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リネン布設置法による空気中塵埃の放射能量測定(トライアル)報告
フクロウの会/放射能測定プロジェクト
2014.7.8 青木一政
1.調査の背景と目的
· 外部被ばくや食品からの摂取に対する測定の取り組みはなされているが呼吸からの取り込みに対する
調査はほとんどなされていない。
· リネン布を屋外設置し空気中塵埃を吸着させ放射能量を測定してその実態を定量的に明らかにする。
· 本格調査に先立ち、トライアルとして東京都青梅市、日の出町(コントロール)と福島県伊達市内 3 カ
所で空気中塵埃の放射性セシウムの濃度を測定する。
2.調査方法の概要
(1) リネン布を屋外に放置し大気中の塵埃を吸着させる。
(2) リネン布をゲルマニウム半導体検出器で分析し放射能量を定量化する。
3.調査結果
かっこ内は検出下限値
項目 単位 対象地点1 対象地点2 対象地点3 対象地点4 対象地点 5
測定場所 ―― 伊達市
下小国
伊達市
梁川町
伊達市
保原町
東京都
青梅市
東京都日の
出町二ツ塚
峠
リ ネ ン 放 置 期
間
2014/5/11
~5/25
2014/5/25
~6/8
2014/5/18 ~
6/1
2014/3/23
~4/6
2014/3/23
~4/6
放置時間 h 336 336 336 336 336
リネン布面積 cm3
5700
(38×150)
5700
(38×150)
5700
(38×150)
5624
(38×148)
5624
(38×148)
リ ネ
ン 布
吸 着
獲 放
射能
Cs-134 Bq 0.49 1.3 0.38 ND(0.16) ND(0.17)
Cs-137 Bq 1.2 3.4 0.73 ND(0.19) 0.55
Cs 合計 Bq 1.7 4.7 1.1 ND(0.16) 0.55
リネン布
吸着率
Bq/(m3
*
100h)
0.88 2.4 0.58 ND 0.29
4.調査結果の検討
(1) 伊達市内各所ではリネン布設置法により放射性セシウムの付着が定量化できた。
(2) 梁川町は下小国、保原より空間線量は低く、より低い値が想定されたが下小国の 3 倍の値を示し
た。これは設置場所が鉄道線路脇であり、列車の往来による風による影響が大きいと推定できる。
引き続き調査を行う。
伊達市下小国 伊達市梁川 伊達市保原
(3) コントロールとして測定した対象地点 4,5 は伊達市内よりは低い値であった。対象地点5の二ツ
塚峠付近にはエコセメント工場があり、そこからの排気による二次汚染の可能性が大きい。
(4) リネン布設置法は簡便な方法であるが、大気中塵埃のセシウム量が定量的に比較できることが判
明した。地域差が相対的にではあるが比較できるため有効である。
(5) 検出感度(検出限界)について;伊達市内は今回の条件でほぼ検出可能であるが、十分な検出下
限値を得るために 20 時間程度の測定を要している。相対的に低い地域での検出や測定作業効率
化を考えると、リネン布面積を 2 倍(2 枚使用)、放置時間を 3 週間程度にすることが望ましい。
5.今後の進め方
(1) ちくりん舎と相談してプロジェクトとして特別料金(1 検体 1 万円程度、12 時間測定)にならな
いか交渉。(実費ではリネン布1000円程度+15,000円(12時間測定))
(2) 福島周辺地域で地元負担金3000円/1 カ所程度でどのくらい希望者が出るか相談。
(3) 放射能測定プロジェクト負担で当面30カ所程度(24万円)可能。
※ リネン布設置法と合わせてエアダストサンプラーによる大気中塵埃のセシウム量調査を行った。
これとの比較は別途報告予定。
以上

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リネン布放置による空気中塵埃の放射能量調査報告書

  • 1. リネン布設置法による空気中塵埃の放射能量測定(トライアル)報告 フクロウの会/放射能測定プロジェクト 2014.7.8 青木一政 1.調査の背景と目的 · 外部被ばくや食品からの摂取に対する測定の取り組みはなされているが呼吸からの取り込みに対する 調査はほとんどなされていない。 · リネン布を屋外設置し空気中塵埃を吸着させ放射能量を測定してその実態を定量的に明らかにする。 · 本格調査に先立ち、トライアルとして東京都青梅市、日の出町(コントロール)と福島県伊達市内 3 カ 所で空気中塵埃の放射性セシウムの濃度を測定する。 2.調査方法の概要 (1) リネン布を屋外に放置し大気中の塵埃を吸着させる。 (2) リネン布をゲルマニウム半導体検出器で分析し放射能量を定量化する。 3.調査結果 かっこ内は検出下限値 項目 単位 対象地点1 対象地点2 対象地点3 対象地点4 対象地点 5 測定場所 ―― 伊達市 下小国 伊達市 梁川町 伊達市 保原町 東京都 青梅市 東京都日の 出町二ツ塚 峠 リ ネ ン 放 置 期 間 2014/5/11 ~5/25 2014/5/25 ~6/8 2014/5/18 ~ 6/1 2014/3/23 ~4/6 2014/3/23 ~4/6 放置時間 h 336 336 336 336 336 リネン布面積 cm3 5700 (38×150) 5700 (38×150) 5700 (38×150) 5624 (38×148) 5624 (38×148) リ ネ ン 布 吸 着 獲 放 射能 Cs-134 Bq 0.49 1.3 0.38 ND(0.16) ND(0.17) Cs-137 Bq 1.2 3.4 0.73 ND(0.19) 0.55 Cs 合計 Bq 1.7 4.7 1.1 ND(0.16) 0.55 リネン布 吸着率 Bq/(m3 * 100h) 0.88 2.4 0.58 ND 0.29 4.調査結果の検討 (1) 伊達市内各所ではリネン布設置法により放射性セシウムの付着が定量化できた。 (2) 梁川町は下小国、保原より空間線量は低く、より低い値が想定されたが下小国の 3 倍の値を示し た。これは設置場所が鉄道線路脇であり、列車の往来による風による影響が大きいと推定できる。 引き続き調査を行う。
  • 2. 伊達市下小国 伊達市梁川 伊達市保原 (3) コントロールとして測定した対象地点 4,5 は伊達市内よりは低い値であった。対象地点5の二ツ 塚峠付近にはエコセメント工場があり、そこからの排気による二次汚染の可能性が大きい。 (4) リネン布設置法は簡便な方法であるが、大気中塵埃のセシウム量が定量的に比較できることが判 明した。地域差が相対的にではあるが比較できるため有効である。 (5) 検出感度(検出限界)について;伊達市内は今回の条件でほぼ検出可能であるが、十分な検出下 限値を得るために 20 時間程度の測定を要している。相対的に低い地域での検出や測定作業効率 化を考えると、リネン布面積を 2 倍(2 枚使用)、放置時間を 3 週間程度にすることが望ましい。 5.今後の進め方 (1) ちくりん舎と相談してプロジェクトとして特別料金(1 検体 1 万円程度、12 時間測定)にならな いか交渉。(実費ではリネン布1000円程度+15,000円(12時間測定)) (2) 福島周辺地域で地元負担金3000円/1 カ所程度でどのくらい希望者が出るか相談。 (3) 放射能測定プロジェクト負担で当面30カ所程度(24万円)可能。 ※ リネン布設置法と合わせてエアダストサンプラーによる大気中塵埃のセシウム量調査を行った。 これとの比較は別途報告予定。 以上