長崎方言におけるアクセントの中和
- 2. 目次
1. 背景
長崎方言と鹿児島方言の比較
複合名詞アクセント
2. 複合動詞関連のアクセント
複合動詞(VV)
動詞+名詞の複合語(VN)
3. 結論
- 3. 九州地方のアクセントの分布
多型
福岡,大分
二型
鹿児島
長崎,佐賀西部
天草(熊本西岸)
一型
諸県(宮崎~鹿児島)
無型
長崎北部~宮崎など
(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Japanese_pitch_accent_map-ja.pngより)
- 7. 音声形:後ろの鹿児島,前の長崎
長崎方言(松浦 印刷中)
A型:前から2モーラ目にピーク
アメ(飴) ,クルマ,トモダチ,バイオリン
アメ,アメが,アメから,アメからも
B型:平坦
アメ(雨),オトコ,ムラサキ,アスピリン
アメ,アメが,アメから,アメからも
- 19. 定量的傾向(1)
全体のモーラ数とアクセントの型
0% 20% 40% 60% 80% 100%
4モーラ 22 26
A型
5モーラ 38 46 B型
6モーラ以上 65 145
あえて言えば,6モーラでB型が多め。
全体説を支持せず。
- 25. 結果1
複合動詞
中和は見られず。
ナク(A)
→ナキハジメル,ナキスギル,ナキワメク,ナキクズレル
ノム(B)
→ノミハジメル,ノミナオス,ノミアカス,ノミホス
ハコブ(A)
→ハコビハジメル,ハコビナオス,ハコビアゲル,ハコビコム
オヨグ(B)
→オヨギハジメル,オヨギナオス,オヨギマワル,オヨギツク
- 27. 結果2
動詞+名詞の複合語
前部要素が3モーラ以上でB型に中和
話者によって複合語ごとに中和するかが異なる。
ナク(A)
→ナキジョーゴ,ナキムシ,ナキマネ
ノム(B)
→ノミヤ,ノミグスリ,ノミトモダチ
ハコブ(A)
→ハコビヤ,ハコビジョーズ(~ハコビジョーズ)
オヨグ(B)
→ オヨギカタ,オヨギジョーズ,オヨギキョーシツ
- 28. 結果2
後部要素による分類
前部要素によって中和の有無に揺れ?
~カタ(方)
→進み方(0),教え方(0) ,重なり方(0),ぶら下げ方(0),
並べ方(1),働き方(2)
数字はB型(中和した形)で発音した話者数(全3名)
~ジョーズ(上手)
→並べ上手(1),諦め上手(1),運び上手(2)
標準語の影響は考えにくい
理由:調査語彙に初頭2モーラにアクセントが来るものは
含まれていない。
- 33. 中和の方向
A型→B型しかない
複合名詞
アルファベット関連語彙
平板化形態素
なぜA→Bのみ?
×調音上の理由(LHLLLL…は難しい)
理由:範疇と調音は関係なさそう。
もっと形式的な理由では?
- 34. 音韻論と形態範疇
Smith(2011など)の観察
音韻規則の適用範囲を様々な言語で検討
対立の保持:名詞>形容詞>動詞
東京方言の名詞と動詞のアクセント
名詞=N+1個の対立,動詞=2個の対立
博多方言の名詞と動詞のアクセント
名詞=N個の対立(若いとN+1),動詞=対立なし