1. シナプスが人格をつくる
-脳細胞から自己の総体へ-
ジョセフ・ルドゥー

2. 目次
 第一章 大きな問題
 第二章 自己を求めて
 第三章 いちばんわけのわからない機械装置
 第四章 脳の構築
 第五章 時の中の冒険
 第六章 小さな変化
 第七章 心の三部作
 第八章 情－『エモーショナル・ブレイン』再訪
 第九章 意－ロスト・ワールド
 第十章 シナプスの病気
 第十一章 あなたは何者なのか

3. 第一章 大きな問題
-ニューロンとはなにか-
 ニューロンとは脳の神経細胞
 脳の構成は基本的に小さなニューロンが軸になって網目のようにつながり巨大なネットワーク(神経回路)
を作っている。
画像：http://j-net21.smrj.go.jp/develop/digital/entry/001-20081119-10.html
 私たちの脳の働きは、各ニューロンは他の多数のニューロンからの信号を受け取り、それをまた次の
ニューロンに信号を送るということを情報を伝達することによって成り立っている。
「ブレイン‐マシン・インターフェース」ってなんだ？！
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/digital/entry/001-20081119-10.html

4. 第一章 大きな問題
-シナプスとはなにか-
 ニューロン同士を繋ぐ役割を果たしている。
画像：http://j-net21.smrj.go.jp/develop/digital/entry/001-20081119-10.html
 脳の仕事はほとんどの場合、シナプスを通してニューロン間の伝達が行
われることと、過去のシナプス伝達により書き込まれた情報が呼び起こさ
れることによって達成される。
「ブレイン‐マシン・インターフェース」ってなんだ？！
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/digital/entry/001-20081119-10.html

5.  実験①
・ラットに嫌悪刺激(足への軽い電気ショック)を
与える。
・直前にある音を聞かせる。
 その結果
・次にその音を聞いた時に、すくみ行動が起こる
ようになる。
 このようにネコなどの捕食者たち(嫌悪刺激)とでくわ
して、かつ生き延びたラットは、その状況（直前に音
があった）についてできるだけ多くの事を脳に蓄える
ようになる。
音を聞いたら防御反応をするように(経験から)
シナプスがそのように配線された。
 実験②
ラットはネコを見るとすくみ上がる(防御反応
をみせる)このように、ラットが反応するのは
扁桃体シナプスが生まれ持ってそのように
配線されているため。
(扁桃体は脅威にさらされた状態の元ですく
みなどの防御反応を制御する脳のシステ
ムの一部)
・ そこで、ラットの脳の扁桃体と呼ばれる領域に
損傷を加えると….
ラットはすくみをおこさなくなる。
つながっていたシナプスが壊されたため。
第一章 大きな問題
-ラットの例-
脳のシステムはほとんどが、可塑的であり、経験によって修正することが可能である。

6. 第一章 大きな問題
-シナプス的本質-
生得的なもの(素質)と経験(環境)から
脳のシナプス機構を形成する。
この脳のシナプス接続の特有のパターンと、
シナプス接続に書き込まれた情報こそが、
その人がどういう人であるかの情報である。
幼少期に死亡した子供のクローンが作れるようになったとしても、
そのクローンは独自の経験を持つわけなので、姿はそっくりでも、
シナプスの接続や神経伝達物質の量などが異なるために
オリジナルの子供とは異なる行動、思考、感じ方をする。
シナプス
素質 環境
心と行動
(自己)したがって…

7. 第二章 自己を求めて
-自己についてのある見かた-
 自己には明示的側面と内示的側面がある。
「明示的」、「内示的」という言葉は記憶の研究から借用された言葉。
・明示的側面－意識的にアクセスできる記憶の形成に関わる脳システム
・内示的側面－意識しないで情報を学習し、貯蔵する事を可能にする脳システム
 脳システムは可塑的であり、意識の外で機能するので、
→「特定の情報を内示的に蓄えることのできるシステム」と考えてよい。
 あなたの人生経験が、あなたが何者であるかに関わってくる程度に応じて、内示的な
らびに明示的な記憶の貯蔵が、自己を形成し維持する主要なメカニズムになる。
・明示的システムによって学習され貯えられる側面は、自己の明示的な側面を形成する。
→自意識をもつということは、自分が何者であるかについてわかっていることを
長期記憶から引き出し、思考の前線へ配置すること
・内示的システムによって学習され貯えられる側面は、自己の内示的な側面を形成する。
→たとえ意識していなくとも、自己についてのこれらの情報を常時利用している。
歩いたり話したりする仕方は過去の経験に基いて機能するシステムを反映している
が、その動きは意識外で起こる。

8. 第二章 自己を求めて
-自己についてのある見かた-
 自己は固定的なものではなく、遺伝子にプログラムされた成熟、学習、忘却、スト
レス、老化、病気などにより、足し算や引き算が行われる。これは自己の明示的
側面と内示的側面の両方に当てはまる。
 例えば…
・控えめな褒め言葉→明示的な記憶
・口を極めた賛辞→明示的に記銘され、情動システムを覚醒させて、
内示的記憶に蓄える
・ストレス→明示的記憶を損ない、情動システムの内示的記憶機能を増強する。
 自己の全側面が学習されたものであるはけではない。一部は遺伝的に受け継い
だものによる。学習し、記憶するということを含めて、私たちがホモサピエンスとし
て持っている能力のすべては、私たちの種の遺伝子的形成のおかげである。