結合価文法による動詞と名詞の訳語選択能力の評価

1. ー文献紹介ー
結合価文法による動詞と名詞の
訳語選択能力の評価
長岡技術科学大学 自然言語処理研究室 高橋寛治

2. 文献について
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結合価文法による動詞と名詞の訳語選択能力の評価
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金出地真人、徳久雅人、村上仁一、池原悟
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情報処理学会研究報告 自然言語処理研究会報
告、119-124、2003-1-20

3. はじめに
動詞と名詞の訳語選択における、結合価文法の効果の定量的検証
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これまでは・・
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動詞の意味解析
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「尤度」共起レベルと頻度
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「制約」辞書的記述
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単語の共起関係
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訳語選択において、いずれも高い精度を出していない

4. 結合価文法のおさらい
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結合価文法
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用言と格要素(名詞＋助詞)の意味的関係を記述したもの
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結合価パターンの例（日本語語彙大系 構文意味辞書）
見出し語 日本語文型 英語文型
送る N1（人）がN2（休暇）を送る N1 spend N2
送る N1（人）がN2（生活）を送る N1 live N2

5. 一般名詞意味属性体系
名詞の意味的用法に着目し
シソーラスで体系化
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最大12段の木構造
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2,710の意味属性の分類
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約40万語の名詞
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木構造において
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上位の意味属性は下位の意味属性を内包

6. 結合価文法による訳語選択
対象とする文の用言により構文意味辞書を検索
格要素の意味属性などが
最も多く一致するパターンを1つ選択
日本語パターンの格要素に対応する
名詞の意味属性から名詞の訳語を決定
訳語

7. 評価実験
結合価文法の性能の調査
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結合価文法で得た英語訳と正解例の英訳語を比較
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利用するシステム
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翻訳ソフト「ALT-J/E」を用いる
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結果の誤りには注意
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ALT-J/Eでは、形態素解析などのその他解析のエラーがある

8. 評価対象
IPAL辞書に登録されている基本動詞および基本
名詞を含む単文の日英対訳文
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基本動詞（861語）、基本名詞（1,081語）
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評価実験には
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動詞に関する5242文の例文
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名詞に関する例文1062文の例文

9. 評価方法と基準
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評価はALTで機械翻訳した英訳文のうちの注目
単語の英訳語と対訳の英訳語を比較
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基準は
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「◯」「△」「✕」の三段階

10. 評価◯
対象とする単語のALTの英語訳が、対訳例が用
いている訳語と一致する場合
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例 ：２つの川がこの地点で合う。
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対訳 ：The two rivers join at this point.
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ALT訳 ：Two rivers join in this point.

11. 評価△
対象とする単語のALTの英語訳が、対訳例が用
いている訳語と異なるが、意味的に正しい場合
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例 ：彼は準備を急いだ。
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対訳 ：He prepares quickly.
●
ALT訳 ：He hurried preparation.

12. 評価✕
対象とする単語のALTの英語訳が、間違っている場合
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例 ：彼ら海底に沈んでいた船を陸に揚げた。
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対訳 ：They salvaged the sunken vessel on the
bottom of the sea.
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ALT訳 ：They deep-fried in land the ships that had
sunk in the bottom of the sea.

13. 実験結果
評価 ALT-J/E
デフォルト
訳語
◯ 49% 2572文 22% 1141文
△ 40% 2081文 33% 1740文
✕ 11% 589文 45% 2361文
合計 5242文 5242文
評価 ALT-J/E
デフォルト
訳語
◯ 62% 658文 58% 615文
△ 29% 312文 27% 289文
✕ 9% 92文 15% 158文
合計 1062文 1062文
動詞訳し分けの精度 名詞訳し分けの精度

14. 正しい動詞訳語が出せなかった原因
翻訳失敗の原因 割合
１ パターンが登録されていない場合 21% 26文
２ パターンの照合に失敗した場合 37% 45文
３ 慣用表現が用いられている場合 11% 13文
４ 形態素解析に失敗した場合 9% 11文
５ 係り受け解析に失敗した場合 17% 21文
６ 例文が２通りの意味にとれる場合 5% 6文

15. パターンが登録されていない場合
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例 ：学生が教授に教授の都合を電話で伺った。
●
対訳 ：The student phoned the professor and
asked him when he would be free.
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ALT ：A student listenend the professor's
circumstances with a telephone to a professor.
不足しているパターンを補うことで解決

16. パターンの照合に失敗した場合
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例 ：彼は海外で夏休みを送った。
●
対訳 ：He spend his summer vacation abord.
●
ALT ：He saw a summer vacation of at a forein
country.
送るに関して12種類あるため、選択が難しい

17. 例文に慣用表現が用いられている
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例 ：彼は話の腰を折った。
●
対訳 ：He interrupted a person's speech.
●
ALT ：He broke the waist of talk.
パターンの追加で解決

18. 解析のエラー
結合か文法を用いる以前の問題
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形態素解析の失敗
●
係り受け解析の失敗
これらが正しく処理されないと
結合価文法を扱うことができない。

19. 例文がニ通りの意味にとれる場合
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例 ：職場の不満から彼は家族の者に当たった。
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対訳 ：He was hard on his family because of complaints
he had about his job.
●
ALT ：He corresponded to the person of his family from
the discontent of a place of work.
原因と結果をそれぞれ節であらわす複文
●
結合価文法による訳し分けの限界

20. 名詞訳語に関して
ALTの結果は、デフォルトより6％良い値
●
IPAL辞書の名詞の約5割が多義を持たないため
●
結合価文法は動詞の訳語選択を目的として開発され
たものである

21. おわりに
●
単文において結合価文法の動詞と名詞の訳し分け精度を調査
した
●
動詞についてはデフォルトに比べ34％の精度の向上が見ら
れた
●
結合価文法の特徴を限界まで用いることができれば、さらに
精度向上が期待できる（動詞は98~99％、名詞は94％と推
測）

22. おわりに
●
単文において結合価文法の動詞と名詞の訳し分け精度を調査
した
●
動詞についてはデフォルトに比べ34％の精度の向上が見ら
れた
●
結合価文法の特徴を限界まで用いることができれば、さらに
精度向上が期待できる（動詞は98~99％、名詞は94％と推
測）