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佐世保市中心市街地視察報告書
H21.2.12~13
TMO ぬ ま づ
平成21年2月12日(木)、13日(金)の二日間に亘り、TMOぬまづ主催により「佐
世保市中心市街地視察研修会」を実施、小栗委員長を団長に 19 名が参加した。
以下に視察内容の概略及び事務局として参加した感想を報告いたします。
はじめに
長崎県北部の主要都市「佐世保
市」は、南は東シナ海につながる
天然の良港、佐世保港に臨み、北
には将冠岳、烏帽子岳などの急峻
な山峰が聳え、自然の要害の地を
形成している。
明治初期までは、人口約 4,000
人の半農半漁の一寒村でした。明
治 19 年に旧海軍の鎮守府が設置さ
れると急速に発展し、明治 35 年に
村から一挙に市に昇格した。戦後
は平和産業港湾都市として発展し、
「造船」「炭鉱」を経て、現在は製
造業とともに、県北地域の商業サービス業の中心となっている。
また、昭和 30 年に指定を受けた西海国立公園や平成 4 年オープンのハウステンボスなどの
アメニティリゾートが整備され、毎年多くの観光客を魅了している。
【佐世保市のプロフィール】
○人口(H20.4.1 住民基本台帳):255,974 人/65 歳以上人口:62,183 人(24.3%)
○世帯数(H20.4.1):100,631 世帯
○面積(H20.4.1):364.00 平方キロメートル
○外国人登録人口(H20.4.1):1,418 人
○経常収支比率(H18 年度決算):86.3%
○市の主な産業:造船業(佐世保重工業)、観光業(ハウステンボス、西海国立公園)
○特産品:三川内焼、佐世保独楽、東浜一風干し、真珠、九十九島かき、させぼバーガー等
○文化施設:長崎県立大学、長崎国際大学、島瀬美術センター、アルカス SASEBO,セイ
ルタワー(海上自衛隊佐世保資料館)、佐世保市亜熱帯動植物園、西海パールシーリゾー
ト等
佐世保市中心市街地視察
初日は午後 2 時前に長崎空港に到着、陸路佐世保市内へ向かう。西九州道(高速道路)を経
由し、佐世保みなと IC で下車、宿泊地のセントラルホテル佐世保に 3 時頃到着する。ホテル
では今回商店街をご案内頂く佐世保市商店街連合会会長の竹本慶三氏の出迎えを受けた。
チェックイン後、竹本氏の案内で市中心部の4○3アーケードを中心に商店街の視察に向か
2
う。佐世保の中心市街地を東西に走る「さるくシティ403アーケード」は約1km(960m)
の長さがあり、直線距離の長さとしては日本一長いアーケードと言われている。アーケードの
名前は、アーケード西側の「三ヶ町商店街」(松浦町・常盤町・栄町)と東側の「四ヶ町商店
街」(島瀬町・本島町・上京町・下京町)をつなぎ中間点に地元の百貨店「玉屋」(○)がある
ことに由来する。このアーケードに 167 商店が軒を並べている。
視察時は木曜日の平日であったが、沼津市内の通行量に比し、歩行者数が 2 倍程度に感じら
れるほど通行量は多く感じられた。
アーケードの道幅は仲見世商店街より広く、空間を広く感じることができる。通行量は三ヶ
町より確実に四ヶ町の方が多い。佐世保商工会議所が実施した通行量調査によると、休日の通
行量は三ヶ町商店街が 9,195 人(前年比 0.3%減)、四ヶ町商店街が 56,481 人(前年比 3.0%)。
平日の通行量は、三ヶ町商店街が 10,464 人(前年比 4.6%減)、四ヶ町商店街が 49,426 人(前
年比 5.8%増)であり、四ヶ町商店街においては昨年から通行量が増加に転じ、三ヶ町商店街
においても下げ止まりの傾向を見せ始めている。
アーケードを歩いていると途中に公園が
整備されており(松浦公園、島瀬公園)、こ
れが快適な空間を提供し、良いアクセントと
なっている。島瀬公園内に近代的な島瀬美術
センターがあるが、年末にはこの建物の壁面
いっぱいに壮麗なイルミネーションが飾ら
れ、年末のアーケードの一大名物となってい
る。また、同時期に「きらきらミュージック
フェア」「きらきらジャズフェスティバル」
等も開かれ、市民の憩いの場として親しまれ
ている。
アーケードを南北に横切り、市民の足である私鉄 MR(松浦鉄道)が走っているが、アーケ
ードを横切る部分が高架化されており、アーケードの天井部分を軌道が走っているため、歩行
者に全く支障のない配慮がなされている。また、アーケードのすぐ脇に佐世保中央駅が設けら
れ、絶好の集客機能(交通機関)を提供している。
四ヶ町では 2 年前から一店逸品運動に取り組んでおり、参加店は現在 42 店舗に及ぶ。参加
費 500 円で消費者に各店の逸品を順に見ていただく「逸品巡りツアー」も実施されており、商
店街の付加価値向上に商店主が自ら知恵を出し合って
いる。どの店も店先が明るく、店員の応対も非常に親
切・丁寧な印象を受けた。
アーケードの脇小路の所々に自動販売機が設置され
ているが、「Yosakoi させぼ祭り」のロゴが入っており、
商店街の役員の方に聞くと、自動販売機の販売代金の一
部が「Yosakoi させぼ祭り」の運営資金として寄付され
る仕組みになっているとのことで、この辺にも市民が中
心になって街起こしに取り組む際立った工夫が見られた。
約1時間に亘ってアーケードを一通り視察したが、歩道にゴミが全く落ちていないのは驚か
される。従って、極めて清潔な印象を受ける。どのような方法で管理しているか聞きそびれて
しまったが、歩行者の多さから窺われることは、市民一人一人が自分の街を綺麗に使うという
3
自覚を持っているからと思われる。
Yosakoi させぼ祭り
開催 11 回を数えた Yosakoi させぼ祭りは、例年 10 月の最終週の金・土・日の3日間に亘り
開催され、昨年は全国から 140 チーム 7,000 人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大
イベントとなっている。開催期間中市内の 14 会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、アー
ケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提供し、賑わいを演出している。
させぼのよさこい踊りは、27 万人の観客動員があり、経済効果は 21 億円に上ると言われて
いる。
戸尾市場街
市内の主要幹線道 35 号線沿いに防空壕跡を商店と
して利用した「戸尾市場街」があり、海産物や鮮魚な
どの商店が軒を並べている。平地が少ないため、古く
から佐世保市民の台所として有効利用されているもの
で、元小学校の敷地の基礎部分に防空壕が掘られたも
のをそのまま利用している。
多彩なイベント
Yosakoi させぼ祭り
開催 11 回を数えた Yosakoi させぼ祭りは、例年 10 月の最終週の
金・土・日の3日間に亘り開催され、昨年は全国から 140 チーム 7,000
人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大イベントとなって
いる。開催期間中市内の 14 会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、
アーケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提
供し、賑わいを演出している。
させぼのよさこい踊りは、27 万人の観客動員があり、経済効果は 21 億円に上ると言われて
いる。
きらきらチャリティー大パーティー
パリの 1 万人が集まるパーティーを模して、403アーケードで年末に大チャリティーパー
ティーを実施している。参加料として1人 1,000 円(18 人セットのグループ券、17 人以下の
場合は当日参加で 1 人 2,000 円)のパーティー参加券を販売、乾杯用のビールやワインとパー
ティーハットを提供している。アーケードに 5,500 人が集結する。
きらきらフェスティバル(11/20~12/25)の 100 万個の電球購入費を、光のオーナーになろ
うと市民に呼び掛け、一口 1,000 円で募金を募っている。
総 括
佐世保鎮守府が置かれて以来人口流入によって大きくなった街であるため、地元の人が語る
とおり、『みんな「よそ者」だから排他的な部分がない』という雰囲気があり、『来るものを拒
まず』の精神で、まちづくり・にぎわいづくりに意欲のある人を活動に組み入れている点が、
『日本一元気な商店街』と称される賑わいの原動力になっていると感じた。
佐世保においても車社会の進展や道路網整備による郊外の大規模住宅開発により、徐々に
『まち』が拡散・拡大していき、次第に郊外・ロードサイドにも大型量販店・大型店が出店し
始め、更に 97 年に中心市街地から 7 キロの位置に店舗面積 3 万㎡の郊外型大型 SC がオープ
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ンしたことを契機に、地元商店街が『同じような状況で駄目になったまちを全国に数多く見て
きており、そうなる前に手を打ちたい』と感じ、イベントを筆頭とした各種活性化策を講じ始
め現在に至る。
イベント実施の哲学
イベントの起こし方は、『自助・共助・住民参加型の 3 つのキーワード』を指針に企画・運
営されており、何より自身が楽しんでイベントを実施している。
竹本理事長をはじめ、商店街のコアメンバーに『考えていても始まらない・考えるよりまず
行動』という精神が定着・浸透している。
事業が硬直化しないように「何より自由な発想」を尊重している。また、全てを補助金に頼
るのではなく、経済的な自立のための工夫を常に考えている。⇒キーワードは、①採算が取れ
るのか②お客様に楽しんでいただけるか③集客は見込めるか④長続きできそうか、の視点。
豊富なアイディアの源泉は、『来るものは拒まず』。参加しやすいように朝 7 時から会議を実
施。やがて商店街有志が夢を語り合う『若者・馬鹿者・よそ者会議』に発展、見事好循環に繋
がっている。
まちづくりの専門家に、『日本一元気な商店街』と称されるまでの秘訣をキーマンである竹
本会長と遠田氏に伺うと、両者とも『自分たちが楽しむことが大切。このまちで生まれ育ち、
このまちで商いをしているのだから、一緒になって楽しもうと思っている』とのこと。なによ
り大きいのは、様々な意見を取り入れる『寛容の心』が賑わいの原動力と感じた。
佐世保商工会議所訪問
2日目に7名(後藤会頭、市川副会頭、小栗委
員長、芦川会長、杉山局長、杉澤次長、事務局中
野)で佐世保商工会議所を訪問、商業支援策を伺
った。
佐世保商工会議所では、前田副会頭、田平専務
理事を始め地域振興課の職員から話を伺った。
●佐世保は基地の町、基地関連の特需が 900 億
~1,000 億円ある。基地関連の住民:海上自衛隊⇒
10,000 人、米海軍⇒5,000 人
●行政と商工会議所(民間)が連携している。竹本さんは商業部会の部会長を務めている。
以前に商業者が中心になって、イオンの郊外型大型店舗出店を阻止した。
佐世保市の「中活法」への取り組み状況
●平成 10 年度、佐世保市が「中心市街地活性化基本計画」を策定。その基本計画を受け、
佐世保商工会議所は平成 11 年度に「佐世保市商業タウンマネージメント計画策定調査事業」
を、平成 14 年度には「佐世保市 TMO コンセンサス形成事業」を行い、具体的な中心市街地
活性化の施策を検討。TMO の設置については、商店街毎の意識の差があり、熟度が高まらず
TMO 立上げまでには至らなかったとのこと。
●平成 18 年 8 月に「新中心市街地活性化法」が施行されたことを受け、佐世保市において
は中心市街地がどうあるべきか、また、これまで以上の賑わいづくりやより住みやすい街づく
りのためにどうするべきかを検討する「佐世保市中心市街地活性化調査・検討委員会」を設置。
●佐世保商工会議所では、新中活法に則り、商業面だけではなく、中心市街地の活性化に向
け総合的な事業の検討が必要であると考え、「中心市街地活性化協議会」の設立の必要性や組
5
織について検討し、平成 19 年年度に「佐世保市中心市街地活性化基本計画コンセンサス形成
事業」を実施し、協議会設立に向けた具体的取り組み(協議会委員構成の検討/準備会の設立
等)を平成 20 年度に進めているところである。
●佐世保市の悩みとして「三ヶ町再開発(中心
市街地を構成する三ヶ町商店街の街区に、店舗・
住居の複合ビル4棟の建設計画→マンション部分
を買い取る見込みの業者が 20 年 11 月に撤退)」及
び「ポートルネッサンス 21 計画(JR 佐世保駅の
海側にある市の造成地 12 ヘクタールに、商業施設
や住宅を整備する計画→既存の商店街、コンパク
トシティ化に反する計画)」の2つの再開発事業の
進捗状況があるとのこと。
長崎市中心市街地(浜んまち 6 商店街)視察
●佐世保市内の研修終了後、長崎市に向かい、長崎浜んまち(アーケード商店街)を視察し
た。
中心市街地を取り巻く環境は、佐世保市と同様に地理的環境に恵まれている。特に路面電
車・バスの停車場・停留所が、中心市街地の要所要所に点在、取り囲んでおり、平地が少ない
長崎市においては「実生活とまちと移動手段」が機能している。これだけ交通網が相互に機能
していると高齢化社会にかえって適している「まち」となっている。個人病院も大変に多い(49
病院)。
●公共交通機関に恵まれていると言うものの、来街者の利便性を考えると、車社会の進展に
伴い市内民間駐車場との連携は欠くことのできないインフラであり、携帯・インターネットに
よる中心市街地空き駐車場の検索システム(とーむ de.com 事業)を導入した。平成 18 年 1
月現在、加盟駐車場 38 箇所(駐車可能総数:3,213 台)
●消費者の利便性と個店の経費削減、商店街の販促活動費捻出を目的として、連合体である
「長崎市浜んまち商店街振興組合連合会」が受け皿になり、平成 13 年 2 月、デビット・クレ
ジットカード一括処理事業(名称:長崎ぶらっと)を実施。中心商店街において、大手クレジ
ットカードを始め地場信販会社を含む 10 社と商店街が包括契約を結ぶことにより、事業の参
画加盟店は、ほぼ 100%のクレジットカードへの対応が可能となった。また同時に、クレジッ
トカードとデビッドカードに対応した多機能端末を導入した。→加盟店 300 店舗/クレジット
取扱高約 40 億円(平成 17 年度)
●長崎の県庁所在地(人口 45 万人)でもあり、また、商店街組織としても全国で 2 番目に
組織化された土地柄とあって、各お店・専門店の強さ(店構え・品揃い)が大変印象に残った。
●TMO 構想の具現化として、中心市街地のゾーン毎に 8 つの地区活性化協議会を設置して
いる点が特色。ゾーン分けの目的としては、①押し付けではなく『あるべき姿』を地元で考え
てもらうこと②事業を実施する場合、提案をした地域の人が実施主体となるという意識をもっ
てもらうこと/行政・会議所依存体質を少しでも減らすことが目的。→ゾーン分けしたことに
より、地区によっては温度差があり、活動できない地区もある。また、こうした合意形成は、
地元住民ならではの利害関係/泥臭い話…の問題が起こりやすいのが両刃の剣とる。
長崎市においても、まちづくり三法の見直しにより、推進体制・役割分担等を仕切り直し、
基本計画の見直しをしているところである。 以 上

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  • 1. 1 佐世保市中心市街地視察報告書 H21.2.12~13 TMO ぬ ま づ 平成21年2月12日(木)、13日(金)の二日間に亘り、TMOぬまづ主催により「佐 世保市中心市街地視察研修会」を実施、小栗委員長を団長に 19 名が参加した。 以下に視察内容の概略及び事務局として参加した感想を報告いたします。 はじめに 長崎県北部の主要都市「佐世保 市」は、南は東シナ海につながる 天然の良港、佐世保港に臨み、北 には将冠岳、烏帽子岳などの急峻 な山峰が聳え、自然の要害の地を 形成している。 明治初期までは、人口約 4,000 人の半農半漁の一寒村でした。明 治 19 年に旧海軍の鎮守府が設置さ れると急速に発展し、明治 35 年に 村から一挙に市に昇格した。戦後 は平和産業港湾都市として発展し、 「造船」「炭鉱」を経て、現在は製 造業とともに、県北地域の商業サービス業の中心となっている。 また、昭和 30 年に指定を受けた西海国立公園や平成 4 年オープンのハウステンボスなどの アメニティリゾートが整備され、毎年多くの観光客を魅了している。 【佐世保市のプロフィール】 ○人口(H20.4.1 住民基本台帳):255,974 人/65 歳以上人口:62,183 人(24.3%) ○世帯数(H20.4.1):100,631 世帯 ○面積(H20.4.1):364.00 平方キロメートル ○外国人登録人口(H20.4.1):1,418 人 ○経常収支比率(H18 年度決算):86.3% ○市の主な産業:造船業(佐世保重工業)、観光業(ハウステンボス、西海国立公園) ○特産品:三川内焼、佐世保独楽、東浜一風干し、真珠、九十九島かき、させぼバーガー等 ○文化施設:長崎県立大学、長崎国際大学、島瀬美術センター、アルカス SASEBO,セイ ルタワー(海上自衛隊佐世保資料館)、佐世保市亜熱帯動植物園、西海パールシーリゾー ト等 佐世保市中心市街地視察 初日は午後 2 時前に長崎空港に到着、陸路佐世保市内へ向かう。西九州道(高速道路)を経 由し、佐世保みなと IC で下車、宿泊地のセントラルホテル佐世保に 3 時頃到着する。ホテル では今回商店街をご案内頂く佐世保市商店街連合会会長の竹本慶三氏の出迎えを受けた。 チェックイン後、竹本氏の案内で市中心部の4○3アーケードを中心に商店街の視察に向か
  • 2. 2 う。佐世保の中心市街地を東西に走る「さるくシティ403アーケード」は約1km(960m) の長さがあり、直線距離の長さとしては日本一長いアーケードと言われている。アーケードの 名前は、アーケード西側の「三ヶ町商店街」(松浦町・常盤町・栄町)と東側の「四ヶ町商店 街」(島瀬町・本島町・上京町・下京町)をつなぎ中間点に地元の百貨店「玉屋」(○)がある ことに由来する。このアーケードに 167 商店が軒を並べている。 視察時は木曜日の平日であったが、沼津市内の通行量に比し、歩行者数が 2 倍程度に感じら れるほど通行量は多く感じられた。 アーケードの道幅は仲見世商店街より広く、空間を広く感じることができる。通行量は三ヶ 町より確実に四ヶ町の方が多い。佐世保商工会議所が実施した通行量調査によると、休日の通 行量は三ヶ町商店街が 9,195 人(前年比 0.3%減)、四ヶ町商店街が 56,481 人(前年比 3.0%)。 平日の通行量は、三ヶ町商店街が 10,464 人(前年比 4.6%減)、四ヶ町商店街が 49,426 人(前 年比 5.8%増)であり、四ヶ町商店街においては昨年から通行量が増加に転じ、三ヶ町商店街 においても下げ止まりの傾向を見せ始めている。 アーケードを歩いていると途中に公園が 整備されており(松浦公園、島瀬公園)、こ れが快適な空間を提供し、良いアクセントと なっている。島瀬公園内に近代的な島瀬美術 センターがあるが、年末にはこの建物の壁面 いっぱいに壮麗なイルミネーションが飾ら れ、年末のアーケードの一大名物となってい る。また、同時期に「きらきらミュージック フェア」「きらきらジャズフェスティバル」 等も開かれ、市民の憩いの場として親しまれ ている。 アーケードを南北に横切り、市民の足である私鉄 MR(松浦鉄道)が走っているが、アーケ ードを横切る部分が高架化されており、アーケードの天井部分を軌道が走っているため、歩行 者に全く支障のない配慮がなされている。また、アーケードのすぐ脇に佐世保中央駅が設けら れ、絶好の集客機能(交通機関)を提供している。 四ヶ町では 2 年前から一店逸品運動に取り組んでおり、参加店は現在 42 店舗に及ぶ。参加 費 500 円で消費者に各店の逸品を順に見ていただく「逸品巡りツアー」も実施されており、商 店街の付加価値向上に商店主が自ら知恵を出し合って いる。どの店も店先が明るく、店員の応対も非常に親 切・丁寧な印象を受けた。 アーケードの脇小路の所々に自動販売機が設置され ているが、「Yosakoi させぼ祭り」のロゴが入っており、 商店街の役員の方に聞くと、自動販売機の販売代金の一 部が「Yosakoi させぼ祭り」の運営資金として寄付され る仕組みになっているとのことで、この辺にも市民が中 心になって街起こしに取り組む際立った工夫が見られた。 約1時間に亘ってアーケードを一通り視察したが、歩道にゴミが全く落ちていないのは驚か される。従って、極めて清潔な印象を受ける。どのような方法で管理しているか聞きそびれて しまったが、歩行者の多さから窺われることは、市民一人一人が自分の街を綺麗に使うという
  • 3. 3 自覚を持っているからと思われる。 Yosakoi させぼ祭り 開催 11 回を数えた Yosakoi させぼ祭りは、例年 10 月の最終週の金・土・日の3日間に亘り 開催され、昨年は全国から 140 チーム 7,000 人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大 イベントとなっている。開催期間中市内の 14 会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、アー ケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提供し、賑わいを演出している。 させぼのよさこい踊りは、27 万人の観客動員があり、経済効果は 21 億円に上ると言われて いる。 戸尾市場街 市内の主要幹線道 35 号線沿いに防空壕跡を商店と して利用した「戸尾市場街」があり、海産物や鮮魚な どの商店が軒を並べている。平地が少ないため、古く から佐世保市民の台所として有効利用されているもの で、元小学校の敷地の基礎部分に防空壕が掘られたも のをそのまま利用している。 多彩なイベント Yosakoi させぼ祭り 開催 11 回を数えた Yosakoi させぼ祭りは、例年 10 月の最終週の 金・土・日の3日間に亘り開催され、昨年は全国から 140 チーム 7,000 人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大イベントとなって いる。開催期間中市内の 14 会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、 アーケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提 供し、賑わいを演出している。 させぼのよさこい踊りは、27 万人の観客動員があり、経済効果は 21 億円に上ると言われて いる。 きらきらチャリティー大パーティー パリの 1 万人が集まるパーティーを模して、403アーケードで年末に大チャリティーパー ティーを実施している。参加料として1人 1,000 円(18 人セットのグループ券、17 人以下の 場合は当日参加で 1 人 2,000 円)のパーティー参加券を販売、乾杯用のビールやワインとパー ティーハットを提供している。アーケードに 5,500 人が集結する。 きらきらフェスティバル(11/20~12/25)の 100 万個の電球購入費を、光のオーナーになろ うと市民に呼び掛け、一口 1,000 円で募金を募っている。 総 括 佐世保鎮守府が置かれて以来人口流入によって大きくなった街であるため、地元の人が語る とおり、『みんな「よそ者」だから排他的な部分がない』という雰囲気があり、『来るものを拒 まず』の精神で、まちづくり・にぎわいづくりに意欲のある人を活動に組み入れている点が、 『日本一元気な商店街』と称される賑わいの原動力になっていると感じた。 佐世保においても車社会の進展や道路網整備による郊外の大規模住宅開発により、徐々に 『まち』が拡散・拡大していき、次第に郊外・ロードサイドにも大型量販店・大型店が出店し 始め、更に 97 年に中心市街地から 7 キロの位置に店舗面積 3 万㎡の郊外型大型 SC がオープ
  • 4. 4 ンしたことを契機に、地元商店街が『同じような状況で駄目になったまちを全国に数多く見て きており、そうなる前に手を打ちたい』と感じ、イベントを筆頭とした各種活性化策を講じ始 め現在に至る。 イベント実施の哲学 イベントの起こし方は、『自助・共助・住民参加型の 3 つのキーワード』を指針に企画・運 営されており、何より自身が楽しんでイベントを実施している。 竹本理事長をはじめ、商店街のコアメンバーに『考えていても始まらない・考えるよりまず 行動』という精神が定着・浸透している。 事業が硬直化しないように「何より自由な発想」を尊重している。また、全てを補助金に頼 るのではなく、経済的な自立のための工夫を常に考えている。⇒キーワードは、①採算が取れ るのか②お客様に楽しんでいただけるか③集客は見込めるか④長続きできそうか、の視点。 豊富なアイディアの源泉は、『来るものは拒まず』。参加しやすいように朝 7 時から会議を実 施。やがて商店街有志が夢を語り合う『若者・馬鹿者・よそ者会議』に発展、見事好循環に繋 がっている。 まちづくりの専門家に、『日本一元気な商店街』と称されるまでの秘訣をキーマンである竹 本会長と遠田氏に伺うと、両者とも『自分たちが楽しむことが大切。このまちで生まれ育ち、 このまちで商いをしているのだから、一緒になって楽しもうと思っている』とのこと。なによ り大きいのは、様々な意見を取り入れる『寛容の心』が賑わいの原動力と感じた。 佐世保商工会議所訪問 2日目に7名(後藤会頭、市川副会頭、小栗委 員長、芦川会長、杉山局長、杉澤次長、事務局中 野)で佐世保商工会議所を訪問、商業支援策を伺 った。 佐世保商工会議所では、前田副会頭、田平専務 理事を始め地域振興課の職員から話を伺った。 ●佐世保は基地の町、基地関連の特需が 900 億 ~1,000 億円ある。基地関連の住民:海上自衛隊⇒ 10,000 人、米海軍⇒5,000 人 ●行政と商工会議所(民間)が連携している。竹本さんは商業部会の部会長を務めている。 以前に商業者が中心になって、イオンの郊外型大型店舗出店を阻止した。 佐世保市の「中活法」への取り組み状況 ●平成 10 年度、佐世保市が「中心市街地活性化基本計画」を策定。その基本計画を受け、 佐世保商工会議所は平成 11 年度に「佐世保市商業タウンマネージメント計画策定調査事業」 を、平成 14 年度には「佐世保市 TMO コンセンサス形成事業」を行い、具体的な中心市街地 活性化の施策を検討。TMO の設置については、商店街毎の意識の差があり、熟度が高まらず TMO 立上げまでには至らなかったとのこと。 ●平成 18 年 8 月に「新中心市街地活性化法」が施行されたことを受け、佐世保市において は中心市街地がどうあるべきか、また、これまで以上の賑わいづくりやより住みやすい街づく りのためにどうするべきかを検討する「佐世保市中心市街地活性化調査・検討委員会」を設置。 ●佐世保商工会議所では、新中活法に則り、商業面だけではなく、中心市街地の活性化に向 け総合的な事業の検討が必要であると考え、「中心市街地活性化協議会」の設立の必要性や組
  • 5. 5 織について検討し、平成 19 年年度に「佐世保市中心市街地活性化基本計画コンセンサス形成 事業」を実施し、協議会設立に向けた具体的取り組み(協議会委員構成の検討/準備会の設立 等)を平成 20 年度に進めているところである。 ●佐世保市の悩みとして「三ヶ町再開発(中心 市街地を構成する三ヶ町商店街の街区に、店舗・ 住居の複合ビル4棟の建設計画→マンション部分 を買い取る見込みの業者が 20 年 11 月に撤退)」及 び「ポートルネッサンス 21 計画(JR 佐世保駅の 海側にある市の造成地 12 ヘクタールに、商業施設 や住宅を整備する計画→既存の商店街、コンパク トシティ化に反する計画)」の2つの再開発事業の 進捗状況があるとのこと。 長崎市中心市街地(浜んまち 6 商店街)視察 ●佐世保市内の研修終了後、長崎市に向かい、長崎浜んまち(アーケード商店街)を視察し た。 中心市街地を取り巻く環境は、佐世保市と同様に地理的環境に恵まれている。特に路面電 車・バスの停車場・停留所が、中心市街地の要所要所に点在、取り囲んでおり、平地が少ない 長崎市においては「実生活とまちと移動手段」が機能している。これだけ交通網が相互に機能 していると高齢化社会にかえって適している「まち」となっている。個人病院も大変に多い(49 病院)。 ●公共交通機関に恵まれていると言うものの、来街者の利便性を考えると、車社会の進展に 伴い市内民間駐車場との連携は欠くことのできないインフラであり、携帯・インターネットに よる中心市街地空き駐車場の検索システム(とーむ de.com 事業)を導入した。平成 18 年 1 月現在、加盟駐車場 38 箇所(駐車可能総数:3,213 台) ●消費者の利便性と個店の経費削減、商店街の販促活動費捻出を目的として、連合体である 「長崎市浜んまち商店街振興組合連合会」が受け皿になり、平成 13 年 2 月、デビット・クレ ジットカード一括処理事業(名称:長崎ぶらっと)を実施。中心商店街において、大手クレジ ットカードを始め地場信販会社を含む 10 社と商店街が包括契約を結ぶことにより、事業の参 画加盟店は、ほぼ 100%のクレジットカードへの対応が可能となった。また同時に、クレジッ トカードとデビッドカードに対応した多機能端末を導入した。→加盟店 300 店舗/クレジット 取扱高約 40 億円(平成 17 年度) ●長崎の県庁所在地(人口 45 万人)でもあり、また、商店街組織としても全国で 2 番目に 組織化された土地柄とあって、各お店・専門店の強さ(店構え・品揃い)が大変印象に残った。 ●TMO 構想の具現化として、中心市街地のゾーン毎に 8 つの地区活性化協議会を設置して いる点が特色。ゾーン分けの目的としては、①押し付けではなく『あるべき姿』を地元で考え てもらうこと②事業を実施する場合、提案をした地域の人が実施主体となるという意識をもっ てもらうこと/行政・会議所依存体質を少しでも減らすことが目的。→ゾーン分けしたことに より、地区によっては温度差があり、活動できない地区もある。また、こうした合意形成は、 地元住民ならではの利害関係/泥臭い話…の問題が起こりやすいのが両刃の剣とる。 長崎市においても、まちづくり三法の見直しにより、推進体制・役割分担等を仕切り直し、 基本計画の見直しをしているところである。 以 上