提
言
し
た
。
二
つ
の
新
た
な
政
策
は
、
少
子
化
と
い
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深
刻
な
社
会
課
題
を
解
消
す
る
た
め
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第
一
歩
に
な
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政
策
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言
 
決
ま
る
 
 
 
産
み
た
い
人
が
産
め
る
社
会
実
現
へ
児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 )
0 歳~ 3 歳未満 15000 円
3 歳~小学校修了前 10000 円
中学生 10000 円
特例給付 5000 円
児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 )
子ども数
0 歳~ 3 歳未満
中学生
3 歳~小学校修了前
第 1 子 第 2 子 第 3 子以降
15000 円
10000 円
10000 円
26000 円
26000 円
26000 円
 
育
児
負
担
の
女
性
偏
重
を
改
善
す
る
こ
と
と
、
経
済
支
援
を
強
化
す
る
こ
と
で
出
産
の
際
の
障
壁
を
取
り
除
こ
う
と
考
え
た
。
政
策
実
現
の
た
め
に
は
法
改
正
や
財
源
の
確
保
な
ど
大
き
な
制
度
変
更
も
必
要
と
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れ
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個
人
の
生
活
の
質
の
向
上
や
少
子
化
是
正
の
た
め
に
も
取
り
組
む
べ
き
政
策
で
あ
る
。
なぜ、私たちは「産みたい人が産める社会」を理想に掲げたのか。
それは、個人の自由が尊重され、その選択肢が守られることで
様々な社会問題の原因である少子化の解決に向かうと考えたからである。
また、政府は今まで幅の広い政策を行ってきたが、効果は芳しくなく
今回私たちは異なる視点を持って出産意志の強い人に焦点を当て
①育児負担の女性偏重の軽減 ②経済支援の軽減
を目指し、政策提言を行った。
産みたい人が産めるようになることで、子どもを持つということに対する
価値観が変わり、社会全体で出産意志の強い人が増えるだろう。
社会とは、人の集まりである。
社会問題とは、人にまつわる問題である。
個人の理想が、意志が尊重されず、
産みたくても産めない人がいるという小さなところから
少子化という社会全体を覆う大きな問題へと発展した。
ひとりを大切にし、やさしい世界を目指す。
これからの未来を担う子どもたちが
社会の希望として明るいニュースとなるように
私たちの政策提言を実現することが、今、重要であると考える。
参考文献
・「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」
中公新書 2004 年 著:佐藤博樹 武石恵美子
・岩田一政(2014 年)『人口回復』 日本経済新聞出版社 22 2010 年 労働政策研究・研修機構
先行研究・参考文献・主なデータ出典
6.これから
先行研究
・「日本の出生率回復に関するシミュレーション分析」
Discussion Paper NO.213 2006 年 吉田浩
・「児童手当による子どもの効用への影響」
国立社会保障・人口問題研究所 2006 年 阿部彩
・「男性の育児休業取得はなぜ進まないのか-求められる日本男性のニーズに合った制度への変更―」
第一生命経済研究所 2006 年 松田茂樹
・「育児休業が男性の仕事と生活に及ぼす影響―ウィン - ウィンの観点から―」
学習院大学経済論集 2010 年 脇坂明
・「なぜ少子化対策が効果を発揮しないのか―ニーズに即した総合的な政策の展開を―」
クォータリー生活福祉研究 2009 年 増田雅暢
8
データ出典
・厚生労働省「少子化問題等に関する資料」 (http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/dl/s0201-3d.pdf)
「Doing Better for Families」
Multilingual Summaries OECD 2011
・国立社会保障・人口問題研究所「第 14 回出生動向調査」
(http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14_s/chapter3.html#34)
・データブック国際労働比較 2015「第 2-9 表 合計特殊出生率」 (www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2015/02/2-9.xls)
・内閣府「結婚、出産、子育てをめぐる状況」
(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26webhonpen/html/b1_s1-1-4.html)
・内閣府「少子化対策」 (http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/index.html)
・厚生労働省「育児・介護休業法について」
(http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html)
・厚生労働省 政策レポート「育児・介護休業法の改正について」
(http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/06/06.html)
・ニッセイ基礎研究所 男性の育児休業取得率は過去最高でも 2.6%
(http://www.nli-research.co.jp/report/letter/2012/letter120521.pdf)
・文部科学省「平成 24 年度子どもの学習費調査の結果について」
(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/01/10/1343235_1.pdf)
・児童手当の最新情報「児童手当の支給金額 2016 年度 ( 平成 28 年 )
(http:// 児童手当金額 .com/kingaku.html)
・厚生労働省「子育て世帯臨時特例給付金 」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/rinjitokurei/)
・厚生労働省「2014 年海外情勢報告 フランス共和国 社会保障施策」
(http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/15/)
・江戸川区役所「乳児養育手当(ゼロ歳児)」
(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/kosodate/kosodate/teateshien/youiku.html)
・児童手当法
(law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO073.html)
・参議院「子ども手当の創設と課題」
(www.sangiin.go.jp/japanese/annai/.../20100701015.pdf)
・民主党の「子ども手当」政策について(中間報告)
(www.dpj.or.jp/news/files/kodomo07.3.20.pdf)
・PRESIDENT Online『生涯「税金」はいくら払うか』
(http://president.jp/articles/-/433)
以上、最終閲覧日は全て 2015 年 11 月 9 日である。
・「父親の育児に関する調査研究―育児休業取得について研究報告書―」
こども未来財団 2011 年発行 主任研究者:武石恵美子
・「女性の働き方と出産・育児期の就業継続」
労働政策研究報告書 No.22

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  • 1. やさしい世界のつくりかた~少子化社会の Breakthrough ~ 目次 1.そして誰もいなくなる 2.仄暗い国の底から 3.夜明け前より 3.1 限りなく空振りに近い留め金 3.2 アカデミックはかく語りき 3.3 focus 4.誰がために国はある 4.1 吾輩の説である 4.2 2.42 までの距離 4.3 産めない社会で考えて 5.生まれる君に花束を 5.1 男性たちは育児休業の夢を見るか 5.2 社会保障の冴えたやり方 5.3 月曜日の朝刊 6.これから 先行研究・参考文献・データ出典 「我が国の人口は、平成 17 年に減少局面に入り、少子化問題は、社会経済の根幹を揺るがしかねない、 待ったなしの課題となっています。子どもは社会の希望であり、未来の力です。 次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境を整備し、 子どもが健やかに育つことができる社会の実現のために、内閣府では、総合的な少子化対策に取り組んでいます。」 ●少子化の進行  では、日本の合計特殊出生率の推移から少子化を確認していく。日本は過去に 2 度のベビーブームを迎えており、第一次ベビーブー ムがあった(1947 年~ 1949 年)では、4 以上の合計特殊出生率を示し、出生数も 260 万人を超えている。また、第二次ベビーブーム (1971 年~ 1974 年)では 200 万人を超える出生数を記録している。しかし、2014 年時点では第二次ベビーブームの約半数の 100 万人 の出生数であり、合計特殊出生率も 1.42 にまで落ち込んでいる。 ●少子化は様々な社会問題の要因である  今やこの日本という国で「少子化」という言葉を耳にしたことが無い人はいないのではないだろうか。少子化は世界の先進諸 国においても、重要視されている喫緊の課題として取り上げられており、これにまつわる話題は日々暗いニュースを報道し続けてい る。それらは労働力人口の減少、過疎化、地域コミュニティの弱体化といった現在の問題に留まらず、将来的な社会保障負担の増大、 経済規模の縮小など多岐に渡った問題の要因としてのしかかっている。 人口を維持するためには 2.07 以上の合計特殊出生率が必要だと言われている。しかし、現状ではそれを大きく下回っており、減少傾 向を示している。このままでは日本の社会は今後も少子化が進行していくと予想され、このままでは、さらに深刻になっていくだろう。 (図 1 厚生労働省「平成 24 年度人口動態統計」より本ゼミ作成) (内閣府 少子化対策より抜粋) 1 そして誰もいなくなる1. このままでは少子化が今以上に様々な社会問題を もたらしてしまう 少子化は育児負担の女性偏重と経済的負担の 2 つの ハードルから産みたい子ども数を産めないことで起 こっている 国は少子化対策に様々な政策を行ってきたが、産ま せる政策であったため有効策ではなかった 研究者が考える少子化の改善のためにすべきこと 少子化の改善のためにすべきことは、産みたい人に焦 点を当てた男性の育児休業の拡充と経済支援の拡充 男性の育児休業と日本の経済支援に対して私たちが考 えた仮説 仮説に基づく現状分析 ー育児休業編ー 男性の育児休業推進のため に企業と個人の意識の差を 埋める施策が必要だ ー経済支援編ー 育児の経済的負担を軽減 するためには支援水準の 向上させる必要がある パパさん休業制度 理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子・第 3 子増額 2015 年 11 月 22 日 政策系演習合同討論会              土山ゼミナール ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→ ―――→
  • 2. (図 2 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年     「第 14 回出生動向基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成 ) (図 3 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年      「第 14 回出生動向基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成) 仄暗い国の底から∼少子化はなぜ起きるのか∼2. 少子化が深刻化する中で、人々は子どもを産みたくないと考えているわけではない。  子どもの数が減っている理由を探るべく、図 2 をみていく。この図は、平均的に夫婦が生みたいと希望する理想の子どもの数と実際に産んだ子どもの数、 追加で産む予定の子どもの数の差を表したグラフである。  このグラフによると、 「理想子ども数(産みたかった子どもの数)>現存子ども数(実際に産んだ子どもの数)+追加予定子ども数(今後追加で産む予定の子どもの数)」 という図式はどの年代も変化しておらず、両親は望んだ子ども数を何らかの理由により持つことができていない事がわかる。  では、なぜ理想の子ども数を産むことが出来ないのだろうか。 理想の子ども数を持てない理由を調査した図3の厚生労働省の資料によれば、「自分の仕事に差し支えるから」や「夫の家事・育児への協力が得られないから」 という育児負担の女性偏重と、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的負担が、理想の子ども数を持てない理由に大きく関わることが確認で 『親が望んでいる人数の子どもをもてるよう支援する政策は、長期的に維持され、家庭と仕事の両立をサポートするものではなければならない。金銭的支援の 導入や増額は一時的には出生率を押し上げる効果がある〔中略〕子供を持つことと仕事は、相互排他的なものではなく、同時に実現可能なものと考えられて いる。』(OECD「Multilingual Summaries Doing Better for Families」2011) と記されており、客観的にみても「家庭と仕事のサポート」と「金銭的支援」は合計特殊出生率に対して有効策であることが確認できる。これは、「育児負担 の女性偏重」と「経済的負担」が少子化是正において取り組むべき課題であるという根拠になり、2 つは同時に改善されていくことで解決につながるという両 輪になっていることが、理解できるだろう。  また、OECD による海外諸国との比較分析においても、  上述してきた内容より、育児負担の女性偏重、経済的負担の 2 点が産みたいのに産めない根本原因であると考え、本稿はこれらの改善に向けるものと位 置づける。そして、私たちは「産みたくても産めない人々」を対象として、子どもを産むことに対するハードル(= 障壁)を取り除き、それぞれが理想の子 ども数を産むことができる社会を目指すことを目標とする。 2 日本においてなぜ子どもの数が減っているのか、その理由となる背景から、 私たちが考える「少子化対策」の方向性を述べていく。  また、産みたくても産めない人々がそれぞれ産みたい子ども数を持つことができたならば、平均で2.42人の子どもを産むことができることにつながる。個々 人の意志が尊重され、合計特殊出生率を大きく押し上がるだろう。  両親が理想の子ども数を産む事ができない現状は、個人の選択の自由や、理想の生活をおくる権利が尊重され ない社会を生み出している。こうした状況は社会の構造によって、個人の意志が阻害されていることに他ならず、 その要因を取り除かなければならない。それによって両親が生みたい子どもの数を持てるような社会にするこ とが出来ると私たちは考えた。 ( % ) ●理想子ども数を実現するとは・・・ ●取り組むべき課題は 2 つ ●設定する対象と目標 ほの
  • 3. 夜明け前より∼少子化はなぜ止まらないのか∼3. 3.1 限りなく空振りに近い留め金    日本では様々な少子化対策が行われてきた。しかし、現在において少子化は改善さ れず、進行している。以下では日本の内閣府の少子化対策の変遷を見ていく。 1990 年 仕事と子育ての両立支援など子どもを産み育てる環境づくりの検討 1994 年 エンゼルプラン      保育の量的拡大や低年齢児保育、多様な保育の充実、保育施設の拡充。 2000 年 新エンゼルプラン 保育関係だけではなく、雇用、母子保健、相談、教育等の幅広い事業内容。 2003 年 次世代育成支援対策推進法 地方公共団体と事業主が次世代育成支援のために計画、実施をする。 2007 年 ワークライフバランス (WLB) 憲章 「働き方の見直しによる仕事と生活の調和(WLB)の実現」を目指すとともに、      その社会的基盤となる親の就労と子どもの育成の両立と家庭にお ける子育てを支援する仕組みを同時並行的に取り組んでいる。 2013 年 待機児童解消加速化プラン 待機児童解消に意欲的に取り組む地方自治体に対してはその取り組みを全面 的に支援することとしている。 2015 年 子ども子育て支援新制度      認定こども園制度の改善や、待機児童解消のための保育機能の確保、結婚支 援などを自治体が主体となって行っていく制度。  これらのような多数の少子化対策が日本では行われてきたが、 少子化は現在も進行してい る。 それは、 これまで行われてきた対策は有効でなかったということである。 よって次に、 少子化についての先行研究を見て、 改めてこれから行うべき少子化対策について考察する。 増田雅暢 (2009) ・概要  20 ~ 30 歳の男女 8000 人へのアンケートをもとに、これまでの日本の 少子化対策を考察し、これからどのような対策を行っていくかについて 論じている ・結果 少子化対策として ①保育サービス②経済支援③WLB④社会全体の「子育て」への意識改革の 充実が必要である。 3.2 アカデミックはかく語りき 吉田浩(2006) ・概要  ノルウェーで取り組まれている家族政策を日本でも導入した場合の 出生率の変化について分析し、論じている ・結果 保育施設の充実より、男性育休推進のほうが出生率が上がる 脇坂明 (2010) ・概要  育休が男性の仕事や生活にどのように影響を及ぼすかについて分析し、 論じている ・結果 育休取得は男性の職務能力、WLB 向上に繋がる 育休取得形式は男性は短期型、女性は長期型の傾向が見られた 松田茂樹 (2006) ・概要  社内風土改革の必要性を認めながらも育休制度そのものに焦点を当て、 論じている ・結果 男性が利用しやすい制度に変更するべき 佐藤博樹、武石恵美子(2004) ・概要  男性の育休の取得について、企業や個人を対象に定性的に調査を 行っている ・結果 男性の育休取得が低く ①育休制度の法認知度の低さ②女性優先意識③職場雰囲気④昇進への 影響の改善が必要である 阿部彩 (2006) ・概要  児童手当の使途と子どもへの効用について検証している ・結果 児童手当の給付額の増加は、子どもに好影響を及ぼす  少子化対策として、政府は様々な策を講じてきたが、それらは少子化を是正するものではなく、「産みたい」 と考えている人に対して有効な策ではなかった。先行研究を確認していくと、少子化を改善するためには ① 働く男性のための長期的なワークライフバランスを向上させる男性の育児休業の拡充 ② 育児の経済負担に悩む家庭のための短期的な経済支援の拡充 の 2 つに着目していく必要であることがわかる。  以上 2 点に着目し、「産みたい」と考えている出産意志の強い人を対象に絞った政策を行うことで、子どもを 産みたい人が産める社会を目指す。その結果、出産意志の弱い人も波及効果で「産みたい」と思えるようになり、 個人の意思が尊重される社会になると考える。 3.3 focus 3 少子化という問題に対してこれまで政府が何を行ってきたか、いくつかの 先行研究と共に確認し、考察していく。 「日本の出生率回復に関するシミュレーション分析」 「児童手当による子どもの効用への影響」 「男性の育児休業取得はなぜ進まないのか -求められる日本男性のニーズに合った制度への変更―」 「なぜ少子化対策が効果を発揮しないのか ―ニーズに即した総合的な政策の展開を―」 「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」 「育児休業が男性の仕事と生活に及ぼす影響 ―ウィン - ウィンの観点から―」
  • 4. 4.1 吾輩の説である ●社会文化の転換による目標の達成  少子化という問題を前にし、まず私たちは育児負担に目を 向けた。以前、日本では「男性は外で働き、女性は家を守る」 という言葉に象徴されるような文化であった日本の過去から 育児負担とは女性に偏重するものである。 未だ風土として根強く残っている「男性が育児をしなくて もよい」という社会文化を転換させることを通して、「理想 の子ども数」を産めるように取り組まなければならないので はないだろうか。 ●経済支援の水準を上げる必要性  また、育児負担の女性偏重と並んで、日本の女性が子ども を産みたいのに産めていない理由として、「お金がないから」 という経済的な要因に対しても仮説を立てる。政府からの子 育てに対しての経済支援として、様々な支援が行われている だろう。 しかしながら、少子化が進行していることから改善の余地 があるとが考えられ、経済支援の水準を上げていく必要があ るのではないだろうかと考えた。 4.2 2.42 までの距離  まず、育児負担の現状として、育児休業制度について示した後、 男性の育児に対する考え方と、女性への負担偏重の影響、企業側から見た 育児休業制度について論じていく。次に、「経済負担」に関して、どのような 現状があるのかについて触れる。育児にかかる費用を支援する児童手当について 述べ、育児に関して経済的支援を先進的に取り組んでいる海外事例を紹介してい く。また、それら 2 点の現状を確認した上で、考察と問題意識について述べていく。 4 育児負担の女性偏重 ●①出産を機に退職する女性の多さ  女性の育児に対する精神的・身体的負担が及ぼす結果として出産を機に退職する 女性の割合を確認していく。厚生労働省が公表している 2005 年から 2009 年の期間では、 第1子出産前後における出産前有職者の退職率は約 62%であると本ゼミは試算した。  この数値は現在、さらに上昇し続けている。その中で、図 4 では「結婚・育児に 専念するため自発的にやめた」、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで やめた」、「解雇された、退職推奨された」の 3 つで約 74%を占めていることを示している。  多くの女性は出産を機に仕事を辞めなければならない現状にあり、男性は出産後の子育て をほとんど女性に任せていることが確認できる。 (図4 国立社会保障・人口問題研究所 2011 年          「第 14 回出生同行基本調査(夫婦調査)」より本ゼミ作成) ●②男性の育児休業は権利だ  近年、政府が女性の負担を男性の育児休業推進によって改善する動きも確認できる。 現在、育児・介護休業法では、子どもが最大 1 歳 2 か月になるまで取得が延長され、 女性の産後休暇中も並行して男性が育児休業を取得できるようになった。そして、 男性は 14 か月の期間内であれば、2 度目の育児休業を取得する権利を得ることとなった。 ●③男性は育児に関わりたい  2014 年、ベネッセ教育総合研究所の調査によると「家事や育児に今以上に関わりたい」と 答えた父親は 2005 年調査の 48%より 10%上昇して 58%と増加傾向となっている。 また、図 5 では、男性が育児休業を取得したいと思う割合を示しており、男性の育児休業取 得希望者の割合が約 70%と多数を占めていることがわかる。  しかしながら、2013 年、男性の育児休業取得率は 1996 年と比較して 1.91%のみとい う極めて低い上昇率となっており、男性全体のうち 2.03%しか育児休業を取得していな い。 ●④企業の生産性を上げる育児休業  男性の育児休業は企業にとってもいい影響を与える。 武石恵美子教授らが行った「男性が育児休業を取得していた間の職場全体の生産性」 の調査によると、「変わらない」が 61% と過半数を占めており、ほとんど生産性は変 化しないことが言える。  また、図 6 の結果を見ると、全体的に男性の育児休業取得が職場の雰囲気にポジティ ブな影響を及ぼす傾向があるといえる。  そして、図 6 の研究から、ニッセイ基礎研究所(2012)は男性の育児休業取得を「中 長期的な生産性の向上のチャンスにできる可能性が高い」と位置付けている。  これらのことから、男性の育児休業の取得は職場の生産性に短期的には変化を及ぼ さないが、周囲の職場環境に対して中長期的に良い影響を十分に与えうるものであり、 中長期的視点の会社づくりに役立つ施策と言える。 (図5 中公新書 2004 年「男性の育児休業」26 頁より本ゼミ作成) (図 6 こども未来財団 2011 年 「父親の育児に関する調査研究」より本ゼミ作成) 2 つの側面から少子化への影響を分析し、それらを踏まえた私たちの考察を 示した上で、政策提言へとつながる問題提起を行っていく。 4.誰がために国はある∼本質・現状・問題提起∼ た
  • 5.  育児休業の側面から少子化に歯止めをかけていくために、女性の育児中の負担を 軽減していかなければならない。男性の育児休業取得が低調な取得率を見せている 中で、制度として男性の育児休業は拡充され、男性も取得を希望する人が増加して いる。さらに、企業に対しても会社づくりにポジティブな影響を及ぼすことも確認 できた。  男性からのニーズもあり、政府も後押ししているうえに企業にも良い影響を表す 育児休業取得はなぜ推進されないのだろうか。 「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」における「男性の育児休業取得 推進に必要と考えられる対応」のアンケート調査 ( 図 7) では、企業が求める対応と 個人が求める対応に大きな差が表れたものは、「昇進等に影響しないなど人事制度の 整備」である。男性の約 80%が人事制度を整備すべきと感じていることに対し、企 業は約 35%とそのニーズを認知していない。同様に、「育児休業制度の周知・徹底」、 「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」においても差がみられた。  つまり、取得する側の男性が望むことに対して、企業がその必要性を重要視して いないというギャップが生じているということが確認でき、よって、企業と個人の 意識の差を埋める施策を必要とする。   4.3 産めない社会で考えて −育児休業編ー  また、経済的負担では、現在の日本の児童手当の制度では、第 2 子、第 3 子を 産むごとに経済的負担は倍増するが、支給額は大きく増額されていない。このま までは、子どもを産むごとに負担は増えてしまうため、出生率の低下は防げない と考えられる。  よって、育児に対する経済的負担を軽減させる施策として経済支援の水準向上 が必要となる。 4.3 産めない社会で考えて ー経済的負担編ー 5 経済的負担 ●子どもを産むごとに大きくなる経済的負担  次に経済的負担の現状を確認していく。  子ども 1 人が中学生になるまでにかかる教育費は、文部科学省によると、約 1400 万円である。さらに、子 どもを産む人数が増えるたびに出産・子育ての費用も倍増していき、子どもを産む際にかかる費用への経済的 不安は子供を産むごとに大きくなっていく。日本ではこうした現状を打破するため、数多くの子育て支援策が 講じられており、その中のひとつとして挙げられるのが、児童手当である。児童手当は、子ども全体に適応さ れ広範囲の支援である上に、0 歳から中学生までの長期間での経済支援になるため、経済面で広く影響を及ぼ すと考え、本稿では児童手当について見ていく。 (表 1 児童手当の最新情報「児童手当金額 2015 年」) ●少子化対策が成功したフランス  では海外ではどうなのか。日本よりも出生率が高く、手厚い手当の給付によって、少子化対策を行っているフランスをみていく。フランスは出生率が 1.65(1994 年 ) まで低下し、そこから 1.99(2013 年 ) まで回復した経験があることや、性別役割分業などの文化的な背景が似ているため、日本の出生率 回復の参考にする。フランスの家族手当の内容は表 2 に示す。 (表 2 厚生労働省「2014 年海外情勢報告        フランス共和国社会保障施策」より本ゼミ作成) ●不足している児童手当の現状  児童手当の支給額は、表 1 に示す。児童手当では高い所得を得ている世帯に対しては、自治体ごとの所得制限が設けられており、それに該当している 世帯では特別給付として、子ども一人につき 5000 円が給付される仕組みになっている。しかし、第 2 章でも示したように、依然として経済的な不安を感 じている人はまだ多く、実際の少子化は現在も進行を続けているため、現行の経済支援の水準では効果があまり見られない。 <日本とフランスの比較> ・フランスは第 2 子以降で 20 歳まで給付されており、 日本に比べて長くもらえる。 ・給付額は日本より高い。 ●独自の経済支援を行っている東京都江戸川区  また、国内事例として、東京 23 区トップの出生率を維持している。東京都江戸川区の「乳児養育手当て」を例に挙げる。乳児養育手当は、乳児の 一番大切な時期を保育に専念してもらうために経済支援を行うことを目的としている江戸川区独自の制度で、乳児の保護者に対して1年間、月額 1 万 3000 円が支給され、これも児童手当と同様に所得制限が設けられている。このような独自の支援金制度等があることによって、20 年連続で 23 区 トップの出生率を維持している。このように、自治体が独自で少子化対策を行っているということは、国全体での少子化対策では賄えきれていない 部分があるため行っていると考えられる。  日本の国としての経済支援を見てみると、支援の水準が低いことがわかる。国で 行っている児童手当などに加え、区独自の手当てを出している江戸川区の事例や、 少子化対策に成功しているフランスの事例のように家族手当が適用される年齢や金 額が手厚くなっている。日本も少子化是正のため、国レベルでの支援の水準を上げ ていく必要がある。 ・高校終了時までの教育費は無料である。 ・子どもを産むほど手当が大きくなる制度となっている。 児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 ) 0 歳~ 3 歳未満 15000 円 3 歳~小学校修了前 10000 円 中学生 10000 円 特例給付 5000 円 国 フランス 第 2 子 129.35 ユーロ ( 約 1 万 7000 円) 第 3 子 296.05 ユーロ(約 3 万 9000 円) それ以降 1 人につき 165.72 ユーロ(約 2 万 2000 円) 14 歳~ 20 歳 64.47 ユーロ(約 8500 円)(以上月額) 文化的背景 性別役割分業の過去を持つ 合計特殊出生率 1.65(1994 年 )→1.99(2013 年 ) 家族手当の概要 第 2 子以降の 20 歳未満の子供に対して支給 内容
  • 6. 5−1.男性たちは育児休業の夢を見るか? 政策名:パパさん休業制度 実施主体:政府・企業 対象:出産前後の女性とそのパートナー  図 7 は、「男性の育児休業取得推進に必要と考えられる対応」のアンケート結果をグラフ化したものである。4.3「産めない社会で 考えて」で述べたように企業が求める対応と個人が求める対応に ・「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」 ・「育児休業の周知・徹底」 ・「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」 の3つで大きく差が現れた。  この 3 点に焦点を当て、男性の育児休業の拡充について提言を行う。   6 ●「育児休業の周知・徹底」  上記の「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」へのアプローチとなる新制度が少子化対策の有効策であることから認知拡大のた め、本制度を母子手帳の配布時に紙媒体により周知させる。その内容に、「育児休業取得によって不利益取り扱いが禁止されていること」 が法律に明記してあることをも記載しておく。 ●「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」  「男性の育児休業を割り当てる」へのアプローチ、「育児休業の周知・徹底」へのアプローチの 2 つの提言が徹底されることで最も企 業と個人の差が大きい「昇進等に影響しないなど人事制度の整備」ついての問題も改善されていくと考える。武石、佐藤の調査では、 取得したのちに昇進への影響はほとんどなかったとする企業と個人の感想が述べられており、このことから、「昇進等へ影響しないか」 という取得前の男性の不安を減らすことが必要となるが、取得者が増えることで先行事例が増加し、取得前の男性の不安が解消されて いくと考えられる。 5.生まれる君に花束を∼私たちの政策提言∼ ●こうして「育児負担の女性偏重」は軽減される  女性の育児による育児負担の女性偏重を軽減し、男性の育児参加を促進していく手段として、男性の育児休業の取得を原則義務化す ることを提案した。男性が積極的に育児参加することが可能になることで育児休業の取得が常態化される。被雇用者は義務化された 3 週間に加えて、子どもが 1 歳 2 ヶ月になるまでの育児休業を取得しやすい環境を作ることができる。また、企業側も被雇用者が育児休 業を取得する際の対応を学んでいくことで、育児休業の取得に対して寛容になり、義務化期間以外の育児休業取得が可能になっていけ るようになると考えられる。将来的に、男性が積極的に育児参加できる環境を作ることで、本稿の目的である育児負担の女性偏重を軽 減することができる。  3 週間という期間に定めた根拠として「床上げは 3 週間」という医学的にも実証されていることわざもあるように女性の産後の身体 的な負担が大きい時期を男性が休業することで、女性の負担を軽減できる。また、吉田浩の先行研究において男性の育児休業取得期間 がノルウェー平均 23 日間の取得により、出生率に大きく変化を及ぼすことからも十分に信頼のおける期間であると考える。 ●「男性に育児休業を割り当てる制度の創設」  私たちは、目指すべき社会の実現のため「育児・介護休業法を改正し、男性の育児休業を一度目取得内(8 週間内)の出生日から 3 週間(21 日間)を原則義務化する」ことを提案する。( 図 8)    私たちの理想とする「産みたい人が産める社会」の実現のため、本ゼミが考えた提案が表 3 である。  ここからは、「育児負担の女性偏重」と「経済的負担」を軽減するために 「男性の育児休業の拡充」、「経済支援の拡充」についての具体的説明をしていく。 (表 3)  しかしながら、様々な要因から男性が取得していない状況が考えられることから、パートナーの署名によって育児休業の辞退や短縮 化をする制度も導入し、育児休業を取得できることを前提として、その取得を被雇用者家族が選択することができる。そして、法律が 改正されるため、本制度の内容を企業規則に追記することを義務付ける。  (図 7 中公新書 2004 年「男性の育児休業」44 頁より本ゼミ作成) ( 図 8 パパさん休業制度の適応期間 本ゼミ作成) 児童手当 男性の育児休業促進 実施主体 対象 問題 政府 企業 政府 乳幼児を持つ男性 0 歳~中学校の子どもを持つ家庭 女性への育児負担の変調 経済的要因により出産を ためあらう人が多い
  • 7. 5.2 社会保障の冴えたやり方  男性の育児休業が日本で文化として浸透するには数十年という時間がかかるため、それまでに即効で効果を示せる策として児童手当の増額を提案する。海外では、教育 費や医療費など現物給付を行っている国も多いが、日本では経済的要因から出産をためらう人が多数存在するということや、子どもの年齢や特性に応じて家庭ごとにお金 を割く場面が異なることから育児家庭が自由に活用できるように支援金という現金支給を行う。財源は、約 1 兆円程度と想定している。  私たちは児童手当の支給額を 2 万 6000 円に設定する。この額の根拠として、3 つの理由がある。1 つ目は、4 章の東京都江戸川区では、現行制度の給付金に加えて月 額 1 万 3000 円が支給され、合計 2 万 8000 円のため出生率が 23 区トップであることである。2 つ目は、少子化問題に直面する欧州諸国の『子ども手当(家族手当)』の 支給水準が平均約 2 万円であることである。3 つ目は、4 章のフランスの事例においても、約 2 万円の現金支給が行われていることで高い出生率を維持していることであ る。このように、経済的要因から子どもを産みやすくするには 2 万円の水準が必要であると考える。金額は表 4 の通りになる。所得制限については、この政策は経済的 不安を持つ中間所得者、または低所得者層に向けたものなので、高所得者の世帯にはこれまで通りの所得制限を設ける。 政策名  :理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子、第 3 子増額 実施主体 :政府 対象   :家庭において第 2 子、第 3 子であって、       0歳~中学校修了までの児童 ●児童手当の増額による理想子ども数の実現を後押しするインセンティブ ●理想の実現と次世代に向けた児童手当の第 2 子、第 3 子増額  では、経済的要因について政策提言を行っていく。  児童手当の目的は、「児童を養育しているものに児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な 育成及び資質の向上に資する(児童手当法第一条)」としている。  児童手当の増額を行う意義としては、理想の子ども数が産めない最大の要因である経済的負担を、児童手当の増額によって軽減し、理想の子ども数を産める環 境を作ることである。「育児休業の義務化」に加え、国というセクターから高い水準の経済支援を行うことで、社会全体で理想子ども数の実現を後押しするインセ ンティブを作ることができると考える。 ●より良い社会を作るために  不足が懸念される 1 兆円を超える財源を賄うため、所得税の税率を高所得者に向けて 1980 年代後期の水準に戻す。所得税の税率は現在の方が当時と比べ低い水準に あるので、確かに負担はあると考えられるが、その水準を戻すことによって財源を確保する。具体的には、納税者の約 5000 万人のうち、所得が 900 万円以上の高所得 者に対して、現行の課税率から 10%以内の税率を上げる。これは少子化対策の目的で、納税者の所得に応じて新たに課す。税率の変更は育児休業が文化として広がるま での期限付きとし、適用期限は 27 年後の 2042 年までとする。適用期限についてはフランスを参考に設定したが、必要に応じて延長、短縮を検討することとする。この 税制では、児童手当増額分の費用が賄える程度の徴収を想定する。 さらに、個人が一生涯働いて払う税金額は 3000 万円程度と言われており、子どもが産まれて働き、税金を支払うことを考慮すれば、その納めた税金によってこの政策 の財源が補填されるので、将来への投資と考えて支給できると考える。  将来少子化が進行を続ければ、国の社会保障にも危機をもたらす。15 ~ 64 歳までの生産年齢人口は総務省統計局では 2015 年 10 月時点で 7719 万 8000 人と示されて いる。しかし人口減少が続けば、2040 年で 5787 万人に減少すると推計され、約 1933 万人の生産年齢人口が減ることになる。このまま生産年齢人口が減ることになれば、 税を納める人が少なくなり、社会保障の財源が減って介護費や医療費を賄うのが困難になる。結果として、国の社会保障が破綻することが考えられる。よって、少子化 を食い止めるために、この政策を行うことで経済的負担を軽減し、子どもを産みやすい社会にしていく。 7( 表 1) (表 4) 5.3 月曜日の朝刊   「 産 み た い 人 が 産 め る 社 会 」 の 実 現 に 向 け 、 こ れ ま で の 政 府 の 政 策 に あ っ た 「 産 め よ 増 や せ よ 」 の 内 容 か ら 、 土 山 ゼ ミ ナ ー ル は 、 出 産 意 欲 の あ る 人 を 対 象 に 絞 っ た 政 策 を 行 う 。 そ の 副 次 効 果 と し て 、 出 産 意 志 の 弱 い 人 も 「 産 み た い 」 と 思 え る よ う に な り 、 個 人 の 選 択 の 自 由 を 広 げ る こ と で 少 子 化 問 題 の 解 決 を 図 る こ と が 狙 い だ 。   土 山 ゼ ミ ナ ー ル は 二 十 二 日 午 後 、 龍 谷 大 学 で 「 パ パ さ ん 休 業 制 度 」 「 理 想 の 実 現 と 次 世 代 に 向 け た 児 童 手 当 の 第 二 子 、 第 三 子 増 額 」 の 二 つ の 政 策 を 提 言 し た 。 二 つ の 新 た な 政 策 は 、 少 子 化 と い う 深 刻 な 社 会 課 題 を 解 消 す る た め の 第 一 歩 に な る 。 政 策 提 言   決 ま る       産 み た い 人 が 産 め る 社 会 実 現 へ 児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 ) 0 歳~ 3 歳未満 15000 円 3 歳~小学校修了前 10000 円 中学生 10000 円 特例給付 5000 円 児童手当 支給対象年齢 支給額 ( 月 ) 子ども数 0 歳~ 3 歳未満 中学生 3 歳~小学校修了前 第 1 子 第 2 子 第 3 子以降 15000 円 10000 円 10000 円 26000 円 26000 円 26000 円   育 児 負 担 の 女 性 偏 重 を 改 善 す る こ と と 、 経 済 支 援 を 強 化 す る こ と で 出 産 の 際 の 障 壁 を 取 り 除 こ う と 考 え た 。 政 策 実 現 の た め に は 法 改 正 や 財 源 の 確 保 な ど 大 き な 制 度 変 更 も 必 要 と さ れ る が 、 個 人 の 生 活 の 質 の 向 上 や 少 子 化 是 正 の た め に も 取 り 組 む べ き 政 策 で あ る 。
  • 8. なぜ、私たちは「産みたい人が産める社会」を理想に掲げたのか。 それは、個人の自由が尊重され、その選択肢が守られることで 様々な社会問題の原因である少子化の解決に向かうと考えたからである。 また、政府は今まで幅の広い政策を行ってきたが、効果は芳しくなく 今回私たちは異なる視点を持って出産意志の強い人に焦点を当て ①育児負担の女性偏重の軽減 ②経済支援の軽減 を目指し、政策提言を行った。 産みたい人が産めるようになることで、子どもを持つということに対する 価値観が変わり、社会全体で出産意志の強い人が増えるだろう。 社会とは、人の集まりである。 社会問題とは、人にまつわる問題である。 個人の理想が、意志が尊重されず、 産みたくても産めない人がいるという小さなところから 少子化という社会全体を覆う大きな問題へと発展した。 ひとりを大切にし、やさしい世界を目指す。 これからの未来を担う子どもたちが 社会の希望として明るいニュースとなるように 私たちの政策提言を実現することが、今、重要であると考える。 参考文献 ・「男性の育児休業 社員のニーズ、会社のメリット」 中公新書 2004 年 著:佐藤博樹 武石恵美子 ・岩田一政(2014 年)『人口回復』 日本経済新聞出版社 22 2010 年 労働政策研究・研修機構 先行研究・参考文献・主なデータ出典 6.これから 先行研究 ・「日本の出生率回復に関するシミュレーション分析」 Discussion Paper NO.213 2006 年 吉田浩 ・「児童手当による子どもの効用への影響」 国立社会保障・人口問題研究所 2006 年 阿部彩 ・「男性の育児休業取得はなぜ進まないのか-求められる日本男性のニーズに合った制度への変更―」 第一生命経済研究所 2006 年 松田茂樹 ・「育児休業が男性の仕事と生活に及ぼす影響―ウィン - ウィンの観点から―」 学習院大学経済論集 2010 年 脇坂明 ・「なぜ少子化対策が効果を発揮しないのか―ニーズに即した総合的な政策の展開を―」 クォータリー生活福祉研究 2009 年 増田雅暢 8 データ出典 ・厚生労働省「少子化問題等に関する資料」 (http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/dl/s0201-3d.pdf) 「Doing Better for Families」 Multilingual Summaries OECD 2011 ・国立社会保障・人口問題研究所「第 14 回出生動向調査」 (http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14_s/chapter3.html#34) ・データブック国際労働比較 2015「第 2-9 表 合計特殊出生率」 (www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2015/02/2-9.xls) ・内閣府「結婚、出産、子育てをめぐる状況」 (http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26webhonpen/html/b1_s1-1-4.html) ・内閣府「少子化対策」 (http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/index.html) ・厚生労働省「育児・介護休業法について」 (http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html) ・厚生労働省 政策レポート「育児・介護休業法の改正について」 (http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/06/06.html) ・ニッセイ基礎研究所 男性の育児休業取得率は過去最高でも 2.6% (http://www.nli-research.co.jp/report/letter/2012/letter120521.pdf) ・文部科学省「平成 24 年度子どもの学習費調査の結果について」 (http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/01/10/1343235_1.pdf) ・児童手当の最新情報「児童手当の支給金額 2016 年度 ( 平成 28 年 ) (http:// 児童手当金額 .com/kingaku.html) ・厚生労働省「子育て世帯臨時特例給付金 」 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/rinjitokurei/) ・厚生労働省「2014 年海外情勢報告 フランス共和国 社会保障施策」 (http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/15/) ・江戸川区役所「乳児養育手当(ゼロ歳児)」 (https://www.city.edogawa.tokyo.jp/kosodate/kosodate/teateshien/youiku.html) ・児童手当法 (law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO073.html) ・参議院「子ども手当の創設と課題」 (www.sangiin.go.jp/japanese/annai/.../20100701015.pdf) ・民主党の「子ども手当」政策について(中間報告) (www.dpj.or.jp/news/files/kodomo07.3.20.pdf) ・PRESIDENT Online『生涯「税金」はいくら払うか』 (http://president.jp/articles/-/433) 以上、最終閲覧日は全て 2015 年 11 月 9 日である。 ・「父親の育児に関する調査研究―育児休業取得について研究報告書―」 こども未来財団 2011 年発行 主任研究者:武石恵美子 ・「女性の働き方と出産・育児期の就業継続」 労働政策研究報告書 No.22