クリーニング業小規模事業所
経営者の健康調査
北里大学医学部公衆衛生学
堤 明純 ・ 江口 尚
クリーニングと公衆衛生に関する研究委員会
1
調査の目的
クリーニング業界の職場環境の改善
クリーニング業従事者の福祉の充実
ストレスの現状
健康診断・がん検診の受診状況
喫煙、飲酒、運動などの生活習慣
2
クリーニング従事者の悪性新生物に
よる過剰死亡の原因の検討
調査の概要
• 実施時期:2014年9月-10月
• 中央青年部会に所属する545名にアンケー
トを配布し、242名から回答を得た(回収率
44.4%)。
• 男性238名 女性4名
• 平均年齢43.6歳
• 婚姻率71.8%
• 一人暮らし4.1%
年齢階級 人数 パーセント
-29 4 1.7
30-39 50 20.7
40-49 148 61.2
50-59 37 15.3
60- 2 0.8
不明 1 0.4
242 100.0
3
あなたは、現在の仕事や職業生活に関すること
で強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄があり
ますか。
44%
56%
いいえ
はい
労働者健康状況調査
(平成24年)では、
61%が「はい」と回答
している。
4
あなたは、現在の仕事や職業生活に関す
る心配事を相談する人はいますか。
労働者健康状況調査(平
成24年)では、90%が「相
談できる人がいる」と回答
している。
87%
13%
いる
いない
相談相手
1.家族69%
2.同業の知人64%
3.同業以外の知人49%
4.職場の人10%
5.その他5%
(例:コンサルタント、メー
カー等)
5
あなたは、現在、健康に関する心配事が
ありますか。
36%
64%
はい
いいえ
6
あなたは、現在、健康に関する心
配事がありますか。(年齢階級別)
7
35%
33%
49%
65%
67%
51%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
はい いいえ
年齢による差は認めなかった(p=0.176)。
あなたは、現在、健康に関する心配事を
相談する人はいますか。
81%
19%
いる
いない
相談相手
1.家族72%
2.同業の知人24%
3.同業以外の知人28%
4.職場の人5%
5.かかりつけ医24%
6.その他2%
8
あなたは、以下の事柄について悩みや
不安がありますか。(複数回答可)
39.7
33.1
51.2
27.7
17.8
22.7
69.8
47.5
%
9
ストレスの状況について
心理的ストレス反応がある人の割合
【K6で5点以上】
(全国平均:32.7%(国民生活基礎調査(平成25年))
32.8%
重症精神障害がある人の割合
【K6で13点以上】
(全国平均:2.6%(国民生活基礎調査(平成25年))
2.0%
10
クリニーニング従事者のストレスは、全国平均と同程度であった。
自覚症状(1):首筋や肩がこる
35%
25%
23%
17%
ほとんどなかった
時々あった
しばしばあった
ほとんどいつもあった
11
自覚症状(1):首筋や肩がこる
(年齢階級別)
12
32%
35%
42%
33%
22%
24%
19%
24%
26%
17%
19%
8%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(首筋や肩のこり)は年齢によって差は認めなかった(p=0.472)。
自覚症状(1):首筋や肩がこる
(心理的ストレス有無別)
13
26%
40%
19%
29%
30%
20%
26%
11%
心理的ストレス有り
心理的ストレス無し
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(首筋や肩のこり)は「心理的ストレス有り」の人に多かった(p=0.004)。
自覚症状(2):腰が重い
33%
35%
15%
17%
ほとんどなかった
時々あった
しばしばあった
ほとんどいつもあった
14
自覚症状(2):腰が重い
(年齢階級別)
15
32%
35%
28%
37%
30%
49%
20%
14%
13%
11%
20%
10%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(腰が痛い)は年齢によって差は認めなかった(p=0.226)。
自覚症状(2):腰が重い
(心理的ストレス有無別)
16
自覚症状(腰が痛い)は「心理的ストレス有り」の人に多かった(p=0.001)。
23%
38%
31%
37%
17%
15%
30%
9%
心理的ストレス有り
心理的ストレス無し
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(3):よく眠れない
62%
27%
6%
5%
ほとんどなかった
時々あった
しばしばあった
ほとんどいつもあった
17
自覚症状(3):よく眠れない
(年齢階級別)
18
61%
62%
59%
32%
25%
28%
4%
8%
5%
4%
5%
8%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(よく眠れない)は年齢によって差は認めなかった(p=0.880)。
自覚症状(3):よく眠れない
(心理的ストレス有無別)
19
39%
73%
39%
22%
9%
5%
14%
1%
心理的ストレス有り
心理的ストレス無し
ほとんどなかった 時々あった しばしばあった ほとんどいつもあった
自覚症状(よく眠れない)は「心理的ストレス有り」の人に多かった(p<0.001)。
あなたの所定の休日はどのようになって
いますか。
1.週休1日制または週休
1日半制(10%)
2.完全週休2日制(55%)
3.その他の週休2日制
(26%)
4.実質的に完全週休2日
制より休日日数が多いも
の(9%)
5.定期的には週単位で
休暇は取得していない
※( )内は平成24年労働者健
康状況調査結果
20
81%
2% 2%
1% 14%
週休1日制または週休
1日半制
完全週休2日制
その他の週休2日制
実質的に完全週休2日
制より休日日数が多
いもの
定期的には週単位で
休暇は取得していない
クリニーニング業従事者では、週休1日または1.5日が多かった。
あなたの過去1ヶ月間における、時間外・休日
出勤を含めた1日平均の実労働時間は何時間く
らいでしたか。
6時間未満 14%
6時間以上 5%
7時間以上 22%
8時間以上 34%
9時間以上 14%
10時間以上 11%
※平成24年労働者健康状況調
査結果より
8% 7%
12%
12%
17%
44%
6時間未満
6時間以上
7時間以上
8時間以上
9時間以上
10時間以上
21
クリニーニング業従事者では、1日10時間以上労働する人が多かった。
胃がん検診の受診状況
2%
19%
2%
77%
検診を受診し所見有りと通
知された
検診を受診し所見無しと通
知された
検診を受診したが検査結果
は覚えていない
検診を受診していない
男性46% 女性34%
(国民生活基礎調査(平成25年度))
22
胃がん検診の受診状況
(年齢階級別)
23
10%
24%
37%
90%
76%
63%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
検査受診 検査未受診
40歳以上年1回
胃エックス線検査
p=0.009
大腸がん検診の受診状況
1%
23%
2%
74%
検診を受診し所見有りと通
知された
検診を受診し所見無しと通
知された
検診を受診したが検査結果
は覚えていない
検診を受診していない
男性41% 女性37%
(国民生活基礎調査(平成25年度))
24
大腸がん検診の受診状況
(年齢階級別)
25
8%
27%
50%
92%
73%
50%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
検査受診 検査未受診
40歳以上年1回
便潜血検査
p<0.001
定期健康診断の受診状況
13%
26%
2%
59%
定期健診を受け、所見有り
と通知された
定期健診を受け、所見無し
と通知された
定期健診を受けたが、検査
結果の通知を受けていない
定期健診・人間ドックを受診
していない
男性67.2% 女性57.9%
(平成25年国民生活基礎調査)
26
定期健康診断の受診状況
(年齢階級別)
27
18%
44%
55%
82%
56%
45%
39歳以下
40歳から49歳
50歳以上
検査受診 検査未受診 p<0.001
平均睡眠時間
10%
34%
40%
14%
2% 5時間未満
6時間未満
7時間未満
8時間未満
8時間以上
5時間未満8%
6時間未満28%
7時間未満33%
8時間未満22%
8時間以上9%
不詳1%
(平成25年国民生活基礎調査)
28
喫煙の状況
49%
18%
33%
吸わない
禁煙した
吸っている
喫煙の状況
毎日 男性32% 女性10%
時々 男性2% 女性1%
(平成25年国民生活基礎調査)
29
飲酒の状況
25%
27%
48%
ほとんど飲まない
ときどき飲む
ほぼ毎日飲む
飲酒の状況
毎日 男性28% 女性7%
週5-6日 男性6% 女性3%
週3-4日 男性6% 女性5%
(平成25年国民生活基礎調査)
30
運動の状況
59%
19%
14%
8%
毎週行っている運動やスポー
ツは無い
週1回以上軽い運動(息切
れ、動悸を生じない程度)を
行っている
週に1~2回、少なくとも20分
間激しい運動(息切れ、動悸、
発汗を伴う)を行っている
週に3回以上、少なくとも20分
間激しい運動を行っている
運動習慣のある者の割合
男性36% 女性28%
(平成24年「国民健康・栄養調査」)
31
労働時間の状況と心理的ストレス
の有無
32
8% 6%
10%
13%
12%
51%
心理的ストレス有り
9%
7%
11%
11%
20%
42%
心理的ストレス無し
6時間未満
6時間以上
7時間以上
8時間以上
9時間以上
10時間以上
労働時間の状況と「心理的ストレス」の有無には差は無かった(p=0.689)。
心理的ストレスの有無と喫煙の
状況
33
50%
19%
31%
心理的ストレス有り
47%
16%
37%
心理的ストレス無し
吸わない
禁煙した
吸っている
「心理的ストレス」の有無と喫煙の状況には差は無かった(p=0.618)。
心理的ストレスの有無と飲酒の
頻度
34
37%
24%
39%
心理的ストレス有り
18%
29%
53%
心理的ストレス無し
ほとんど飲まない
時々飲む
ほぼ毎日飲む
「心理的ストレス有り」の人の方が、飲酒の頻度は少なかった(p=0.004)。
心理的ストレスの有無と運動の
状況
35
66%
21%
8% 5%
心理的ストレス有り
55%
19%
17%
9%
心理的ストレス無し
毎週行っている運動や
スポーツは無い
週1回以上軽い運動を
行っている
週に1~2回、少なくとも
20分間激しい運動を
行っている
週に3回以上、少なくと
も20分間激しい運動を
行っている
「心理的ストレス」の有無と運動の状況には差は無かった(p=0.217)。
まとめ(1)
1. 一般集団と比較して
心理的ストレスは同程度であった。
筋骨格系についての愁訴が多かった。年齢階
級別での相違は認めなかった。
1日当たりの労働時間は長く、定期的な休日は
少なかった。
年齢階級別のがん検診、定期健康診断・人間
ドックの受診率は低かった。
平均睡眠時間は短かった。
喫煙率、運動習慣のある人の割合は同程度で
あった。
飲酒の頻度が多かった。 36
まとめ(2)
2. ストレスとの関連の検討
「心理的ストレス有り」の人の方が、飲酒の頻度が少な
かった。喫煙と運動については、心理的ストレスとの関
連は認めなかった。
労働時間と心理的ストレスとの関連は認められなかっ
た。
「心理的ストレス有り」の人の方が、自覚症状(筋骨格
系、不眠)の訴えが多かった。
37
ー提言ー
「クリーニング業界の職場環境の改善」
「クリーニング従事者の福祉の充実」
に向けて
がん予防のために、がん検診の受診率の
向上を目的とした、がん予防に関する啓発。
筋骨格系の自覚症状の改善のために、
心理的ストレスへのセルフケアや、ストレッ
チ、作業姿勢に関する情報提供。
長時間労働の改善のための、業務効率化
による労働時間の短縮に向けた情報提供。
生活習慣全般の改善のための情報提供。
38

クリーニング業小規模事業所経営者の健康調査