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JNES-RE-2011-0003
警
戒
区
域
か
ら
持
ち
出
さ
れ
た
車
の
整
備
に
よ
る
整
備
士
の
外
部
被
ば
く
線
量
評
価
に
関
す
る
調
査
報
告
書
独
立
行
政
法
人
 
原
子
力
安
全
基
盤
機
構
警戒区域から持ち出された車の整備による
整備士の外部被ばく線量評価に関する
調査報告書
External exposure dose of car mechanics during the
maintenance of the cars from the risk cautionary area
独立行政法人原子力安全基盤機構
Japan Nuclear Energy Safety Organization
JNES-RE-Report Series JNES-RE-2011-0003
平成 23 年 12 月
December 2011
- i -
JNES-RE-2011-0003
警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する
調査報告書
廃棄物燃料輸送安全部
川上 博人 山田 憲和 佐々木 聡 川﨑 智
本報告書は、原子力災害現地対策本部の原子力安全基盤機構に対する依頼に基づき、
警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量について、①現地
対策本部が東京電力の協力を得て実施した警戒区域で行われているスクリーニングの
状況及び汚染状況の調査結果、②日本自動車販売協会連合会の協力の下に実施した車
の整備工場での汚染状況や整備士の作業状況に関する調査結果、③福島市内で行った
一般的車両の汚染状況の調査結果及び④日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた調
査結果等を踏まえ、整備士の外部被ばく線量の評価を行い、その結果に関し、原子力
安全基盤機構内の外部有識者を含めた検討会の意見を反映する形で、取りまとめたも
のである。
これまで緊急時対応として適用されてきたスクリーニング基準のもとで持出された
車を、福島県の整備工場で整備した場合の年間の整備士の外部被ばく線量は、保守的
に評価しても1mSv/年以下であるとの結論を得た。このことから、通常の使用状況に
よる車両の整備であれば、整備士の健康に特段の影響はないと判断される。
− i −
- ii -
JNES-RE-2011-0003
External exposure dose of car mechanics during the maintenance of the cars from
the risk cautionary area
Radioactive Waste Management and Transport Safety Division
Hiroto KAWAKAMI, Norikazu YAMADA, Satoru SASAKI, Satoru KAWASAKI
At the request of the Local Nuclear Emergency Response Headquarters, JNES has
estimated the effective external exposure dose of car mechanics during the
maintenance of the cars from the risk cautionary area. JNES investigated the
contamination of the cars from the risk cautionary area and of the average cars
at Fukushima city cooperated by the Japan Automobile Dealers Association. Data
of screed cars by the Local Nuclear Emergency Response Headquarters is also
considered in.
Effective external exposure dose of car mechanics treating the cars screened
with the emergency situation screening level is estimated to be less than 1mSv/y
under the conservative conditions. This result shows that particular health
concern isn’t necessary for them.
− ii −
- iii -
目 次
1. はじめに ................................................................. 1
1.1 調査の概要 ............................................................ 1
1.2 調査の経緯 ............................................................ 1
1.3 整備工場において実測された表面汚染に関する計数率及び空間線量率の例 .... 2
2. 警戒区域を出入りする車のスクリーニング及び汚染の状況 ..................... 2
2.1 スクリーニングの実施要領及び判断基準 .................................. 2
2.2 スクリーニングの実施状況 .............................................. 2
2.3 車の汚染状況 .......................................................... 3
2.4 汚染の対象部位と主な要因 .............................................. 5
2.5 車の汚染状況と整備士の外部被ばくとの関係 .............................. 5
3. 整備士の外部被ばく線量に関する試算結果 ................................... 6
3.1 整備士の外部被ばく線量の試算の考え方 .................................. 6
3.2 単位時間当たりの外部被ばく線量の換算係数 .............................. 6
3.2.1 車の外表面汚染車両による車外作業における外部被ばく ............... 7
3.2.2 エンジンルーム部汚染車両による車外作業における外部被ばく ......... 7
3.2.3 車内の点検・整備における外部被ばく ................................ 8
3.3 単位時間当たりの外部被ばく線量の試算 .................................. 8
3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 ................................ 9
3.5 点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算 ................... 10
3.5.1 外部被ばく線量の試算 ............................................. 10
3.5.2 外部被ばく線量の試算の保守性の評価 ............................... 10
3.6 整備士の内部被ばく及び皮膚被ばくの評価 ............................... 11
3.7 その他の一般的車両を含めた被ばく上の留意事項 ......................... 12
4. 結論 .................................................................... 13
− iii −
- iv -
別紙 1:車のスクリーニングの実施状況
別紙 2:代表的車両の汚染状況のサーベイ結果
別紙 3:警戒区域からの持ち出し車両の汚染状況のデータ分析
別紙 4:いわき市の車の整備工場における汚染状況等の調査
別紙 5:表面汚染密度と空間線量率の関係
別紙 6:GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係
別紙 7:車の点検・整備の時間配分と離隔距離
別紙 8:車の整備士の外部被ばく線量の試算
別紙 9:警戒区域の車両の割合
別紙 10:福島県内の一般的車両を含めた汚染状況調査
別紙 11:本調査の関係機関一覧
− iv −
- v -
表 目 次
表3.1 GM サーベイメータの計数率から空間線量率への換算係数のまとめ ................ 8
表3.2 点検・整備作業に係る離隔距離等の時間配分 ............................................... 9
表3.3 点検・整備作業に係る単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算 ..... 9
表3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 ................................................ 10
表3.5 車の整備士の外部被ばく線量の試算結果 .................................................... 10
表3.6 車の整備士の外部被ばく線量の保守的評価とその条件 ...............................11
表3.7 空気中放射能濃度測定結果 ......................................................................... 12
− v −
- 1 -
1.はじめに
1.1 調査の概要
本報告書は、原子力災害現地対策本部(以下、「現地対策本部」という。)の原子力
安全基盤機構(以下、「当機構」という。)に対する依頼に基づき、警戒区域から持ち
出された車の整備による整備士の外部被ばく線量について、①現地対策本部が東京電
力の協力を得て別途実施した警戒区域で行われているスクリーニングの状況及び汚染
状況の調査結果、②日本自動車販売協会連合会の協力の下に実施した車の整備工場で
の汚染状況や整備士の作業状況に関する調査結果、③福島市内で行った一般的車両の
汚染状況の調査結果及び④日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた調査結果等を踏
まえ、整備士の外部被ばく線量の試算を行い、その結果に関し、当機構内の外部有識
者を含めた検討会において審議を行い、そこでの意見を反映する形で、最終的な取り
まとめを行ったものである。
整備士の外部被ばく線量の試算に際しては、原子力安全委員会の放射線防護に関す
る助言に関する基本的考え方に基づくとともに、IAEA の安全指針等を参酌して、現実
的と考えられる値を基にパラメータを選定し試算を行うともに、保守的な場合も合わ
せて検討し、両ケースについて評価した。
これまで緊急時対応として適用されてきたスクリーニング基準のもとで持ち出され
た車を、福島県の整備工場で整備した場合の年間の整備士の外部被ばく線量は約 360
μSv/年と試算され、保守的な評価を行っても1mSv/年を超えないとの結論を得た。
このことから、通常の使用状況による車両の整備であれば、整備士の健康に特段の影
響はないと判断される。
1.2 調査の経緯
いわき市の車の整備工場において、警戒区域から持ち出され整備に出された自動車
の内部を測定した結果、1.3項に示すような高い線量率が計測され、整備士が心配し
ているので調査をするよう現地対策本部に対し要請があった。また、県の「放射能の
問い合わせ窓口」にも同様の意見が寄せられた。
このため、現地対策本部は、東京電力の協力を得て、警戒区域で行われているスク
リーニングの状況及び汚染の状況を調査するとともに、この結果を踏まえ整備士の外
部被ばく線量を評価するよう当機構に依頼した。
当機構は、現地対策本部の要請に基づき、整備士の外部被ばく線量の試算を行うた
めに、スクリーニング会場(J ヴィレッジ)において車両の汚染状況等の調査を行うとと
もに、現地対策本部が行ったいわき市の車の整備工場における実態調査、更に福島市
内で行った一般的車両の汚染状況の調査等の結果を取りまとめた。
この結果について当機構内の外部有識者を含めた検討会において審議を行い、そこ
での意見を反映する形で、最終的な取りまとめを行った。
− 1 −
- 2 -
1.3 整備工場において実測された表面汚染に関する計数率及び空間線量率の例
いわき市の整備工場に持ち込まれた車は、9 月 15 日までの警戒区域からの車持ち出
しのスクリーニング基準(100kcpm)を満足しているものであるが、整備工場において実
測された表面汚染に関する GM サーベイメータによる計数率及び空間線量率は以下のと
おりであり、高い計測値への懸念が寄せられた。
・ ラジエータ近傍の部位の表面汚染に関する計数率 (70 kcpm)
・ ラジエータ部の空間線量率 (10μSv/h)
・ タイヤをはずした際のブレーキディスク、
ブレーキパッド周りの空間線量率 (25μSv/h)
・ 室内の空間線量率 (10μSv/h)
2.警戒区域を出入りする車のスクリーニング及び汚染の状況
警戒区域から持ち出される車は、次の2箇所においてスクリーニングされている。
・ 現地対策本部における一時立入による持ち出し車両のスクリーニング
・ 東京電力が運営するJヴィレッジにおける公益一時立入車両及び東京電力関係
の業務用車両のスクリーニング
2.1 スクリーニングの実施要領及び判断基準
これまで実施されてきている警戒区域を出入りする車のスクリーニングの実施要領
及び判断基準は下記のとおりである。
・ これまでの経験からワイパー、タイヤ、窓ガラスのゴムパッキンが、比較的汚
染レベルが高いことが多いが、除染や拭き取りで基準値以下となることから、
車体外部のこれらの対象部位等及び内部の運転席シートの表面汚染を測定しス
クリーニングしている。
・ スクリーニングの表面汚染の判断基準は、100kcpm としている。このスクリー
ニング基準は、現地対策本部が、原子力安全委員会の助言を受けて決めたもの
であるが、測定部位等についての取り決めはない。
但し、このスクリーニング基準は、原子力安全員会による8月29日付けの助言(「避
難区域(警戒区域)から退出する際の除染の適切な実施について」)等を踏まえ、現地
対策本部により9月16日から 13kcpm に変更された。
このため、基準改訂前の 100kcpm を判断基準としていた時の車両を中心に、車の整
備士の外部被ばく評価を行う。
2.2 スクリーニングの実施状況
これまで実施されてきている警戒区域を出入りする車のスクリーニングの実施状況
は下記のとおりである(別紙1参照)。
− 2 −
- 3 -
(1)現地対策本部における一時立入による持ち出し車両のスクリーニングの実施状
況
現地対策本部のスクリーニング場から持ち出された6月から9月15日ま
での期間の車両は 4,206 台である。この内、100kcpm を超えた車両は 67 台
(1.6%)であったが、車の外表面の拭き取り除染により 100kcpm を超える車
両はなくなっている。
この点から、一時立入による持ち出し車両は車の外表面汚染が主体である
と理解できる。
(2)東京電力が運営するJヴィレッジにおける公益一時立入車両及び東京電力関係
の業務用車両のスクリーニング
東京電力がJヴィレッジで実施している警戒区域を出入りする車両のスク
リーニングの状況は以下のとおりである。
・ スクリーニング場を通過した7月から9月15日までの期間の車両総数は
17,524 台である。
・ 月当たりの通過車両はほぼ一定であり、日当たりに換算すれば通過車両は約
230 台である。東京電力関係の業務用車両が警戒区域内外を往復している可能
性もあり、上記の累計台数が全て警戒区域外に持ち出されていることにはな
らない。
・ 100kcpm を超えた車両は 132 台(0.8%)であったが、車両表面に対する高圧ジ
ェット洗浄後においても 100kcpm を超える車両が 30 台あった。このことはエ
ンジンルーム内部も汚染されている可能性を示唆している。
2.3 車の汚染状況
車の整備士の外部被ばく評価に資するため、東京電力は現地対策本部の依頼に基づ
き、汚染した車両について、車両の表面とエンジンルーム内の汚染状況に関して、GM
サーベイメータによる計数率及び空間線量率の測定を行った。対象とした車両は、次
の 3 種類の車両で、高カウント及び中カウントの車両については、通常の方法により
車両表面の除染作業を行い、除染後の測定も行った。
(1)高カウント車両(最大値が 100kcpm を超える車両)
(2)中カウント車両(最大値が 10 kcpm を超える車両)
(3)低カウント車両(最大値が 10 kcpm 未満の車両)
この結果、以下の点を確認した。
・ 除染後において 100kcpm を超える車両はなかった。
・ 除染の前後において、ボンネットを開放してエンジンルーム部の測定も行っ
たところ、ラジエータ上部及びエアフィルタ等が比較的高い計測値を示した。
(別紙2参照)
− 3 −
- 4 -
なお、上記のうち、(1)、(2)については、東京電力福島第一原子力発電所構内に事
故発生後も長期間にわたり停留していた車両であった。
当機構は車の整備士の外部被ばくの観点から、上記測定結果のデータ分析を行うと
ともに、東京電力の協力を得て、車の整備士の作業環境における空間線量率を評価す
るために必要な情報を得るための現地調査を行った。その結果、以下のような点が確
認された(別紙3参照)。
・ 車の外表面の除染の効果により、除染後は外表面の計測値はエンジンルーム
部とほぼ同等のレベルまで低減する。
・ 車の内部が汚染された車両で測定された GM サーベイメータによる計数率と空
間線量率における除染前の関係は約 0.66μSv/h/kcpm である。
・ 車の整備士の外部被ばく線量に影響を与える空間線量率は距離とともに低減
する。汚染の広がり等の状況にもよるが、50cm の位置の値は 1cm の位置の値
の 1/5 に低減する。
更に、日本自動車販売協会連合会の協力の下に、車の整備工場で汚染状況等及び除
染に関する実態調査を行った。汚染状況等に関する調査においては、以下の項目に着
目して調査を行い、被ばく評価に反映した。
(1)車の整備工場でなければ測定が困難な部位の汚染状況の調査
(車のボディーの内面、ブレーキディスクやブレーキパッド、フィルタ内部等)
(2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認
(現場作業確認と聴き取り調査等)
(3)整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被ばく
に係る調査
(4)車両の除染に関する調査
(5)一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に係る調査
車の整備工場でなければ測定が困難な部位の汚染状況の調査では、通常では外表面
やエンジンルームからアクセスできない車体内部のワイパーの排水口雨どい部が汚染
されていることが確認された(別紙4参照)。
警戒区域以外を走行する一般的車両と警戒区域から持ち出した車両の差異について
は、①いわき市の車の整備工場が独自に採取した調査データ、②日本自動車整備振興
会連合会が取り纏めた、福島県自動車整備振興会および、日本自動車工業会で独自に採取
した調査データの提供を受けるとともに、福島市内の車のディーラー等における一般
的車両の汚染状況調査に基づき分析を行った。
この結果、①や②で調査した一般的車両の中には、数%程度 13kcpm を超える汚染が
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- 5 -
確認された車両が含まれたが、事業者による履歴調査により警戒区域を頻繁に走行し
た車両であることが判明したとともに、当機構が調査を行った福島市内の一般的車両
では、一部局所的に汚染された部位はあるものの、大部分の車両はほとんど BG レベル
あるいはそれ以下の汚染レベルであった(別紙10参照)。
2.4 汚染の対象部位と主な要因
汚染の状況は、車の外部の表面汚染と車の内部のエンジンルーム部の汚染に大別さ
れ、車の外部はワイパー、タイヤ、ドア部パッキン等であり、車の内部はラジエータ、
エアフィルタ、ワイパーによる排水口雨どい等であることが確認された。
その主な要因は次のように想定される。
(1)車の外部の表面汚染
・ 外表面の直接汚染
・ 走行に伴う汚染泥等の付着
これらは、別紙1に示すように、現地対策本部における一時立入による車の
持ち出し車両の調査において、100kcpm を超えた全ての車両が外表面の拭き取り
作業により 100kcpm 未満になっていることからも確認できる。
(2)車のエンジンルーム部の汚染
・ 走行に伴い汚染した粉じんがエンジンルーム内へ取り込まれることによる汚
染
・ 雨天時の走行に伴い、前面ガラスに付着した粉じんがワイパーにより排水口
雨どい付近に集積することによる汚染
これは、エンジンルーム部でラジエータ、エアフィルタ、ワイパーによる排
水口雨どい等が比較的高い値を示すことから確認できる。
その他、原子炉建屋内の水素爆発時にサイト内に駐車されていたことで、爆風によ
りエンジンルーム部が直接汚染された車両があり、こうした車両が極めて高い線量率
を示すことも当機構の現地調査対象等で確認されている。このような車両は特殊な車
両で、東京電力により安全管理がなされるべきものである。
2.5 車の汚染状況と整備士の外部被ばくとの関係
整備士の外部被ばく線量の試算は、空間線量率に基づき評価を行う必要があるが、
スクリーニング基準(13kcpm/100kcpm)は GM サーベイメータの計数率であるため、計
数率(kcpm)から空間線量率(μSv/h)に変換するための線量換算係数が必要となる。こ
の線量換算係数は車の汚染状況により大きく左右されることが確認された。このため、
3 項に記すように、次の 3 つに分類して試算することとした。
(1)車の外表面汚染のときの車外作業による外部被ばく
(2)エンジンルーム部の汚染による外部被ばく
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(3)車の外表面汚染のときの車内作業による外部被ばく
また、1.3項で記したいわき市の整備工場における表面汚染に関する計数率の例と
上記の車の汚染状況のように、局所的に汚染された部位に、サーベイメータを近接も
しくは、ほぼ直付けして空間線量率を測定すると高い空間線量率を示すが、汚染が局
所的な場合ほど距離とともに大きく低減することからも、整備士の外部被ばく評価の
試算を行う場合には汚染された部位の形状、大きさや汚染部位からの離隔距離等の考
慮が必要であることが確認された。そのため、3 項に記す評価を行った(別紙5及び別
紙6参照)。
3.整備士の外部被ばく線量に関する試算結果
3.1 整備士の外部被ばく線量の試算の考え方
警戒区域から持出された車の点検・整備による整備士の外部被ばく線量評価に際し
ては、原子力安全委員会が定めた「放射線防護に関する助言に関する基本的考え方につ
いて」(参1)
及び「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の
処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(参 2 )
に基づき、現存被ばく状
況下の一般公衆としての整備士の外部被ばく線量を評価する。この際、持ち出された
車の点検・整備による外部被ばく線量の増分について評価する。また、IAEA の安全指
針「過去の活動および事故のための修復プロセスの実施」(参 3 )
における線量評価の考
え方を参酌し、まず現実的な試算を行い、更にその保守性を確認する方法を採用した。
また、外部被ばく線量の具体的な評価方法については、災害廃棄物に対する評価方法(参
4)
等を参考に、車の点検・整備の特徴を加味した評価を行った。
3.2 単位時間当たりの外部被ばく線量の換算係数
これまで多くの関係機関により測定されているモニタリングの結果により、今回の
事故による土壌の汚染の主な放射性核種は Cs-134 と Cs-137 であることが確認されて
いることから(参 5 )
、土埃等を介して汚染されていると考えられる車の汚染についても
主な放射性核種は Cs-134 と Cs-137 であると考えられる。事故直後においては I-131
の影響も危惧されたが、この核種は比較的短半減期であるため、車のスクリーニング
が開始された時点では既に十分に減衰しており、車の整備士の年間の外部被ばく線量
評価には有意な影響は与えないと判断される。このため、Cs-134 と Cs-137 による外部
被ばく線量評価を行う。
車の点検整備作業は、車外作業と車内作業に分けられる。車外作業については、車
の汚染状況とスクリーニングの基準を勘案して、線源が車の外表面汚染の場合とエン
ジンルーム部汚染の場合に分け、車内作業については車の中心で表面汚染に囲まれた
場合を想定して外部被ばく線量換算係数の試算を行う(別紙5及び別紙6参照)。
− 6 −
- 7 -
3.2.1 車の外表面汚染車両による車外作業における外部被ばく
(1)外部被ばくのモデル
一時立入により警戒区域外に持ち出された車両は、主に外表面が直接汚染されてい
ると想定される。そしてスクリーニング基準を満足する車両については、拭き取り除
染等が行われていないので、外表面の汚染がそのまま残っている可能性がある。
このため、GM サーベイメータの通常のβ(γ)線に対する検出効率を用いて表面汚染
密度を求め、その線源からの空間線量率を算出して、整備士の外部被ばく線量評価を
行う。この場合は車体の外表面全体が一様に汚染されていると想定する。
(2)単位表面汚染に対する単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数
車全体が一様に汚染されていることを想定し、直接外部被ばくを受ける汚染面積を
4m2
と仮定し、Cs-134 と Cs-137 の混合物に対する GM サーベイメータの換算係数
4.27 Bq/cm2
/kcpm と表面汚染密度と空間線量率の関係 4.39E-02 μSv/h/Bq/cm2
を用
いると、表面から1cm の地点における線量換算係数は約 0.187μSv/h/kcpm となる。
このような状況下における距離による低減は 50cm の位置で約 1/5、2m の位置で約 1/10
となる(別紙5及び別紙6参照)。
3.2.2 エンジンルーム部汚染車両による車外作業における外部被ばく
(1)外部被ばくのモデル
エンジンルーム部汚染車両の外部被ばく線量換算係数の試算に当たっては、汚染さ
れている対象部位の表面形状が複雑であり、外表面の汚染密度を直接測定することが
困難である。GM サーベイメータをラジエータやエアフィルタ等に近接しても、β線を
効率良く検出できず、γ線を主体に計測している可能性がある。このため、Cs-134 と
Cs-137 を線源とする場合の GM サーベイメータのγ線に対する検出効率の検討を行っ
た。その結果、GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係は、外表面に付着した
汚染物質がある程度除染された後は、γ線の影響を受けていることが確認された。こ
のため、GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係は、現地調査における測定値
を用いて設定することとした(別紙3及び別紙6参照)。
(2)単位表面汚染に対する単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数
エンジンルーム部の汚染状況は外部からの GM サーベイメータによる計測では正確に
は把握できない。9月15日以前のスクリーニング基準下においては、警戒区域から
持出された車両で拭き取り除染が行われた車両は少数であり、高圧ジェットによる洗
浄も行われていないので、車の整備工場に持ち込まれる車の汚染の状況は除染前の状
態を想定することが適当と思われる。そのため、東京電力が運営するJヴィレッジで
− 7 −
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行われた調査の外表面測定における GM サーベイメータと空間線量率の関係から、除染
前の 0.66μSv/h/kcpm を用いて評価することとした。
2.4項で記したとおり、走行に伴うエンジンルーム部の主な汚染部位はラジエー
タ、エアフィルタ及びワイパーによる排水口部等であることが確認されたため、それ
ぞれの部位の大きさを想定して矩形の平板でモデル化した。整備士の作業距離をパラ
メータとして距離による低減を求め、現地調査における距離による低減効果と比較的
一致する体系(2m×2m、汚染面積 4m2
)を前提にした距離による低減効果を用いること
とした。このような状態における距離による低減効果は線源から 1cm の基準点に対し、
20cm の地点で約 2/5、50cm の地点で約 1/5、2m の地点で約 1/10 である。
3.2.3 車内の点検・整備における外部被ばく
車内の点検・整備作業における外部被ばくについては、保守的評価を行うために全
面汚染された車内の中心で作業するものと仮定し、乗用車を念頭に 0.107μSv/h/kcpm
の線量換算係数を用いる(別紙5参照)。
以上の結果をまとめて表3.1に示す。
表3.1 GM サーベイメータの計数率から空間線量率への換算係数のまとめ
汚染
領域
汚染対象の
大きさ
汚染部
位からの
距離(cm)
表面汚染に関する
GM 計数率から空
間線量率の換算係
数(μSv/h/kcpm)
表面汚染密度
(kcpm)の空間線
量率(μSv/h)へ
の換算方法
別紙における
換算方法の根
拠の記載場所
車の
外表面
車体外表面
【2m×2m】
1 1.87E-01 Cs に対する
検出効率を使用
別紙 5 の 3.5
項及び別紙 6
の 1 節
50 3.56E-02(約 20%)*)
200 1.63E-03(約 10%)
エンジ
ンルー
ム部
特定部位
【2m×2m】
1 6.60E-01 現地調査に基づ
く実測値を使用
別紙 3 の 1.2
項及び 2.2 項20 2.64E-01(約 40%)
50 1.32E-01(約 20%)
200 6.60E-02(約 10%)
車内
乗用車【4.5m×
1.7m×1.2m】
車内
中心
1.07E-01
Csに対する検出
効率を使用
別紙5の4節
*) ( )内の数値は、表面(1cm)での換算係数に対する比
3.3 単位時間当たりの外部被ばく線量の試算
車両別の単位時間当たりの外部被ばく線量を試算するために、整備士と汚染部位と
の離隔距離の関係を、車の法定点検・整備項目に基づき調査・整理した。この結果に
− 8 −
- 9 -
基づき、線源が車の外表面の場合とエンジンルーム部の場合の車外点検作業や準備作
業、車の中心で表面汚染に囲まれた場合の車内点検作業に分類し時間配分を行うとと
もに、各作業の汚染部位との離隔距離を表3.2のように設定する。(別紙7参照)
表3.2 点検・整備作業に係る離隔距離別等の時間配分
点検箇所とアクセス 離隔距離等(cm) 時間配分割合(%)
車外点検
(足廻り)
(下廻り)
50 30
車外点検
(エンジンルー
ム部)
20 20
40
50 20
車内点検 (運転席等) 車内中心 10
車外点検 (準備作業等) 200 20
車の代表的な汚染形態として、車の外表面汚染とエンジンルーム部が汚染した車両
を対象に、車の整備士の単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算を行った。
この結果を表3.3に示す(別紙8参照)。
表3.3 点検・整備作業に係る単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算
点検・整備場所
離隔距離等
(cm)
外部被ばく線量換算係数
(μSv/h/kcpm)
車外(足回り、下回り) 50 3.56E-02×0.3
エンジンルーム部
20 2.64E-01×0.2
50 1.32E-01×0.2
車内 車内中心 1.07E-01×0.1
準備 200 6.60E-02×0.2
合 計 1.14E-01
3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件
持ち出された車両の汚染の割合は、これまでのスクリーニング結果に基づき表3.4
のように設定する。また、福島県の車の整備士が汚染車両を取り扱う割合については、
福島県内の車両総数に対する警戒区域内の車両の割合 6%を用いて、年間の作業時間
2,000 時間から 120 時間に設定する。この値(6%)はスクリーニングにより持ち出され
た車両の実績(0.27%)と比較すると十分保守的な割合である(別紙9参照)。
− 9 −
- 10 -
表3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件
汚染レベル
(上限値を想定)
13kcpm
(13kcpm 未満の車両)
100kcpm
(13kcpm~100kcpm の車両)
13kcpm 以上に汚染した車両
の割合(%)
70
(~9/15 の実績は 72.4%)
30
(~9/15 の実績は 27.6%)
100
(9/16 以降)
0
(9/16 以降)
整備士の年間作業時間(hr) 2,000
福島県内の車両総数に対す
る警戒区域内の車両の割合
(%)
6
(6 月~9/15 の期間に持ち出した車両の実績は 0.27%)
3.5 点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算
前項までの条件に基づき、点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算
を行った(別紙8参照)。
3.5.1 外部被ばく線量の試算
外部被ばく線量の試算結果を表3.5に示す。
表3.5 車の整備士の外部被ばく線量の試算結果
区 分 車の整備士の外部被ばく線量(μSv)
9/15 までの持ち出し車両による合計 267/半年
9/16 以降の持ち出し車両による合計 88.7/半年
年間の外部被ばく線量 356/年
3.5.2 外部被ばく線量の試算の保守性の評価
整備士の外部被ばく評価のための線量換算係数には不確かさがある。GM サーベイメ
ータは外表面の表面汚染密度を測定することが本来の用途である。このため、内部エ
ンジンルーム部に係る評価については、Jヴィレッジにおける GM サーベイメータの計
数率と電離箱測定器による空間線量率の実測値から換算係数を求めているが、外表面
が洗浄や降雨により洗い流され、これに対して長距離走行によりエンジンルーム部の
汚染が大きくなると、γ線の寄与が大きくなり GM サーベイメータの検出効率は低下す
る。このため、GM サーベイメータによる測定位置でのγ線の寄与が大きくなる等の汚
染状況の変化に対応して、線量換算係数の不確かさは徐々に大きくなると推定される。
上記以外にも外部被ばく線量の試算には種々の不確かさが伴う。これらの中には整
備士の作業位置や作業時間に関する不確かさが含まれるが、上記の要因と比較すると
比較的小さく、その他の項目の保守性に包絡されると考えられる。
今回の評価は、汚染レベルを全てスクリーニング基準の上限値であるとして試算し
− 10 −
- 11 -
ており、全体の平均値との間には数倍程度の差異があり、これらの不確かさを十分に
安全側に包絡している。しかしながら、線量換算係数の不確かさを保守的に考慮しう
る項目について、汚染領域毎に想定した場合の評価例を表3.6に示す。
表3.6 車の整備士の外部被ばく線量の保守的評価とその条件
外部被
ばく線
量の試
算結果
現 実 的 な 試 算
値(μSv/年)
356
保 守 的 な 評 価
値(μSv/年)
815
線量換
算係数
の不確
かさの
要因
外表面汚染
GM サーベイメータについては、計数率が増大すると、
数え落としが有意になる可能性がある。これらは一般
的には計測器の測定誤差の範囲内に抑えられているの
で、計測器誤差 25%を考慮した。
エンジンルー
ム部汚染
持ち出し車両は警戒区域内でほとんど走行していない
と想定されるものの、内部汚染を考慮して、GM サーベ
イメータによるγ線のみの係数を仮定して、換算係数
1.62 μSv/h/kcpm を用いるものとし、2.45 倍を想定
した。
車内作業
車体の全体が 100kcpm に汚染されていることを想定し
ているので保守的だが、運転席近傍で高くなる可能性
があることも勘案して 2 倍を想定した。
年間の整備士の外部被ばく線量は 356μSv/年であるが、上記の各項目に対して不確
かさを見込んで保守的評価を行っても1mSv/年以下である。
3.6 整備士の内部被ばく及び皮膚被ばくの評価
整備工場は車両の搬出入のため大きな開口部を有しており換気率が高いため、整備
工場内部に放射性物質が残留する可能性は小さい。また、エアコンフィルター、エア
クリーナエレメント等は、エアブローによる清掃を避け新品と交換することで、これ
らから放射性物質が舞い上がることも防止できる。車の整備工場における空気中放射
能濃度の測定値(表3.7)を用いて、年間の作業時間にわたり、その空気を呼吸す
るとした場合の吸入被ばく線量は、21μSv/年である。(別紙4参照)
したがって、車の整備士の外部被ばく線量に、内部被ばく線量を加味しても、合計
が1mSv/年を超えることはないと判断される。
− 11 −
- 12 -
表3.7 空気中放射能濃度測定結果
皮膚被ばくについては、ホットスポット的に汚染が高い部位であるラジエータのフ
ィン付け根部や表面に直接触れる点検作業は少なく、ワイパー排水口雨どい近傍は、
通常の作業ではアクセスできないことから、皮膚被ばくの恐れは少ないと考えられる。
なお、整備士は多くの作業で手袋を着用するため、汚染部位を素手で直接触ること
は少ないが、放射性物質を含む埃等が手袋に付着すると、作業期間中の長時間にわた
って皮膚被ばくを受ける可能性があることから、定期的に手袋を交換することが望ま
しい。
3.7 その他の一般的車両を含めた被ばく上の留意事項
警戒区域から持ち出されたような、ある程度の汚染が想定される車両以外について
も、汚染状況を把握するため、福島県内の一般的車両を含めた汚染状況調査を行った。
いわき市の車の整備工場が自主的に調査した一般的車両を含めた汚染状況、日本自
動車整備振興会連合会が取り纏めた、福島県自動車整備振興会及び日本自動車工業会が
独自に行った福島県内の整備工場やディーラー等の車両の汚染状況及び当機構が日本
自動車販売協会連合会の協力の下で行った福島市内のディーラーの一般的車両の汚染
状況の調査結果を踏まえ、整備士及び車の運転手の外部被ばく線量の推定を行い、そ
の結果をまとめた(別紙10参照)。
(1)日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた測定車両 168 台の内、大部分の車両
の汚染レベルは地表面の汚染状況で定まる BG レベル(地表面より 1m で測定)と同
等あるいはそれ以下であり、明確に汚染が確認される車両の割合は少なかった。
13kcpm を超える汚染レベルを示した車両は 4 台であった。
(2)いわき市の車の整備工場が自主的に調査した一般的車両を含めた空間線量率の
汚染状況調査で、測定された車両 160 台(上記と重複する車両を除く)の内、大
部分の車両の汚染レベルはバックグラウンド(以下「BG」という。)レベルと同等
あるいは若干上回る程度であった。10μSv/h を超える汚染レベルを示した車両は
3 台であった。
核 種 134
Cs 137
Cs
車の整備工場内の空気中放射能濃度(Bq/cm3
) 3.9E-7 7.2E-7
実効線量換算係数(Sv/Bq) 9.6E-9 6.7E-9
呼吸率(m3
/時間) 1.2
作業時間(時間/年) 2000
吸入被ばく線量(μSv/年) 21
− 12 −
- 13 -
(3)当機構が福島市内のディーラー及び整備工場等で行った汚染状況調査において
は、13kcpm を超えるようなあるいは 10μSv/h を超えるようなレベルの汚染車両は
確認されなかった。
但し、上記の測定は車両表面の近傍で直付けに近い形で測定されたもので あり、
13kcpm あるいは 10μSv/h を超えるような測定値は、約 50cm 程度離れると、約 1/5 以
下に低減するので、外部被ばく上問題になるような値ではない。
4.結論
現在のスクリーニングによる持ち出し車を、福島県の整備工場で整備した場合の年
間の整備士の外部被ばく線量は保守的評価を行ったが、年間1mSv/年以下であること
が確認された。したがって、健康上の影響はないと判断される。
なお、下記の2点に留意する必要がある。
(1)汚染車両の外表面がある程度除染され、長距離走行によりエンジンルーム部が
主な汚染要因となる場合には GM サーベイメータでは適切なスクリーニングが出来
ない。このような場合には、NaI シンチレーションサーベイメータによる空間線量
率測定も併用することが望ましい。
(2)東京電力の業務用車両は、エンジンルーム部の汚染が蓄積される可能性がある
ので、別途適切な管理が必要である。
本調査に際しては、原子力災害対策本部原子力被災者生活支援チームの放射線班及
び住民安全班、現地災害対策本部総括班の指導の下、国土交通省整備課及び福島運輸
支局、経済産業省自動車課から情報の提供を頂きながら、関係機関の協力を得て実施
した。協力頂いた関係機関と調査対象の車両数を別紙11に示す。
− 13 −
- 14 -
参考文献
(参 1) 原子力安全委員会「放射線防護に関する助言に関する基本的考え方につい
て」(H23.5.19)
(参 2) 原子力安全委員会「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を
受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」
(H23.6.3)
(参 3) IAEA「過去の活動および事故のための修復プロセスの実施」(WS-G-3.1)
(参 4) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除
く)の災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価につ
いて」(環境省 災害廃棄物安全評価検討会 第3回 資料4)
(参 5) MEXT「放射線モニタリング情報 土壌モニタリングの測定結果」
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/
− 14 −
1-1
別紙1
車のスクリーニングの実施状況
(単位:台)
実施
月
実施場所
ス ク リ ー
ニ ン グ 総
数
13kcpm 未
満
13kcpm ~
100kcpm
(除染前)
>100kcpm
(除染前)
>100kcpm
(除染後)
6月
東京電力
J ヴィレッジ調査
- - - - -
現地対策本部
一時立入による車
両の持ち出し調査
568 428 120 20 0
合計 568 428 120 20 0
7月
東京電力
J ヴィレッジ調査
6704
5994
660 50 14
現地対策本部
一時立入による車
両の持ち出し調査
1954 1508 426 20 0
合計 8658 7502 1086 70 14
8月
東京電力
J ヴィレッジ調査
6975 6246 684 45 13
現地対策本部
一時立入による車
両の持ち出し調査
1459 1023 429 7 0
合計 8434 7269 1113 52 13
9月
(9/15
まで)
東京電力
J ヴィレッジ調査
3845 3458 350 37 3
現地対策本部
一時立入による車
両の持ち出し調査
225 85 120 20 0
合計 4070 3540 470 57 3
合計
東京電力
J ヴィレッジ調査
17524
15698
(89.6%)
1694
(9.7%)
132
(0.8%)
30
現地対策本部
一時立入による車
両の持ち出し調査
4206
3044
(72.4%)
1095
(26.0%)
67
(1.6%)
0
合計
21730
18742
(86.3%)
2789
(12.8%)
199
(0.9%)
30
注:除染を行っても 100kcpm を下回らない車は持ち出されていない。
1−1
2- 1
別紙2
代表的車両の汚染状況のサーベイ結果
本調査は現地対策本部の依頼に基づき、東京電力が行ったものである。
1.調査結果のまとめ
車両の汚染状況のサーベイの結果(サンプル)
注:すべて車両表面より 1cm 離れて計測
2.各車両の汚染結果の詳細
上記の各車両について、除染前、所定の手順により除染した後、及びボンネットを開放し
た状態でのエンジンルーム部の測定結果を以下に示す。
測定対象
2−1
2- 2
2−2
2- 3
2−3
2- 4
2−4
2- 5
2−5
2- 6
2−6
3- 1
別紙3
警戒区域からの持ち出し車両の汚染状況のデータ分析
東京電力が行った調査結果(別紙2)及び当機構が外部被ばく線量評価の妥当性確
認のために行った追加的調査結果に基づき汚染状況のデータ分析を行った。
1.東京電力が運営する J ヴィレッジにおける調査
1.1 除染の効果
Jヴィレッジにおける高圧ジェットによる除染の効果を図1に示す。この図より、
除染は大きな効果があり、除染後は、内部の汚染とほぼ同等のレベルまで除染されて
いることが分かる。
図1 除染の効果
(注) 除染前、除染後の測定値は、①フロントグリル、②ボンネット、③屋根、④タイヤ1
~4、⑤フロントワイパー、⑥リアワイパー、⑦ドアパッキンの測定値の合計である。但し、
車によっては、①~⑦で測定されていない部位もある。車の除染後の内部の測定値は①ラジエ
ータ上部、②エアフィルタ、③座席部の測定値の合計である。
1.2 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係
汚染状況の測定値は対象物の表面約1cm の位置で測定されたものである。GM サーベ
イメータによる計数率と空間線量率の関係を図2に示す。この図は BG の変動によるば
らつきの影響等を考慮して、BG を差し引いて正味値を求めた後、ネットの値が BG レベ
3−1
3- 2
ル以上のものを用いて算出したものである。
除染前と除染後では若干の差異があり、除染前の全体の平均値は 0.66μSv/h/kcpm、
標準偏差 0.37μSv/h/kcpm となっている。
図2 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係(東京電力)
次に、電離箱測定器による外表面からの空間線量率とボンネットを開放して測定し
たエンジンルーム部の空間線量率について、外表面のフロントグリル部とラジエータ
上部、内部のボンネット上部とエアフィルタ上部を対応させて比較した。内部空間線
量率/外部空間線量率の比はほぼ1(平均値:0.98、標準偏差:0.28)となっている。
したがって、内部の空間線量率は外部からも比較的精度良く測定できることが分かっ
た。
また、外表面からの GM サーベイメータによる計数率とボンネットを開放して測定し
たエンジンルーム部の計数率の比較を行った。上記と同じように、外表面のフロント
グリル部とラジエータ上部、内部のボンネット上部とエアフィルタ上部を対応させた。
内部計数率/外部計数率の比は平均値 1.6、標準偏差 0.67 であった。β線はボンネッ
トで遮へいされるため GM サーベイメータの計測値は表面汚染からのβ線と、より広い
範囲からのγ線の影響によるものである。エンジンルーム内部の計測値が外表面より
も高いことはエンジンルーム内部が複雑な形状をしていることから、単位面積当たり
の付着量が多いためと推定される。
2.当機構の現地調査による分析
本調査は当機構が東京電力の協力を得て実施したものである。
東京電力が用意した汚染車両2台(①乗用車、②ワンボックスカー)を対象に、汚
染部位の確認、この部位を中心とした GM サーベイメータによる計数率とこれをベース
にした空間線量率換算係数の妥当性確認、距離による空間線量率の低減効果を中心に
除染前 除染後
換算係数(μSv/h/kcpm) 最大値
75%
50%
25%
最小値
3−2
3- 3
調査した。測定は GM サーベイメータ、NaI シンチレーションサーベイメータを用いた。
2.1 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係
GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係を図3に示す。これは車両①及
び車両②の全測定部位の表面近傍にて計測したものであり、相関関係が見られる。こ
の図の中で、車の外表面で測定した空間線量率(μSv/h)と GM サーベイメータ計数率
(kcpm)の比率を求めると平均値 1.70μSv/h/kcpm、標準偏差 0.38μSv/h/kcpm とな
っている。
この値は、2項で示したJヴィレッジで先に測定された値 0.66μSv/h/kcpm よりも
高く、約 2.6 倍となっている。今回測定したデータは、東京電力の業務用車両で、先
にJヴィレッジで測定された車両よりも、より長時間にわたり管理区域内で走行して
おりエンジンルーム部が汚染されているためと想定される。すなわち、外表面の汚染
は降水等により減少する傾向にあるが、エンジンルーム内部の汚染は粉じん等の滞積
により増加する傾向にあり、外表面で計数された kcpm に対して、車全体からの寄与を
測定している空間線量率は大きくなるためと想定される。
図3 GM サーベイメータ計数率と空間線量率の関係
上記に示すように、警戒区域内で走行を続ける車両は、今後ともこの換算係数(μ
Sv/h/kcpm)は増加する傾向にあると思われるが、一時立入にて持ち出した車両は、
警戒区域内の走行距離は短いと思われるので、Jヴィレッジで測定された値を用いる
と十分保守的と思われる。
GM サーベイメータによる計数率(kcpm)
NaIシンチレーションサーベイメータによる空間線量率(μSv/h)
3−3
3- 4
2.2 距離による空間線量率の低減効果
距離による空間線量率の低減効果を図4に示す。本図は汚染レベルの高い特定部位
を対象に、その部位からの離隔距離に対する低減効果を示したものである。実際の低
減効果は特定部位以外の周辺の影響も受けるので、比較的緩慢な低減傾向を示すが、
50cm の位置で 1/5、200cm の位置で 1/10 以下になっている。
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0 100 200 300 400 500
汚染部位からの距離(cm)
線量 (μSv/h)
Tino 右側雨どい
Gimny 右側雨どい(横方向)
Gimny 右側雨どい(前方)
Gimny エアクリーナ(前方)
図4 特定汚染部位からの離隔距離と空間線量率の低減効果
車両②右側雨どい
車両①右側雨どい(横方向)
車両①右側雨どい(前方)
車両①ラジエータ(前方)
3−4
4- 1
別紙4
いわき市の車の整備工場における汚染状況等の調査
1.調査目的
いわき市の整備工場における車両の汚染状況の実態を把握するために、福島県の
日本自動車販売協会連合会の協力を得て、以下の調査を実施した。
(1)車の整備工場でなければ測定できない部位の汚染状況の調査
(2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認
(3)整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被ば
くに係る調査
(4)車両の除染に関する調査
(5)一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に係る調査
2.調査概要
調査場所: トヨタカローラいわき(株) 神谷店 (福島県いわき市神谷)
調査日 : 2011 年 10 月 21 日(金)
調査対象: 乗用車(整備中の車両で、東京電力福島第一原子力発電所事故当時
に発電所構内に置かれていた車両。)
3.調査結果
(1)車の整備工場でなければ測定できない部位の汚染状況の調査
車両の外表面や車内の座席等に加え、整備工場でなければ測定の困難な、ホ
イールを取り外した状態でのディスクブレーキやハブ、ホイールの内側、ドラ
ムカバーを外した状態でのドラムブレーキ、リフトアップした状態での下回り
や排水口雨どい部分延長線上のエンジンルームボックス表面を、対象部位から
1cm の距離で、GM サーベイメータ及び NaI シンチレーションサーベイメータ、
電離箱型サーベイメータを用いて計数率と空間線量率を測定した。
また、エンジンルーム内の各部位に関しては、ボンネットを開け、エンジン、
エアフィルタ、ラジエータ、フロントガラスの排水口雨どい部近辺等について、
対象部位から 1cm の距離で、GM サーベイメータ及び NaI シンチレーションサー
ベイメータ、電離箱型サーベイメータを用いて計数率と空間線量率を測定した。
その結果、車両の前/後面で 10μSv/h 程度、側面は 4~8μSv/h であったが、
ゴム部はいずれにおいても比較的高い線量率を示し、特にワイパー、ワイパー
排水口雨どい部では 30μSv/h の測定上限を超える高い線量率が測定された。
また、車両の下回りは 4~10μSv/h、エンジンルーム内部は 10μSv/h 程度で
あったが、ラジエータ前面で 88μSv/h の極めて高い線量率が測定されるととも
4−1
4- 2
に、フロントガラスからの雨水が地面へ流れ落ちる雨どい部から、タイヤハウ
スの後端の経路は下回りも含めて線量率が極めて高かった。特に通常の洗浄で
は届かないタイヤハウス内の樹脂製のカバーの内側では、100kcpm 以上でかつ
350μSv/h の汚染も確認された。結果を表1及び表2に示す。
表1 足廻り及び下回りにおける車両外表面の計数率と空間線量率
足廻り 計数率(kcpm) 線量率(μSv/h)*)
備考
ディスク
ブレーキ
ディスク 4 10.4 -
キャリパ 11.6 15.8 -
パット 4.3 4.98 -
ハブ(軸) 11 14.1 -
ド ラ ム
ブレーキ
シュー及び
ライニング
2.3 3 -
ハブ(軸) 10.2 2.62 -
タイヤの内側 前輪 12.7 2.01 -
下回り
ロッドアーム部 12.3 10.5 -
エンジン下部付近 8.2 8.95 -
ドライブシャフト 10 4.57 -
エキゾースト末端 5.2 3.38 ゴム部14
雨水の流れる
タイヤハウス
後側下部
右 67.5 >30 -
左 29.5 未測定 -
*) 30μSv/h 未満は NaI シンチレーションサーベイメータで測定。
表2 エンジンルーム内の計数率と空間線量率
測定場所 GM計数率(kcpm) 線量率(μSv/h)*)
プラグ上部 7.2 15.1
バッテリー上部 12.7 (エアフィルタ除去後11) 12.4
ACエレメント 10.9 (ケーシング内13) 13.7
エンジン横ベルト付近 13 16.3
マスシリンダー 13.2 21.7
カウル(ワイパ
ー基部板)本体
右側 12.4 >30 IC(67)
左側 5 4.8
カウルの内側
(雨どい部)
右側 >100 >30 IC(76)
左側 未測定
ラジエータ
前面
グリルを
外して直接
52 >30 IC(88)
*)30μSv/h 未満は NaI シンチレーションサーベイメータで測定。30μSv/h 以上は電離箱型
サーベイメータで測定し、IC( )として値を記述。
4−2
4- 3
(2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認
整備士が点検・整備作業を行う位置を把握するとともに、その場所での空間
線量率の測定を実施した。その結果、最も近接する作業は、エンジンルーム内
にフロント側から身を乗り出して行う作業で、離隔距離はエンジン高さから体
幹部まで約 50cm、ラジエータから約 20cm であった。それ以外の足廻り、下回り
等の全ての整備作業は、車本体から約 50cm の距離が確保されていた。
また、熟練工による整備作業では、同一姿勢で点検箇所に張り付いて作業を
継続するわけではなく、対象部品の取り付け取り外し、電動工具等の取り合い、
取り外した部品の点検や清掃等が流れ作業で行われていることも実見した。な
お、点検部位に直接触れていないときの車本体からの離隔距離は 2m 程度離れて
いることも確認された。整備士の点検整備距離での線量率を表3に示す。
なお、作業時間と離隔距離に関しては、別紙7に記す。
表3 整備士の点検・整備作業距離での空間線量率 (μSv/h)
距離
(cm)
エンジ
ンルー
ム
雨どい 右前輪 右後輪
下回り
前半
下回り
中央
下回り
後半
20 10.2 26.9 10.8 2.44 18.3 4.57 2.60
50 4.50 4.79 6.14 2.42 4.96 3.52 2.95
100*)
- - 3.47 1.83 - - -
*)100cm 離れた位置で、絞り込めない対象部位の測定は実施せず。
(3) 整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被
ばくに係る調査
作業環境中の放射能濃度を把握するため、対象車両の点検及び整備作業のデ
モンストレーション中に作業空間及び屋外の空気中の放射能濃度測定をダスト
サンプラーを用いて実施した。結果を表4に示す。
また、点検・整備対象の代表的部位の遊離性の表面汚染密度を測定するため
に、スミアろ紙にて採取を行い、プラスチックシンチレーション式計数装置に
よるβ線の表面汚染密度測定及び Ge 波高分析装置によるγ線放出核種分析を実
施した。
その結果、対象となる車は、既に何回か洗浄されているためか、車体表面の
表面汚染密度は、検出下限(0.05)~0.25 Bq/cm2
まで下がっており、エンジンル
ーム内でも最大 3.29 Bq/cm2
であった。
4−3
4- 4
表4 空気中の放射能濃度測定結果
※ カッコ内の数値は検出下限の濃度
(4)車両の除染に関する調査
汚染した車両の除染について、独立行政法人 日本原子力研究開発機構(以下、
「JAEA」という。)の協力を得て調査を行った。JAEA の調査報告書を別紙4の添付
1に示す。
本報告書に記載のとおり、通常の洗車機等による除染ではワイパー排水口の雨
どい部の洗浄は困難であったが、この部分が除染されると、全体的な汚染レベル
は低減する可能性があることも示された。
また、JAEA からは、自動車の除染に関するマニュアルが提示されたが、今後
は自動車の専門家による更なる検討が期待される。
ワイパーゴムや窓のパッキンゴム等はかなり高いレベルで汚染されているも
のもあり、これらを交換して廃棄する場合には、廃棄物としての新しい基準等を
勘案して適切に処理することが必要である。
(5)警戒区域外を走行する一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に
係る調査
本対象車両は、東京電力福島第一原子力発電所事故の当時に発電所構内に置
かれていた車両のため、別途、トヨタカローラいわき株式会社に持ち込まれた
「使用過程車における放射線量のサンプリング調査 測定値記入一覧表(乗
用)」に関する統計データを頂き、統計的手法を用いて検討した。検討結果は別
紙10に記す。
以上の汚染状況を考慮して、被ばく低減のために取りうる処置をまとめると表5の通
りである。
採取場所
放射能濃度(Bq/cm3
) 参 考
134
Cs 137
Cs
その他検出された核種
全β
125m
Te
作業エリア 3.9×10-7
7.2×10-7
1.4×10-8
9.2×10-7
屋外
不検出
(<6.1×10-8
)
不検出
(<7.2×10-8
)
―――
不検出
(<1.5×10-8
)
4−4
4- 5
表5 主な汚染部位と被ばく対策上特に留意すべき事項
項目 主な汚染部位 被ばく対策上特に留意すべき事項
外
部
フロントワイパー、
リアワイパー
ワイパーの材質・表面加工等により付着状況が異なる
可能性がある。
汚染状況により、交換可能な部品は交換することが望
まれる。
ドア部パッキン
タイヤ 外部からの除染は困難であるため注意が必要。
ブレーキに関しては、ドラムブレーキの場合は密閉さ
れているため、内部が汚染部位となることはない。
ディスクブレーキはキャリパ部等形状が複雑な部分は
泥が付着し易いが、開放されているため、洗浄で洗い
流しやすく周囲と比べて特別な汚染部位とはなってい
ない。
ただし、車軸廻りやサスペンション等、泥の付着が多
く、洗浄しにくい部位は汚染レベルが高くなることが
ある。このため、タイヤをはずした状態で除染を行う
ことが有効である。
タイヤハウスの後内面の線量が高い場合、ワイパー排
水口からの雨水が原因の可能性が高い。
タイヤハウス
ブレーキディスク、
ブレーキパッド部
内
部
ラジエータ 主な汚染部位の一つである。
フィン付根部近傍にも放射性物質が付着している可能
性がある。
エアフィルタ フィルタの圧空による清掃を行うと粉じんが飛散し、
内部被ばくを受ける可能性がある。
交換可能な部品は交換することが望まれる。
ワ イ パ ー 排 水 口 雨
ど い の ボ デ ィ ー 内
面
主な汚染部位の一つである。
運転席での外部被ばくのひとつの要因となる可能性が
ある。
そ の 他 の エ ン ジ ン
各部
上記以外に特定部位が汚染部位となる可能性は少ない
と思われる。
4−5
4- 6
別紙4 添付1
いわき市の車の整備工場における車両の除染について
(独)日本原子力研究開発機構
1. 対応日時
平成 23 年 10 月 21 日 10:00~15:00
2. 対象車両
福島県いわき市神谷のトヨタカローラいわき神谷店において、先方が準備した乗
用車(トヨタカローラフィールダー)を対象に除染作業の演練を行った。
なお、事前情報としては整備中の車両で汚染があると思われる車両とのことであ
ったが、洗車され車体表面の汚染はほとんどない状態であった。また、現場での聞
き取りの結果、事故当時に東京電力福島第一原子力発電所構内に置かれていた車両
であることが確認された。
3. 車両の除染作業
当初計画では、エンジンルーム、フィルタ交換、タイヤハウス回り及び車内の除
染を検討することとしていたが、当該車両は既に洗車機で5回以上洗車されている
との発言もあった。午前中に車両の線量率測定を行った結果、前輪タイヤハウスの
カバー内部が 160μSv/h であったことから、タイヤハウス回りを対象に除染の演練
を行った。
(1) 13:30 からの除染の開始に当たり、タイヤハウス周辺の養生を示すとともに、
キムタオルの使い方等を具体的に説明した。
(2) タイヤハウスのカバー内のドレン口付近に付着していた泥について、除染剤
(水拭き、台所用洗剤、ラディアックウォッシュ)による効果を確認した。
① 水拭きで 162μSv/h から 140μSv/h まで線量率が低下したが、その後は洗
剤等による拭き取りでも変化がなかった。
② フロントフェンダーの内部で作業性が悪く、線源となっている雨樋からの
ドレン内部には砂や落葉等が溜まっていた。この部分は溶接構造で小さな
スリット状になっており、拭き取り除染は不可能であった。
③ ドレン口をブラシで除染すると溶接構造の隙間から油混じりの泥が出てき
たため、線量率の測定を行ったところ、350μSv/h の値を確認した。
(3) 上記のことから、拭き取りによる除染は不可能であり、除染前よりも高い汚
染箇所が確認されたことから、高圧洗浄機による除染に切り替えた。
(4) タイヤハウス内の高線量率の箇所を高圧洗浄機で洗浄したところ、1 回目の洗
浄で 350μSv/h が 38μSv/h、2 回目の洗浄で 38μSv/h が 33μSv/h に低下し
4−6
4- 7
た。しかしながら、タイヤハウスの下部に 380μSv/h の値が確認され、汚染
された砂が移動したものと考えられる。
(5) また、洗浄で雨樋内部から採取された落ち葉を測定したところ、線量率は 380
μSv/h であった。
(6) 以上のことから、今回除染の対象とした車両は事故当時に福島第一原子力発
電所構内に置かれていた車両であり、拭き取れる範囲外のため、現場での除
染作業としては以上で終了した。
除染箇所 フェンダー内に手を入れて拭き取り作業を実施
写真1:いわき市の車の整備工場における車両の除染の実施状況
4−7
5- 1
別紙5
表面汚染密度と空間線量率の関係
1.目的
車の整備士の外部被ばく線量評価を行うために、表面汚染密度から空間線量率への換算係
数及び距離による空間線量率の低減効果の解析を行った。このために、ラジエータ、クリー
ンエアフィルタ(エアコン用のフィルタ)、エアクリーナ(エンジン吸気用のフィルタ)等の
モデルを構築し、これらと作業者の位置関係について種々の状況を想定し、これらの条件に
おける作業者の外部被ばく線量換算係数を試算した。また、汚染された車の車内における作
業者の外部被ばく線量換算係数を試算した。
2. 表面汚染密度と空間線量率の一般的関係
表面汚染密度と空間線量率の一般的な関係は以下の理論式で簡易的に表現できる。
D/Do = ln[1+(R/L)2]/ln[1+(R/Lo)2]
但し、R は面線源の半径、L は面からの測定位置までの距離、サフィックスは基準点を
示す。
モデルを図1に、半径が 0.56m(1m2
の等価半径)で、基準点を 1cm の位置にした場合の相
対値の例を図2に示す。
図1 面線源と空間線量率の関係算出のモデル図
図2 面線源からの距離と空間線量率低減の相対関係
5−1
5- 2
上記の理論式を用いて算出した面線源の大きさとの関係を表1に示す。
表1 表面汚染密度と空間線量率の一般的関係
条
件
線源の大きさ
表面汚染密度(Bq/cm2)が一定の場
合の 1cm の位置における空間線量率
の 2mX2m の大きさの面線源に対する
相対値
50cm の離隔距離
の地点における
1cm の地点との
相対値
2m の離隔距離
の 地 点 に お け
る 1cm の地点と
の相対値
1 0.2m×0.2m 0.51 0.01 0.0013
2 1m×1m 0.85 0.10 0.034
3 2m×2m 1.0 0.19 0.087
4 5m×5m 1.20 0.31 0.194
(注)2m×2m の 1cm の位置における換算係数は 4.39E-02 μSv/h/Bq/cm2
3. 外部被ばく線量換算係数の詳細解析
3.1 外部被ばく線量換算係数算出モデルの作成
汎用遮へい計算コード QAD-CGGP2R(参1)
を用いて、ラジエータ、クリーンエアフィルタ、エ
アクリーナ等をそれぞれ板状の平板にてモデル化し、その表面が一様に汚染されているもの
とする。
この板状のモデルの面積を数種類設定することにより、種々の大きさの部品、また、車の
外板のモデル化にも対応できるものとする。また、実際の部品の形状による遮へい効果を見
積もるために、数種類の厚さで金属板がこれらの前面に存在するケースも設定する。
3.2 外部被ばく線量換算係数算出モデル
外部被ばく線量換算係数算出モデルの概念図を図2に示す。線源は、正方形の表面汚染形
状(面線源)を模擬し、表面汚染密度を 1Bq/cm2
とする。種々の大きさの部品に対応可能なよう
に線源の寸法、線源の中心からの距離及び遮へい材の有無等をパラメータに解析する。
図2 モデル概念図
遮へい厚さ(4ケース)
評価点までの距離(4ケース)
線源の寸法
(6ケース)
評価点
線源
遮へい体(鉄)
5−2
5- 3
3.3 その他の計算条件
計算には、簡易遮へい計算コード QAD-CGGP2R(以下、「QAD」)及び付属のライブラリデー
タを使用する。また、Cs-134/Cs-137 の存在比は 0.8(参2)
とした。
3.4 外部被ばく線量換算係数の解析結果
前項のモデルを用いて、各計算ケースに対する、外部被ばく線量換算係数を計算した。計
算結果には、以下の傾向がみられた。
 ラジエータ、フィルタの面積が大きくなると線源量が増えるために換算係数が増加す
る傾向を示すが、面積が大きくなるにしたがって評価点からの距離が遠くなる線源が
増えるために、傾きがゆるくなる(図 3)。
 換算係数は、評価点までの距離が大きくなるにしたがって、小さくなる。特に、面積
が小さい方において、影響が顕著である(図 4)。
 遮へい体の厚さの影響は、面線源の面積が小さくなると周辺からの廻り込みの効果も
あり、5mm までの範囲ではほとんど影響がない(図 5)。
1E-5
1E-4
1E-3
1E-2
1E-1
1E+2 1E+3 1E+4 1E+5
線源の面積 (cm
2
)
外部被ばく線量換算係数((μSv/h)/(Bq/cm
2
))
10cm
50cm
100cm
200cm
フィルタ類
乗用車
ラジエータ
バス等
ラジエータ
図 3 線源の面積に対する外部被ばく線量換算係数の変化(遮へいなし)
評価点までの距離
5−3
5- 4
1E-5
1E-4
1E-3
1E-2
1E-1
0 50 100 150 200 250
評価点までの距離 (cm)
外部被ばく線量換算係数((μSv/h)/(Bq/cm2
))
15cm×15cm
20cm×20cm
30cm×30cm
50cm×50cm
100cm×100cm
200cm×200cm
図 4 評価点までの距離に対する外部被ばく線量換算係数の変化(遮へいなし)
図 5 遮へい体の厚さの影響
3.5 セシウムの表面汚染密度と空間線量率の関係
詳細解析の結果は、2項で述べた理論式と良く一致している。
このため、2m×2m の大きさの 1cm の位置における表面汚染密度と空間線量率の関係を
4.39E-02μSv/h/Bq/cm2
とし、計数率との換算係数 4.27Bq/cm2
/kcpm を用いると、1.87E-01
μSv/h/kcpm となる。また、距離による低減効果については表1の値を用いる。
5−4
5- 5
4. 車内の点検・整備作業における外部被ばく線量換算係数
車内の点検・整備作業における外部被ばく線量換算係数については、先行評価事例である
自動車など金属廃棄物の解体・分別作業時の外部被ばくに対する線量換算係数(金属廃棄物
の解体)を用いる。これは車の大きさを 4.5m×1.7m×1.2m、金属厚さを 0.1cm と仮定し、表
面密度に相当する金属の体積汚染密度に換算し、車中心での被ばく線量を求めたものである。
この結果は、Cs-134/Cs-137=0.8 の場合、2.50E-02(μSv/h)/ (Bq/cm2
)であり(参2)
、これに
対して別紙6に述べる換算係数 4.27Bq/cm2/kcpm を用いると、kcpm あたりの線量換算係数
は 1.07E-01(μSv/h)/kcpm と計算される。
この値は表2に示すように、別紙2に示す代表的車両の汚染状況のサーベイ結果の座席部
における空間線量率と外表面における GM サーベイメータ計数率から求めた換算係数と比較
的良く一致する。
表2 東京電力の代表的車両の汚染状況のサーベイにおける運転席の計数率及び空間線量率
測定対象車 ID No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
NaI シンチレータ又は電離箱測定器の型式
BG (μSv/h)
TSC-172 IC-520 TSC-172 IC-520 (NaI-1)
3 6 3 6 1.1
GM サーベイメータの型式
BG (kcpm)
TGS-146 TGS-146 TGS-146 TGS-146 TGS-146
1.2 2.2 1.2 2.2 0.7
除染後の最大
部位(ラジエ
ータ上部)
計数率(グロス) (kcpm) 55 64 40 9.1 -
計数率(ネット) (kcpm) 53.8 61.8 38.8 6.9 -
運転席
計数率(グロス) (kcpm) 10 9.1 12 1.1 0.7
空間線量率(グロス) (μSv/h) 10 13 10 3 1.1
空間線量率(ネット) (μSv/h) 7 7 7 -3 0
最大部位に対する換算係数 (μSv/h/kcpm) 0.130 0.113 0.180 - -
5−5
5- 6
参考文献
(参 1) Yukio SAKAMOTO, Shun-ichi TANAKA: “QAD-CGP2 AND G33-GP2 : REVISED VERSIONS
OF QAD-CGGP AND G33-GP”, JAERI-M 90-110. (1990)
(参 2) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の
災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」(環境省
災害廃棄物安全評価検討会第3回資料4、H23.6.19)
5−6
6- 1
別紙6
GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係
表面汚染密度測定には主に GM サーベイメータが用いられ、これは車の外表面の汚染
密度を測定する際に有効であることから、これまでの車のスクリーニングに当たって
も GM サーベイメータが用いられてきた。
GM サーベイメータでの測定計数率(cpm)から表面汚染密度(Bq/cm2
)への換算方法を
示すとともに、別紙5の結果と併せて空間線量率への換算方法を示す。
1. GM サーベイメータの一般的検出効率
JIS Z 4504(参1)
によると、固定性表面汚染及び遊離性表面汚染の表面汚染密度
As(Bq・cm-2
)は以下の式(1)により求められる。ただしこの式は、汚染面積が放射線測
定器の有効窓(入射窓)面積と同等又は広く、有効窓面積における表面汚染密度は均
一とみなす場合に用いられる。
Si
B
S
W
nn
A
 


ここに、n:総計数率 (s-1
)
nB:BG 計数率 (s-1
)
εi:β粒子又はα粒子に対する機器効率
W:放射線測定器の有効窓面積 (cm2
)
εS:放射性表面汚染の線源効率
現在用いられている GM サーベイメータは U3O8 もしくは Cl-36 で校正されたものが主で
あるが、ここでは U3O8 により校正された GM サーベイメータを例として検討を行う。
TGS-146(アロカ株式会社)の U3O8 を用いた校正例としては、β線に対する計数効率
(機器効率εi×線源効率εS)0.32 があり、表面汚染密度換算係数は以下のとおり求
められる。
     
  /kcpmBq/cm66.2
/kcpmBq/cm
6019.632.0
10
/cpsBq/cm
1
2
2
3
2



 si W 
これまでの調査により車が汚染している場合、その汚染は主に放射性セシウム
(Cs-134+Cs-137)によるものであるとみなすことができる。GM サーベイメータの計数
効率はβ線エネルギーに依存することから、核種に対する計数効率を考慮する必要が
ある。
--------------------------------------- (1)
6−1
6- 2
一般的なサーベイメータの一例として、アロカ社製の TGS-136 のβ線計数効率とβ
線最大エネルギーの関係は図1のように示されている。
図 1. β線計数効率(参2)
このβ線計数効率を用いると、表面汚染密度への換算係数は表1のとおり整理される。
これより、存在比率の Cs-134/Cs-137 比を 0.8( 参 3 )
とすると、放射性セシウム
(Cs-134+Cs-137)の換算係数は、4.16×(0.8/1.8)+4.36×(1/1.8)=4.27(Bq/cm2
)/kcpm、
となる。
表 1.U3O8 により校正された GM サーベイメータの換算係数の補正係数等
線源
Eβmax
(MeV)
計数効率
(%/4π)
[図 1 より]
計数効率の相対値
(-)
換算係数**)
(Bq/cm2
)/kcpm
U3O8 2.29 0.36 1 2.66 [2.7]
Co-60 0.318 0.14 0.39 6.82 [6.8]
Cl-36 0.709 0.27 0.75 3.55 [3.6]
Cs-134 0.658 0.23 0.64 4.16 [4.2]
Cs-137 0.514 0.22 0.61 4.36 [4.4]
Cs-134+Cs-137*)
- - - 4.27 [4.3]
*) 存在比率 Cs-134/Cs-137=0.8 で計算
**) [ ]値は、有効桁 2 桁で示している。
2. GM サーベイメータの放射性セシウムのγ線に対する検出効率
GM サーベイメータは主に表面汚染のβ線を測定する場合に使用するが、表面汚染の
6−2
6- 3
β線以外にも汚染部位の存在が否定できない場合、その取扱いの際にはγ線の寄与の
影響についても留意する必要がある。
特に、表面汚染によるβ線よりもγ線の割合が大きい場合には、線量率の評価が過
小評価となる可能性があるため、γ線の寄与を考慮した検出効率を検討する必要があ
る。
JNES が『平成 20 年クリアランス制度に関する調査』(参4)
にて実施した、Cs-137 及
び Co-60 の面線源を用いて GM サーベイメータのβ線フィルタを用いたγ線の影響の測
定試験結果を用いて以下の考察を行った。
当該測定試験では、Cs-137 と Co-60 の面線源を用い、それらのβ線を十分に遮へい
可能なβ線カットフィルタを用いてγ線の寄与率を測定した。試験体系を図 2 に示す。
測定装置として GM サーベイメータ TGS-146(アロカ株式会社)を用いて、β線を十
分に遮へい可能な厚さである 3mm のアルミニウム板を用いて測定を行った。結果を表
2 に示す。
検出器:TGS-146 (検出器 50mmφ)(アロカ)
線源 :標準面線源(10cm×10cm)
(核種:β線最大エネルギー、表面放出率)
(Co-60 :0.318 MeV、1.079×103
s-1
)
(Cs-137:0.514 MeV、1.797×103
s-1
)
β線フィルタ:3mm 厚アルミニウム板
(約 1.4MeVβ線まで遮へい(参5)
)
測定距離:表面から 5mm
図 2.測定試験体系
表 2.測定結果
核種
β線放出
率
(1/s)
放射能強
度[公称
値]*)
(kBq)
β(γ)線計
数率
(cpm)
γ線計数
率
(cpm)
γ線/β(γ)
線比率
(-)
1kBq 当た
りのγ線
に対する
検出感度
(cpm/kBq)
Co-60 1.079×103
3.5 4951 946 0.191 270
Cs-137 1.797×103
4.6 10982 152 0.014 33
*) 放射能強度については校正証明書がないため、公称値に基づいて半減期補正をした。
5mm
3mm 厚
Al 板
面線源
GM サーベイ
メータ
6−3
6- 4
上記結果によると、β(γ)測定値に対するγ線の寄与率は、Co-60 で約 20%、Cs-137
で約 1.4%と放射性核種に大きく依存する。これは、GM サーベイメータの計数効率がβ
線エネルギー(表 1 参照)とγ線エネルギーに依存していることに起因していると考え
られる。
GM 計数管のγ線エネルギーに対する計数効率としては、図 3 の関係が知られている。
図 3.γ線エネルギーに対する計数管効率の比較(参6)
GM サーベイメータのγ線に対する計数効率のエネルギー依存として図中の近似直線を
用いて、GM サーベイメータの放射性セシウムγ線に対する検出感度を評価する。
図 2 の測定体系における放射性核種による空間線量率(μSv/h)は、1cm 線量当量率
定数に基づき、図 4 の体系での QAD 計算結果から評価した。
h
5cmH
5cmφ
GM 管
面線源 (10cm×10cm)
側面
(陰極)
)100(
1
)5.0()5.0(
cmh
cm
cmhcmh



側面での平均線量率
線量当量率定数
          
側面での平均線量率線量率
図 4 図 2 の測定体系での線量率評価方法
近似直線:
xy 68.0
6−4
6- 5
表 3 の評価結果に示すように、GM サーベイメータの放射性セシウムのγ線に対する
換算係数は、1.62 (μSv/h)/kcpm となる。この評価値は、10cm×10cm の汚染土壌を測
定した結果(1.56±0.13 (μSv/h)/kcpm)と概略一致している。
GM サーベイメータは表面汚染測定用として用いているものであり、前方向からのγ
線に対する検出感度は小さくなる傾向があり、上述した換算係数は対象とする汚染形
状により変化することが考えられる。
以上の結果から、GM サーベイメータで表面汚染を測定する場合の換算係数を表 4 に
まとめて示す。GM サーベイメータで表面汚染を測定する場合には、通常、汚染から放
出されるβ線を主に検知することになるので、β(γ)線換算係数を用いる。γ線換算
係数は、汚染の状態によりβ線が遮へいされγ線だけが検知される場合を想定したも
のになる。
6−5
表3.GMサーベイメータのγ線に対する換算係数の評価結果
核種
平均γ線
エネルギー
[MeV]
平均エネル
ギーのγ線
に対する計
数効率比
(図3の近似
直線より)
[-]
1cm線量当量
率定数
[(μSv/h)
/MBq/m2
]
図2の測定体
系での線量
率
[(μSv/h)
/MBq]
γ線換算係
数(γ線検
出感度は表
2を使用)
[(μSv/h)
/kcpm]
γ線換算係
数(Cs-137
の換算係数
にγ線計数
効率を考慮
して評価し
た値)
[(μSv/h)
/kcpm]
測定試験*2)
か
ら求めたγ
線換算定数
[(μSv/h)
/kcpm]
Co-601.251.893.47×10-1
1.98×102
0.730.880.87±0.05
Cs-1370.6619.60×10-2
5.47×101
1.661.661.46±0.47
Cs-1340.701.052.44×10-1
2.39×102
-1.57-
放射性セシウム*1)
(Cs-134+Cs-137)
-1.02---1.62
1.56±0.13
(土壌)
*1)Cs-134とCs-137の比が0.8であるとした。
*2)右図に示す体系で測定した。誤差は5回の測定値の変動を1σで示している。
Csを含んだ土壌の場合は、土壌の厚さを5mmにして測定した。
6
―
6
6−6
6- 7
表 4.GM サーベイメータによる表面汚染に対する換算係数の試算
核種
β(γ)線換算係数*2)
(Bq/cm2
)/kcpm
γ線換算係数*3)
(μSv/h) /kcpm
γ線換算係数*3)
(Bq/cm2
)/kcpm
Cs-134 4.16 1.57 113
Cs-137 4.36 1.66 303
放射性セシウム*1)
4.27 1.62 175
*1) 存在比率を Cs-134/Cs-137=0.8 で評価
*2) 表 1 の値
*3) γ線換算係数は、10cm×10cm の汚染を 0.5cm 離れて、γ線だけが検知されることを想定した
評価(表 3)
3. 現地調査の実測値からの考察
上記のとおり GM サーベイメータによる放射性セシウムに対する検出効率は、外表面におけ
る汚染の付着状況により大きく異なることになる。このため、整備士の外部被ばく線量評価
においては、スクリーニングされた車両と類似の汚染状況における GM サーベイメータと NaI
シンチレーションサーベイメータの実測値を用いるのが適切である。
図 5 に東京電力が行ったJヴィレッジにおける調査に基づく線量換算係数を示す。除染前
の線量換算係数の平均値は 0.66μSv/h/kcpm である(別紙3参照)。これは、外表面のβ(γ)
線の影響に加え、内部のγ線の影響を受けているためであると考えられる。
図 6 は JNES が実施した測定結果を示している(別紙3参照)。GM サーベイメータと NaI シ
ンチレーションサーベイメータでの比較では、約 1~2 μSv/h/kcpm であり、2 項で考察し
た GM サーベイメータのγ線に対する換算係数 1.62μSv/h/kcpm に近い値となっている。
このように、汚染形態が明確になっていない場合には、β線の影響のみならずγ線の影響
を考慮することが必要となるが、GM サーベイメータを用いる場合は GM サーベイメータのγ
線の検出効率の低さにより、γ線の影響を正確に把握することは難しい。
このような状況下において GM サーベイメータを用いる場合は、γ線の影響が高いと考えら
れる場合は NaI シンチレーションサーベイメータを併用するなどの対応が必要になると考え
られる。
6−7
6- 8
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
図6.GM サーベイメータによる計数率と NaI シンチレーションサーベイメータによる
空間線量率の関係
除染前 除染後
換算係数(μSv/h/kcpm)
図5.GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係(東京電力)
最大値
75%
50%
25%
最小値
6−8
6- 9
4.GM サーベイメータの数え落としについて
GM サーベイメータでのパルスの数え落しは、次の式で補正することができる。
τm
m
n
−
=
1
ここに、 n :真の計数率 (s-1
)
m :測定計数率 (s-1
)
τ :測定器の不感時間 (s)
(1)式に基づく測定計数率と真の計数率の関係を表 5 に示す。
一般に GM サーベイメータの不感時間は 200μs 程度との記述(参7)
があるが、TGS-146B につ
いては 100μs 程度である(参8)
。不感時間を 100μs とした時、測定計数率が 100kcpm の場合
の真の計数率は 120kcpm であり、相対誤差は-17% (=100kcpm/120kcpm×100%)となる。表面汚
染サーベイメータの JIS 規格(参9)
では、相対指示誤差の許容値は±25%であり、数え落としに
よる誤差は許容値内であると考えることができる。
表 5 真の計数率と測定計数率の関係
測定計数
率(m)
(kcpm)
真の計数率(n)/測定計数率(m)
(-)
不感時間(τ ) (μs)
100 150 200 300
1 1.00 1.00 1.00 1.01
5 1.01 1.01 1.02 1.03
10 1.02 1.03 1.03 1.05
13 1.02 1.03 1.05 1.07
50 1.09 1.14 1.20 1.33
100 1.20 1.33 1.50 2.00
------------------------------------------------ (2)
6−9
6- 10
参考文献
(参 1) JIS Z 4504 「放射性表面汚染の測定方法-β線放出核種(最大エネルギー0.15MeV
以上)及びα線放出核種」,2008
(参 2) アロカ株式会社、GM サーベイメータ TGS-136 パンフレット
(参 3) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の
災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」(環境省
災害廃棄物安全評価検討会第3回資料4、H23.6.19)
(参 4) 原子力安全基盤機構、「平成 20 年度 クリアランス制度に関する調査報告書」
(参 5) 社団法人日本アイソトープ協会、「アイソトープ手帳 10 版」
(参 6) G. F. KNOLL, 放射線計測ハンドブック第 2 版, 日刊工業新聞社
(参 7) 白川、放射線教育導入のためのデモンストレーション実験 (1) ―放射線防護の三
原則―、Isotope News 2008 年 8 月号
(参 8) 日立アロカメディカル㈱からの聞き取り調査結果
(参 9) JIS Z 4329:2004
6−10
7- 1
別紙7
車の点検・整備の時間配分と離隔距離
車の点検・整備に要する時間等は、オイル交換やタイヤの交換等軽微な作業から個別部位
の修理に至るまで様々であり、個々の車の状況により異なると想定されるが、ここでは最も
持ち込まれる車両台数が多いと思われ、かつ取扱項目が多岐にわたる法定の点検・整備項目
に基づき、点検・整備の車外、車内、その他の準備作業の時間配分と汚染部位からの離隔距
離の設定を行う。
調査結果をまとめて表1に示す。
表1 点検・整備作業に係る離隔距離別等の時間配分
点検箇所とアクセス 離隔距離等(cm) 時間配分割合(%)
車外点検
(足廻り)
(下廻り)
50 30
車外点検
(エンジンルーム
部)
20 20
40
50 20
車内点検 (運転席等) 車内中心 10
車外点検 (準備作業等) 200 20
1.点検・整備項目の車外、車内の区分
調査結果を表2に示す。
現在「自動車点検基準」で定められている定期点検項目は、12 ヶ月点検が 26 項目、24 ヶ
月点検は 56 項目ある。基本点検は足廻り点検、下回り点検、エンジンルーム点検、車内点検
で、車の側面、及びピット内から見上げる位置での目視、触診、打診による確認が中心であ
る。分解・取り外し等の伴う点検は、車の種類や年式、点検結果により不具合が生じた場合
に行う場合が多く、分解点検や清掃の頻度は上記に比べ少ないと見なせる。したがって、個々
の不具合に伴う1項目に数十分以上の作業はここでは想定が困難なため、平均的には1台あ
たり半日程度の作業と見なす。なお、エンジンオイル、ブレーキフリュード、クーラント液
の交換、エアフィルタの清掃作業等、車検に伴い行われることの多い作業については、車と
の近接作業として、上記の時間内に含まれると想定できる。
車内における点検作業は、点検項目としては 11 項目あるが、操作としては、隙間計測以外
はハンドルやブレーキ操作、エンジン始動等があるのみで、作業の占める時間は少ない。し
かし、六面を囲まれているため線量換算係数が比較的大きいので、検査機での運転操作等も
含め保守的に多目の時間を配分し、全時間の 10%と設定する。
また、点検・整備に係る工具の取り合い等の準備作業は、現場調査では、個々の点検整備
作業の半分程度の時間を費やしていたが、汚染された部位から離れた場所での作業のため、
保守的に全時間の 20%と少なめの時間配分に設定する。
7−1
7- 2
以上より、足廻り及び下廻り点検、エンジンルーム点検、車内点検、及び個々の作業に伴
う工具の取扱や準備作業の時間配分は、点検整備箇所と項目及び一般的な所要時間と現場調
査に基づき、時間配分割合を 30:40:10:20 とした。
2.汚染部位からの離隔距離
離隔距離に関しては、整備士と車との位置関係から、以下のように定めた。
足廻り点検及び下廻り点検の作業における整備士と車との位置は、ほとんどは腕長位置
(50cm 程度)での作業もしくはそれ以上の距離の作業である。したがって、点検作業者と車と
の距離は平均 50cm と見なした。
エンジンルーム点検も多くは腕長位置(50cm 程度)での作業もしくはそれ以上の距離の作業
であるが、一部の作業にエンジンルーム中央部にフロント側から身を乗り出して行う作業で
体幹部がラジエータ等に近接する場合がある。このため、これらの作業を保守的に考慮し、
腕長位置(50cm 程度)での作業と最近接作業(20cm 程度)を 50:50 と設定した。
7−2
7- 3
表2 車外及び車内作業の区分
ハンドル ・ 操作具合 ○
ギヤ・ボックス ・ 取付けの緩み※
1 緩み、がた及び損傷※
2 ボール・ジョイントのダスト・ブーツの亀裂及び損傷
かじ取り車輪 ・ ホイール・アライメント※ ○
1 ベルトの緩み及び損傷
2 油漏れ及び油量
3 取付けの緩み※
1 遊び及び踏み込んだときの床板とのすき間 ○
2 ブレーキのきき具合 ○
1 引きしろ ○
2 ブレーキのきき具合 ○
ホース及びパイプ ・ 漏れ,損傷及び取付状態
1 液漏れ
2 機能、摩耗及び損傷
1 ドラムとライニングとのすき間※
2 シューの摺動部分及びライニングの摩耗
3 ドラムの摩耗及び損傷
1 ディスクとパッドとのすき間※
2 パッドの摩耗
3 ディスクの摩耗及び損傷
1 タイヤの状態※
2 ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み※
3 フロント・ホイール・ベアリングのがた※
4 リヤ・ホイール・ベアリングのがた※
取付部及び連結部 ・ 緩み、がた及び損傷
ショック・アブソーバ ・ 油漏れ及び損傷
クラッチ ・ ペダルの遊び及び切れたときの床板とのすき間 ○
トランスミッション及びトランスファ ・ 油漏れ及び油量※
1 連結部の緩み※
2 自在継手部のダスト・ブーツの亀裂及び損傷
デファレンシャル ・ 油漏れ及び油量※
1 点火プラグの状態※
2 点火時期 ○
3 ディストリビューターのキャップの状態
バッテリ ・ ターミナル部の接続状態
電気配線 ・ 接続部の緩み及び損傷
1 排気の状態
2 エア・クリーナ・エレメントの状態※
潤滑装置 ・ 油漏れ
燃料装置 ・ 燃料漏れ
1 ファン・ベルトの緩み及び損傷
2 水漏れ
1 メターリング・バルブの状態
2 配管の損傷
1 配管等の損傷
2 チャコール・キャニスタの詰まり及び損傷
3 チェック・バルブの機能
1 触媒反応方式等排出ガス減少装置の取付けの緩み及び損傷
2 二次空気供給装置の機能 ○
3 排気ガス再循環装置の機能 ○
4 減速時排気ガス減少装置の機能 ○
5 配管の損傷及び取付状態
・ 取付けの緩み及び損傷※
・ マフラの機能
・ 緩み及び損傷
下回り車外目視及び触診打
診確認である。
車枠及び車体
エグゾースト・パイプ及びマフラ
24ヶ月法定点検項目とその点検操作概要 及び 車内、車外点検操作項目
※印の点検は、前回点検以降、年間走行距離5000km以下の車は、省略可。
ハンドル操作、アライメント確認で
試乗確認があるが、基本的
は下回り、エンジンルームの目
視確認&簡単な触診打診確
認である。
かじ
取り
装置
ロッド及びアーム類
パワー・ステアリング装置
点検箇所
マニュアル車以外は下回り車外
目視及び触診打診確認であ
る。
始動操作で車内にはいる
が、エンジンルームの目視及び
触診打診確認である。
エンジンルーム及び下回り車外
目視及び触診打診確認であ
る。
排ガス計測のために車内操
作があるが、エンジンルーム及
び下回り車外目視及び触診
打診確認である。
ブレーキの効き具合確認等の
み計測機上での試乗操作
要。下回り確認は基本的に
目視及び触診打診確認。ブ
レーキドラム、ディスク関連も基本
は目視と計測のみである。
(走行距離によるが、分解点
検・交換作業は2~3回の車
検毎に1回程度である。
ホイル周り車外目視及び触診
打診確認である。
下回り車外目視及び触診打診確認で
ある。
点検概要
車内点
検項目
24ヶ月点検項目
制動
装置
ブレーキ・ペダル
駐車ブレーキ機構
ブレーキ・ドラム及びブレーキ・
シュー
ブレーキ・ディスク及びパッド
マスタ・シリンダ、ホイール・シリ
ンダ及びディスク・キャリパ
走行
装置
ホイール
緩衝
装置
動力
伝達
装置
プロペラ・シャフト及びドライブ・
シャフト
電気
装置
点火装置
原動
機
本体
冷却装置
ばい
煙、悪
臭の
ある
ガス、
有害
なガ
ス等
の発
散防
止装
置
ブローバー・ガス還元装置
燃料蒸発ガス排出抑止装置
一酸化炭素等発散防止装置
7−3
警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する調査報告書
警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する調査報告書
警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する調査報告書
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警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する調査報告書

  • 1. JNES-RE-2011-0003 警 戒 区 域 か ら 持 ち 出 さ れ た 車 の 整 備 に よ る 整 備 士 の 外 部 被 ば く 線 量 評 価 に 関 す る 調 査 報 告 書 独 立 行 政 法 人   原 子 力 安 全 基 盤 機 構 警戒区域から持ち出された車の整備による 整備士の外部被ばく線量評価に関する 調査報告書 External exposure dose of car mechanics during the maintenance of the cars from the risk cautionary area 独立行政法人原子力安全基盤機構 Japan Nuclear Energy Safety Organization JNES-RE-Report Series JNES-RE-2011-0003 平成 23 年 12 月 December 2011
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  • 3. - i - JNES-RE-2011-0003 警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量評価に関する 調査報告書 廃棄物燃料輸送安全部 川上 博人 山田 憲和 佐々木 聡 川﨑 智 本報告書は、原子力災害現地対策本部の原子力安全基盤機構に対する依頼に基づき、 警戒区域から持ち出された車の整備による整備士の外部被ばく線量について、①現地 対策本部が東京電力の協力を得て実施した警戒区域で行われているスクリーニングの 状況及び汚染状況の調査結果、②日本自動車販売協会連合会の協力の下に実施した車 の整備工場での汚染状況や整備士の作業状況に関する調査結果、③福島市内で行った 一般的車両の汚染状況の調査結果及び④日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた調 査結果等を踏まえ、整備士の外部被ばく線量の評価を行い、その結果に関し、原子力 安全基盤機構内の外部有識者を含めた検討会の意見を反映する形で、取りまとめたも のである。 これまで緊急時対応として適用されてきたスクリーニング基準のもとで持出された 車を、福島県の整備工場で整備した場合の年間の整備士の外部被ばく線量は、保守的 に評価しても1mSv/年以下であるとの結論を得た。このことから、通常の使用状況に よる車両の整備であれば、整備士の健康に特段の影響はないと判断される。 − i −
  • 4. - ii - JNES-RE-2011-0003 External exposure dose of car mechanics during the maintenance of the cars from the risk cautionary area Radioactive Waste Management and Transport Safety Division Hiroto KAWAKAMI, Norikazu YAMADA, Satoru SASAKI, Satoru KAWASAKI At the request of the Local Nuclear Emergency Response Headquarters, JNES has estimated the effective external exposure dose of car mechanics during the maintenance of the cars from the risk cautionary area. JNES investigated the contamination of the cars from the risk cautionary area and of the average cars at Fukushima city cooperated by the Japan Automobile Dealers Association. Data of screed cars by the Local Nuclear Emergency Response Headquarters is also considered in. Effective external exposure dose of car mechanics treating the cars screened with the emergency situation screening level is estimated to be less than 1mSv/y under the conservative conditions. This result shows that particular health concern isn’t necessary for them. − ii −
  • 5. - iii - 目 次 1. はじめに ................................................................. 1 1.1 調査の概要 ............................................................ 1 1.2 調査の経緯 ............................................................ 1 1.3 整備工場において実測された表面汚染に関する計数率及び空間線量率の例 .... 2 2. 警戒区域を出入りする車のスクリーニング及び汚染の状況 ..................... 2 2.1 スクリーニングの実施要領及び判断基準 .................................. 2 2.2 スクリーニングの実施状況 .............................................. 2 2.3 車の汚染状況 .......................................................... 3 2.4 汚染の対象部位と主な要因 .............................................. 5 2.5 車の汚染状況と整備士の外部被ばくとの関係 .............................. 5 3. 整備士の外部被ばく線量に関する試算結果 ................................... 6 3.1 整備士の外部被ばく線量の試算の考え方 .................................. 6 3.2 単位時間当たりの外部被ばく線量の換算係数 .............................. 6 3.2.1 車の外表面汚染車両による車外作業における外部被ばく ............... 7 3.2.2 エンジンルーム部汚染車両による車外作業における外部被ばく ......... 7 3.2.3 車内の点検・整備における外部被ばく ................................ 8 3.3 単位時間当たりの外部被ばく線量の試算 .................................. 8 3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 ................................ 9 3.5 点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算 ................... 10 3.5.1 外部被ばく線量の試算 ............................................. 10 3.5.2 外部被ばく線量の試算の保守性の評価 ............................... 10 3.6 整備士の内部被ばく及び皮膚被ばくの評価 ............................... 11 3.7 その他の一般的車両を含めた被ばく上の留意事項 ......................... 12 4. 結論 .................................................................... 13 − iii −
  • 6. - iv - 別紙 1:車のスクリーニングの実施状況 別紙 2:代表的車両の汚染状況のサーベイ結果 別紙 3:警戒区域からの持ち出し車両の汚染状況のデータ分析 別紙 4:いわき市の車の整備工場における汚染状況等の調査 別紙 5:表面汚染密度と空間線量率の関係 別紙 6:GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係 別紙 7:車の点検・整備の時間配分と離隔距離 別紙 8:車の整備士の外部被ばく線量の試算 別紙 9:警戒区域の車両の割合 別紙 10:福島県内の一般的車両を含めた汚染状況調査 別紙 11:本調査の関係機関一覧 − iv −
  • 7. - v - 表 目 次 表3.1 GM サーベイメータの計数率から空間線量率への換算係数のまとめ ................ 8 表3.2 点検・整備作業に係る離隔距離等の時間配分 ............................................... 9 表3.3 点検・整備作業に係る単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算 ..... 9 表3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 ................................................ 10 表3.5 車の整備士の外部被ばく線量の試算結果 .................................................... 10 表3.6 車の整備士の外部被ばく線量の保守的評価とその条件 ...............................11 表3.7 空気中放射能濃度測定結果 ......................................................................... 12 − v −
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  • 9. - 1 - 1.はじめに 1.1 調査の概要 本報告書は、原子力災害現地対策本部(以下、「現地対策本部」という。)の原子力 安全基盤機構(以下、「当機構」という。)に対する依頼に基づき、警戒区域から持ち 出された車の整備による整備士の外部被ばく線量について、①現地対策本部が東京電 力の協力を得て別途実施した警戒区域で行われているスクリーニングの状況及び汚染 状況の調査結果、②日本自動車販売協会連合会の協力の下に実施した車の整備工場で の汚染状況や整備士の作業状況に関する調査結果、③福島市内で行った一般的車両の 汚染状況の調査結果及び④日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた調査結果等を踏 まえ、整備士の外部被ばく線量の試算を行い、その結果に関し、当機構内の外部有識 者を含めた検討会において審議を行い、そこでの意見を反映する形で、最終的な取り まとめを行ったものである。 整備士の外部被ばく線量の試算に際しては、原子力安全委員会の放射線防護に関す る助言に関する基本的考え方に基づくとともに、IAEA の安全指針等を参酌して、現実 的と考えられる値を基にパラメータを選定し試算を行うともに、保守的な場合も合わ せて検討し、両ケースについて評価した。 これまで緊急時対応として適用されてきたスクリーニング基準のもとで持ち出され た車を、福島県の整備工場で整備した場合の年間の整備士の外部被ばく線量は約 360 μSv/年と試算され、保守的な評価を行っても1mSv/年を超えないとの結論を得た。 このことから、通常の使用状況による車両の整備であれば、整備士の健康に特段の影 響はないと判断される。 1.2 調査の経緯 いわき市の車の整備工場において、警戒区域から持ち出され整備に出された自動車 の内部を測定した結果、1.3項に示すような高い線量率が計測され、整備士が心配し ているので調査をするよう現地対策本部に対し要請があった。また、県の「放射能の 問い合わせ窓口」にも同様の意見が寄せられた。 このため、現地対策本部は、東京電力の協力を得て、警戒区域で行われているスク リーニングの状況及び汚染の状況を調査するとともに、この結果を踏まえ整備士の外 部被ばく線量を評価するよう当機構に依頼した。 当機構は、現地対策本部の要請に基づき、整備士の外部被ばく線量の試算を行うた めに、スクリーニング会場(J ヴィレッジ)において車両の汚染状況等の調査を行うとと もに、現地対策本部が行ったいわき市の車の整備工場における実態調査、更に福島市 内で行った一般的車両の汚染状況の調査等の結果を取りまとめた。 この結果について当機構内の外部有識者を含めた検討会において審議を行い、そこ での意見を反映する形で、最終的な取りまとめを行った。 − 1 −
  • 10. - 2 - 1.3 整備工場において実測された表面汚染に関する計数率及び空間線量率の例 いわき市の整備工場に持ち込まれた車は、9 月 15 日までの警戒区域からの車持ち出 しのスクリーニング基準(100kcpm)を満足しているものであるが、整備工場において実 測された表面汚染に関する GM サーベイメータによる計数率及び空間線量率は以下のと おりであり、高い計測値への懸念が寄せられた。 ・ ラジエータ近傍の部位の表面汚染に関する計数率 (70 kcpm) ・ ラジエータ部の空間線量率 (10μSv/h) ・ タイヤをはずした際のブレーキディスク、 ブレーキパッド周りの空間線量率 (25μSv/h) ・ 室内の空間線量率 (10μSv/h) 2.警戒区域を出入りする車のスクリーニング及び汚染の状況 警戒区域から持ち出される車は、次の2箇所においてスクリーニングされている。 ・ 現地対策本部における一時立入による持ち出し車両のスクリーニング ・ 東京電力が運営するJヴィレッジにおける公益一時立入車両及び東京電力関係 の業務用車両のスクリーニング 2.1 スクリーニングの実施要領及び判断基準 これまで実施されてきている警戒区域を出入りする車のスクリーニングの実施要領 及び判断基準は下記のとおりである。 ・ これまでの経験からワイパー、タイヤ、窓ガラスのゴムパッキンが、比較的汚 染レベルが高いことが多いが、除染や拭き取りで基準値以下となることから、 車体外部のこれらの対象部位等及び内部の運転席シートの表面汚染を測定しス クリーニングしている。 ・ スクリーニングの表面汚染の判断基準は、100kcpm としている。このスクリー ニング基準は、現地対策本部が、原子力安全委員会の助言を受けて決めたもの であるが、測定部位等についての取り決めはない。 但し、このスクリーニング基準は、原子力安全員会による8月29日付けの助言(「避 難区域(警戒区域)から退出する際の除染の適切な実施について」)等を踏まえ、現地 対策本部により9月16日から 13kcpm に変更された。 このため、基準改訂前の 100kcpm を判断基準としていた時の車両を中心に、車の整 備士の外部被ばく評価を行う。 2.2 スクリーニングの実施状況 これまで実施されてきている警戒区域を出入りする車のスクリーニングの実施状況 は下記のとおりである(別紙1参照)。 − 2 −
  • 11. - 3 - (1)現地対策本部における一時立入による持ち出し車両のスクリーニングの実施状 況 現地対策本部のスクリーニング場から持ち出された6月から9月15日ま での期間の車両は 4,206 台である。この内、100kcpm を超えた車両は 67 台 (1.6%)であったが、車の外表面の拭き取り除染により 100kcpm を超える車 両はなくなっている。 この点から、一時立入による持ち出し車両は車の外表面汚染が主体である と理解できる。 (2)東京電力が運営するJヴィレッジにおける公益一時立入車両及び東京電力関係 の業務用車両のスクリーニング 東京電力がJヴィレッジで実施している警戒区域を出入りする車両のスク リーニングの状況は以下のとおりである。 ・ スクリーニング場を通過した7月から9月15日までの期間の車両総数は 17,524 台である。 ・ 月当たりの通過車両はほぼ一定であり、日当たりに換算すれば通過車両は約 230 台である。東京電力関係の業務用車両が警戒区域内外を往復している可能 性もあり、上記の累計台数が全て警戒区域外に持ち出されていることにはな らない。 ・ 100kcpm を超えた車両は 132 台(0.8%)であったが、車両表面に対する高圧ジ ェット洗浄後においても 100kcpm を超える車両が 30 台あった。このことはエ ンジンルーム内部も汚染されている可能性を示唆している。 2.3 車の汚染状況 車の整備士の外部被ばく評価に資するため、東京電力は現地対策本部の依頼に基づ き、汚染した車両について、車両の表面とエンジンルーム内の汚染状況に関して、GM サーベイメータによる計数率及び空間線量率の測定を行った。対象とした車両は、次 の 3 種類の車両で、高カウント及び中カウントの車両については、通常の方法により 車両表面の除染作業を行い、除染後の測定も行った。 (1)高カウント車両(最大値が 100kcpm を超える車両) (2)中カウント車両(最大値が 10 kcpm を超える車両) (3)低カウント車両(最大値が 10 kcpm 未満の車両) この結果、以下の点を確認した。 ・ 除染後において 100kcpm を超える車両はなかった。 ・ 除染の前後において、ボンネットを開放してエンジンルーム部の測定も行っ たところ、ラジエータ上部及びエアフィルタ等が比較的高い計測値を示した。 (別紙2参照) − 3 −
  • 12. - 4 - なお、上記のうち、(1)、(2)については、東京電力福島第一原子力発電所構内に事 故発生後も長期間にわたり停留していた車両であった。 当機構は車の整備士の外部被ばくの観点から、上記測定結果のデータ分析を行うと ともに、東京電力の協力を得て、車の整備士の作業環境における空間線量率を評価す るために必要な情報を得るための現地調査を行った。その結果、以下のような点が確 認された(別紙3参照)。 ・ 車の外表面の除染の効果により、除染後は外表面の計測値はエンジンルーム 部とほぼ同等のレベルまで低減する。 ・ 車の内部が汚染された車両で測定された GM サーベイメータによる計数率と空 間線量率における除染前の関係は約 0.66μSv/h/kcpm である。 ・ 車の整備士の外部被ばく線量に影響を与える空間線量率は距離とともに低減 する。汚染の広がり等の状況にもよるが、50cm の位置の値は 1cm の位置の値 の 1/5 に低減する。 更に、日本自動車販売協会連合会の協力の下に、車の整備工場で汚染状況等及び除 染に関する実態調査を行った。汚染状況等に関する調査においては、以下の項目に着 目して調査を行い、被ばく評価に反映した。 (1)車の整備工場でなければ測定が困難な部位の汚染状況の調査 (車のボディーの内面、ブレーキディスクやブレーキパッド、フィルタ内部等) (2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認 (現場作業確認と聴き取り調査等) (3)整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被ばく に係る調査 (4)車両の除染に関する調査 (5)一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に係る調査 車の整備工場でなければ測定が困難な部位の汚染状況の調査では、通常では外表面 やエンジンルームからアクセスできない車体内部のワイパーの排水口雨どい部が汚染 されていることが確認された(別紙4参照)。 警戒区域以外を走行する一般的車両と警戒区域から持ち出した車両の差異について は、①いわき市の車の整備工場が独自に採取した調査データ、②日本自動車整備振興 会連合会が取り纏めた、福島県自動車整備振興会および、日本自動車工業会で独自に採取 した調査データの提供を受けるとともに、福島市内の車のディーラー等における一般 的車両の汚染状況調査に基づき分析を行った。 この結果、①や②で調査した一般的車両の中には、数%程度 13kcpm を超える汚染が − 4 −
  • 13. - 5 - 確認された車両が含まれたが、事業者による履歴調査により警戒区域を頻繁に走行し た車両であることが判明したとともに、当機構が調査を行った福島市内の一般的車両 では、一部局所的に汚染された部位はあるものの、大部分の車両はほとんど BG レベル あるいはそれ以下の汚染レベルであった(別紙10参照)。 2.4 汚染の対象部位と主な要因 汚染の状況は、車の外部の表面汚染と車の内部のエンジンルーム部の汚染に大別さ れ、車の外部はワイパー、タイヤ、ドア部パッキン等であり、車の内部はラジエータ、 エアフィルタ、ワイパーによる排水口雨どい等であることが確認された。 その主な要因は次のように想定される。 (1)車の外部の表面汚染 ・ 外表面の直接汚染 ・ 走行に伴う汚染泥等の付着 これらは、別紙1に示すように、現地対策本部における一時立入による車の 持ち出し車両の調査において、100kcpm を超えた全ての車両が外表面の拭き取り 作業により 100kcpm 未満になっていることからも確認できる。 (2)車のエンジンルーム部の汚染 ・ 走行に伴い汚染した粉じんがエンジンルーム内へ取り込まれることによる汚 染 ・ 雨天時の走行に伴い、前面ガラスに付着した粉じんがワイパーにより排水口 雨どい付近に集積することによる汚染 これは、エンジンルーム部でラジエータ、エアフィルタ、ワイパーによる排 水口雨どい等が比較的高い値を示すことから確認できる。 その他、原子炉建屋内の水素爆発時にサイト内に駐車されていたことで、爆風によ りエンジンルーム部が直接汚染された車両があり、こうした車両が極めて高い線量率 を示すことも当機構の現地調査対象等で確認されている。このような車両は特殊な車 両で、東京電力により安全管理がなされるべきものである。 2.5 車の汚染状況と整備士の外部被ばくとの関係 整備士の外部被ばく線量の試算は、空間線量率に基づき評価を行う必要があるが、 スクリーニング基準(13kcpm/100kcpm)は GM サーベイメータの計数率であるため、計 数率(kcpm)から空間線量率(μSv/h)に変換するための線量換算係数が必要となる。こ の線量換算係数は車の汚染状況により大きく左右されることが確認された。このため、 3 項に記すように、次の 3 つに分類して試算することとした。 (1)車の外表面汚染のときの車外作業による外部被ばく (2)エンジンルーム部の汚染による外部被ばく − 5 −
  • 14. - 6 - (3)車の外表面汚染のときの車内作業による外部被ばく また、1.3項で記したいわき市の整備工場における表面汚染に関する計数率の例と 上記の車の汚染状況のように、局所的に汚染された部位に、サーベイメータを近接も しくは、ほぼ直付けして空間線量率を測定すると高い空間線量率を示すが、汚染が局 所的な場合ほど距離とともに大きく低減することからも、整備士の外部被ばく評価の 試算を行う場合には汚染された部位の形状、大きさや汚染部位からの離隔距離等の考 慮が必要であることが確認された。そのため、3 項に記す評価を行った(別紙5及び別 紙6参照)。 3.整備士の外部被ばく線量に関する試算結果 3.1 整備士の外部被ばく線量の試算の考え方 警戒区域から持出された車の点検・整備による整備士の外部被ばく線量評価に際し ては、原子力安全委員会が定めた「放射線防護に関する助言に関する基本的考え方につ いて」(参1) 及び「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の 処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(参 2 ) に基づき、現存被ばく状 況下の一般公衆としての整備士の外部被ばく線量を評価する。この際、持ち出された 車の点検・整備による外部被ばく線量の増分について評価する。また、IAEA の安全指 針「過去の活動および事故のための修復プロセスの実施」(参 3 ) における線量評価の考 え方を参酌し、まず現実的な試算を行い、更にその保守性を確認する方法を採用した。 また、外部被ばく線量の具体的な評価方法については、災害廃棄物に対する評価方法(参 4) 等を参考に、車の点検・整備の特徴を加味した評価を行った。 3.2 単位時間当たりの外部被ばく線量の換算係数 これまで多くの関係機関により測定されているモニタリングの結果により、今回の 事故による土壌の汚染の主な放射性核種は Cs-134 と Cs-137 であることが確認されて いることから(参 5 ) 、土埃等を介して汚染されていると考えられる車の汚染についても 主な放射性核種は Cs-134 と Cs-137 であると考えられる。事故直後においては I-131 の影響も危惧されたが、この核種は比較的短半減期であるため、車のスクリーニング が開始された時点では既に十分に減衰しており、車の整備士の年間の外部被ばく線量 評価には有意な影響は与えないと判断される。このため、Cs-134 と Cs-137 による外部 被ばく線量評価を行う。 車の点検整備作業は、車外作業と車内作業に分けられる。車外作業については、車 の汚染状況とスクリーニングの基準を勘案して、線源が車の外表面汚染の場合とエン ジンルーム部汚染の場合に分け、車内作業については車の中心で表面汚染に囲まれた 場合を想定して外部被ばく線量換算係数の試算を行う(別紙5及び別紙6参照)。 − 6 −
  • 15. - 7 - 3.2.1 車の外表面汚染車両による車外作業における外部被ばく (1)外部被ばくのモデル 一時立入により警戒区域外に持ち出された車両は、主に外表面が直接汚染されてい ると想定される。そしてスクリーニング基準を満足する車両については、拭き取り除 染等が行われていないので、外表面の汚染がそのまま残っている可能性がある。 このため、GM サーベイメータの通常のβ(γ)線に対する検出効率を用いて表面汚染 密度を求め、その線源からの空間線量率を算出して、整備士の外部被ばく線量評価を 行う。この場合は車体の外表面全体が一様に汚染されていると想定する。 (2)単位表面汚染に対する単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数 車全体が一様に汚染されていることを想定し、直接外部被ばくを受ける汚染面積を 4m2 と仮定し、Cs-134 と Cs-137 の混合物に対する GM サーベイメータの換算係数 4.27 Bq/cm2 /kcpm と表面汚染密度と空間線量率の関係 4.39E-02 μSv/h/Bq/cm2 を用 いると、表面から1cm の地点における線量換算係数は約 0.187μSv/h/kcpm となる。 このような状況下における距離による低減は 50cm の位置で約 1/5、2m の位置で約 1/10 となる(別紙5及び別紙6参照)。 3.2.2 エンジンルーム部汚染車両による車外作業における外部被ばく (1)外部被ばくのモデル エンジンルーム部汚染車両の外部被ばく線量換算係数の試算に当たっては、汚染さ れている対象部位の表面形状が複雑であり、外表面の汚染密度を直接測定することが 困難である。GM サーベイメータをラジエータやエアフィルタ等に近接しても、β線を 効率良く検出できず、γ線を主体に計測している可能性がある。このため、Cs-134 と Cs-137 を線源とする場合の GM サーベイメータのγ線に対する検出効率の検討を行っ た。その結果、GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係は、外表面に付着した 汚染物質がある程度除染された後は、γ線の影響を受けていることが確認された。こ のため、GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係は、現地調査における測定値 を用いて設定することとした(別紙3及び別紙6参照)。 (2)単位表面汚染に対する単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数 エンジンルーム部の汚染状況は外部からの GM サーベイメータによる計測では正確に は把握できない。9月15日以前のスクリーニング基準下においては、警戒区域から 持出された車両で拭き取り除染が行われた車両は少数であり、高圧ジェットによる洗 浄も行われていないので、車の整備工場に持ち込まれる車の汚染の状況は除染前の状 態を想定することが適当と思われる。そのため、東京電力が運営するJヴィレッジで − 7 −
  • 16. - 8 - 行われた調査の外表面測定における GM サーベイメータと空間線量率の関係から、除染 前の 0.66μSv/h/kcpm を用いて評価することとした。 2.4項で記したとおり、走行に伴うエンジンルーム部の主な汚染部位はラジエー タ、エアフィルタ及びワイパーによる排水口部等であることが確認されたため、それ ぞれの部位の大きさを想定して矩形の平板でモデル化した。整備士の作業距離をパラ メータとして距離による低減を求め、現地調査における距離による低減効果と比較的 一致する体系(2m×2m、汚染面積 4m2 )を前提にした距離による低減効果を用いること とした。このような状態における距離による低減効果は線源から 1cm の基準点に対し、 20cm の地点で約 2/5、50cm の地点で約 1/5、2m の地点で約 1/10 である。 3.2.3 車内の点検・整備における外部被ばく 車内の点検・整備作業における外部被ばくについては、保守的評価を行うために全 面汚染された車内の中心で作業するものと仮定し、乗用車を念頭に 0.107μSv/h/kcpm の線量換算係数を用いる(別紙5参照)。 以上の結果をまとめて表3.1に示す。 表3.1 GM サーベイメータの計数率から空間線量率への換算係数のまとめ 汚染 領域 汚染対象の 大きさ 汚染部 位からの 距離(cm) 表面汚染に関する GM 計数率から空 間線量率の換算係 数(μSv/h/kcpm) 表面汚染密度 (kcpm)の空間線 量率(μSv/h)へ の換算方法 別紙における 換算方法の根 拠の記載場所 車の 外表面 車体外表面 【2m×2m】 1 1.87E-01 Cs に対する 検出効率を使用 別紙 5 の 3.5 項及び別紙 6 の 1 節 50 3.56E-02(約 20%)*) 200 1.63E-03(約 10%) エンジ ンルー ム部 特定部位 【2m×2m】 1 6.60E-01 現地調査に基づ く実測値を使用 別紙 3 の 1.2 項及び 2.2 項20 2.64E-01(約 40%) 50 1.32E-01(約 20%) 200 6.60E-02(約 10%) 車内 乗用車【4.5m× 1.7m×1.2m】 車内 中心 1.07E-01 Csに対する検出 効率を使用 別紙5の4節 *) ( )内の数値は、表面(1cm)での換算係数に対する比 3.3 単位時間当たりの外部被ばく線量の試算 車両別の単位時間当たりの外部被ばく線量を試算するために、整備士と汚染部位と の離隔距離の関係を、車の法定点検・整備項目に基づき調査・整理した。この結果に − 8 −
  • 17. - 9 - 基づき、線源が車の外表面の場合とエンジンルーム部の場合の車外点検作業や準備作 業、車の中心で表面汚染に囲まれた場合の車内点検作業に分類し時間配分を行うとと もに、各作業の汚染部位との離隔距離を表3.2のように設定する。(別紙7参照) 表3.2 点検・整備作業に係る離隔距離別等の時間配分 点検箇所とアクセス 離隔距離等(cm) 時間配分割合(%) 車外点検 (足廻り) (下廻り) 50 30 車外点検 (エンジンルー ム部) 20 20 40 50 20 車内点検 (運転席等) 車内中心 10 車外点検 (準備作業等) 200 20 車の代表的な汚染形態として、車の外表面汚染とエンジンルーム部が汚染した車両 を対象に、車の整備士の単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算を行った。 この結果を表3.3に示す(別紙8参照)。 表3.3 点検・整備作業に係る単位時間当たりの外部被ばく線量換算係数の試算 点検・整備場所 離隔距離等 (cm) 外部被ばく線量換算係数 (μSv/h/kcpm) 車外(足回り、下回り) 50 3.56E-02×0.3 エンジンルーム部 20 2.64E-01×0.2 50 1.32E-01×0.2 車内 車内中心 1.07E-01×0.1 準備 200 6.60E-02×0.2 合 計 1.14E-01 3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 持ち出された車両の汚染の割合は、これまでのスクリーニング結果に基づき表3.4 のように設定する。また、福島県の車の整備士が汚染車両を取り扱う割合については、 福島県内の車両総数に対する警戒区域内の車両の割合 6%を用いて、年間の作業時間 2,000 時間から 120 時間に設定する。この値(6%)はスクリーニングにより持ち出され た車両の実績(0.27%)と比較すると十分保守的な割合である(別紙9参照)。 − 9 −
  • 18. - 10 - 表3.4 年間の外部被ばく線量試算のための諸条件 汚染レベル (上限値を想定) 13kcpm (13kcpm 未満の車両) 100kcpm (13kcpm~100kcpm の車両) 13kcpm 以上に汚染した車両 の割合(%) 70 (~9/15 の実績は 72.4%) 30 (~9/15 の実績は 27.6%) 100 (9/16 以降) 0 (9/16 以降) 整備士の年間作業時間(hr) 2,000 福島県内の車両総数に対す る警戒区域内の車両の割合 (%) 6 (6 月~9/15 の期間に持ち出した車両の実績は 0.27%) 3.5 点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算 前項までの条件に基づき、点検・整備に伴う整備士の年間の外部被ばく線量の試算 を行った(別紙8参照)。 3.5.1 外部被ばく線量の試算 外部被ばく線量の試算結果を表3.5に示す。 表3.5 車の整備士の外部被ばく線量の試算結果 区 分 車の整備士の外部被ばく線量(μSv) 9/15 までの持ち出し車両による合計 267/半年 9/16 以降の持ち出し車両による合計 88.7/半年 年間の外部被ばく線量 356/年 3.5.2 外部被ばく線量の試算の保守性の評価 整備士の外部被ばく評価のための線量換算係数には不確かさがある。GM サーベイメ ータは外表面の表面汚染密度を測定することが本来の用途である。このため、内部エ ンジンルーム部に係る評価については、Jヴィレッジにおける GM サーベイメータの計 数率と電離箱測定器による空間線量率の実測値から換算係数を求めているが、外表面 が洗浄や降雨により洗い流され、これに対して長距離走行によりエンジンルーム部の 汚染が大きくなると、γ線の寄与が大きくなり GM サーベイメータの検出効率は低下す る。このため、GM サーベイメータによる測定位置でのγ線の寄与が大きくなる等の汚 染状況の変化に対応して、線量換算係数の不確かさは徐々に大きくなると推定される。 上記以外にも外部被ばく線量の試算には種々の不確かさが伴う。これらの中には整 備士の作業位置や作業時間に関する不確かさが含まれるが、上記の要因と比較すると 比較的小さく、その他の項目の保守性に包絡されると考えられる。 今回の評価は、汚染レベルを全てスクリーニング基準の上限値であるとして試算し − 10 −
  • 19. - 11 - ており、全体の平均値との間には数倍程度の差異があり、これらの不確かさを十分に 安全側に包絡している。しかしながら、線量換算係数の不確かさを保守的に考慮しう る項目について、汚染領域毎に想定した場合の評価例を表3.6に示す。 表3.6 車の整備士の外部被ばく線量の保守的評価とその条件 外部被 ばく線 量の試 算結果 現 実 的 な 試 算 値(μSv/年) 356 保 守 的 な 評 価 値(μSv/年) 815 線量換 算係数 の不確 かさの 要因 外表面汚染 GM サーベイメータについては、計数率が増大すると、 数え落としが有意になる可能性がある。これらは一般 的には計測器の測定誤差の範囲内に抑えられているの で、計測器誤差 25%を考慮した。 エンジンルー ム部汚染 持ち出し車両は警戒区域内でほとんど走行していない と想定されるものの、内部汚染を考慮して、GM サーベ イメータによるγ線のみの係数を仮定して、換算係数 1.62 μSv/h/kcpm を用いるものとし、2.45 倍を想定 した。 車内作業 車体の全体が 100kcpm に汚染されていることを想定し ているので保守的だが、運転席近傍で高くなる可能性 があることも勘案して 2 倍を想定した。 年間の整備士の外部被ばく線量は 356μSv/年であるが、上記の各項目に対して不確 かさを見込んで保守的評価を行っても1mSv/年以下である。 3.6 整備士の内部被ばく及び皮膚被ばくの評価 整備工場は車両の搬出入のため大きな開口部を有しており換気率が高いため、整備 工場内部に放射性物質が残留する可能性は小さい。また、エアコンフィルター、エア クリーナエレメント等は、エアブローによる清掃を避け新品と交換することで、これ らから放射性物質が舞い上がることも防止できる。車の整備工場における空気中放射 能濃度の測定値(表3.7)を用いて、年間の作業時間にわたり、その空気を呼吸す るとした場合の吸入被ばく線量は、21μSv/年である。(別紙4参照) したがって、車の整備士の外部被ばく線量に、内部被ばく線量を加味しても、合計 が1mSv/年を超えることはないと判断される。 − 11 −
  • 20. - 12 - 表3.7 空気中放射能濃度測定結果 皮膚被ばくについては、ホットスポット的に汚染が高い部位であるラジエータのフ ィン付け根部や表面に直接触れる点検作業は少なく、ワイパー排水口雨どい近傍は、 通常の作業ではアクセスできないことから、皮膚被ばくの恐れは少ないと考えられる。 なお、整備士は多くの作業で手袋を着用するため、汚染部位を素手で直接触ること は少ないが、放射性物質を含む埃等が手袋に付着すると、作業期間中の長時間にわた って皮膚被ばくを受ける可能性があることから、定期的に手袋を交換することが望ま しい。 3.7 その他の一般的車両を含めた被ばく上の留意事項 警戒区域から持ち出されたような、ある程度の汚染が想定される車両以外について も、汚染状況を把握するため、福島県内の一般的車両を含めた汚染状況調査を行った。 いわき市の車の整備工場が自主的に調査した一般的車両を含めた汚染状況、日本自 動車整備振興会連合会が取り纏めた、福島県自動車整備振興会及び日本自動車工業会が 独自に行った福島県内の整備工場やディーラー等の車両の汚染状況及び当機構が日本 自動車販売協会連合会の協力の下で行った福島市内のディーラーの一般的車両の汚染 状況の調査結果を踏まえ、整備士及び車の運転手の外部被ばく線量の推定を行い、そ の結果をまとめた(別紙10参照)。 (1)日本自動車整備振興会連合会が取り纏めた測定車両 168 台の内、大部分の車両 の汚染レベルは地表面の汚染状況で定まる BG レベル(地表面より 1m で測定)と同 等あるいはそれ以下であり、明確に汚染が確認される車両の割合は少なかった。 13kcpm を超える汚染レベルを示した車両は 4 台であった。 (2)いわき市の車の整備工場が自主的に調査した一般的車両を含めた空間線量率の 汚染状況調査で、測定された車両 160 台(上記と重複する車両を除く)の内、大 部分の車両の汚染レベルはバックグラウンド(以下「BG」という。)レベルと同等 あるいは若干上回る程度であった。10μSv/h を超える汚染レベルを示した車両は 3 台であった。 核 種 134 Cs 137 Cs 車の整備工場内の空気中放射能濃度(Bq/cm3 ) 3.9E-7 7.2E-7 実効線量換算係数(Sv/Bq) 9.6E-9 6.7E-9 呼吸率(m3 /時間) 1.2 作業時間(時間/年) 2000 吸入被ばく線量(μSv/年) 21 − 12 −
  • 21. - 13 - (3)当機構が福島市内のディーラー及び整備工場等で行った汚染状況調査において は、13kcpm を超えるようなあるいは 10μSv/h を超えるようなレベルの汚染車両は 確認されなかった。 但し、上記の測定は車両表面の近傍で直付けに近い形で測定されたもので あり、 13kcpm あるいは 10μSv/h を超えるような測定値は、約 50cm 程度離れると、約 1/5 以 下に低減するので、外部被ばく上問題になるような値ではない。 4.結論 現在のスクリーニングによる持ち出し車を、福島県の整備工場で整備した場合の年 間の整備士の外部被ばく線量は保守的評価を行ったが、年間1mSv/年以下であること が確認された。したがって、健康上の影響はないと判断される。 なお、下記の2点に留意する必要がある。 (1)汚染車両の外表面がある程度除染され、長距離走行によりエンジンルーム部が 主な汚染要因となる場合には GM サーベイメータでは適切なスクリーニングが出来 ない。このような場合には、NaI シンチレーションサーベイメータによる空間線量 率測定も併用することが望ましい。 (2)東京電力の業務用車両は、エンジンルーム部の汚染が蓄積される可能性がある ので、別途適切な管理が必要である。 本調査に際しては、原子力災害対策本部原子力被災者生活支援チームの放射線班及 び住民安全班、現地災害対策本部総括班の指導の下、国土交通省整備課及び福島運輸 支局、経済産業省自動車課から情報の提供を頂きながら、関係機関の協力を得て実施 した。協力頂いた関係機関と調査対象の車両数を別紙11に示す。 − 13 −
  • 22. - 14 - 参考文献 (参 1) 原子力安全委員会「放射線防護に関する助言に関する基本的考え方につい て」(H23.5.19) (参 2) 原子力安全委員会「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を 受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」 (H23.6.3) (参 3) IAEA「過去の活動および事故のための修復プロセスの実施」(WS-G-3.1) (参 4) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除 く)の災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価につ いて」(環境省 災害廃棄物安全評価検討会 第3回 資料4) (参 5) MEXT「放射線モニタリング情報 土壌モニタリングの測定結果」 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/ − 14 −
  • 23. 1-1 別紙1 車のスクリーニングの実施状況 (単位:台) 実施 月 実施場所 ス ク リ ー ニ ン グ 総 数 13kcpm 未 満 13kcpm ~ 100kcpm (除染前) >100kcpm (除染前) >100kcpm (除染後) 6月 東京電力 J ヴィレッジ調査 - - - - - 現地対策本部 一時立入による車 両の持ち出し調査 568 428 120 20 0 合計 568 428 120 20 0 7月 東京電力 J ヴィレッジ調査 6704 5994 660 50 14 現地対策本部 一時立入による車 両の持ち出し調査 1954 1508 426 20 0 合計 8658 7502 1086 70 14 8月 東京電力 J ヴィレッジ調査 6975 6246 684 45 13 現地対策本部 一時立入による車 両の持ち出し調査 1459 1023 429 7 0 合計 8434 7269 1113 52 13 9月 (9/15 まで) 東京電力 J ヴィレッジ調査 3845 3458 350 37 3 現地対策本部 一時立入による車 両の持ち出し調査 225 85 120 20 0 合計 4070 3540 470 57 3 合計 東京電力 J ヴィレッジ調査 17524 15698 (89.6%) 1694 (9.7%) 132 (0.8%) 30 現地対策本部 一時立入による車 両の持ち出し調査 4206 3044 (72.4%) 1095 (26.0%) 67 (1.6%) 0 合計 21730 18742 (86.3%) 2789 (12.8%) 199 (0.9%) 30 注:除染を行っても 100kcpm を下回らない車は持ち出されていない。 1−1
  • 24.
  • 25. 2- 1 別紙2 代表的車両の汚染状況のサーベイ結果 本調査は現地対策本部の依頼に基づき、東京電力が行ったものである。 1.調査結果のまとめ 車両の汚染状況のサーベイの結果(サンプル) 注:すべて車両表面より 1cm 離れて計測 2.各車両の汚染結果の詳細 上記の各車両について、除染前、所定の手順により除染した後、及びボンネットを開放し た状態でのエンジンルーム部の測定結果を以下に示す。 測定対象 2−1
  • 31. 3- 1 別紙3 警戒区域からの持ち出し車両の汚染状況のデータ分析 東京電力が行った調査結果(別紙2)及び当機構が外部被ばく線量評価の妥当性確 認のために行った追加的調査結果に基づき汚染状況のデータ分析を行った。 1.東京電力が運営する J ヴィレッジにおける調査 1.1 除染の効果 Jヴィレッジにおける高圧ジェットによる除染の効果を図1に示す。この図より、 除染は大きな効果があり、除染後は、内部の汚染とほぼ同等のレベルまで除染されて いることが分かる。 図1 除染の効果 (注) 除染前、除染後の測定値は、①フロントグリル、②ボンネット、③屋根、④タイヤ1 ~4、⑤フロントワイパー、⑥リアワイパー、⑦ドアパッキンの測定値の合計である。但し、 車によっては、①~⑦で測定されていない部位もある。車の除染後の内部の測定値は①ラジエ ータ上部、②エアフィルタ、③座席部の測定値の合計である。 1.2 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係 汚染状況の測定値は対象物の表面約1cm の位置で測定されたものである。GM サーベ イメータによる計数率と空間線量率の関係を図2に示す。この図は BG の変動によるば らつきの影響等を考慮して、BG を差し引いて正味値を求めた後、ネットの値が BG レベ 3−1
  • 32. 3- 2 ル以上のものを用いて算出したものである。 除染前と除染後では若干の差異があり、除染前の全体の平均値は 0.66μSv/h/kcpm、 標準偏差 0.37μSv/h/kcpm となっている。 図2 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係(東京電力) 次に、電離箱測定器による外表面からの空間線量率とボンネットを開放して測定し たエンジンルーム部の空間線量率について、外表面のフロントグリル部とラジエータ 上部、内部のボンネット上部とエアフィルタ上部を対応させて比較した。内部空間線 量率/外部空間線量率の比はほぼ1(平均値:0.98、標準偏差:0.28)となっている。 したがって、内部の空間線量率は外部からも比較的精度良く測定できることが分かっ た。 また、外表面からの GM サーベイメータによる計数率とボンネットを開放して測定し たエンジンルーム部の計数率の比較を行った。上記と同じように、外表面のフロント グリル部とラジエータ上部、内部のボンネット上部とエアフィルタ上部を対応させた。 内部計数率/外部計数率の比は平均値 1.6、標準偏差 0.67 であった。β線はボンネッ トで遮へいされるため GM サーベイメータの計測値は表面汚染からのβ線と、より広い 範囲からのγ線の影響によるものである。エンジンルーム内部の計測値が外表面より も高いことはエンジンルーム内部が複雑な形状をしていることから、単位面積当たり の付着量が多いためと推定される。 2.当機構の現地調査による分析 本調査は当機構が東京電力の協力を得て実施したものである。 東京電力が用意した汚染車両2台(①乗用車、②ワンボックスカー)を対象に、汚 染部位の確認、この部位を中心とした GM サーベイメータによる計数率とこれをベース にした空間線量率換算係数の妥当性確認、距離による空間線量率の低減効果を中心に 除染前 除染後 換算係数(μSv/h/kcpm) 最大値 75% 50% 25% 最小値 3−2
  • 33. 3- 3 調査した。測定は GM サーベイメータ、NaI シンチレーションサーベイメータを用いた。 2.1 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係 GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係を図3に示す。これは車両①及 び車両②の全測定部位の表面近傍にて計測したものであり、相関関係が見られる。こ の図の中で、車の外表面で測定した空間線量率(μSv/h)と GM サーベイメータ計数率 (kcpm)の比率を求めると平均値 1.70μSv/h/kcpm、標準偏差 0.38μSv/h/kcpm とな っている。 この値は、2項で示したJヴィレッジで先に測定された値 0.66μSv/h/kcpm よりも 高く、約 2.6 倍となっている。今回測定したデータは、東京電力の業務用車両で、先 にJヴィレッジで測定された車両よりも、より長時間にわたり管理区域内で走行して おりエンジンルーム部が汚染されているためと想定される。すなわち、外表面の汚染 は降水等により減少する傾向にあるが、エンジンルーム内部の汚染は粉じん等の滞積 により増加する傾向にあり、外表面で計数された kcpm に対して、車全体からの寄与を 測定している空間線量率は大きくなるためと想定される。 図3 GM サーベイメータ計数率と空間線量率の関係 上記に示すように、警戒区域内で走行を続ける車両は、今後ともこの換算係数(μ Sv/h/kcpm)は増加する傾向にあると思われるが、一時立入にて持ち出した車両は、 警戒区域内の走行距離は短いと思われるので、Jヴィレッジで測定された値を用いる と十分保守的と思われる。 GM サーベイメータによる計数率(kcpm) NaIシンチレーションサーベイメータによる空間線量率(μSv/h) 3−3
  • 34. 3- 4 2.2 距離による空間線量率の低減効果 距離による空間線量率の低減効果を図4に示す。本図は汚染レベルの高い特定部位 を対象に、その部位からの離隔距離に対する低減効果を示したものである。実際の低 減効果は特定部位以外の周辺の影響も受けるので、比較的緩慢な低減傾向を示すが、 50cm の位置で 1/5、200cm の位置で 1/10 以下になっている。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 0 100 200 300 400 500 汚染部位からの距離(cm) 線量 (μSv/h) Tino 右側雨どい Gimny 右側雨どい(横方向) Gimny 右側雨どい(前方) Gimny エアクリーナ(前方) 図4 特定汚染部位からの離隔距離と空間線量率の低減効果 車両②右側雨どい 車両①右側雨どい(横方向) 車両①右側雨どい(前方) 車両①ラジエータ(前方) 3−4
  • 35. 4- 1 別紙4 いわき市の車の整備工場における汚染状況等の調査 1.調査目的 いわき市の整備工場における車両の汚染状況の実態を把握するために、福島県の 日本自動車販売協会連合会の協力を得て、以下の調査を実施した。 (1)車の整備工場でなければ測定できない部位の汚染状況の調査 (2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認 (3)整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被ば くに係る調査 (4)車両の除染に関する調査 (5)一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に係る調査 2.調査概要 調査場所: トヨタカローラいわき(株) 神谷店 (福島県いわき市神谷) 調査日 : 2011 年 10 月 21 日(金) 調査対象: 乗用車(整備中の車両で、東京電力福島第一原子力発電所事故当時 に発電所構内に置かれていた車両。) 3.調査結果 (1)車の整備工場でなければ測定できない部位の汚染状況の調査 車両の外表面や車内の座席等に加え、整備工場でなければ測定の困難な、ホ イールを取り外した状態でのディスクブレーキやハブ、ホイールの内側、ドラ ムカバーを外した状態でのドラムブレーキ、リフトアップした状態での下回り や排水口雨どい部分延長線上のエンジンルームボックス表面を、対象部位から 1cm の距離で、GM サーベイメータ及び NaI シンチレーションサーベイメータ、 電離箱型サーベイメータを用いて計数率と空間線量率を測定した。 また、エンジンルーム内の各部位に関しては、ボンネットを開け、エンジン、 エアフィルタ、ラジエータ、フロントガラスの排水口雨どい部近辺等について、 対象部位から 1cm の距離で、GM サーベイメータ及び NaI シンチレーションサー ベイメータ、電離箱型サーベイメータを用いて計数率と空間線量率を測定した。 その結果、車両の前/後面で 10μSv/h 程度、側面は 4~8μSv/h であったが、 ゴム部はいずれにおいても比較的高い線量率を示し、特にワイパー、ワイパー 排水口雨どい部では 30μSv/h の測定上限を超える高い線量率が測定された。 また、車両の下回りは 4~10μSv/h、エンジンルーム内部は 10μSv/h 程度で あったが、ラジエータ前面で 88μSv/h の極めて高い線量率が測定されるととも 4−1
  • 36. 4- 2 に、フロントガラスからの雨水が地面へ流れ落ちる雨どい部から、タイヤハウ スの後端の経路は下回りも含めて線量率が極めて高かった。特に通常の洗浄で は届かないタイヤハウス内の樹脂製のカバーの内側では、100kcpm 以上でかつ 350μSv/h の汚染も確認された。結果を表1及び表2に示す。 表1 足廻り及び下回りにおける車両外表面の計数率と空間線量率 足廻り 計数率(kcpm) 線量率(μSv/h)*) 備考 ディスク ブレーキ ディスク 4 10.4 - キャリパ 11.6 15.8 - パット 4.3 4.98 - ハブ(軸) 11 14.1 - ド ラ ム ブレーキ シュー及び ライニング 2.3 3 - ハブ(軸) 10.2 2.62 - タイヤの内側 前輪 12.7 2.01 - 下回り ロッドアーム部 12.3 10.5 - エンジン下部付近 8.2 8.95 - ドライブシャフト 10 4.57 - エキゾースト末端 5.2 3.38 ゴム部14 雨水の流れる タイヤハウス 後側下部 右 67.5 >30 - 左 29.5 未測定 - *) 30μSv/h 未満は NaI シンチレーションサーベイメータで測定。 表2 エンジンルーム内の計数率と空間線量率 測定場所 GM計数率(kcpm) 線量率(μSv/h)*) プラグ上部 7.2 15.1 バッテリー上部 12.7 (エアフィルタ除去後11) 12.4 ACエレメント 10.9 (ケーシング内13) 13.7 エンジン横ベルト付近 13 16.3 マスシリンダー 13.2 21.7 カウル(ワイパ ー基部板)本体 右側 12.4 >30 IC(67) 左側 5 4.8 カウルの内側 (雨どい部) 右側 >100 >30 IC(76) 左側 未測定 ラジエータ 前面 グリルを 外して直接 52 >30 IC(88) *)30μSv/h 未満は NaI シンチレーションサーベイメータで測定。30μSv/h 以上は電離箱型 サーベイメータで測定し、IC( )として値を記述。 4−2
  • 37. 4- 3 (2)車の整備士の被ばく評価の前提となる現場作業状況の確認 整備士が点検・整備作業を行う位置を把握するとともに、その場所での空間 線量率の測定を実施した。その結果、最も近接する作業は、エンジンルーム内 にフロント側から身を乗り出して行う作業で、離隔距離はエンジン高さから体 幹部まで約 50cm、ラジエータから約 20cm であった。それ以外の足廻り、下回り 等の全ての整備作業は、車本体から約 50cm の距離が確保されていた。 また、熟練工による整備作業では、同一姿勢で点検箇所に張り付いて作業を 継続するわけではなく、対象部品の取り付け取り外し、電動工具等の取り合い、 取り外した部品の点検や清掃等が流れ作業で行われていることも実見した。な お、点検部位に直接触れていないときの車本体からの離隔距離は 2m 程度離れて いることも確認された。整備士の点検整備距離での線量率を表3に示す。 なお、作業時間と離隔距離に関しては、別紙7に記す。 表3 整備士の点検・整備作業距離での空間線量率 (μSv/h) 距離 (cm) エンジ ンルー ム 雨どい 右前輪 右後輪 下回り 前半 下回り 中央 下回り 後半 20 10.2 26.9 10.8 2.44 18.3 4.57 2.60 50 4.50 4.79 6.14 2.42 4.96 3.52 2.95 100*) - - 3.47 1.83 - - - *)100cm 離れた位置で、絞り込めない対象部位の測定は実施せず。 (3) 整備士の外部被ばくの他、作業環境等に依存する内部被ばく及び皮膚被 ばくに係る調査 作業環境中の放射能濃度を把握するため、対象車両の点検及び整備作業のデ モンストレーション中に作業空間及び屋外の空気中の放射能濃度測定をダスト サンプラーを用いて実施した。結果を表4に示す。 また、点検・整備対象の代表的部位の遊離性の表面汚染密度を測定するため に、スミアろ紙にて採取を行い、プラスチックシンチレーション式計数装置に よるβ線の表面汚染密度測定及び Ge 波高分析装置によるγ線放出核種分析を実 施した。 その結果、対象となる車は、既に何回か洗浄されているためか、車体表面の 表面汚染密度は、検出下限(0.05)~0.25 Bq/cm2 まで下がっており、エンジンル ーム内でも最大 3.29 Bq/cm2 であった。 4−3
  • 38. 4- 4 表4 空気中の放射能濃度測定結果 ※ カッコ内の数値は検出下限の濃度 (4)車両の除染に関する調査 汚染した車両の除染について、独立行政法人 日本原子力研究開発機構(以下、 「JAEA」という。)の協力を得て調査を行った。JAEA の調査報告書を別紙4の添付 1に示す。 本報告書に記載のとおり、通常の洗車機等による除染ではワイパー排水口の雨 どい部の洗浄は困難であったが、この部分が除染されると、全体的な汚染レベル は低減する可能性があることも示された。 また、JAEA からは、自動車の除染に関するマニュアルが提示されたが、今後 は自動車の専門家による更なる検討が期待される。 ワイパーゴムや窓のパッキンゴム等はかなり高いレベルで汚染されているも のもあり、これらを交換して廃棄する場合には、廃棄物としての新しい基準等を 勘案して適切に処理することが必要である。 (5)警戒区域外を走行する一般的車両と警戒区域からの持ち出し車両との差異に 係る調査 本対象車両は、東京電力福島第一原子力発電所事故の当時に発電所構内に置 かれていた車両のため、別途、トヨタカローラいわき株式会社に持ち込まれた 「使用過程車における放射線量のサンプリング調査 測定値記入一覧表(乗 用)」に関する統計データを頂き、統計的手法を用いて検討した。検討結果は別 紙10に記す。 以上の汚染状況を考慮して、被ばく低減のために取りうる処置をまとめると表5の通 りである。 採取場所 放射能濃度(Bq/cm3 ) 参 考 134 Cs 137 Cs その他検出された核種 全β 125m Te 作業エリア 3.9×10-7 7.2×10-7 1.4×10-8 9.2×10-7 屋外 不検出 (<6.1×10-8 ) 不検出 (<7.2×10-8 ) ――― 不検出 (<1.5×10-8 ) 4−4
  • 39. 4- 5 表5 主な汚染部位と被ばく対策上特に留意すべき事項 項目 主な汚染部位 被ばく対策上特に留意すべき事項 外 部 フロントワイパー、 リアワイパー ワイパーの材質・表面加工等により付着状況が異なる 可能性がある。 汚染状況により、交換可能な部品は交換することが望 まれる。 ドア部パッキン タイヤ 外部からの除染は困難であるため注意が必要。 ブレーキに関しては、ドラムブレーキの場合は密閉さ れているため、内部が汚染部位となることはない。 ディスクブレーキはキャリパ部等形状が複雑な部分は 泥が付着し易いが、開放されているため、洗浄で洗い 流しやすく周囲と比べて特別な汚染部位とはなってい ない。 ただし、車軸廻りやサスペンション等、泥の付着が多 く、洗浄しにくい部位は汚染レベルが高くなることが ある。このため、タイヤをはずした状態で除染を行う ことが有効である。 タイヤハウスの後内面の線量が高い場合、ワイパー排 水口からの雨水が原因の可能性が高い。 タイヤハウス ブレーキディスク、 ブレーキパッド部 内 部 ラジエータ 主な汚染部位の一つである。 フィン付根部近傍にも放射性物質が付着している可能 性がある。 エアフィルタ フィルタの圧空による清掃を行うと粉じんが飛散し、 内部被ばくを受ける可能性がある。 交換可能な部品は交換することが望まれる。 ワ イ パ ー 排 水 口 雨 ど い の ボ デ ィ ー 内 面 主な汚染部位の一つである。 運転席での外部被ばくのひとつの要因となる可能性が ある。 そ の 他 の エ ン ジ ン 各部 上記以外に特定部位が汚染部位となる可能性は少ない と思われる。 4−5
  • 40. 4- 6 別紙4 添付1 いわき市の車の整備工場における車両の除染について (独)日本原子力研究開発機構 1. 対応日時 平成 23 年 10 月 21 日 10:00~15:00 2. 対象車両 福島県いわき市神谷のトヨタカローラいわき神谷店において、先方が準備した乗 用車(トヨタカローラフィールダー)を対象に除染作業の演練を行った。 なお、事前情報としては整備中の車両で汚染があると思われる車両とのことであ ったが、洗車され車体表面の汚染はほとんどない状態であった。また、現場での聞 き取りの結果、事故当時に東京電力福島第一原子力発電所構内に置かれていた車両 であることが確認された。 3. 車両の除染作業 当初計画では、エンジンルーム、フィルタ交換、タイヤハウス回り及び車内の除 染を検討することとしていたが、当該車両は既に洗車機で5回以上洗車されている との発言もあった。午前中に車両の線量率測定を行った結果、前輪タイヤハウスの カバー内部が 160μSv/h であったことから、タイヤハウス回りを対象に除染の演練 を行った。 (1) 13:30 からの除染の開始に当たり、タイヤハウス周辺の養生を示すとともに、 キムタオルの使い方等を具体的に説明した。 (2) タイヤハウスのカバー内のドレン口付近に付着していた泥について、除染剤 (水拭き、台所用洗剤、ラディアックウォッシュ)による効果を確認した。 ① 水拭きで 162μSv/h から 140μSv/h まで線量率が低下したが、その後は洗 剤等による拭き取りでも変化がなかった。 ② フロントフェンダーの内部で作業性が悪く、線源となっている雨樋からの ドレン内部には砂や落葉等が溜まっていた。この部分は溶接構造で小さな スリット状になっており、拭き取り除染は不可能であった。 ③ ドレン口をブラシで除染すると溶接構造の隙間から油混じりの泥が出てき たため、線量率の測定を行ったところ、350μSv/h の値を確認した。 (3) 上記のことから、拭き取りによる除染は不可能であり、除染前よりも高い汚 染箇所が確認されたことから、高圧洗浄機による除染に切り替えた。 (4) タイヤハウス内の高線量率の箇所を高圧洗浄機で洗浄したところ、1 回目の洗 浄で 350μSv/h が 38μSv/h、2 回目の洗浄で 38μSv/h が 33μSv/h に低下し 4−6
  • 41. 4- 7 た。しかしながら、タイヤハウスの下部に 380μSv/h の値が確認され、汚染 された砂が移動したものと考えられる。 (5) また、洗浄で雨樋内部から採取された落ち葉を測定したところ、線量率は 380 μSv/h であった。 (6) 以上のことから、今回除染の対象とした車両は事故当時に福島第一原子力発 電所構内に置かれていた車両であり、拭き取れる範囲外のため、現場での除 染作業としては以上で終了した。 除染箇所 フェンダー内に手を入れて拭き取り作業を実施 写真1:いわき市の車の整備工場における車両の除染の実施状況 4−7
  • 42.
  • 43. 5- 1 別紙5 表面汚染密度と空間線量率の関係 1.目的 車の整備士の外部被ばく線量評価を行うために、表面汚染密度から空間線量率への換算係 数及び距離による空間線量率の低減効果の解析を行った。このために、ラジエータ、クリー ンエアフィルタ(エアコン用のフィルタ)、エアクリーナ(エンジン吸気用のフィルタ)等の モデルを構築し、これらと作業者の位置関係について種々の状況を想定し、これらの条件に おける作業者の外部被ばく線量換算係数を試算した。また、汚染された車の車内における作 業者の外部被ばく線量換算係数を試算した。 2. 表面汚染密度と空間線量率の一般的関係 表面汚染密度と空間線量率の一般的な関係は以下の理論式で簡易的に表現できる。 D/Do = ln[1+(R/L)2]/ln[1+(R/Lo)2] 但し、R は面線源の半径、L は面からの測定位置までの距離、サフィックスは基準点を 示す。 モデルを図1に、半径が 0.56m(1m2 の等価半径)で、基準点を 1cm の位置にした場合の相 対値の例を図2に示す。 図1 面線源と空間線量率の関係算出のモデル図 図2 面線源からの距離と空間線量率低減の相対関係 5−1
  • 44. 5- 2 上記の理論式を用いて算出した面線源の大きさとの関係を表1に示す。 表1 表面汚染密度と空間線量率の一般的関係 条 件 線源の大きさ 表面汚染密度(Bq/cm2)が一定の場 合の 1cm の位置における空間線量率 の 2mX2m の大きさの面線源に対する 相対値 50cm の離隔距離 の地点における 1cm の地点との 相対値 2m の離隔距離 の 地 点 に お け る 1cm の地点と の相対値 1 0.2m×0.2m 0.51 0.01 0.0013 2 1m×1m 0.85 0.10 0.034 3 2m×2m 1.0 0.19 0.087 4 5m×5m 1.20 0.31 0.194 (注)2m×2m の 1cm の位置における換算係数は 4.39E-02 μSv/h/Bq/cm2 3. 外部被ばく線量換算係数の詳細解析 3.1 外部被ばく線量換算係数算出モデルの作成 汎用遮へい計算コード QAD-CGGP2R(参1) を用いて、ラジエータ、クリーンエアフィルタ、エ アクリーナ等をそれぞれ板状の平板にてモデル化し、その表面が一様に汚染されているもの とする。 この板状のモデルの面積を数種類設定することにより、種々の大きさの部品、また、車の 外板のモデル化にも対応できるものとする。また、実際の部品の形状による遮へい効果を見 積もるために、数種類の厚さで金属板がこれらの前面に存在するケースも設定する。 3.2 外部被ばく線量換算係数算出モデル 外部被ばく線量換算係数算出モデルの概念図を図2に示す。線源は、正方形の表面汚染形 状(面線源)を模擬し、表面汚染密度を 1Bq/cm2 とする。種々の大きさの部品に対応可能なよう に線源の寸法、線源の中心からの距離及び遮へい材の有無等をパラメータに解析する。 図2 モデル概念図 遮へい厚さ(4ケース) 評価点までの距離(4ケース) 線源の寸法 (6ケース) 評価点 線源 遮へい体(鉄) 5−2
  • 45. 5- 3 3.3 その他の計算条件 計算には、簡易遮へい計算コード QAD-CGGP2R(以下、「QAD」)及び付属のライブラリデー タを使用する。また、Cs-134/Cs-137 の存在比は 0.8(参2) とした。 3.4 外部被ばく線量換算係数の解析結果 前項のモデルを用いて、各計算ケースに対する、外部被ばく線量換算係数を計算した。計 算結果には、以下の傾向がみられた。  ラジエータ、フィルタの面積が大きくなると線源量が増えるために換算係数が増加す る傾向を示すが、面積が大きくなるにしたがって評価点からの距離が遠くなる線源が 増えるために、傾きがゆるくなる(図 3)。  換算係数は、評価点までの距離が大きくなるにしたがって、小さくなる。特に、面積 が小さい方において、影響が顕著である(図 4)。  遮へい体の厚さの影響は、面線源の面積が小さくなると周辺からの廻り込みの効果も あり、5mm までの範囲ではほとんど影響がない(図 5)。 1E-5 1E-4 1E-3 1E-2 1E-1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 線源の面積 (cm 2 ) 外部被ばく線量換算係数((μSv/h)/(Bq/cm 2 )) 10cm 50cm 100cm 200cm フィルタ類 乗用車 ラジエータ バス等 ラジエータ 図 3 線源の面積に対する外部被ばく線量換算係数の変化(遮へいなし) 評価点までの距離 5−3
  • 46. 5- 4 1E-5 1E-4 1E-3 1E-2 1E-1 0 50 100 150 200 250 評価点までの距離 (cm) 外部被ばく線量換算係数((μSv/h)/(Bq/cm2 )) 15cm×15cm 20cm×20cm 30cm×30cm 50cm×50cm 100cm×100cm 200cm×200cm 図 4 評価点までの距離に対する外部被ばく線量換算係数の変化(遮へいなし) 図 5 遮へい体の厚さの影響 3.5 セシウムの表面汚染密度と空間線量率の関係 詳細解析の結果は、2項で述べた理論式と良く一致している。 このため、2m×2m の大きさの 1cm の位置における表面汚染密度と空間線量率の関係を 4.39E-02μSv/h/Bq/cm2 とし、計数率との換算係数 4.27Bq/cm2 /kcpm を用いると、1.87E-01 μSv/h/kcpm となる。また、距離による低減効果については表1の値を用いる。 5−4
  • 47. 5- 5 4. 車内の点検・整備作業における外部被ばく線量換算係数 車内の点検・整備作業における外部被ばく線量換算係数については、先行評価事例である 自動車など金属廃棄物の解体・分別作業時の外部被ばくに対する線量換算係数(金属廃棄物 の解体)を用いる。これは車の大きさを 4.5m×1.7m×1.2m、金属厚さを 0.1cm と仮定し、表 面密度に相当する金属の体積汚染密度に換算し、車中心での被ばく線量を求めたものである。 この結果は、Cs-134/Cs-137=0.8 の場合、2.50E-02(μSv/h)/ (Bq/cm2 )であり(参2) 、これに 対して別紙6に述べる換算係数 4.27Bq/cm2/kcpm を用いると、kcpm あたりの線量換算係数 は 1.07E-01(μSv/h)/kcpm と計算される。 この値は表2に示すように、別紙2に示す代表的車両の汚染状況のサーベイ結果の座席部 における空間線量率と外表面における GM サーベイメータ計数率から求めた換算係数と比較 的良く一致する。 表2 東京電力の代表的車両の汚染状況のサーベイにおける運転席の計数率及び空間線量率 測定対象車 ID No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 NaI シンチレータ又は電離箱測定器の型式 BG (μSv/h) TSC-172 IC-520 TSC-172 IC-520 (NaI-1) 3 6 3 6 1.1 GM サーベイメータの型式 BG (kcpm) TGS-146 TGS-146 TGS-146 TGS-146 TGS-146 1.2 2.2 1.2 2.2 0.7 除染後の最大 部位(ラジエ ータ上部) 計数率(グロス) (kcpm) 55 64 40 9.1 - 計数率(ネット) (kcpm) 53.8 61.8 38.8 6.9 - 運転席 計数率(グロス) (kcpm) 10 9.1 12 1.1 0.7 空間線量率(グロス) (μSv/h) 10 13 10 3 1.1 空間線量率(ネット) (μSv/h) 7 7 7 -3 0 最大部位に対する換算係数 (μSv/h/kcpm) 0.130 0.113 0.180 - - 5−5
  • 48. 5- 6 参考文献 (参 1) Yukio SAKAMOTO, Shun-ichi TANAKA: “QAD-CGP2 AND G33-GP2 : REVISED VERSIONS OF QAD-CGGP AND G33-GP”, JAERI-M 90-110. (1990) (参 2) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の 災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」(環境省 災害廃棄物安全評価検討会第3回資料4、H23.6.19) 5−6
  • 49. 6- 1 別紙6 GM サーベイメータの計数率と空間線量率の関係 表面汚染密度測定には主に GM サーベイメータが用いられ、これは車の外表面の汚染 密度を測定する際に有効であることから、これまでの車のスクリーニングに当たって も GM サーベイメータが用いられてきた。 GM サーベイメータでの測定計数率(cpm)から表面汚染密度(Bq/cm2 )への換算方法を 示すとともに、別紙5の結果と併せて空間線量率への換算方法を示す。 1. GM サーベイメータの一般的検出効率 JIS Z 4504(参1) によると、固定性表面汚染及び遊離性表面汚染の表面汚染密度 As(Bq・cm-2 )は以下の式(1)により求められる。ただしこの式は、汚染面積が放射線測 定器の有効窓(入射窓)面積と同等又は広く、有効窓面積における表面汚染密度は均 一とみなす場合に用いられる。 Si B S W nn A     ここに、n:総計数率 (s-1 ) nB:BG 計数率 (s-1 ) εi:β粒子又はα粒子に対する機器効率 W:放射線測定器の有効窓面積 (cm2 ) εS:放射性表面汚染の線源効率 現在用いられている GM サーベイメータは U3O8 もしくは Cl-36 で校正されたものが主で あるが、ここでは U3O8 により校正された GM サーベイメータを例として検討を行う。 TGS-146(アロカ株式会社)の U3O8 を用いた校正例としては、β線に対する計数効率 (機器効率εi×線源効率εS)0.32 があり、表面汚染密度換算係数は以下のとおり求 められる。         /kcpmBq/cm66.2 /kcpmBq/cm 6019.632.0 10 /cpsBq/cm 1 2 2 3 2     si W  これまでの調査により車が汚染している場合、その汚染は主に放射性セシウム (Cs-134+Cs-137)によるものであるとみなすことができる。GM サーベイメータの計数 効率はβ線エネルギーに依存することから、核種に対する計数効率を考慮する必要が ある。 --------------------------------------- (1) 6−1
  • 50. 6- 2 一般的なサーベイメータの一例として、アロカ社製の TGS-136 のβ線計数効率とβ 線最大エネルギーの関係は図1のように示されている。 図 1. β線計数効率(参2) このβ線計数効率を用いると、表面汚染密度への換算係数は表1のとおり整理される。 これより、存在比率の Cs-134/Cs-137 比を 0.8( 参 3 ) とすると、放射性セシウム (Cs-134+Cs-137)の換算係数は、4.16×(0.8/1.8)+4.36×(1/1.8)=4.27(Bq/cm2 )/kcpm、 となる。 表 1.U3O8 により校正された GM サーベイメータの換算係数の補正係数等 線源 Eβmax (MeV) 計数効率 (%/4π) [図 1 より] 計数効率の相対値 (-) 換算係数**) (Bq/cm2 )/kcpm U3O8 2.29 0.36 1 2.66 [2.7] Co-60 0.318 0.14 0.39 6.82 [6.8] Cl-36 0.709 0.27 0.75 3.55 [3.6] Cs-134 0.658 0.23 0.64 4.16 [4.2] Cs-137 0.514 0.22 0.61 4.36 [4.4] Cs-134+Cs-137*) - - - 4.27 [4.3] *) 存在比率 Cs-134/Cs-137=0.8 で計算 **) [ ]値は、有効桁 2 桁で示している。 2. GM サーベイメータの放射性セシウムのγ線に対する検出効率 GM サーベイメータは主に表面汚染のβ線を測定する場合に使用するが、表面汚染の 6−2
  • 51. 6- 3 β線以外にも汚染部位の存在が否定できない場合、その取扱いの際にはγ線の寄与の 影響についても留意する必要がある。 特に、表面汚染によるβ線よりもγ線の割合が大きい場合には、線量率の評価が過 小評価となる可能性があるため、γ線の寄与を考慮した検出効率を検討する必要があ る。 JNES が『平成 20 年クリアランス制度に関する調査』(参4) にて実施した、Cs-137 及 び Co-60 の面線源を用いて GM サーベイメータのβ線フィルタを用いたγ線の影響の測 定試験結果を用いて以下の考察を行った。 当該測定試験では、Cs-137 と Co-60 の面線源を用い、それらのβ線を十分に遮へい 可能なβ線カットフィルタを用いてγ線の寄与率を測定した。試験体系を図 2 に示す。 測定装置として GM サーベイメータ TGS-146(アロカ株式会社)を用いて、β線を十 分に遮へい可能な厚さである 3mm のアルミニウム板を用いて測定を行った。結果を表 2 に示す。 検出器:TGS-146 (検出器 50mmφ)(アロカ) 線源 :標準面線源(10cm×10cm) (核種:β線最大エネルギー、表面放出率) (Co-60 :0.318 MeV、1.079×103 s-1 ) (Cs-137:0.514 MeV、1.797×103 s-1 ) β線フィルタ:3mm 厚アルミニウム板 (約 1.4MeVβ線まで遮へい(参5) ) 測定距離:表面から 5mm 図 2.測定試験体系 表 2.測定結果 核種 β線放出 率 (1/s) 放射能強 度[公称 値]*) (kBq) β(γ)線計 数率 (cpm) γ線計数 率 (cpm) γ線/β(γ) 線比率 (-) 1kBq 当た りのγ線 に対する 検出感度 (cpm/kBq) Co-60 1.079×103 3.5 4951 946 0.191 270 Cs-137 1.797×103 4.6 10982 152 0.014 33 *) 放射能強度については校正証明書がないため、公称値に基づいて半減期補正をした。 5mm 3mm 厚 Al 板 面線源 GM サーベイ メータ 6−3
  • 52. 6- 4 上記結果によると、β(γ)測定値に対するγ線の寄与率は、Co-60 で約 20%、Cs-137 で約 1.4%と放射性核種に大きく依存する。これは、GM サーベイメータの計数効率がβ 線エネルギー(表 1 参照)とγ線エネルギーに依存していることに起因していると考え られる。 GM 計数管のγ線エネルギーに対する計数効率としては、図 3 の関係が知られている。 図 3.γ線エネルギーに対する計数管効率の比較(参6) GM サーベイメータのγ線に対する計数効率のエネルギー依存として図中の近似直線を 用いて、GM サーベイメータの放射性セシウムγ線に対する検出感度を評価する。 図 2 の測定体系における放射性核種による空間線量率(μSv/h)は、1cm 線量当量率 定数に基づき、図 4 の体系での QAD 計算結果から評価した。 h 5cmH 5cmφ GM 管 面線源 (10cm×10cm) 側面 (陰極) )100( 1 )5.0()5.0( cmh cm cmhcmh    側面での平均線量率 線量当量率定数            側面での平均線量率線量率 図 4 図 2 の測定体系での線量率評価方法 近似直線: xy 68.0 6−4
  • 53. 6- 5 表 3 の評価結果に示すように、GM サーベイメータの放射性セシウムのγ線に対する 換算係数は、1.62 (μSv/h)/kcpm となる。この評価値は、10cm×10cm の汚染土壌を測 定した結果(1.56±0.13 (μSv/h)/kcpm)と概略一致している。 GM サーベイメータは表面汚染測定用として用いているものであり、前方向からのγ 線に対する検出感度は小さくなる傾向があり、上述した換算係数は対象とする汚染形 状により変化することが考えられる。 以上の結果から、GM サーベイメータで表面汚染を測定する場合の換算係数を表 4 に まとめて示す。GM サーベイメータで表面汚染を測定する場合には、通常、汚染から放 出されるβ線を主に検知することになるので、β(γ)線換算係数を用いる。γ線換算 係数は、汚染の状態によりβ線が遮へいされγ線だけが検知される場合を想定したも のになる。 6−5
  • 54. 表3.GMサーベイメータのγ線に対する換算係数の評価結果 核種 平均γ線 エネルギー [MeV] 平均エネル ギーのγ線 に対する計 数効率比 (図3の近似 直線より) [-] 1cm線量当量 率定数 [(μSv/h) /MBq/m2 ] 図2の測定体 系での線量 率 [(μSv/h) /MBq] γ線換算係 数(γ線検 出感度は表 2を使用) [(μSv/h) /kcpm] γ線換算係 数(Cs-137 の換算係数 にγ線計数 効率を考慮 して評価し た値) [(μSv/h) /kcpm] 測定試験*2) か ら求めたγ 線換算定数 [(μSv/h) /kcpm] Co-601.251.893.47×10-1 1.98×102 0.730.880.87±0.05 Cs-1370.6619.60×10-2 5.47×101 1.661.661.46±0.47 Cs-1340.701.052.44×10-1 2.39×102 -1.57- 放射性セシウム*1) (Cs-134+Cs-137) -1.02---1.62 1.56±0.13 (土壌) *1)Cs-134とCs-137の比が0.8であるとした。 *2)右図に示す体系で測定した。誤差は5回の測定値の変動を1σで示している。 Csを含んだ土壌の場合は、土壌の厚さを5mmにして測定した。 6 ― 6 6−6
  • 55. 6- 7 表 4.GM サーベイメータによる表面汚染に対する換算係数の試算 核種 β(γ)線換算係数*2) (Bq/cm2 )/kcpm γ線換算係数*3) (μSv/h) /kcpm γ線換算係数*3) (Bq/cm2 )/kcpm Cs-134 4.16 1.57 113 Cs-137 4.36 1.66 303 放射性セシウム*1) 4.27 1.62 175 *1) 存在比率を Cs-134/Cs-137=0.8 で評価 *2) 表 1 の値 *3) γ線換算係数は、10cm×10cm の汚染を 0.5cm 離れて、γ線だけが検知されることを想定した 評価(表 3) 3. 現地調査の実測値からの考察 上記のとおり GM サーベイメータによる放射性セシウムに対する検出効率は、外表面におけ る汚染の付着状況により大きく異なることになる。このため、整備士の外部被ばく線量評価 においては、スクリーニングされた車両と類似の汚染状況における GM サーベイメータと NaI シンチレーションサーベイメータの実測値を用いるのが適切である。 図 5 に東京電力が行ったJヴィレッジにおける調査に基づく線量換算係数を示す。除染前 の線量換算係数の平均値は 0.66μSv/h/kcpm である(別紙3参照)。これは、外表面のβ(γ) 線の影響に加え、内部のγ線の影響を受けているためであると考えられる。 図 6 は JNES が実施した測定結果を示している(別紙3参照)。GM サーベイメータと NaI シ ンチレーションサーベイメータでの比較では、約 1~2 μSv/h/kcpm であり、2 項で考察し た GM サーベイメータのγ線に対する換算係数 1.62μSv/h/kcpm に近い値となっている。 このように、汚染形態が明確になっていない場合には、β線の影響のみならずγ線の影響 を考慮することが必要となるが、GM サーベイメータを用いる場合は GM サーベイメータのγ 線の検出効率の低さにより、γ線の影響を正確に把握することは難しい。 このような状況下において GM サーベイメータを用いる場合は、γ線の影響が高いと考えら れる場合は NaI シンチレーションサーベイメータを併用するなどの対応が必要になると考え られる。 6−7
  • 56. 6- 8 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 図6.GM サーベイメータによる計数率と NaI シンチレーションサーベイメータによる 空間線量率の関係 除染前 除染後 換算係数(μSv/h/kcpm) 図5.GM サーベイメータによる計数率と空間線量率の関係(東京電力) 最大値 75% 50% 25% 最小値 6−8
  • 57. 6- 9 4.GM サーベイメータの数え落としについて GM サーベイメータでのパルスの数え落しは、次の式で補正することができる。 τm m n − = 1 ここに、 n :真の計数率 (s-1 ) m :測定計数率 (s-1 ) τ :測定器の不感時間 (s) (1)式に基づく測定計数率と真の計数率の関係を表 5 に示す。 一般に GM サーベイメータの不感時間は 200μs 程度との記述(参7) があるが、TGS-146B につ いては 100μs 程度である(参8) 。不感時間を 100μs とした時、測定計数率が 100kcpm の場合 の真の計数率は 120kcpm であり、相対誤差は-17% (=100kcpm/120kcpm×100%)となる。表面汚 染サーベイメータの JIS 規格(参9) では、相対指示誤差の許容値は±25%であり、数え落としに よる誤差は許容値内であると考えることができる。 表 5 真の計数率と測定計数率の関係 測定計数 率(m) (kcpm) 真の計数率(n)/測定計数率(m) (-) 不感時間(τ ) (μs) 100 150 200 300 1 1.00 1.00 1.00 1.01 5 1.01 1.01 1.02 1.03 10 1.02 1.03 1.03 1.05 13 1.02 1.03 1.05 1.07 50 1.09 1.14 1.20 1.33 100 1.20 1.33 1.50 2.00 ------------------------------------------------ (2) 6−9
  • 58. 6- 10 参考文献 (参 1) JIS Z 4504 「放射性表面汚染の測定方法-β線放出核種(最大エネルギー0.15MeV 以上)及びα線放出核種」,2008 (参 2) アロカ株式会社、GM サーベイメータ TGS-136 パンフレット (参 3) JAEA「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の 災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」(環境省 災害廃棄物安全評価検討会第3回資料4、H23.6.19) (参 4) 原子力安全基盤機構、「平成 20 年度 クリアランス制度に関する調査報告書」 (参 5) 社団法人日本アイソトープ協会、「アイソトープ手帳 10 版」 (参 6) G. F. KNOLL, 放射線計測ハンドブック第 2 版, 日刊工業新聞社 (参 7) 白川、放射線教育導入のためのデモンストレーション実験 (1) ―放射線防護の三 原則―、Isotope News 2008 年 8 月号 (参 8) 日立アロカメディカル㈱からの聞き取り調査結果 (参 9) JIS Z 4329:2004 6−10
  • 59. 7- 1 別紙7 車の点検・整備の時間配分と離隔距離 車の点検・整備に要する時間等は、オイル交換やタイヤの交換等軽微な作業から個別部位 の修理に至るまで様々であり、個々の車の状況により異なると想定されるが、ここでは最も 持ち込まれる車両台数が多いと思われ、かつ取扱項目が多岐にわたる法定の点検・整備項目 に基づき、点検・整備の車外、車内、その他の準備作業の時間配分と汚染部位からの離隔距 離の設定を行う。 調査結果をまとめて表1に示す。 表1 点検・整備作業に係る離隔距離別等の時間配分 点検箇所とアクセス 離隔距離等(cm) 時間配分割合(%) 車外点検 (足廻り) (下廻り) 50 30 車外点検 (エンジンルーム 部) 20 20 40 50 20 車内点検 (運転席等) 車内中心 10 車外点検 (準備作業等) 200 20 1.点検・整備項目の車外、車内の区分 調査結果を表2に示す。 現在「自動車点検基準」で定められている定期点検項目は、12 ヶ月点検が 26 項目、24 ヶ 月点検は 56 項目ある。基本点検は足廻り点検、下回り点検、エンジンルーム点検、車内点検 で、車の側面、及びピット内から見上げる位置での目視、触診、打診による確認が中心であ る。分解・取り外し等の伴う点検は、車の種類や年式、点検結果により不具合が生じた場合 に行う場合が多く、分解点検や清掃の頻度は上記に比べ少ないと見なせる。したがって、個々 の不具合に伴う1項目に数十分以上の作業はここでは想定が困難なため、平均的には1台あ たり半日程度の作業と見なす。なお、エンジンオイル、ブレーキフリュード、クーラント液 の交換、エアフィルタの清掃作業等、車検に伴い行われることの多い作業については、車と の近接作業として、上記の時間内に含まれると想定できる。 車内における点検作業は、点検項目としては 11 項目あるが、操作としては、隙間計測以外 はハンドルやブレーキ操作、エンジン始動等があるのみで、作業の占める時間は少ない。し かし、六面を囲まれているため線量換算係数が比較的大きいので、検査機での運転操作等も 含め保守的に多目の時間を配分し、全時間の 10%と設定する。 また、点検・整備に係る工具の取り合い等の準備作業は、現場調査では、個々の点検整備 作業の半分程度の時間を費やしていたが、汚染された部位から離れた場所での作業のため、 保守的に全時間の 20%と少なめの時間配分に設定する。 7−1
  • 60. 7- 2 以上より、足廻り及び下廻り点検、エンジンルーム点検、車内点検、及び個々の作業に伴 う工具の取扱や準備作業の時間配分は、点検整備箇所と項目及び一般的な所要時間と現場調 査に基づき、時間配分割合を 30:40:10:20 とした。 2.汚染部位からの離隔距離 離隔距離に関しては、整備士と車との位置関係から、以下のように定めた。 足廻り点検及び下廻り点検の作業における整備士と車との位置は、ほとんどは腕長位置 (50cm 程度)での作業もしくはそれ以上の距離の作業である。したがって、点検作業者と車と の距離は平均 50cm と見なした。 エンジンルーム点検も多くは腕長位置(50cm 程度)での作業もしくはそれ以上の距離の作業 であるが、一部の作業にエンジンルーム中央部にフロント側から身を乗り出して行う作業で 体幹部がラジエータ等に近接する場合がある。このため、これらの作業を保守的に考慮し、 腕長位置(50cm 程度)での作業と最近接作業(20cm 程度)を 50:50 と設定した。 7−2
  • 61. 7- 3 表2 車外及び車内作業の区分 ハンドル ・ 操作具合 ○ ギヤ・ボックス ・ 取付けの緩み※ 1 緩み、がた及び損傷※ 2 ボール・ジョイントのダスト・ブーツの亀裂及び損傷 かじ取り車輪 ・ ホイール・アライメント※ ○ 1 ベルトの緩み及び損傷 2 油漏れ及び油量 3 取付けの緩み※ 1 遊び及び踏み込んだときの床板とのすき間 ○ 2 ブレーキのきき具合 ○ 1 引きしろ ○ 2 ブレーキのきき具合 ○ ホース及びパイプ ・ 漏れ,損傷及び取付状態 1 液漏れ 2 機能、摩耗及び損傷 1 ドラムとライニングとのすき間※ 2 シューの摺動部分及びライニングの摩耗 3 ドラムの摩耗及び損傷 1 ディスクとパッドとのすき間※ 2 パッドの摩耗 3 ディスクの摩耗及び損傷 1 タイヤの状態※ 2 ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み※ 3 フロント・ホイール・ベアリングのがた※ 4 リヤ・ホイール・ベアリングのがた※ 取付部及び連結部 ・ 緩み、がた及び損傷 ショック・アブソーバ ・ 油漏れ及び損傷 クラッチ ・ ペダルの遊び及び切れたときの床板とのすき間 ○ トランスミッション及びトランスファ ・ 油漏れ及び油量※ 1 連結部の緩み※ 2 自在継手部のダスト・ブーツの亀裂及び損傷 デファレンシャル ・ 油漏れ及び油量※ 1 点火プラグの状態※ 2 点火時期 ○ 3 ディストリビューターのキャップの状態 バッテリ ・ ターミナル部の接続状態 電気配線 ・ 接続部の緩み及び損傷 1 排気の状態 2 エア・クリーナ・エレメントの状態※ 潤滑装置 ・ 油漏れ 燃料装置 ・ 燃料漏れ 1 ファン・ベルトの緩み及び損傷 2 水漏れ 1 メターリング・バルブの状態 2 配管の損傷 1 配管等の損傷 2 チャコール・キャニスタの詰まり及び損傷 3 チェック・バルブの機能 1 触媒反応方式等排出ガス減少装置の取付けの緩み及び損傷 2 二次空気供給装置の機能 ○ 3 排気ガス再循環装置の機能 ○ 4 減速時排気ガス減少装置の機能 ○ 5 配管の損傷及び取付状態 ・ 取付けの緩み及び損傷※ ・ マフラの機能 ・ 緩み及び損傷 下回り車外目視及び触診打 診確認である。 車枠及び車体 エグゾースト・パイプ及びマフラ 24ヶ月法定点検項目とその点検操作概要 及び 車内、車外点検操作項目 ※印の点検は、前回点検以降、年間走行距離5000km以下の車は、省略可。 ハンドル操作、アライメント確認で 試乗確認があるが、基本的 は下回り、エンジンルームの目 視確認&簡単な触診打診確 認である。 かじ 取り 装置 ロッド及びアーム類 パワー・ステアリング装置 点検箇所 マニュアル車以外は下回り車外 目視及び触診打診確認であ る。 始動操作で車内にはいる が、エンジンルームの目視及び 触診打診確認である。 エンジンルーム及び下回り車外 目視及び触診打診確認であ る。 排ガス計測のために車内操 作があるが、エンジンルーム及 び下回り車外目視及び触診 打診確認である。 ブレーキの効き具合確認等の み計測機上での試乗操作 要。下回り確認は基本的に 目視及び触診打診確認。ブ レーキドラム、ディスク関連も基本 は目視と計測のみである。 (走行距離によるが、分解点 検・交換作業は2~3回の車 検毎に1回程度である。 ホイル周り車外目視及び触診 打診確認である。 下回り車外目視及び触診打診確認で ある。 点検概要 車内点 検項目 24ヶ月点検項目 制動 装置 ブレーキ・ペダル 駐車ブレーキ機構 ブレーキ・ドラム及びブレーキ・ シュー ブレーキ・ディスク及びパッド マスタ・シリンダ、ホイール・シリ ンダ及びディスク・キャリパ 走行 装置 ホイール 緩衝 装置 動力 伝達 装置 プロペラ・シャフト及びドライブ・ シャフト 電気 装置 点火装置 原動 機 本体 冷却装置 ばい 煙、悪 臭の ある ガス、 有害 なガ ス等 の発 散防 止装 置 ブローバー・ガス還元装置 燃料蒸発ガス排出抑止装置 一酸化炭素等発散防止装置 7−3